【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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策士の前で一度でも弱いとこ見せたが最後、同じように崩しやすい突破口、間隙を突いてきますよ、あの男は。その後も虎視眈々とチャンスを狙ってくるはず。


54譲歩

間隙(かんげき)を突く・・・(わず)かな隙や油断を見逃さずにそこを攻める。守りの隙間、物事の僅かな抜け目を狙い行動を起こす。急所・予想しないところ、弱いところを選んで鋭く指摘したり攻める。

 

間隙(かんげき)・・・あいだ、隙間。人間関係の隔たりや不和。

 

譲歩(じょうほ)・・・自分の意見や主張を押さえ、相手の意向に従ったり妥協(だきょう)する事。

 

認知的不協和(ふきょうわ)・・・考えと行動に矛盾がある時感じる不快感やストレス。

前に受け入れたが、次は断るのは心に矛盾を生じさせる。人は矛盾を嫌い、一貫性を持たせたいと思う。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

やがてキッスの誘導でトリコ、小松、リン、テリーが合流。

トリコの手には‵忘れ(ぐさ)′が握られており、花を持つ手を振り上げ駆けてくる。

「―――おぉ~~い!ワスレグサあったぞー」

「だからっ、どうして呼ばずに触っちゃうのっ!」

ココに続き忠告をフル無視するトリコに、慌てるユキの声が上ずる。

「なんか急にユキとココの匂いがしてな」

 

合流した3人に、サニーが順に‵忘れな(ぐさ)′を渡していく間、ココはユキと向かい合う。

「ユキちゃん、本当にゴメンね・・・」

なにやらオーバーな感情を乗せて詩的な言い回しをしていた先程までとは違い、ココは冷静さを取り戻し落ち着き払っているように見える。

(・・・記憶の混乱、ようやく(おさ)まったんかな?)

 

ちなみにユキとサニーは、キッスがトリコらを呼びに行っている内に一足先に記憶を呼び起こしていた。

ココのようにおかしな言動に走ることもなく、お互いを見て胸を()で下ろしたのだ。

 

「忘れたのはココの責任じゃないでしょ。迷惑かけてゴメンね」

「ユキちゃんの()でもないよ。どちらかと言えば、あの時不用意()無遠慮(ぶえんりょ)に近付いたサニーのせいだし」

互いに(あやま)り合った後、ココは冗談を(まじ)えてから本題に入る。

「経緯はどうあれ、ボクの振る舞いについて改めてお()びさせて欲しい」

 

ユキから反論が出る前に、ココは作為(さくい)的なまでに殊勝(しゅしょう)な態度を前面に押し出す。

「記憶を失くして色々とやらかしてしまったのは事実だし・・・なにもしないままだと、気に病み続けてしまいそうだからね」

そんな事を言えば、ユキが折れやすいと理解して利用している。

(なんて小癪(こしゃく)な・・・っ)

 

話を持ちかけるココには、余裕が見え隠れしている。

ユキが最初に会った時とは違い、卑屈(ひくつ)さを演技している(ふし)があるのだ。

「っ!―――~~~ココって、そーゆうトコあるよね・・・」

謙虚(けんきょ)(よそお)下手(したて)に申し出ているようでその実、なにがなんでも要望を通そうとしている。

 

洞窟での1度目はユキが罪悪感に折れた。

マンモスの前での2度目は、ユキがスルーした事でココに対し申し訳なさが(つの)るのは認知的不協和(ふきょうわ)か。

それすら計算しているのだとしたら、なんとも(タチ)が悪い。

 

だがユキは、眉尻(まゆじり)を下げ如何(いか)にもしおらしく返答を待っていますと言わんばかりのココに更なる深読みをしてしまう。

(明らかに演じている・・・と見せかけて、実は本気で気に病んでいるのを隠してる可能性も・・・?)

穿(うが)ち過ぎな考えがループし始め、ユキは大きく息を吐きだした。

(まあ、それで気が晴れるって言うなら・・・)

「~~~はあ・・・。わかったよ・・・」

 

子供のようにしょぼんと返事を待ち続けるココに、ユキは渋々(しぶしぶ)譲歩(じょうほ)した。

だが、ユキは夢にも思わなかった。

この時安易(あんい)了承(りょうしょう)した判断を、(のち)に深く後悔する羽目になるのだと。

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