【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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作品投稿後10日目に、小松と水中デートしてる事実に気付いた。・・・なんでなん?


06神秘の砂浜

「急ぐぞ。小松くんを、早く探さないと」

早足で先を急ぎながら、大蛇(オロチ)の巨大な肉塊を背負うトリコをココが急かす。

「そう慌てんなって」

厚さ1m以上、直径数メートルの輪切り肉をロープで固定し運ぶトリコに、ユキはここには居ない小松に憐憫(れんびん)を向けた。

(ちょっと・・・いや大分(だいぶ)、小松が不憫(ふびん)になってきた)

 

トリコが慌てない理由は、列車で小松に秘密兵器の特性クラッカーを渡しているからだ。

使用に際して耳栓を忘れないよう言い含めていたが、住宅街で鳴らせば2分で消防と警察が駆け付ける程の爆音が、果たして耳栓(ごと)きで防げるのだろうかとユキは不安に駆られた。

 

耳に直接、鐘が叩き付けられたような轟音(ごうおん)

雷鳴のようにビリビリと空気を震わせる衝撃が、洞窟内に響いた。

「オレ特性のトリコクラッカー鳴らしやがったな小松!!」

「おいおい火薬の量どんだけだよトリコ」

(小松くんには、死相が見えていた。ボクの占いが当たる確率は97%。だが、3%は外れる。小松くん・・・っ)

ようやく肉を下ろしたトリコと続くココの後を、ユキも引斥制御(ポテンシャル)金烏玉兎(きんうぎょくと)′で駆ける。

「・・・っ、小松・・・」

ココの必死の形相に、ユキは胸中の不安が加速していくのを感じていた。

 

3人が駆け付けた時、小松は地面に胡坐(あぐら)をかいて座っていた。

「小松ダイジョブっ?怪我は?」

ユキはサッと全身を確認するが、特に負傷した様子は見受けられない。

「無事でよかったなぁ!」

「いや!てゆーか1回死にましたよボク!デカいじいさんに助けられたんです」

支離滅裂(しりめつれつ)な事を言う小松に、トリコも困惑気味だ。

そしてココはというと、別の意味で困惑した顔をしていた。

(どういうことだ?小松くんの死相が消えてる・・・)

(・・・ココ?小松が無事で安心したっていうより、不思議そうに驚いてる・・・?)

ココの様子に、ユキは疑問ばかりが過ぎる。

(まぁいい・・・とにかく・・・ボクの占いがハズレてよかった・・・小松くんが無事で・・・)

身を守るどころか、トリコクラッカーという兵器で死ぬ羽目になったとトリコに蹴りを入れる小松を、ココは笑って(なだ)めていた。

 

フグ鯨の産卵場所を目指しながら話を聞いたところ、小松の命の恩人が引退した伝説の美食屋、ノッキングマスター次郎と判明した。

「小松、お前は命を助けてもらった恩を忘れちゃいけねぇ。いつかじいさんを最高の料理でもてなしてやりな」

「・・・・・・・・・」

ユキは思わず、お前が言うのかという視線をトリコに向けた。

小松はおそらく、クラッカーの衝撃で気絶し大蛇に食われかけていたところを救われたのだと、この時ユキは考えていたからだ。

 

「おい見ろ!」

トリコは進む先に光を見つけて駆け出した。

長い迷路のような洞窟の先で、光に満ちた光景が広がる。

辿り着いた洞窟の砂浜は多くの海蛍(ウミホタル)によって明るい光が保たれ、巨大な水晶が輝いていた。

 

身軽になって一足先に海に飛び込んでいくトリコとココ。

ユキは、小松が服を脱いでいる間に、自身に変幻(へんげん)の術を使う。

「‵譎詭夢幻(けっきむげん)′―――半人半魚(はんじんはんぎょ)

トリコとココから距離を取る為、間を置いて水に入れば驚くほどの透明度を誇っていた。

サンゴや海藻、クラゲ、ウミエラにミズグモ、ヒトデに貝類、タコ、ウツボやヒラメらしきもの、数多の魚やエイにリュウグウノツカイ、亀やサメに古代魚のようものまでいる。

(スゴイ・・・どこまでも幻想的で綺麗な光景・・・)

ユキは海中の美しさに、しばし見とれていた。

 

トリコとココが海に潜っておよそ5分が経過した。

遠目から見ていたユキは、2人が海面を目指す様子にそっと後ろから近づく。

「―――2人とも長い潜水だったね」

「はぁ、はぁ・・・いや、だいぶ早い方だ」

「ボクもトリコも・・・はぁ、普段はもっと潜っていられるよ」

「そうなのっ?充分に長かったけど・・・」

2人の驚異的な肺活量にユキは目を丸くした。

「それだけ集中すんのに体力削れてんだな。よっし、もっかい行くぞ!」

「気を付けてねーっ」

「ユキちゃんも。小松くんと砂浜で待っててくれたらいいよ」

小松の溺れているような泳ぎを見ての発言に、ユキは乾いた笑いを(こぼ)した。

 

「わぁっ、なんですかソレ。足が魚みたいになってますよ!?」

浜へ戻るとユキの姿に驚きの声を上げる小松。

変幻(へんげん)の術だよ。コレを使って、小松も一緒に潜ってみない?」

「いいんですかっ!?・・・あ、でもココさんにはユキさんの事情、言ってませんよね」

「あ、そっか。驚かせちゃうよね。捕獲の邪魔をするのもあれだし、近場だけでも見に行こっ。スゴい光景だよ」

小松とユキは浅瀬の生態系を、はしゃぎながら観察する。

『このヒラメ、蚊取り線香みたいな触覚生えてますよ』

『あの脚は・・・ウミグモかな?いや、本体魚だ。どーなってんの?』

 

1時間が経過した頃、フグ鯨10匹の捕獲に成功したトリコとココが戻って来た。

3匹連続で毒袋除去に失敗したココは、疲労から調理を小松に任せる。

小松は7匹目で毒袋の完全な除去に成功し、フグ鯨が黄金色に輝く。

身を薄造りにしている間、準備していたヒレ酒をトリコと小松がじっくりと味わう様子を、ユキとココはただ見ていた。

「2人は飲まないんですか?ヒレ酒」

「ボクはお酒ニガテなんだ。酔うと毒のコントロールがきかなくなるし・・・」

「飲めないからダイジョブ」

 

トリコが薄造りに最初の(はし)を付けるが、なんとも豪快に何枚もの切り身をさらっていった。

「取り過ぎですよっ、せっかくキレイに盛り付けたのに」

「夢のある食べ方と言えば聞こえはいいけど・・・持ってるものが薄造りに見えない・・・。肉塊?」

思わず引いてしまう小松とユキ。

(品がない・・・)

内心でトリコのガサツさにココも呆れていた。

 

刺身のおいしさに涙を浮かべる小松の横で、ユキもフグを前にして感慨(かんがい)深くなる。

「まさか別の世界(トコロ)に来て、フグが食べられるなんてね・・・」

国が変わっただけで食べられなくなるような代物(シロモノ)だ。

それが世界を渡った先で再び味わえる奇跡に、感動していた。

(正確にはフグじゃなくてフグ鯨なんだけど)

「良かったですねぇユキさん!」

「ユキのとこのフグってどんなんなんだ?」

(いた)って普通のフグだよ」

(なんだ?また言い回しに違和感が・・・)

ユキの発言の不自然さに、ココだけが()に落ちない感覚を味わっていた。

 

深海の珍味を4人が堪能(たんのう)し終えた頃。

海からの水音に振り向けば、トリのようなクチバシ状の頭部に全身毛むくじゃらの人型に似たモノが海から上がってきていた。

得体のしれない存在に臨戦態勢を取るトリコとココだったが、ソレは軽く顔を()いたかと思うと取り合わずに暗闇へと姿を消していった。

「・・・・・・っ、新手の・・・ホラーが始まったのかと思った」

ユキはジャンルが謎のホラー映画展開に、心臓が早鐘を打っていた。

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