【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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おかしい・・・なんでアニマル達とばかりキャッキャしとんねん。
ココサニサンドを目指していたはずだが・・・?


25露知らず

親マンモスを振り切り、医療チームのヘリで研究所に戻ってきた7人は、ストレッチャーで運ばれていくリンを見送った。

ココは、リンが死ぬことはないから心配しなくていいと断言し、手術を(ほどこ)したサニーも特段(とくだん)(あせ)る様子もない。

「サニーさん、随分落ち着いてますね」

「オレが処置した時点で既に組織の修復が始まってたからな。(じき)に回復するはずだ」

 

 

医療チームと共に、リンの治療の経過を見守っていたヨハネスは、リンの回復の速さに度肝を抜いていた。

「信じられん。グルメ細胞がこれほど活発に分裂を繰り返し、組織を再生させるなんて。リンさんのグルメ細胞に適した、美味なる食材を口にしたに違いない」

 

 

研究所ではリッキーとキッスが皆の到着を待っていた。

ヘリに乗る際に別れてから、スピードを上げて研究所にいち早く戻っていたらしいリッキー。

「リッキーもう戻ってたの!?すっごいスピードっ!!」

「ギャアウ」

得意気(とくいげ)に鳴くリッキーをユキが構っていると、キッスがジャンプして近寄り羽を膨らませながら声をかける。

「ギャアァ」

どうやら撫でて欲しいというキッスのアピールのようだ。

 

「ヨシヨシ、キッスもお疲れさま。そうだ、一緒に水浴びする?」

鳥は顔周りや首筋を撫でられることが好きな為、分厚い羽毛に深く手を差し込んでキッスの様子を見ながら触れるユキ。

目を細めていたキッスに、(そば)にやって来たココが話に加わる。

「どうだろう・・・雨に濡れるのは嫌がるんだけど・・・」

雨には大気中の不純物が含まれている為、濡れるだけでなく汚れるのを嫌っている可能性もある。

「鳥はきれい好きで基本水浴びって好きじゃない?」

「ア"ァ」

ユキの言葉にクチバシを寄せてくるキッスは、水浴びに意欲的に見える。

 

リッキーとキッスとのスキンシップに精を出すユキに、粘り付くような視線を向けるココとサニー。

「・・・なにしてんだお前ら」

2人の態度を不審(ふしん)がるトリコに、小松も感じた所見を話す。

「サニーさんて、じっと人を観察するクセがあるんでしょうか」

小松の意見に、トリコは黒草の草原(ブラックカーペット)での様子を思い返した。

「そういや小松も見られてたっけ。で?今度はユキをガン見してると。なんかあったのか?」

「いや~・・・どうでしょう。ボクの時は包丁やら調理を()めてくれてから距離が縮まった感じですが、ユキさんとはマッシュルームウッドで少し一緒になっただけですし。あ、そうえいえばユキさん、変わった花を()んでましたよ」

「花?」

(それがユキの言ってた、秘術の波動とやらの発生源だったのか?)

 

サニーの視線は初見の相手に対しての観察とも取れる。

しかしココはなんなんだと、トリコも気にしていた。

(ココのやつ、なにか勘付いてんのか・・・?)

得意の占いでなにか見えているのかもしれないと邪推するトリコだが、実はユキと(たわむ)れるリッキーとキッスに羨望(せんぼう)の眼差しを送っているだけだった。

声をかけながら首筋(くびすじ)()でるユキの手に、キッスはうっとりと目を閉じている。

鳥類が()でられて喜ぶ場所を心得(こころえ)ているようだ。

(キッスもリッキーも、ユキちゃんとあんなに仲良さそうに触れ合って・・・)

(バトルウルフ、ハイアンパンサーに続いて、エンペラークロウとのツーショットだと・・・っ?!コレは・・・人と獣との芸術的合作(がっさく)っ!!)

 

ココとサニーの心中も(つゆ)知らず、今聞くのも藪蛇(やぶへび)かとトリコはテリーの姿を目に()める。

「・・・テリーもカラダを綺麗にしないとな」

「ウォウ」

ユキたちのやり取りに、宝石の肉(ジュエルミート)実食の前に身なりを整えようとトリコが振れば、いつの間に追いついたのかオブサウルスも鳴き声を発した。

「バルァルア」

「おぉ、オブサウルスもな」

オブサウルスの登場に、サニーは「げっ」と(しぶ)い顔を見せていた。

 

(サニー、虫だけがダメな訳じゃなかったのか・・・)

初めてオブサウルスと対峙した時も『なんだこいつキモー!!』と叫んでいた。

「それじゃ一緒に行こっか」

トリコの話を聞いてリッキーとキッスに声をかけるユキに、サニーとココの戸惑(とまど)った声が上がる。

「えっ」

「え”」

「―――え?・・・リッキーが居るから、大きい子用のお風呂があるはずでしょ?」

ヒョウは飼育下では水浴びや水遊びなどを行うことがある。

広大な庭を移動し、土埃(つちぼこり)(かぶ)っているだろう。

リッキーが嫌がらないのであれば、カラダを洗いたいと考えたユキ。

 

「そうだな。誰か案内(たの)めるか?」

研究所の職員に声をかけるトリコの後に、ユキは付いて行く。

続くリッキーとキッスは、チラリとココとサニーを振り返り意味深な視線を寄越(よこ)してから後を追っていった。

「え・・・キッス・・・?」

「なんだ今の視線・・・っ」

置いてけぼりを食らったココとサニーは、しばし唖然(あぜん)と夕闇に冷えた風に吹かれていた。

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