【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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虫を蛙が、更に蛇、鳥と続いて最後に…という短編ホラーな話を思い出しました。
お互い疑問やら気になるところが出てきましたが…。もだもだしますねっ。


22当惑

(わす)(ぐさ)』と呼ばれる植物の形を模した術具を回収したユキに、リッキーが『水手毬(みずてまり)』の模様を気にするそぶりを見せる。

「ギャゥ」

「ん、コレ?・・・そうだね。小松たちの様子、見てみようか」

ユキは模様に触れて術を発動させた。

 

小松とサニーの前には、怪しい雰囲気をまとった沼地が広がっていた。

『いにしえの沼地だ。太古のグルメ食材が数多く眠る・・・通称、食の博物館』

飛び交う翼竜獣類のマッドドラゴンを、沼から顔を出した魚獣類(ぬま)ウツボが大きく裂けた口で仕留めれば、そのカラダに軟体獣類スネークヒルが巻き付き、魚獣類の鰐鮫(わにざめ)が更に食らいつく。

『どうなってるんです?!わけわかりません・・・っ』

 

「おっとおっと・・・短編ホラーで描写されそうな光景だな・・・」

狼狽(ろうばい)する小松の声に、ユキも心の中で同意した。

 

やがて沼地の対岸へと到着したサニーと小松の前には、無残に(ほふ)られた猛獣達の遺骸(いがい)

『こんな美しくない事されっとよ・・・ムカついて笑えねェぞ!美食會よ・・・!!』

 

眉目(びもく)(ゆが)めて(いきどお)りを見せるサニーに、ユキは目を(またた)いた。

「・・・なんか・・・思ってたより、ずっと熱血漢(ねっけつかん)・・・?」

「ギィャオウ」

最初の印象が(くつがえ)され、ユキは思わず意見を求めるようにリッキーに視線を向ければ、肯定するような鳴き声が返って来た。

またもや意外過ぎるサニーの一面に触れ、ユキは困惑するばかりだった。

 

 

「リッキーは長く飛べないって、リッキーのおとーさんは言ってたけど・・・」

ユキはリッキーの背に乗り、リーガル高原に向けて荒野を一直線にひた走る。

「走るの、(すさ)まじい速さじゃない?そして圧倒的持久力よ・・・」

木登りが得意なヒョウの最高時速は60㎞程。

跳躍力と瞬発力に優れた短距離が得意な動物だ。

長距離を走りづづける持久力(スタミナ)は本来持ち合わせていないはずだが、『ハイアン』―――『新たな高い水準』を意味する種族名が示す通り、身体性能が異次元なようだ。

 

ユキは知らないが、生まれたその日からチーターの最高速度である110㎞を走りづづける事が可能な、哺乳獣類最速と称されるバトルウルフ。

その古代の王者と肩を並べる程の俊敏(しゅんびん)性を誇るのがハイアンパンサーであり、皮膜の翼も短距離を飛べるだけでなく空気抵抗を軽減させる効果がある。

 

「・・・リッキー、また少し休んでいいかな?」

移動距離が距離なだけに、(くら)(つか)まっているのが体力的に(きび)しく、幾度(いくど)目かの休憩を挟んでいた時だった。

地平の先で大きな爆発が巻き起こった。

「ひぇっ、なにごと・・・?!」

驚愕するユキに、リッキーが水手毬(みずてまり)を再び示した。

「ギャアォウ」

どやら水手毬(みずてまり)で、爆発の原因や様子が(うかが)えるのではと考えたようだ。

仮に判明したとして・・・小松の安否(あんぴ)が危ぶまれるのだが。

ユキは恐る恐る水手毬(みずてまり)を発動させた。

 

「ん?なにこれ・・・?」

映し出された景色は、到底現実的とは程遠い。

粘膜の表面のような地面も生えている植生も、まるで粘菌のようだ。

空もぼんやりと桃色がかった不思議な色味。

「どこだろ。リッキー見覚えある?」

「ギャウ?」

首を(かし)げるリッキーも、映る風景に覚えはないようだ。

 

粘菌世界に迷い込んだような場所で、サニーが触手に(おお)われた猛獣と戦っていたのだが、急に広げていた髪が重力に従って下がった。

無抵抗となったサニーに向かっていったのは猛獣ではなくボディにロープを巻き付けたGTロボ。

サニーは顔面を殴られ腹部に蹴りを入れられ、頭突きで割られた額から血が噴き出す。

 

「ええぇっ、サニー・・?!」

一方的に容赦(ようしゃ)ない攻撃を浴びるサニーに、ユキ―もリッキーも目を(みは)るが、やがて形勢は逆転した。

「なにアレっ、髪の毛で構成された魔人みたいなの出てきた・・・!」

 

何度目かの激しい攻撃の後GTロボの動きが止まり、サニーの髪から現れたモノが重い一撃を食らわせた。

(ヘア)パンチで強いダメージを与えても、GTロボはまだ動けるようでサニーから距離を取るが、サニーの触覚がコアを縛り上げて勝負は決した。

 

途中からだが一連の戦闘を見ていたユキとリッキーは、気まずそうに顔を見合わせた。

「・・・なんだろう。あんなに殴られる必要、あったのかな・・・?」

「ギャウ・・・」

最後の決着を見るに殴られずにスマートな勝ち方が出来たはずだが、サニーの美学について理解が及ばず、ユキとリッキーはしばし複雑な表情を浮かべていた。

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