【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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全長数十㎞、深さ800mの巨大迷路洞窟に入っていくとか無謀過ぎひん?
オリ主と小松、お前らのことやぞ。


05魔の洞窟

フグ鯨の産卵場所がある洞窟の入り口前には、多くの美食屋の姿があった。

「生還率0.1%と言われるこの洞窟に、末端相場価格5億のフグ鯨を捕獲しようと美食屋たちが入っていきます」

なぜか1人でやって来ているテレビリポーターの声を聞き、ユキは改めて洞窟に目を向ける。

(うな)り声を上げそうな巨大な入り口が、勝手に獲物が入ってくるのを大口を開けて待っている怪物のように見えてしまう。

「思ってたよりずっと大きい入り口・・・まるで魔物の口みたい・・・」

「なぜキミは捕獲について来ようと?」

まだ入り口手前で怖気(おじけ)付いた様な言葉を発するユキにココが問う。

「・・・(じか)にこの世界の事が知りたくて。あ、名乗ってなかったっけ?私はユキ。トリコと小松の食材捕獲に同行させてもらってる。改めてよろしくココ」

「ぁ、ああ・・・。ヨロシク、ユキちゃん」

(この世界を知りたい・・・?地質学者や地生物学者?)

 

トリコの存在に気付いたテレビリポーターがコチラに駆けてくる。

向けられるカメラを強く拒否するココは、メディアが苦手なのか。

「ティナさん、また一人で撮影ですか?」

小松の言葉に、そういえば虹の実の時にビオトープに無断で侵入していたのは彼女だったなと思い出す。

 

辺りには不穏な空気が立ち込めていると小松は身を(すく)ませる。

洞窟周辺に腰を()えている怪しい者達を観察するココとトリコ。

(盗賊に殺し屋もいるな・・・)

美食屋が捕獲したフグ鯨を横取りしようとしている連中だとトリコは言う。

「なんて治安の悪さなの・・・っ」

(おび)えるユキの態度に、ますますココは謎を深める。

(・・・こういった雰囲気や場所には、縁遠(えんどお)いのか。ならどうして同行なんて)

「洞窟から戻れても危険なんですねー」

小松は(ただよ)う不穏さの理由に得心(とくしん)がいったようだ。

(ほぼ全員に死相が見える・・・)

ココの表情が(きび)しくなったのと、ユキだけが見ていた。

(また(けわ)しい顔・・・占い師だっていうし、なにか良くないものでも見えてるのかな)

 

「ひえ~~~~やっぱりこわいーーーっ!!!」

洞窟の入り口に立ち、叫ぶ小松の声が反響する。

(・・・恐怖が増すからやめてほしい)

(この洞窟にいるなにかに、命を取られるというのか)

恐怖をかき立ててくる小松に内心で(いの)るユキと、死相の原因を思案するココ。

「幻の魚、フグ鯨。この私がフグ鯨の美味しいニュースを世界に教えてあげるの。だから私も一緒に行くわ!」

力強く宣言するティナにトリコは「付いてきたいんなら好きにしろ」と了承した。

 

先程の恐怖もどこへやら。

撮影照明にも使える高性能タイプのヘッドランプを付けた小松は、意気揚々(ようよう)と洞窟へ足を踏み入れる。

「ああ、小松くん。ボクから絶対離れないようにね」

「はい。あ、ポキポキキノコだぁー!」

ココへの返事と同時に走り出す小松に、トリコもすぐ後を追った。

「ココさーん、ユキさーん、ここいっぱい生えてますよーっ」

「・・・だから、離れるなって」

悪気がない分(タチ)が悪い。

ココは小さく突っ込んだ。

 

「舌の()(かわ)かないどころか返事した瞬間に・・・真っ青な()に赤い斑点(はんてん)って、あれ(なま)で食べて平気なヤツ?」

ユキはキノコの外観に不安を覚えながらも、ココがなぜ小松にだけ声をかけたのか気になった。

(どうして小松にだけ注意を・・・もしかしてココ、女性嫌い?)

「?今なにか、おかしなこと考えなかった?」

「え、なにそれ第六感?」

ココに考えていたことが伝わったのだろうかとユキはドキリとした。

「その、なんで小松にだけ離れるなって・・・ハッ、まさか―――」

「違うからね?」

「まだなにも言ってない。・・・ココはメディアだけじゃなく女性も苦手とか?」

「?いや、ボクはどちらかというと―――」

キノコにカメラを向けていたティナの叫び声に、話を(さえぎ)られる。

どうやら洞窟の奥から現れた3人組に驚いたようだ。

更に3人組を追って、巨大ヤスデが現れる。

ヤスデから逃走を図る3人組と、奥から生還した3人から話を聞こうとするティナも出口の方に走って行ってしまう。

「一緒に出て行ったけど、撮影は良かったのかな」

「元気だなぁ~」

ユキとトリコは呆気(あっけ)に取られながら、走っていく4人の背を見送った。

 

広々とした入り口に比べ、進む通路が(せば)まって来た。

スタスタと先頭を歩くココは、通常人の目には見えない赤外線から弱い紫外線までが見え、人の電磁波を(とら)えて占いをするのだという。

穴の奥に(ひそ)む昆虫類の群れを、自身の毒で退(しりぞ)けたココ。

(高性能な(カメラ)を持ち、占いも出来て更に毒まで操れるとかチート過ぎないか)

ユキは自身を(たな)に上げてそんな事を考えた。

「それで町に現れた猛獣に、襲われなかったんだ・・・」

クエンドンに襲われなかった理由に、ようやく合点がいったユキ。

「今では、ボクは毒人間。フフ・・・品がない(さい)たる存在だな」

「―――っ!!・・・・・・っ!」

ココの発言に、ユキは目元が一気に熱くなった。

「・・・さぁ、行こうか」

自身を(ひど)卑下(ひげ)する言葉に、ユキはつかつかと早足でココの後を追う。

「ココ、手ぇかして」

「手?」

左手の平をくるりと上向けて差し出したココの手を、ユキは両手で握った。

「っ?!なにを―――」

「手をかりたの。暗いしでっかい虫いるし、怖くて」

「で、でも、ボクには毒が・・」

ユキは握る手に、更にぎゅっと力を込める。

「―――私は、ココの毒に救ってもらったよ。改めて、あの時は(かば)ってくれてありがとう。―――恰好(カッコ)良かったよ」

「―――・・・っ?!!」

真っすぐなユキの目と言葉に、ココはなにも言えなくなってしまった。

 

少し先に進んでしまったココとユキの様子には気付かず、小松は暗闇を心配そうに見つめていた。

「ココさん、なんだか少し(さび)しそうな・・・」

トリコは小松に、血清を作ろうと科学者に追われたり、第一級危険生物として隔離されそうなったココの過去について話す。

「だから・・・カメラを嫌がったのか」

 

「トリコ!100m程真下に向かって巨大な穴が広がっている」

後ろの2人にココが叫んで呼びかける。

「危ないから、少し後ろに下がって。・・・ありがとう」

ココは崖から落ちないようユキを後ろに誘導し、空いていた右手でやんわりと握っていた手を()いた。

 

ココは体に巻き付けていたケービングロープを(ほど)き、先行すると告げる。

細いロープを心配する小松に、トリコは岩に杭を打ち込みながら炭素繊維を配合したワイヤーロープで100人ぶら下がっても切れないと説明する。

登降(とうこう)用のケービングロープって耐久性もだけど軽量性も重視されるんじゃ・・・?」

どう考えても軽そうには聞こえないとユキはトリコに確認する。

「炭素繊維は鉄の約1/4の重さだぞ?ココが用意したのは作業用クレーンの巻上(まきあげ)装置にも使われるやつだが」

おっかなびっくり尋ねるユキに、トリコが平然と答える。

「絶対重いヤツじゃん・・・っ」

 

「目が利くから、ボクが先に降りるよ」

「じゃあボク、ココさんと降ります!いいですよね?」

返事を聞く前に小松はココの背中に飛び乗った。

「わっ、あ・・・ちょっと小松くん。っボクには毒が・・・」

「人間毒があるくらいが好まれますよ、行きましょう!」

(恐怖心はないのか・・・。いや・・・これは小松くんの純粋な優しさ・・・)

少しの(あき)れとこそばゆさを感じているココの後ろで、ユキは(おのの)く。

「~~~小松っ、なんて(オソ)ロシイ子・・・っ」

あわわわわとユキは、小松の距離の詰め方に恐怖で(ふる)えた。

 

長い竪穴(たてあな)を降りていくと、飛んで来た海蛍(ウミホタル)の幻想的な光に見とれる小松とココ。

2人の後を、ロープを伝ってトリコが続く。

ロープを握る手に意味はあるのかという猛スピード。

ほとんど手を()えているだけの自由落下に近い状況に、ユキはトリコの背中で絶叫する。

「ぃぎゃぁーーーっ、もっとゆっくり降りてーーーっ」

 

竪穴(たてあな)の下から他の美食屋の叫び声が聞こえ、近付く獣の気配を察知したらしいココとトリコ。

「なにか・・・来る。トリコぉ!」

「ああ、一気に降りるぞ!」

「ま、まさか・・・トリコ待っ・・・ぃぃやぁーーーっ」

竪穴(たてあな)の残りの高さを、ロープから手を放して地面に着地したトリコ。

「はあ・・・はぁ・・・もう、落下じゃん。ココのが前半だけはそっと降りてってたけど、後半絶叫マシンなのは一緒って・・・」

暗い中での自由落下は恐ろしかったと、肩で息を切らせるユキ。

息つく(ひま)もなく、見た目が不気味なアゲハコウモリが鱗粉(りんぷん)をまき散らしながら襲ってきたかと思うと、対処した頃には小松の姿が忽然(こつぜん)消えていた。

 

小松を探しに行こうにも、今度は捕獲レベル21の爬虫獣類デビル大蛇(おろち)に行く手を(はば)まれる。

「ヤツはボクが引き受ける。トリコはその間に、小松くんを探しに行ってくれ」

「小松は自分の意志でついてきたんだ。ここが危険区域だと理解しているし、万が一の状況も覚悟している」

毎回きちんと遺書を残してきているから心配するなとトリコは付け加えるが、それは無茶な話だ。

「でも・・・っ、小松くんは・・・」

「それよりデビル大蛇(おろち)に今死相は見えているか?」

「―――いいや」

「みろ。お前1人じゃ持て(あま)すってことだ。2人で叩くぜ!」

(ココは洞窟に入った時からずっと小松を気にかけていた。今も、なにか大事なことを言い(よど)んでいた。言い出しにくい結果が、見えてるって事・・・?)

 

ユキは出会ってからずっと、ココの態度が気がかりだった。

クエンドンから(かば)われた時に謝られたのは、ココが毒を有しておりそれを引け目に感じているからだとわかったが、小松への態度はどうだ。

(どうする?私1人で探しに行って、小松を見付けられる?また合流できるの?)

ユキはここまで術を使って視界を保っていた。

(‵幽景展望(ゆうけいてんぼう)′でトリコの視界をクリアにしたいけど本人の許可を得ないと・・・けど一触即発のこの状況、下手に声をかければ命取りになる)

小松はヘッドライトで、トリコもここまで特に問題なく進んできた。

ここに来て暗闇で苦戦を強いられるトリコらに、術を(ほどこ)さなかったことを()いる。

 

視界が限られるトリコが力を溜め、その間ココが動きを封じる作戦に出た2人。

蛇科の生き物が持つ熱感知センサー(ピット器官)を毒で(ふさ)ぐも、髪の毛の毒針から出血毒を逆に打ち込まれたココにユキが叫ぶ。

「っ、ココ!」

「ココ、お前はデビル大蛇(おろち)の抗体を・・・」

「ああ・・・持ってない。だが・・・ないなら作ればいい」

ココの体が淡い光を発しているのを、‵幽景展望(ゆうけいてんぼう)′でユキは目撃した。

「!!この・・・短時間で!?・・・すごい」

打ち込まれている毒針から抗体と毒を逆流させたココ。

毒で完全に動きが封じられ、釘パンチでデビル大蛇(おろち)を仕留めたトリコは、その肉が食いたかったと残念そうな顔をする。

「そんな場合じゃなくない?!」

下手をすれば2人とも命が危なかったとユキは突っ込む。

だが毒の威力を下げている為、300℃以上の加熱で毒は分解されると話すココ。

「お前のためだぞトリコ・・・。最初から致死性の猛毒をくらわせておけば、勝負は簡単についたんだ」

(いやいやいや、何気(なにげ)にヒドくない!?小松のこと心配してたよね?!)

本来なら、即効で(かた)が付けられていたのか。

おそらくココは、『殺したら食う』というトリコの信条を理解しての行動だったのだろうが・・・。

いや、言葉のニュアンス的に本当に、トリコが食べたいだろうから食える状態で仕留めたという事実が、大部分を占めそうな気がしてきたユキ。

だがなにも出来なかった手前、ユキは押し黙る。

 

(なんだか、小松を追っちゃいけない気がしたんだよね・・・)

秘術を扱う者の中には、直感に優れている者が存在する。

強い力を持つ者ほど第六感が働き、その感は予見や予知のように当たるのだ。

(小松を追おうとした時、足が縫い付けらたように動けなくなった)

後を追えば、自身が黄泉(こうせん)の客になりそうな、底冷えするような嫌な感覚に支配された。

(―――小松・・・)

手に震えを覚え、ユキは広い洞窟内へ視線を彷徨(さまよ)わせた。

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