【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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44確固たる位置付け

(あずか)り知らぬ・・・関与しておらず、事情を全く知らない。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ネイチャーウォッチングかぁ。許可出してくれるかな・・・?部長さんに渋い顔されそう」

動植物や自然環境を観察するアウトドア・アクティビティについての名称を知り、ユキはココへの気まずさを振り払おうとリッキーに話しかける。

「ギィャグルル・・・」

ヨハネスの反応が容易に想像出来たのか、少し頭を下げるリッキーの返事もどこか(しぶ)い。

 

「・・・なぜ、そんな話題を?」

意気込んで来たココからすれば理解不能な内容で、心の底から怪訝(けげん)な眼差しをユキへと送る。

「えーと、昨日リッキーとこの草原に立ち寄った時にも、色んな鳴き声が聞こえてきて・・・贅沢で優雅な空間だなーって。あ、花はちゃんと探してたよ」

(こんな訳の分からない状況に巻き込んでおいて、呑気(のんき)な話してたから怒ってるっ?!すごい硬い顔してるし・・・っ)

信じられないとココの顔に書いてある。

けれど実際のココの胸中(きょうちゅう)は、ユキの心配とは別の所にあった。

(この危険な庭をリラクゼーションスポット扱いって、無警戒過ぎないか!?)

 

ココの鋭い眼光と、(りん)と引き締まった顔の圧に()()ねて、内心泣きそうになるユキ。

(はっ、そうだサニーは?って居ないっ!なんで!?離れるなって言ってたのにっ!サぁーニぃいさぁーん?!?)

ユキが心の中で呼びかけるも、わざわざユキとココが2人きりになれるよう取り計らったサニーは、どれだけ叫ぼうとも当然来ない。

首を巡らせ辺りを探すユキの目的を()んだココは、手短に状況を伝える。

「サニーなら、ボクと入れ替わったよ」

「・・・!」

 

(驚きと疑問の表情、不服だった・・・?)

不満が混じっていないかと、ユキの動向をじっと観察するココの不安は杞憂(きゆう)だった。

「え、けどなんで・・・なにか見付けてもすぐ確認出来るようにって、近くに居たのに」

話を聞いて、ココは記憶を失ってから初めてユキの前で笑みを見せた。

「!・・・サニーらしい気配りだな」

「―――?」

旧知の仲(ゆえ)に、ココにはサニーの考えに(さっ)しが付いたようだ。

 

「第1ビオトープの中で、黒草の草原(ブラックカーペット)の危険度は比較的低いが、草食獣を標的とする猛獣も少なからず出没するからね」

つまりサニーはユキの身を案じて、付かず離れずの距離に居たというのだ。

わざわざ別の理由を上げてまで。

「―――面倒見がいいなあ」

(しっかし、どーして適当な理由を用意したんだろ??)

()に落ちないユキの様子に、ココが付け加える。

「恩着せがましくならないように、じゃないかな。ようは気取ったカッコつけ、男にはよくある見栄(みえ)ってヤツさ。サニーの場合は自身の考える美しさの基準だろうけど」

(本当に、どこまでも美しいヤツだよ)

 

そんな用意した理由が無くとも、世話焼きのお兄ちゃんという立ち位置は、ユキの中で(ゆる)ぎないものとなってきている。

「―――??いやマジでなんで?」

盤石(ばんじゃく)になりつつあるポジションだからこそ、男の美学といった理解の(およ)ばぬ価値観に付いて行けず、ユキは眉根を寄せた。

 

「全くだ。ボクなら恩を売って貸しにし、後々(あとあと)利用する。・・・・・・―――なに?」

打算的な思考が思わず口をついて出たのは、ユキの言動に翻弄(ほんろう)されていたせいか、それとも―――。

真っ直ぐ注がれるユキの視線に、ココは決まりが悪そうに問う。

 

(・・・芯が強く柔軟なのか。ココは立ち直りが異様に早かったり、持っているカードを最大限、武器として使ってくる。しかも使う事に躊躇(ちゅうちょ)がない)

「―――・・・前々から思ってたけど、怪我の功名(こうみょう)を生かす抜け目なさというか・・・ちょいちょいタフなとこ見せ付けてくるよね。―――ぁ。ごめ・・・」

記憶の無いココに、ユキは知り合いだと押し付けるような話題は避けていたというのに、つい口走ってしまった。

 

(占い師になにもかも見透かされるっていうのは、こういう感覚なのか。ボクなら御免(ごめん)だが・・・)

占い師として他人に告げるは容易(たやす)いが、自分の(あずか)り知らぬ形で、腹の内を見抜かれている居心地の悪さをこんな形で認識しようとは、なんのる因果(いんが)か。

「キミは、みんなが共通の思い出について話そうとするのを、強引に止めていた。自己紹介にしても当たり(さわ)りのない最低限のものだった。・・・なぜだ?」

 

「―――私も光の事を忘れた直後で、起こった状況を聞かされても困惑しかなかったから・・・ココも一緒かなって」

記憶を辿(たど)るように目線を彷徨(さまよ)わせ、答えるユキを(なお)も問い詰める。

「けどボク以外は、失った記憶は物や食に関してだった。存在自体を忘れられて(いきどお)りや(うら)みはないのか?」

 

「そりゃ思考がフリーズするくらいビックリしたけど・・・。ココもみんなも、コッチの世界の都合に巻き込まれて、災難だった」

迷惑をかけた後ろめたさに、ユキは草地へと視線を落とす。

「キミだって巻き込まれた側だろう」

申し訳なさに気が(とが)めていたユキに、ココの静かな声が届く。

「―――!・・・ココは自分より、他人の心配し過ぎなんだよ」

(まぶ)しいものを前にしたように、ユキは目を細め困った様に笑い返した。

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