【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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初見の相手には距離のあるサニーだけど、ずっと気にかかっている状態でスッキリしない。
置いてけぼりなの可愛いね。


27懊悩と決意

懊悩(おうのう)・・・心の奥で悩み(もだ)える。思い悩んで苦しむ。

 

賞味(しょうみ)・・・美味しいものを味わって食べる。褒めながら味わう。味を鑑賞する。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

探照灯(サーチライト)が辺りを照らす、研究所の最も高いビルの屋上。

囲んだ円卓(えんたく)で、大皿に乗せられた宝石の肉(ジュエルミート)盛りが振る舞われた。

満天の星々も月明かりすら肉の影響でかすんでしまう場に、ユキは青系のサングラスを装着し食卓に(のぞ)む。

青系の色は人が(まぶ)しさを感じやすいオレンジや黄色といった、色相環で真逆に位置する光を吸収し抑えてくれる。

 

小松は優しい光だと言うが、カメラが白飛びする程の光量は暴力的ですらなかろうか。

((まぶ)し過ぎるっ。なんでみんな平気なんだ・・・ってサニー泣いてる?!)

涙ぐんでいるのは小松も同じだが、彼は第1ビオトープへ向かうヘリの中でも古代の食宝への憧れを(のぞ)かせていた。

(小松は理解できるけど・・・サニーはなんで泣いてんだろ?)

リン(いわ)く美しさ至上主義のサニーの美意識うんぬんについて知らぬユキ。

口もとを手で(おお)い、涙を(たた)えるほどに感動しているサニーが、ユキの目には不思議に映った。

 

一人前に切られ大皿に山盛りにされた肉を前に、ユキは皆が賞味(しょうみ)する様子をそっと見守っていたのだが、至極(しごく)当然のように発光し始め言葉を失った。

(なんでっ、どーいう仕組み?!)

誰も自らが光る事実を問題視していない。

ユキは思わず給仕のスタッフに問いかける。

「えぇーと、なんで光るんでしょう・・・?」

「申し訳ありませんが、存じ上げず・・・」

(っ!!みんなもっと疑問持とうよ!この世界では食えるか食えないか、美味いか(いな)かが重要なのかっ。だよねっ!!)

 

生物が発光するメカニズムは、総称である発光基質(ルシフェリン)発光酵素(ルシフェラーゼ)の酸化反応。

自ら光る自家発光と、発光バクテリアを体内に住まわせる共生発光がある。

リーガルマンモスがどちらにせよ、なぜ宝石の肉(ジュエルミート)だけが光るのか。

グルメ細胞の影響と言われれば、それまでだが。

イカは死後、体表の発光バクテリアが増殖することで光るが、その頃にはもう食べられない。

宝石の肉(ジュエルミート)はマンモスの生前から光っているので、そこは問題ないだろう。

 

付け合わせに用意されたご飯やスープ、野菜を口に運びながらユキが考えを巡らせ続けていると、肉に手を付けていない事に気付いたトリコが気を(つか)う。

「どーした?ほら、ユキも食ってみろって。すんげぇうまいぞ!」

「う、うん・・・」

生食(なましょく)キノコに次ぐ、2度目の覚悟が試される時が来た。

100%善意で目の前の取り皿に肉が置かれ、いよいよ腹をくくるしかなくなった。

肉を食べることで、皆と同様に光るのかそれとも―――。

光った際は、異境人のユキのカラダに悪影響はないのか。

(こんな時のかけ声って、なんて言うんだっけ。・・・ええいっ、ままよ!?)

こういうものは勢いが肝心だと取り分けられた肉にナイフを入れ、決死の覚悟で口に運ぶ。

「―――っ・・・おいしい・・・」

口の中に広がる繊細な肉の甘みに、ユキは思わず目を(みは)る。

「!だろっ!?」

自然に(こぼ)れたユキの感想に、トリコはニカリと笑った。

美味しいものを皆で囲んで食べる喜びを、トリコは肌で感じているようだった。

大柄な体躯(たいく)の男性相手に、ズルい笑顔だとユキは苦笑する。

 

(口の中でやわらかくほどけてく・・・。そういえば今回も調味料なしでいけちゃったよ・・・。ホントどーなってん・・・)

ガララワニ(しか)り。

フグ鯨の時だって、どう見ても醤油や塩が欲しいビジュアルだった。

食材の味のインパクトが強過ぎて、調味料がぼやけてしまうんだろうか。

調味料の是非(ぜひ)について思案していれば、小松がマンモスの体内で採取してきたというツクシナモンとオレン(じお)が調味料として用意される。

(珍しい・・・。柑橘系とシナモンか・・・エキゾチックな香りが旨みを引き立てる・・・のかも?)

ノーマルな岩塩やソース等で味変したいと思うのは、元の世界の食文化が忘れられていない証拠だろう。

 

付け合わせを片手にゆっくりと肉を堪能(たんのう)していたユキは、トリコから謎の心配をされてしまう。

「ユキは食が細いのに、他のもん食ってたらあんま肉が食えねーんじゃねえか?」

「別に細くは―――・・・まあ、みんなに比べたら細いんだろうけど」

小柄な小松も意外と量を食べるし、病み上がりのリンの食欲にだって遠く(およ)ばない。

「私の居たとこだと一品ずつ食べるスタイルって、コース料理以外であんまりなくてね。焼肉でもご飯ものや麺類、スープやサラダなんかの付け合わせって色々あるから」

「定食やセットみたいなもんが多いのか」

「そうそう。もちろん単品で食べることもあるけど―――」

 

トリコとユキの会話内容は聞こえないが、(した)()に話している様子を肉を切り分けながら見ていたサニー。

(・・・・・・。やっぱかなり打ち解けてんだよなあ)

サニーが右隣に座るリンの様子を盗み見れば、テーブルを挟んでちょうど対角に位置するユキの様子は、山盛りの肉で見えていないようだった。

(ココもキャラ変わってね?ってくらい態度が妙だったし、め・・・っちゃ気になる)

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