タイムマシンなんてあるわけない。
なんて言い始めたのは何年前だろうか。
きっかけはたしか……そう。
──世界が終わった日だ。
「タイムマシンがあるなら、こんな世界変えてくれよ」
黒い雲を見て唾を吐く。
なんで? わからない。
自分でもわからない。
「もし俺がそんな天才だったら、絶対こんな未来、変えてみせるのに」
ああ神様。
どうか聞いてくれ。
あなたへの愛が憎しみに変わる前にどうか。どうか。
「俺に、タイムマシンを与えてくれ。俺なら変えられる。こんな馬鹿げた世界を」
願いは突然叶う。俺は突然タイムマシンを手に入れた。
本当になんでかはわからないけど、人が助けられるならどうでもいい。
過去に飛ぶというのは、なんとも言い難い『快感』があった。何故ならこれから起こることを全て知っているからだ。情報のアドバンテージは驚くほど大きい。
「いっけー! 差せェェェェェェ!」
俺はいつの間にかギャンブル中毒になっていた。
別に金が増やせるからじゃない。
「うっしゃ! またハズレ!」
俺はこれからこの世界でどんな人が有名になって、どんな建物が立って、どんな技術が生まれて行くのか。大体の流れを理解しているからだ。
しかし、ギャンブルは違う。
小さなレース一つ一つを覚えている訳ない。
確かな現実を、曖昧にしてくれる。忘れさせてくれるんだ。
この行動はきっと現実逃避というやつだ。
では俺が今抱えているこの感情を何と呼ぶか。
それはきっと『不快感』だ。
何故俺は不快感を感じる?
わかる。なんとなくたけど。
「何も、変わらないんだ」
地球を滅ぼしてしまう兵器のボタンを押す人間が生まれてこないように過去を変えても、別の誰かがスイッチを何の悪びれも無く押すだろう。
人は消せても、歴史は消せない。変えれない。
何百回もやってみて、どうにもならないことがよくわかった。
諦めるのか? 俺は。
わからない。信じない。信じたくない。
せっかくタイムマシンを手に入れて、世界を変えようと何百回も努力したのに、何も変わらないなんて。
信じない。信じたくない。
だから──。
「タイムマシンなんてあるわけない」
──心が壊れた?
違う。
決意したんだ。
俺は神様からタイムマシンを貰ったんだ。
これは、ちっぽけな『ギャンブル』だ。
黒い雲を見て唾を吐く。
何故か? わかる。
自分でもよくわかる。
「俺は天才じゃなかったけど、それでも未来を変えてみせるから」
ああ神様。
どうか聞いてくれ。
あなたへの愛が憎しみに変わる前にどうか。どうか。
「俺に、もう一度タイムマシンを与えてくれ。俺なら変えられる。こんな馬鹿げた世界を」
願いは再び叶う。俺はまたタイムマシンを手に入れた。
俺のちっぽけな『ギャンブル』。それは──。
「届いてくれよ! 『タイムマシン』!!」
俺は世界を変えられなかった。
技術が、歴史が修正力を持っているから。
──ならば、技術や歴史を狂わせてやろう。
こんな馬鹿げた世界で俺は神に祈りを捧げる。
敬虔なる信徒の祈りは、神に通じただろうか?
黒い雲が、青空になった。
足元には草が、命が芽吹く。
世界は、救われた。
ドサッ。
背後から何かが落下した音が聞こえた。
「いてててててー! あははー! 天才美少女のあたしとした事が、着陸態勢をミスるだなんて、やだー! もう! 恥ずかしい!! お嫁に行けなくなっちゃう!」
「……?」
「あ! キミ! 凄いね!」
「えっ…?」
「あたしの作ったタイムマシンをタイムマシンに乗せて送ってくれるなんて。なんでそんなこと閃いたの?」
「……何度も、何百回も失敗しましたから。──神様」
「神様だなんて、そんな凄い存在じゃないよ。ただの発明家。ただしキミより更に500年後の発明家だけどね! ……安心してよ。きっとこれが正しい歴史だから」
「それは、あなたではなく、本物の神様がそう決めたから?」
「ああ。敬虔なる信徒さん。本物の神様であるキミが、そう決めたんだ。救世主であろうとした、キミが」
「俺が、神様……?」
「未来のキミはね、あたしに言ったんだ。『タイムマシンなんてあるわけない』って。あたしはそれが悔しくて、タイムマシンを作った。キミのその世界を救おうとする想いが、今、果たされた。だから正確には、キミはもう神様じゃない。神様にはなれない。……悲しい?」
「嬉しいさ。嬉しいに決まってるだろ」
俺は久しぶりに泣いた。
嬉しかった。ただ嬉しかった。
「……そういえばこれでタイムマシンの燃料は全部使い切っちゃったんだよね。あたしの乗ってきたやつも最後の燃料だったから。……ね?」
急に抱きつかれた。
「え?」
「これからよろしく!」
「えええええ!?!?!?」
俺はこれからこの少女と世界を巡っていくだろう。
俺は『ギャンブル』に勝った。
莫大な利益を得た。
もうこれ以上はいらない。
深追いはしない。
ここで手を引こう。
だからこの言葉を最後に唱える。
タイムマシンがないなんてあるわけない。と。
読んでくださってありがとうございます!
プロットや結末を考えずに一文ずつアドリブで書いているので、久々にこの小説を見た時に裏設定を忘れないように解説を残しておきます。
無粋ながら、ほんの少しだけ解説を。
主人公は敬虔なる信徒で、やがて神様となりますが、タイムマシンを与えられなかったのて、『タイムマシンなんてあるわけない』と500年後の発明家の少女に言います。
それを聞いた少女がタイムマシンを作ります。
タイムマシンの限界移動年数は500年。
そのため過去を変えるために少女はタイムマシンを3台移動しました。一つは過去を変えるためのタイムマシン。二つ目はそのタイムマシンを乗せるためのタイムマシン。三つ目はそれを観測するためのタイムマシン。
ミスって一つ目にたくさん燃料を入れちゃったけど、まあ向こうでまた再分配すればいいやと思っていたので、主人公のひらめきによって帰れなくなりました。
というのが流れになります!
この設定を把握した上で読むとまた違う感じになると思うので気が向いたら読み返してみてください!
ご高覧いただきありがとうございました!
【読まなくていい部分(おふざけ)】
ちなみに発明家の少女の名はエレクトリカル・エジソン。
金髪ロリ(28)だ。異論は認めない。
主人公も27なので安心して欲しい。
あーあ。東風も未来から合法ロリこねぇかなぁ…。
???「では、君が私のウォーミングアップを手伝ってくれるかな?」
うわ! 緑色のセミが!
???「どうしたのだ? さっきまでの勢いは……笑えよコチータ」
東風のSFの知識が青狸と緑のセミしかないので、常に机の引き出しとカプセルコーポレーションの服を着た謎の青年とセミが脳裏に過ぎってました。
緑色のセミに吸収されているので今回はここまで!
改めて! ご高覧いただきありがとうございました!