【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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色恋沙汰において当事者以外の第三者の視点からしか得られぬ栄養って、あると思うんですよ(?)
本人達が感情に気付いてないと殊更(ことさら)オイシイ(?)アレ。


38悶着

悶着(もんちゃく)・・・感情や意見が乱れもつれて争う、いざこざや揉め事、いさかい。どうしたら良いかわからず(いら)立ったり慌てたりする、またその心の状態。

 

 

屋上から各自が割り振られたゲストルームへと向かう途中、リンはサニーの予想した失った記憶について小松に話を振る。

「小松は消えた記憶についてどう思う?お兄ちゃんは『最近あった大事な記憶』って当たり付けてたけど、ユキは忘れな(ぐさ)についてでしょ?」

「ユキさんにとって、それほど重大で重要なモノだったんでしょうか・・・」

考えながら小松は、先頭の案内スタッフに続くユキの背を見つめた。

 

「人の記憶を狙って消去出来るとか、どー考えてもヤバ過ぎだから!でも全くの見当違いって事はないと思うんだよね~。・・・ユキの場合は、あの瞬間の意識が強く向いてたのもあるのかも?」

(あご)に手を当て状況を思い返すリンも、確証がある訳ではない。

 

「そうなるとココさんも・・・?ココさんはユキさんのこと、どう思ってるんでしょう」

ココのユキに関する忘却は、術の発動時に意識が向いていた(ゆえ)か、はたまた。

「わっかんないけど、お兄ちゃんも怪しいと思うんだよねー。この世界の案内を買って出てたし。まあ持ち前の世話焼きが発動したってだけかも。なにせ失った記憶は完美(かんび)大理石が(まさ)っちゃうくらいだもん」

 

世界一硬く美しい完美(かんび)大理石。

その原料が黒草の草原(ブラックカーペット)でリン達が遭遇(そうぐう)した巨大甲殻獣類ロックドラムの甲殻なのだ。

「そういえばボクにもフルコースごちそうしてくれてるって。・・・アレって兄貴肌からくる発言なんですね」

 

*********

 

翌日の朝食の席で、リンはおずおずとユキに声をかけた。

「・・・なんでユキはそんな落ち着いていられんの?忘れられるってフツー相当(そうとう)ショックじゃない?」

ココに忘れられてユキが冷静に振る舞えている事が、リンには心底不思議だった。

向けられた疑問に、ユキは気を()るでもなく鷹揚(おうよう)と事実を返す。

「なんでって・・・。―――ココとは会うの、まだ2回目だしね」

「えっ!?あっ、そぉー・・・なんだ?!――――――・・・・・・??」

リンは告げらえた内容を()(くだ)くのに、かなりの時間を要した。

食事を進めながらもリンの視線は時折、上へ下へと移動する。

「・・・・・・・・・、ぇ・・・うん・・・??」

 

*********

 

黒草の草原(ブラックカーペット)へ移動してからも、リンの意識はぼんやりしたままだった。

「?・・・他人を避けてたココが、出会って2回で狩りに誘って―――?」

「リンさん、なにか悩み事でも?」

ずっと上の空であるリンを、小松が気にかける。

「―――・・・ウチも小松に聞きたいことが・・・。ユキとココっていつ知り合ったの?」

どこか心ここに()らずなリンを、不可解に思いながら小松は聞かれた事に答える。

「?えっと、先日フグ鯨産卵のニュースがあったのご存知ですか?ボクもユキさんも、その時ココさんと知り合って―――」

「めっちゃ最近じゃんっ!!」

小松の言葉尻に(かぶ)せてくるリンの勢いに、小松はたじろぐ。

「そ、それがどうかしたんですか?」

 

リンは(ひど)く言い(づら)そうに、自身の片腕をぎゅっと(つか)んだ。

「~~~~~~っ、ココとは・・・その・・・。会うの2回目って・・・マジ?」

「へ?・・・ええ」

一体なんの話なのだろうと、ぎこちなく(うなず)き返す小松にリンは食い下がる。

「ホントにっ?小松だけじゃなくユキも?」

「は、はいっ」

ずずいっと顔を寄せてくるリンに、サニーとの既視(きし)感を覚えた小松は気圧(けお)されながらも肯定する。

 

草むらから小さな鳥が低く飛び立ち、声を響かせた。

「―――・・・物語だとさ。こーゆう記憶喪失イベントって、もっと・・・色々段階踏んでからじゃない??」

リンの情緒(じょうちょ)がおかしな理由を知り、小松は極力感情を殺して言葉を発する。

「リンさん・・・。確かに、ココさんとユキさんは会うのも2回目で―――物語における恋愛モノなら、こんな序盤(じょばん)で発生する事故じゃないのは確かですが・・・」

知り合い、ある程度交流が生まれた後だったならば、ユキの心境もまた違っただろう。

 

「なんでだし・・・なんでっ、こんな・・・」

ギリっと拳を握り()め、肩を(いか)らせるリン。

「その葛藤(かっとう)は理解出来ますが、(いささ)不謹慎(ふきんしん)ですよっ。リンさん、(おさ)えてっ」

(わか)ってる!けど・・・っ。どうしても今じゃない感が(ぬぐ)えないし!!」

煩悩(ぼんのう)と理性からの苦悩。

ジレンマに(さいな)まれるリンを、小松も必死に(なだ)める。

「ボクで良ければ話を聞きますから、どうか(こら)えて!」

 

感情の起伏(きふく)が激しい2人の様子も、離れて見れば話が弾んでヒートアップしているようにしか映らない。

「―――なんだ?アイツら、わちゃわちゃと」

「・・・やたら盛り上がってんなあ~」

呆れた目を向けるサニーの横で、トリコは術具を探しながら黒草(くろぐさ)を頬張りつつ、小松とリンを不思議そうに(なが)めていた。

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