【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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ヨハネスの趣味趣向は、事実無根の妄想です。
現場と上司の板挟みにあって気苦労絶えないから、なんか意外な癒しがあるといいなと思って。・・・思って??



39認識齟齬

認識齟齬(そご)・・・互いの認識に、食い違いやズレが生じている状態。意思疎通の行き違い。

 

 

「!そうだっ、リンさん。部長に本借りましょうよ」

鬱憤(うっぷん)(あふ)れ出しているリンに、小松が思い付いた提案をする。

「・・・?ヨハネスに・・・?」

不服気(ふふくげ)な表情に困惑を重ねたリンは、どういう事かと続く言葉を待つ。

「日々の仕事に(うるお)いが足りないとかで、ロマンス小説なんかの恋愛モノを読んでいると以前聞いたんです。きっと今のリンさんにオススメの物語を教えてくれますよっ」

「!・・・うんっ!―――よぉし、探すぞー」

どうにか落ち着きを取り戻したリンは、術具の捜索(そうさく)に気持ちを切り替える。

 

ユキは今一度水手毬(みずてまり)で消えた術具の映像を皆に見せながら、これから探すモノの外見について話した。

「実物を見た事ないから多分なんだけど・・・。忘れ(ぐさ)の術具が、実在する同名の花に似せてあったから、忘れな(ぐさ)も同じで実際の花と近い見た目だと思う」

ユキの知っている植物の『ワスレナグサ』についての外見的特徴を皆が共有。

6人とテリー、リッキー、キッスも加わって、広大な草原に散開(さんかい)した。

 

*********

 

「ユキの話では推定(すいてい)で背丈10~50㎝くらいの青系の小さな花だっけ?う~ん・・・昨日の道具に付いたユキやココの匂いを探した方がいいか・・・?」

眉を下げるトリコの様子から、捜索(そうさく)難航(なんこう)しそうだと先行きの不安を感じる小松。

「―――・・・トリコさんから見てどう思います?ココさんの事」

トリコの(かたわ)らで、草地をかき分けながら小松が問う。

「ん?ユキへの反応の事か?一歩引いて身構(みがま)えんのは今に始まった事じゃねえが・・・フグ鯨捕獲の帰りにゃ、()きものが落ちたように見えたんだがなあ」

そう簡単にはいかないかと、トリコは目の前の問題に意識をシフトさせた。

「まっ、記憶さえ取り戻しゃ大丈夫さ」

 

*********

 

「リッキー今日も付き合ってくれてありがとね。この辺りで見た事無いもの見付けたら教えてー」

「ギィヤォオ」

リッキーは大きなカラダを使って、広範囲の草地を嗅ぎ分ける。

ユキは術具を探す為に地面ばかりを気にして、リッキーの(そば)から危機感無く離れていく。

 

1人でフラフラとしているのを見兼(みか)ねたサニーが、ユキの元へと歩いて来た。

「・・・オレンジの花はすんなり見付けてたみてーだけど、探す当てがあるわけ?」

「忘れ(ぐさ)は―――術の波動を感知して・・・?でも今は休止やスリープ状態なのか、なにも感じない。・・・この人海(じんかい)戦術で見付かればいいんだけど」

秘術の波動を(とら)えた事は覚えているが、見付けた記憶が欠落している為に曖昧(あいまい)な物言いになってしまうユキ。

「・・・6人とキッス達は人海(じんかい)戦術の数に当て()まんのか・・・?」

だだっ広い草原で当ても無く探すには、あまりにも心許(こころもと)ない人数。

これでは数で解決する戦術とは呼べないのではと疑問に思うサニー。

 

「トリコの鼻とココの目が頼りかなあ。サニーは・・・ぁ、ねえサニー」

困り顔で言いかけたユキが、なにかを思い出したようにサニーを振り向く。

「小松から水手毬(みずてまり)のこと伝わってなかったんなら、マンモスの中でのこと、勝手に見てゴメンね」

昨夜のサニーの態度から、見られたくなかったのだと容易に()(はか)ることが出来た。

「・・・いや、オレらのが先に黒草の草原(ブラックカーペット)での様子、見てたし・・・相子(あいこ)だろ」

バツが悪そうに返すサニーは、少し間を置いてからポツリと(こぼ)す。

「―――アレ・・・見たんだよな・・・?」

 

(?アレ・・・?はっ!サニーがフルボッコにされてたトコ!?なんで殴らせたのか正直(しょうじき)理解出来ないけど、あんな状況見られたくないよねっ?!)

「み、見ました・・・ゴメンナサイ・・・」

申し訳なさそうに謝罪するユキだが、ここで双方に食い違いが発生していた。

サニーは髪を人型に束ねた技の事を言っているが、ユキはサニーが一方的に攻撃を食らっていた状況の事だと思っている。

 

「美しさとは・・・かけ離れてただろ」

(う、美しさ・・・??血飛沫(ちしぶき)が飛ぶ様が美しいとか感じる狂気さは持ち合わせてないつもりだけど・・・)

「ぇ、えと・・・その・・・っ、あ!でもあの髪の毛の魔人、スゴいね。キレイな色の髪で構成されてて繊細そうなのに、パワー系ランプの魔人みたいで(しび)れるくらい興奮した!」

 

「―――?・・・は?」

サニーは思ってもいなかったユキの返答に、ポカンと困惑して固まった。

ユキはなんとか落ち込んでいるサニーを(はげ)まそうと、感じたままを伝える。

「強さの化身って感じで―――えぇと・・・サニーの美とフィジカルの具現化(ぐげんか)っ!!思い返せば、初めて会った時から圧倒的強者感あったけど」

 

サニーの口にする「美しさ」の指標や基準はユキには分からないが、サニーの外見や内面の熱さ、能力が反映された技だとユキは印象を精一杯届けようとする。

「―――は・・・・・・はあぁあ??!?」

みるみる赤くなるサニーは、自らの感情が制御できずに悪態(あくたい)を付くような声を上げる。

(ど、どうしてっ、火に油!?話を()()えたから?!)

サニーの態度が怒りや羞恥(しゅうち)に顔を赤くしたのかと、またユキの誤解を加速させるものだから、双方の誤解は解消されないままだった。

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