【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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触覚精度の誤差が0.3㎛とハンティングブックにあったのでそう表記してましたが、㎛とμは同じ大きさだと気付き原作表記に統一しました。


35引き金

μ(ミクロン)と㎛(マイクロメートル)はどちらも1㎜の1000分の1、1μ=0.001㎜。

国際単位系に基づいた表記が「㎛」。現場で使われる通称や旧表記が「μ」。

髪の毛の太さは平均して50~100㎛。

 

 

「!!なんだコレは・・・っ」

浮かぶ水球にココが思わず身構(みがま)えるの見て、リンが補足する。

「ユキは魔法使いらしいし」

「魔法っ?!」

予備知識なしにもたらされる情報に、ココが目を()く。

「あ、そーいう(てい)で話進めるんですね・・・」

ややこしい真実より(わか)りやすさを重視したリンに、小松は(あき)れと感心を抱く。

 

結論として水手毬(みずてまり)の映像を見ても、ユキが花について思い出すことはなかった。

「―――・・・なんて言うか、忘れてる過去の写真とか見てる気分?」

「ぁー・・・ここドコだろ、こんなとこ行ったっけ?って記憶が曖昧(あいまい)になってるみたいな感じ?」

ユキが抱いた感想に、身に覚えがあると言うリンに「そうそう」と同意が返される。

 

「やっぱり、さっきの光が原因で、お2人の記憶が飛んじゃったんでしょうか」

「ピンポイントでココはユキを、ユキはあの花について忘れたってのか」

信じがたい状況だがココもユキも、こんな冗談を言う様な(たち)ではない。

小松とトリコは、実際に目の前で起こっている異常事態にどう対処したものか悩む。

 

「―――たぶん、あの花は‵忘れ(ぐさ)′だと思う」

ユキは実感が湧かないながらも花の名称を口にすれば、サニーが外見が大きく変わっている事に触れる。

「ワスレグザ・・・花を手にした時も言ってたな。けどココが拾ったのは小さく硬いもんだったろ?」

「様々な術が込められた道具を術具や宝具と呼ぶんだけど、その形状は制作者の意図によって自在なの。持ち運びや保管の為に、完成後も組み込まれた設計に沿()って大きさや形状、質感だって変化させられる」

「便利ですねえ」

ユキの説明に小松が感嘆(かんたん)すれば、リスクもあるとリンが続く。

「でも本来の道具の形状を知ってても、小さく変化した時の状態も知らないと、事故に繋がるんじゃない?さっきみたいに」

リンの指摘に、ユキは(うなず)き返す。

 

「術具によっては意思が宿(やど)っていたりして、勝手に動き発動することがある」

意思は力の強い術具に偶然宿(やど)る事もあれば、制作者が故意(こい)に持たせることもあるという。

「だから暴発を防ぐ為の安全措置(そち)として休止状態やスリープ、安全に保管する封印なんて方法があるんだけど・・・」

「けど?」

言葉を(にご)すユキに、リンがオウム返しで先を(たず)ねる。

「術具を回収したら、勝手に起動しないよう保管すると思うんだけど・・・なんで落としたんだろうって」

落とさなければ、こんなややこしい状況にはそもそも(おちい)らなかったはずだ。

 

「私の場合は、身に付ける宝飾品の中に術具を収納・保管してるの。ちなみにこのネックレスも術具で形状を好きに変えられる」

ユキは自身の首もとのペンダントトップに手をかざし、短い杖(ロッド)を取り出した。

「ロッドを通じて術を発動させたり、収納している術具自体を取り出したり。・・・でも私自身になにかない限り、勝手に転がり落ちる様なものじゃないんだけどなあ」

「なにかって・・・例えば?」

どうしてだろうと困り顔のユキに、小松が確認する。

「体調が悪かったり、力を使い過ぎた時。他にも心身に強いショックがあった場合にも注意が必要で・・・って、どしたん?」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

トリコ、小松、リンの3人が気まずそうに目を泳がしてから、サニーへ視線を向けた。

「・・・サニー」

「サニーさん」

「お兄ちゃん・・・」

ユキの話では常時勝手に転がり落ちる様な保管ではないというのなら、考えられる原因はひとつだった。

「えっ、オレか?!」

動揺するサニーに、トリコとリンが他に考えられないと迫る。

「ひと(きわ)輝いてたお前が近付いて、ユキの目が(くら)んだ直後だぞ」

「それだけユキに取ってお兄ちゃんの光は、刺激強かったんだし!」

 

詰め寄るトリコとリンのセリフに、小松は引きつった笑みを浮かべた。

「・・・ここだけ聞くと、推しの尊さに動悸とかパニックになったみたいですね」

「実際クラクラするよ。光量が強過ぎて、ちょっと疲労感が・・・」

疲れた表情を見せるユキに、トリコがサニーに無茶な注文を付ける。

「サニー、光(おさ)えろよ。さっきはなんか意図して光量増してたろ」

「出来るかっ・・・って言いてえとこだけど。・・・ふぅ~~~―――」

サニーは感情を落ち着かせるように、深呼吸で大きく息を吐いた。

「すごい!サニーさん、ホントに光量を下げれてますよ」

細胞レベルの制御を難無(なんな)くやってのけるサニーを小松が称賛(しょうさん)する一方、ユキはありがたいながらも今ひとつ釈然(しゃくぜん)としないものが残った。

「・・・なんでそんな自在なん」

「ユキ、それ棚上(たなあ)げだし」

リンに突っ込まれてしまったが、思い返せば応急処置の触覚手術(ヘアオペレーション)も0.1μ(ミクロン)の触覚での施術(せじゅつ)

「そうかなあ・・・」

触覚の操作精度の誤差は0.3μ(ミクロン)という、常人には理解の(およ)ばない領域にあるサニーの能力と並べられても、とユキは1人納得出来ずにいた。

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