今日から私立風芽丘学園一年生。
朝にいつも通り軽い運動がてら庭で小太刀を振っていた。
後はシャワーを浴び、入学式に向かうはずであった。
「やばい・・・これはやばい」
雫の目の前には父が大切にしている盆栽が落ちていた。
(わざとじゃない・・・ここは)
「ノエル~、ちょっと来て!」
「なんでしょう?たった今盆栽を小太刀で真っ二つにした雫お嬢様」
「・・・」
「・・・」
「・・・どうしよう」
「旦那様に事実をお伝えし謝罪なさるのがよろしいかと・・・」
「・・・だよね」
「ここは片づけておきますので。・・・それにそろそろお時間ですよ」
「あ!いっけない。急がなくちゃ」
「・・・外見は旦那様。中身は忍お嬢様。さすがお二人の子ですね」
月村邸
「雫。おはよう」
「げっ!お父さん。・・・おはよう」
月村恭也・・・私のお父さん。
ボディガードのお仕事をしている月村家の大黒柱・・・のはずだ。
ノエルがそうだと譲らないけど・・・。
そして永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術の師範であり、私の師匠でもある。
・・・盆栽いじりが趣味。
「・・・どうかしたか?」
「あの~それが~」
「どうしたんだ一体?」
「ご、ごめんなさい!」
「?」
「さっき庭で鍛錬してたときにお父さんの盆栽を・・・」
「・・・落としたのか?」
「いえ、真っ二つに割っちゃいました」
「まっぷ・・・」
「あの~お父さん。おーい」
「恭也なら当分戻らないわよ。雫。それよりいいの?今日入学式でしょ?」
「あ、いっけない。・・・ごめんなさいお父さん」
月村忍・・・私のお母さん。仕事は・・・家事?してるとこ一切見たことないけど。
機械いじりが好きでノエルのメンテナンスも全部やってるすごい人。
・・・変なものさえつくらなければ。
「恭也も早く再起動しないと・・・娘の入学式に遅刻するわよ」
「そうだった!早く行って場所をとらねば!盆栽は・・・後で考えよう」
「カメラはちゃんと持った?」
「ん?ビデオカメラに一眼レフ・・・なのはに勧めてもらったものはすべてかばんの中にあるはずだが?」
「画質良くするために私が改造したものは?」
「ん?・・・入っていない!」
「・・・私の部屋ね。雫・・・悪いけど部屋に行って取ってきて」
「は~い」
「変な物には触らないようにね~」
「自分の部屋にあるものを変なものって・・・まぁいいや」
忍の部屋(研究所)
「どうみても研究所よね~。この部屋。カメラカメラ~っと。あった!」
カメラを手に取り戻ろうとしたときに足元にヘッドギア・・・のようなものを見つけた。
「これ・・・ヘッドギア・・・じゃないよね。ここにあるってことは何か変な発明品かな?」
雫がかぶってみると真っ白な空間が見えていた。
「えーっと。なにこれ・・・あ!字が浮かび上がってきた。え?プログラムスタート?」
意識が遠ざかるのを感じながらやっぱり変なものだったかと思っていた。
森の中
「ん?ここは・・・どこ?へ?なんで服着てないの!」
「ようこそ」
「ようこそ・・・じゃないわよ。ってあれ?誰も居ない?」
「ここはある人物の記憶から構築した仮想世界です。注意点として3つ申し上げます」
「へ?仮想世界?注意点?」
「1つ目、この世界で受けた傷は現実世界のあなたにフィードバックされます。この世界で死ねば現実でも死ぬことになります」
「え?死ぬって?」
「2つ目、このプログラムが完了・・・つまりこの人物の記憶から構築した世界が終了するまで現実世界に帰ることは出来ません」
「え?帰れない?」
「3つ目、ある人物の記憶から構築した仮想世界ではありますが本人が居合わせていなかった場面に遭遇する場合があります」
「本人が居なかった記憶?何かの事件ってこと?」
「以上が注意点となります。最後にひとつだけ・・・服や武器は想像すれば自動的に構築されます」
「想像って・・・まぁいいや。とりあえず完全武装にしておこう」
「では本プログラムを実行するためのサポートAI、イレインが説明させていただきました」
「ってちょっと。元の世界に帰してってば」
「あ~。私は必要があった際、ヘルプといえば勝手に出てきますのでよろしくお願いします」
「今がヘルプよ!」
「それではがんばって生き抜いてください」
それから何度呼んでも声は返ってこなかった。
「・・・はぁ。仕方ない。とりあえずこのゲームをクリアしないといけないわけね。ん?」
グルルゥ。
「この声は・・・オオカミさんかな?」
一匹のオオカミが草むらから飛び出してきた。
「ちょっと。私は食べてもおいしくないわよっ。ってや!」
雫の振るった小太刀によってオオカミが木にたたきつけられる。
「ぎゃん!」
「ふー。ん?誰かくる!」
咄嗟に茂みに入り身を隠す。
「ふん。こっちに逃げたと思ったんだが・・・おお!いたいた」
(あれ?この人)
「今日の晩飯だ!おとなしく俺に食われろ!」
(あれは・・・小太刀?)
「はぁ!」
(速い!)
「ぐぎゃ!」
腹に受けた一撃でオオカミは悶絶している。
「ふー。悪いなこっちも生きるためだ。・・・それと茂みにいる奴?弱らせてくれたみたいだし分け前は半分でいいか?」
(こっちに気づいてる!?・・・しかたないか)
「ん?なんだお嬢ちゃんだったのか。にしてもこんなところになんで?」
「私は月村雫といいます。・・・あの、その小太刀は?」
「ん?ああ、すまない。俺は不破士郎だ。俺は正式に言うと長いんだが・・・永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術ってのをやってるんだ」
「御神流!?」
「ん?知ってるのか?」
「はい。私も同じですから」
「ほう。しかし君の名は聞いたことないな?師匠はいるかい?もしかしたら知っているかもしれん」
「師匠は月村恭也。えっと旧姓だと高町恭也で私の父です」
「ん~?聞いたことないな」
「・・・そうですか。父から御神流の使い手はほぼ絶えたと聞いていたのですが」
「ん?そりゃ変だろ?これからその集まりがあるんだぜ?君もそれでこんな山奥に来てるのかと思ったが違うのか?」
「うーん。気がついたらここに居たんですよね」
「ふむ。まあ、いいか。それよりも飯だ」
「・・・それ、食べるんですか?」
「ん?結構うまいぞ」
「そうなんですか?」
「取り分は半分だ。日持ちはしないから一緒に食おう」
「はい!」
「っと実は連れが一人いるんだ。俺の息子。そういえばさっき聞いた君のお父さんの名前と同じだな」
「え?」
「おーい!捕まえたぞ!恭也!飯にしよう!」
ガサガサと茂みから男の子が出てくる。
「む、先を越されたか」
「俺の勝ちだから7:3だな」
「さっきは6:4といってなかったか?」
「気のせいだ」
「ったく。で、こちらは?」
「そういうのは自分から名乗るものだ」
「ぐ、俺は不破恭也です。一応父さんの息子です」
「一応ってなんだ」
「私は月村雫です。よろしくね」
(・・・似てる。すっごく似てる。こっちの士郎さんも・・・もしかして記憶って父さんの記憶?)
「ん?」
「どうしたの恭也君?」
「・・・恭也でいいです。・・・これ父さん一人でしとめたんですか?」
「へ?」
「き、恭也!飯にしよう!」
「最初に私が一撃入れたけど?」
「父さん。相手が弱っていた場合は俺がしとめたものだったな」
「ぐっ!」
「とりあえず、火をおこしましょうか?」
「そ、そうだな」
「しかたない」
「恭也」
「8:2だな」
「ちょ、恭也!」
「さて、食えそうなものでも探してくるか」
(うーん。なんかお父さんとお母さんのやりとりみたい・・・)