【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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リンは素直過ぎて、嘘が付けない性格だと思ってます。
嘘を付いたとしても、結局はバレバレなのではないでしょうか。


61失態

黙考(もっこう)・・・黙って静かに考えを巡らせる。黙ってじっと考え込む。口を閉ざし心の中で思案する。

 

カピバラ/鬼天竺鼠(オニテンジクネズミ)・・・げっ歯目カプバラ科。世界最大のげっ歯類。南米先住民(インディオのツピ族など)の言葉でCapiyva(カピーヴァ)『草原の支配者』と呼ばれる。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

キッスがネイチャーウォッチングのオススメ場所を案内してくれるという話は、マンサムと会えず仕舞(じま)いで今回は流れてしまった。

「また機会があった時は、お願いするねキッス」

「ァ”ア”」

キッスに続いて、ユキはリッキーにも挨拶をする。

「リッキーいっぱいありがとーっ。次は散歩を兼(か)ねたネイチャーウォッチングがてら、草原の支配者でも一緒に探そうねっ」

 

ユキの言葉に、そんな異名を持つ猛獣が第1ビオトープにいただろうかとサニーは眉を寄せる。

「・・・?んだよ草原の支配者って」

「黒草の草原(ブラックカーペット)に絶対的捕食者なんていたっけ?」

トリコの問いに、サニーは即座に否定を返す。

「いねーよ。草食獣を狙う猛獣はいくつかいるが」

納得がいかないサニーに、ユキから答えが提示される。

「カピバラだよ」

 

「あぁ、げっ歯類の・・・えっ、あの温厚な?!」

小松が表情を明るくして直(す)ぐ、似つかわしくない異名にまさかと目を剥(む)けば、ココが同じ名前を持つ全く別の種である可能性を上げる。

「いや、コチラのカピバラとは似て非なる獰猛(どうもう)な存在なのかも・・・」

「動物達のアイドル。温泉大好き、最大のネズミ」

ココの推測(すいそく)に対し、ユキは世間一般のイメージを列挙し可能性の芽を断(た)ってくる。

 

「ボクらの知ってるヤツでしたね・・・」

反応に困る小松の後に、トリコが現実を突き付ける。

「ビオトープには普通の動物はいねーぞ?」

「それもそっか、ざんね~ん」

特に残念でもない様子でリッキーの短い毛並みに指を滑らせるユキの後ろで、ココとサニーはそれぞれに黙考(もっこう)していた。

(・・・普通の動物も見せてあげたい)

(ノーマルな動物園か・・・ドコがいいか)

 

*********

 

トリコ、小松、ココはそれぞれ帰路に就(つ)き、サニーはロックドラムの甲殻を回収に向かった。

 

リンの案内で必要だという防寒対策の服の採寸を済ませたユキは、気になったことを尋ねる。

「リンはサニーに行き先、言わなくて良かったの?」

「一度甘い顔すると、またしつこく聞いてくるでしょ。介入癖(ぐせ)を付けさせちゃダメ」

心配は理解出来るが、詮索される事に息苦しさを感じるとリンは言う。

 

「その点ヨハネスは必要以上の―――・・・あれ?」

違和感を覚えたリンは、不自然に言葉を止める。

「・・・?どうしたの?」

 

「到着時刻の関係で、出発は明日だけど・・・ヨハネス、準備に半日って言ってたよね?」

「そう言ってたね、部長さん」

 

出発までの諸々(もろもろ)の準備の為に向かったヨハネスは、一瞬名残惜しそうに水手毬(みずてまり)を見つめる面々をチラ見してから応接室(サロン)を後にしていた。

 

「なんか引っかかるし・・・ユキ、ヨハネスんとこ行こ!!」

言うが早いか、駆け出すリンをユキは慌てて追った。

 

*********

 

リンの胸騒ぎは、結果としてフードロスを未然に防ぐ事に繋がった。

「機体の整備・点検、操縦士の手配、グルメケースや防寒なんかの準備に半日っておかしいと思ったんだよね~。ヨハネスってばトリコの食糧、大量に準備しようとしてたの」

リンが指を折って数えながら、気にかかった理由をユキに教えてくれる。

「・・・事前に気付けて良かったよ」

危なかったと、口元を引きつらせるユキ。

 

「てっきりトリコさんもご一緒されるものと・・・」

トリコへの家賃や生活費替わりとも伝えていたはずだが、ユキとヨハネスの相互確認が不十分だったようだ。

「ですが、トリコさんが不在でお2人だけで危険ではないでしょうか」

「ユキには魔法もあるし。ウチも猛獣避けフレグランスで、リスク回避も可能だし」

 

「!魔法・・・?」

ヨハネスが目を点にすれば、ユキが短く声を上げ、リンも遅れて失態に気付く。

「あっ」

「え?・・・あぁーっ、ごめんユキ!うっかりしてた」

慌てて謝罪するリンに、ヨハネスが確認を入れる。

「もしかして、あの浮いていた水の力でしょうか?」

そういえば応接室(サロン)で水手毬(みずてまり)を発動させていたなと思い出し、ユキとリンは気まずい視線を交わした。

 

「ま、まあヨハネスは食材の情報管理とかもしてるから、口の堅さは保障出来るしっ」

「・・・逆にリンさんは、嘘が付けない性格ですから」

バツの悪さを振り払おうとするリンは、ヨハネスにフォローされて首を竦(すく)ませた。

「部長さん、実はですね・・・」

ユキはヨハネスに、自分は秘術を扱う術師であり、事前にマンサムには少し事情を話している旨を伝えたのだった。

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