【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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副題思い付かなくて「雪解け」?とか考えたけど、ユッキー消えそうやし、R展開的なものが頭を過ぎりそう。・・・考え過ぎか?




46毒と薬

ミツユビハコガメ・・・北米原産。陸生のヌマガメ。後ろ足の指が3本、頭や手足を引っ込め腹甲(ふっこう)で隙間を完全に閉じ、箱の様になることが名の由来。リクガメの中で唯一毒を持つ。雑食性で餌にする毒キノコの毒を体内に蓄積させ、毒を有する。

 

大酸化(だいさんか)イベント/大酸化(だいさんか)事変/大酸化(だいさんか)事件・・・古原生代(こげんせいだい)に微生物のシアノバクテリアの光合成により、待機中の酸素濃度が上昇。酸素は嫌気性生物にとって有毒であり、大量絶滅を引き起こした。

 

『すべての物質は毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが、物質を薬たらしめるのだ』

16世紀の医師・化学者パラケルススの言葉。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ココが調子を狂わされているのは、今に始まった事ではない。

草原でユキに接触してから、更に言えば研究所の屋上でユキに会ってからずっとだ。

(コチラばかり、かき乱されているのは(しゃく)だが・・・)

釈然(しゃくぜん)としない不公平さにココが顔をしかめていると、ユキの疑問に思う声がかかる。

「そもそもこの辺りに、ココに近付いてくる猛獣っているの?」

 

(!彼女はボクの毒の威力(いりょく)を知っている・・・それなら―――)

「猛獣も近寄らない毒を持ったボクが、コワくないのか?」

「・・・恐怖は、真実から遠ざけるっていうけど・・・」

真剣味を()びたココからの問いに、ユキも誠実に(のぞ)む。

 

毒がユキ自身に向けられ生命が(おびや)かされるとなれば、それは当然恐ろしい。

けれど今は、ココの方がいつ足元が崩れてもおかしくないような、重圧(プレッシャー)を抱いているようにユキには思えた。

突き放すような、あえて距離を取ろうとする言葉を放ちながら、ココはなにを危惧(きぐ)しているのか。

ユキの一挙手(いっきょしゅ)一投足(いっとうそく)に注意を払っているココの目は、ユキの存在を不審(ふしん)がっている以上に、他者からの反応に(おび)えているようだ。

 

(今はココの顔圧(がんあつ)以外では、別段(べつだん)恐怖を感じてないんだよなあ・・・。顔の圧以外では)

大事な事なので、ユキは脳内だろうと繰り返す。

しかしユキが正直に毒は恐ろしいものだと、圧を感じていると伝えれば、ココ自身の存在を恐れていると解釈(かいしゃく)してしまうだろう。

どう答えたものかと悩み(あぐ)ねていたところで、ユキは元居た世界でのある事を思い出した。

 

「毒・・・か。―――前に毒を持つ生物の展示会に行った事があってね。クモとか巨大ヤスデとかは予想の範囲内だったけど、カメまで居て・・・驚いたなあ」

「え・・・っと・・・っ??」

予期せぬユキからの話題に付いて行けず、またも思考を乱されるココ。

過去を懐かしむユキの穏やかな顔が、ココを振り返る。

「―――毒ってね。人を魅了(みりょう)するんだよ」

「――――――っ!!?!」

 

(嘘偽(うそいつわ)りも、顔色を(うかが)ったご機嫌取りでもない・・・)

ユキの本心からの言葉に、ココはくすんでいた視界が本来の色を取り戻したような錯覚を覚えた。

「そもそも酸素だって太古には猛毒だったわけだし・・・ん?話()れたか・・・?」

光合成の副産物として排出された酸素の急増に伴い起こった、酸素が嫌いな嫌気(けんき)性生物の大量絶滅。

地球大酸化イベント(酸素カタストロフ)(おそ)らくこの世界でも過去に起こっているだろう。

 

論点がズレてしまったかと首をひねったユキは、ザックリと意見をまとめる。

「けどまあ化学的に見れば毒と薬に違いはないんだから、そんなに気にする必要ないんじゃない?」

(・・・どれも彼女の・・・本心からの言葉だ)

ココは胸の内でとぐろを巻いていた暗いモノが、(ほど)けてていく心地だった。

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