なんで、私がホワイトベースに!?   作:むにゃ枕

1 / 10
01 え!! 人類の革新してる!! 人類の革新してますよ!! 早く気づいて!!

 宇宙世紀に生まれ落ちて20と数年。私は、一年戦争をジャブローのモグラとして乗り越えるため、懸命に出世コースに乗る努力を続けていた。

 私の生まれは親ガチャを外した根無し草である。そんな私が必死に努力してようやく乗ることの出来た出世コースは、微妙なものであった。

 

 私が所属するのはジョン・コーウェン少将の派閥だ。あのコーウェンである。彼はUC0083に大失態を犯し失脚する。

 とはいえ、4年後のことは考えても仕方がない。UC0079を乗り越えることが先決だ。一年戦争を生き延びるために、私はコーウェンの忠実な部下をやっているのである。

 

 いつものようにテストパイロットとしての業務を終えると、声が掛けられた。声の主はジョン・コーウェン少将だった。

 

「セラー大尉。受け取れ」

「これは…?」

 

 コーウェン少将が嬉しそうに私に紙束を押しやる。

 

「喜べ出世だぞ」

 

 彼はニコニコしながら私に辞令を渡してきた。心の底から嬉しそうである。邪悪なものはそこから感じ取れない。

 

「拝見します……こ、これ、私のポストが……ホワイトベース隊のMS部隊長ですか…!?」

「うむ。レビル将軍に無理を言ってねじ込ませてもらった。この簡単な仕事で君の実績が増えるのだぞ」

 

 げ、という声が出なくてよかった。ホワイトベース隊は思いっきり囮任務だ。少なくとも原作知識のある私はそう思う。連邦軍の新型MS計画であるV作戦。分かりやすい餌だ。本命のジャブローでのGM量産を秘匿するためのスケープ・ゴート。それがホワイトベースなのだ。

 

 コーウェン少将の心底嬉しそうな顔を見るに、彼は良い案件としてこれを持ってきたのだろう。私をスケープ・ゴートにしようと考えているわけではないはずだ。

 

 少将の心証を悪くはしたくないが、こんな見え見えの罠に乗るわけにはいかない。断るしかない。

 

「非常に申し訳有りませんが、お断りします。私はジャブローに愛着が有りますので」

 

 コーウェン少将は、ムッとした表情を隠さなかった。大方、自分の顔に泥を塗られたと思ったのだろう。

 

「では、命令となる。マリー・セラー大尉、君をホワイトベース隊のMS隊長に任ずる」

「…………謹んで拝命しました」

 

 軍組織において命令は絶対だ。だから従わなければならない。従えないなら軍を抜けろと言われるだろう。

 

 ホワイトベースだって…? 冗談じゃない。私は安全な後方で出世したいのだ。だからコーウェン派に入って大尉まで成り上がったのに……

 まだ人が少ないから出世できると考えてMS分野に進んだのが間違いだったのか?? もしくは上司にコーウェン少将を選んだのが間違いだったのか??

 

 考えても答えは出なかった。とりあえず為せば成る。やってみれば良い感じになるだろう。うぅ。死にたくない。

 

 

 

 さて、そんな風に回想をしているが今のホワイトベースはひどい有様だ。ほとんどの士官が死亡。パオロ艦長は虫の息である。

 新兵器のガンダムには民間人のアムロ・レイが乗っている。まさに青息吐息といった様相だった。

 

 ブリッジクルーがほとんど民間人。もう終わりだよこのフネ。

 

「艦長。私は、ジオン軍は条約を守らない軍組織であり、ムサイ級がコロニーへの攻撃を辞さないと警告しましたが」

「ごほっ……すまない……セラー大尉。……私の判断ミスだ」

「あなたを責めても仕方ありません。今後こういうことを起こさないようにしましょう」

 

 そう言ったが、私の腸は煮え繰り返っていた。未来を知っていたのにコロニーに穴が開く事態を招いてしまったのだ。私の部下だったパイロットもほとんどが死亡した。残ったのはジョブ・ジョン伍長やリュウ・ホセイ軍曹だけだ。

 

 パイロットや2機のガンダムを一箇所に詰めさせ、スクランブル発進の準備をさせていたのが悪かった。ムサイの初撃で港湾ごと吹き飛んでしまったのだ。

 

 私がホワイトベースの外に出て、階級を押し通し作業員を夜通しこき使っていたというのに、碌な成果を得られていない。

 ホワイトベースには整備を完了した3機のガンキャノン。2機のガンタンク。そして潤沢な予備部品が載っている。だがそれだけだ。搬送途中のガンダムにはアムロ・レイが乗り込んでいる。まだ、シャアが乗っていないだけマシだ。

 

 おのれシャア! お前が砲撃するから! 私のガンダムが吹き飛んでしまったじゃないか!

 

「セラー大尉。艦の指揮をお願いします」

「んぁ? ブライトくん。私はパイロットだよ。MSの操縦しか出来ない。指揮と言われてもねぇ……」

「しかし、パオロ艦長の容態が優れない今、この艦の指揮が出来るのは大尉しか居ません」

 

 ブライトの目を見て、私はしっかり言った。

 

「ブライト少尉候補生。命令だ。君が艦の指揮を執れ。なに、心配するな。敵は倒す」

「はっ」

「励めよ」

 

 ブライトの肩を叩いて、ブリッジから格納庫へ向かう。コロニーから出ると同時に仕掛けてくることは予想できた。

 

「どちらへ?」

「ちょっと戦争をしにね」

 

 セイラの問いに答える。コイツも厄ネタだ。あー面倒くさい。

 

 格納庫では、私服姿の少年がいた。アムロ・レイだ。ガンダムごとホワイトベースに収容されたのだろう。これから頑張れ少年。

 

「あの、あなた正規の軍人ですよね?」

「そうだけど」

「どうして、こんなことになったんですか!? フラウのお父さんもお母さんも死んだ。みんな殺されたんです」

「端的に言えば、ムサイが条約を破ってコロニーに攻撃を仕掛けたからだ。それを防げなかったのは私が無能だったから。これで十分かな?」

「そんなの…! おかしいでしょう!」

 

 アムロは、拳を握りワナワナと手を震わせている。

 

「君には私を糾弾し殴る権利はある。ほら。やりな。一度くらいなら許すよ」

「女の人に出来るわけないでしょう…!」

「君の憤りは分かるが敵にぶつけようとは思うなよ。冷静さが重要だ」

 

 アムロは少し気を削がれたような顔になっていた。サイド7を出たらおそらく戦闘が起きるだろう。私自身は初陣だ。アムロの方が実戦経験がある。

 冷静になれと、自分にも言い聞かせる。

 

「ガンダムにはシールドとライフルを装備させておくようメカニックに言っておく。少年。君は、英雄になるんだ」

 

 アムロは狐につままれたような表情を浮かべていた。

 

 私は自身の愛機となるガンキャノンに向かった。戦闘に向けた整備やセッティングを行わなければならない。

 

 メカニックと共に整備をしていると、軽い振動があった。多分、ホワイトベースが動き出したのだろう。流石は新造艦だ。かなりスムーズな動き出しである。

 ジャブローからの打ち上げ時よりもぎこちない。まぁ、急編成されたクルーによるものだから仕方がない。

 

「ホワイトベース、サイド7より離脱します。モビルスーツ隊は出撃準備を!」

 

 ホワイトベースが、サイド7のベイから出た。敵も当然それをキャッチしているだろう。

 

「アムロ・レイ。ガンダム、出ます」

「マリー・セラー。ガンキャノン。出る」

 

 アムロのガンダムが先発した。私のキャノンはホワイトベースの直掩だ。ガンダムの方が硬いし、近接装備も持っている。キャノンは中遠距離用の機体だ。前に出るなんてあり得ない。

 

「私はロングレンジビームライフルで援護する。アムロくん。君は敵を引きつけろ。引きつけた敵は私が撃つ」

「は、はい」

 

 ガンダムに装備させようとジャブローから持ってきた試作型のロングレンジビームライフル。これをキャノンに装備させた。

 

 キャノン砲は邪魔だから外した。私は小隊指揮官でありスナイパーだ。前衛は部下がやって、美味しいところを私がもらうのだ。

 

「高熱原体複数確認。ミサイルです。ガンダム、ガンキャノン、迎撃を」

「だそうだ。アムロくん。落とせ。外したら私がやる」

「分かりました」

 

 アムロが、ミサイルを見事に撃ち落とす。流石はニュータイプだ。外したら私が落とすとか言ったが、当たるかは知らん。

 

「ザクが出てくるな」

「敵のモビルスーツ……マリーさん。やれるんでしょうか?」

「作戦どおりに、やれば良い」

 

 通常カラーのザク、そして赤く塗られたザク。合わせて2機のザクがこちらに向かってくる。

 

「アムロくん。前に出てくれ。しばらく耐えて欲しい」

 

 私は、ホワイトベースの格納庫上に着艦し、ロングレンジビームライフルをホワイトベースのケーブルに接続した。

 

 ガンダムが2機のザクに弄ばれている。シールドは切り裂かれ用を為さない。

 シャアザクがトドメを刺そうと、ヒートホークを振りかぶった。無防備だった。

 

「くたばれ! シャア・アズナブル!」

 

 赤いビームの光が、宇宙の闇を拓く。赤いザクはその光に巻き込まれていった。

 

「やったか…?」

 

 霧が晴れると、そこには頭部と振り上げた右腕が溶け切った赤いザクがいた。一目散に逃げている。

 

「逃げ足が早いな! アムロくん。退いて良い」

 

 敵のザクが、負傷したシャアを庇うようにガンダムに相対する。だが、こちらに対しては無防備だ。

 ロングレンジビームライフルで、吹き飛ばす。

 

「うっ、人が入ってくる……気持ちが悪いッ゙!! クソ! ジオン星人のくせに人間ぶるな!!」

 

 敵兵士の記憶が流れ込んできた私は、嘔吐していた。コロニーに毒ガスを流し込んだゴミカスのくせに。地球にコロニーを落とした非人間のくせに。どうして、そんなに人間ぶるんだ。

 私が悪いことをしたみたいになってしまう。

 

「落ち着け。これは、戦争なんだ。殺さなければ殺されていた。そう。私は正しいんだ」

 

 胃酸のツンとした酸っぱい臭いが、私を現実に引き戻す。

 

「マリーさん。大丈夫ですか!?」

「大丈夫……いや、大丈夫ではないな」

 

「私は職業軍人だ。戦争がはじまって人を殺すことは覚悟していた。大事な人たちを、連邦政府の市民を守るために敵を殺すんだ。でも、実際に殺してみて敵にも心があるし、守りたいものがあるって感じてしまったんだ。敵ではなくて人間じゃないか。私は人間を殺したんだ……」

「大尉は、優しいんですね」

「臆病なだけだよ……」

 

 ホワイトベースに戻った私は、ノーマルスーツを脱いで内部を洗浄した。それからシャワーを浴びたんだ。そこまでは、確かだった。

 

 だが、どうして私のベッドにアムロが寝ている!? 何があったんだ!!??

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。