原作でもっと毒舌を披露して欲しかったですね。
『フグ鯨出現に、グルメ企業株価はストップ高―――』
グルメタウンの街中には『フグ鯨の群れ、産卵の為浅瀬へ』というテロップと共に、10年
に1度のフグ鯨の捕獲についてのニュースが流れていた。
切り立つ岩山や崖に囲まれた地域を列車に乗って移動するトリコ、小松に再び同行したユキ。
車内販売のお酒を多く買い込み、テーブル席でご機嫌なトリコはもうすぐ幻の魚に出会えるとワクワクしている。
バナナやバーガーにポテト、チーズ類などのつまみも
途中、酒の買い占めが理由で3人組に絡まれたが、トリコは牽制や脅し目的だろうと踏みながらも酒を分け、トリコの体格の良さに
「治安、悪いな。車内の広告の多さを見るに、普段はそんな事ない列車なんだろうけど」
ユキは車内を改めて見渡した。
天井近くにいくつもつり革広告が並んでいるし、どれも真新しくきれいなものばかりだ。
「フグ鯨の現れる場所の前に、人気の町があるんだ」
「それってどんな―――」
トリコの話にユキが尋ねかけた時、また声がかかった。
「あのう~、あっしにも酒わけてはくれませんかねぇ?」
中腰で腰の曲がった赤ら顔の老齢な男性が声をかけて来た。
「この酒の恩は・・・いつか。ヒック」
気前よく了承したトリコと小松に、老人はそう言ってひと瓶持って行った。
美食鉄道と書かれた列車が、ある町の駅に到着した。
駅前には電飾が等間隔に置かれた花壇と噴水。
綺麗な街だが、人通りがまるでないことに気付く小松にトリコは理由を説明する。
「猛獣が出る時間だな。この町の占い師が、猛獣が出る時間帯を占うんだ。でその時間帯、住民は家に隠れてるって話だ」
赤、黄、黒の警告色で描かれた、猛獣注意らしき標識がある。
「町中に?こわっ。でも頻繁に出るにしては町はどこも壊されてないね?」
不思議だと町を見渡すユキに、小松は思い出した情報を話す。
「そういえばフグ鯨の情報もこの町が発端だって―――そんなスゴイ占い師がこの町に・・・」
突如、町中に地響きが
町角から現れ、地面に敷かれたブロックに爪をめり込ませながら、建物3階層分はある背丈の猛獣、捕獲レベル10の翼竜獣類が姿を見せる。
「煮ても焼いても食えねぇクエンドンか」
「そういう意味の名前なの?!」
トリコの言葉に、なんて雑な名前の付け方だとユキは声を上げる。
そこに
「迎えに来てくれたか」
どうやらトリコの知り合いらしいが、ユキは気が気ではない。
「うそっ、危なくない!?」
ゆっくりとした足取りでクエンドンの前を横切ろうとする男性。
もしかして大きすぎて逆に気付いていないのだろうかと、ユキは
「
「ユキっ!!」
トリコの呼び声が聞こえた時すでにユキは、引力と
クエンドンに術の発動に使うロッドを突き出し、左手にマントの男性を
「~~~くっ!!!」
「―――なっ?!?!!」
防御が間に合うかと
目の前に現れた獲物2人に、クエンドンの大きく開けられた口が迫り小松が叫ぶ。
「あぶなーいっ!」
男性は急に
男性まで目と鼻の先まで迫った大きな口が、突然ぴたりと止まった。
猛獣は興味を失くしたかのように顔を
「え・・・どうして」
「~~~どうしてって、君。なんで猛獣の前に飛び出したんだ」
「いや、あなたが襲われそうだったから、つい・・・けど私の方が
お礼を言うユキに1度言葉を詰まらせ、すぐにそっぽを向く男性。
「・・・っ、こちらこそ、すまない。触ったりして」
「え、いやそれは別に・・・」
必要に迫られての人命救助。
なのに彼は申し訳なさそうに
「ボクの占い通りだ。嫌な客が来たもんだな。猛獣の方がずっとカワイイ」
顔を合わせたトリコと男性は、互いに口元に笑みを浮かべ皮肉を言い合う。
「お出迎えとは嬉しいねぇ。さすが四天王一の優男だな。ココ!」
「やっぱり、トリコ知り合いだったの?」
(てか今の、嫌味の方で言ってない・・・?)
優男には良い意味と悪い意味の両方があるが、どうも後者の気がしてならない。
「四天王一の食いしん坊、トリコ。久しぶりだね」
(―――どれだけ皮肉の応酬するんだ・・・)
2人のやり取りに、気の置けない関係なのが伝わってくる。
「トリコさん・・・まさか会いに来た人って、四天王―――美食屋ココぉ?!?!」
猛獣の件で呆気にとられていた小松は、今度は2人を交互に見てあたふたしていた。
「小松も知ってる、有名人なんだ・・・?」
それにしたって小松はオーバーリアクションで驚き過ぎではないだろうか。
小松の勤めるホテルグルメから東へ900キロ。
古くから
「どうして町はどこも壊されたりしてなかったの?」
「建物は毒壁で
町から数キロ外れにある、ココの自宅へ向かう道中。
ユキは不思議に思っていたことを
「なぜ四天王のココさんが占いの町グルメフォーチュンに?」
「今、ボクの本業は占い師だからね」
「四天王が占い?」
小松は不思議そうだが、ユキは彼のファッションの方が気になった。
右耳には紫の円柱のピアスと、鮮やかなオレンジの一粒ピアス。
左耳には紫色のカフスらしきものと
頭には、緑のターバンだろうか。
全身黒い服に身をつつみ、緑の帯が手足に巻かれていたりと服装は独特だが、小物にこだわる
「そういやゼブラはどうした?」
トリコは2人の共通の知り合いらしい人物について問う。
「捕まったよ。今グルメ刑務所だ」
「ついに捕まったか、あの問題児」
(いや、どんな知り合い・・・)
ユキは心の中で静かに突っ込んだ。
2mを超える岩がある崖までやって来た。
町からは平原を数キロ、更に草に
ユキは引力と
小松にもその力で補助しようかと申し出たが、「トリコさんに付いて行くには体力をつけなきゃなので大丈夫です」とやんわり断られた。
「お、おつかれ。水分飲む?」
「あ、ありがとうございます・・・」
ぜいぜいと息を切らして小松はユキから水分を受け取る。
「思い出すぜ。4人でよ、死に物狂いで庭で修業した頃を」
「昔の話だ」
遠くを見つめるトリコとココの横顔からは旧知の仲であることが察せられる。
(また‵庭′か・・・)
グルメ
(トリコとココは4人で‵庭′・・・つまりIGOのビオトープで美食屋として
「え~えぇ~~~!?!?」
「・・・・・・・・・」
鳥獣類絶滅種の生き残り、エンペラークロウの登場に大口を開けて叫ぶ小松を、トリコはその驚きっぷりに若干引いたような顔を向けた。
「ワァーわぁーっ、おっきい鳥~」
(空を飛べた史上最大の鳥類は、絶滅した海鳥の
紫のクチバシと爪に赤い瞳のエンペラークロウに、ユキはキラキラとした目を向ける。
「家族のキッスだ。さて・・・4人運べるかキッス?トリコは重いぞ」
ココの問いかけに「カァ」と短く鳴いて答えたキッス。
人の言葉を理解する、高い知能を有しているようだ。
ココの家は、孤立した崖の上にあった。
家の中には食器棚やデーブルのほか、暖炉と煙突。
大瓶に入った食材や薬草、蛇や植物の根のようなものが入れられた棚があった。
テーブルの上にはオムライス、チャーハン、サラダ、サンドイッチやステーキなどが並ぶ。
骨付き肉に
「つーか、もっと上品に―――」
トリコのかっ食らうような食べっぷりに、ココは
ココとテーブルを挟んで対面にトリコと小松が、双方から90度の位置にユキが座り、フグ鯨捕獲について話をする。
その猛毒は、わずか0.2mgで死に至るほどだという。
「やば・・・っ!」
フグ毒のテトロドトキシンの毒性は青酸カリのおよそ1000倍と言われるが、それでも致死量0.5~2mg程度とされる。
毒袋が破れ全身が毒化したものでも闇市場を通じて多く出回るという小松に、ココは中毒事故による死亡人数を付け加える。
「10年に1度フグ鯨が
「ま、命を落とすと分かっていながら食う奴がいるくらい、美味いってわけだ」
軽い調子のトリコに、ユキはガタリと椅子を揺らした。
「そんなバカな事・・・っ、ぁ。ぁあ~~~・・・そういえば、一昔前はフツーにあったみたいだわ。うん。我が国ながら食にどん欲な国民性はまさしくニホンて感じ・・・」
(日本ではフグによる中毒事故件数が年間約30件、死亡事故は確か数名程度・・・。10万人だなんてトンデモナイ数字、どれだけ食に命かけてんの)
反論しかけたユキだが、思い当たる出来事が過去の歴史にあったのを思い出し、頭を抱えた。
「ユキさんの元居たところの歴史ですか」
(!・・・元居たところの歴史?)
ココは小松の言い回しに違和感を覚える。
(彼女の口にしたニホン、とはどこかの地域の名称だろうか。そんな国名は無かったはずだし・・・)
ココは、フグ鯨の毒袋除去の成功確率は自身で1割。
産卵場所に行くにも深さ800m、全長数十キロに及ぶ猛獣たちが
中でも
「デビル
(小松のリアクション、全部デカいからどれくらい
ユキは先程トリコが小松に向けたのと同じような、引いて
「危険なのは分かったって。なんなんだ?占いに出てんのか?オレや小松の命が
「っぁ」
挑発するようなトリコの揺さぶりに、小さく音を発したココ。
「
(え。なに・・ホントに見えてるの?)
トリコの発した不穏な言葉に一瞬動揺を見せたココを、ユキはじっと見つめた。
「・・・・・・・・・。ふっ、何年振りになるかな。美食屋の仕事」
沈黙の後で告げたココだが、その前の
じっと向かいのトリコと小松を見つめていたあの顔。
ココが仕事の依頼を受けたのは、2人に迫る危険を少しでも薄くする為なのではないだろうか。
「じゃあ・・!」
表情を明るくする小松とトリコ。
「同行するよ」
「よっしゃあ!さすがココ!」
ココは席を立って一度背を向けた後、目を
(それにしても・・・死相か・・・。ヤベ・・・超見える・・・。マズいな。彼に、ハッキリと見える。彼の命は・・・)
「フグ鯨漁、楽しみですね~!」
「・・・・・・っ」
はしゃぐ2人を見やるココの視線に、ユキは底の見えない