なんで、私がホワイトベースに!?   作:むにゃ枕

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02 ヅダはゴーストファイターではない!!

 冷静になって、昨日のことを振り返る。ホワイトベースに戻ってヘルメットとノーマルスーツを脱いだ。それから内部を洗浄し、シャワーを浴びた。うん。ここまでは良い。

 

 それから、確か、軍服を着てシミュレーターに没入したのだ。戦闘のシミュレーションを繰り返して、人殺しをルーチンワークにする。これは、軍において当たり前に取り入れられていることだ。

 

 何度となく行ったCPU相手のシミュレーションを繰り返す。相手の機体が行う動作はランダムだが、もう動きのパターンは知り尽くしている。

 予想外の動きを効率的に潰す。それを十数回繰り返し、クタクタになったところで、背後に誰かが立っていることに気が付いた。

 

「なんだ。アムロくんか。何か用かな?」

「いえ、ただすごく辛そうだったので。心配で」

「心配してくれてありがとう。しかし、未成年に頼るほど落ちぶれちゃいないさ。シミュレーターで疲労すれば眠れるから」

「でも、心配です」

 

 そこまで私は酷い顔をしているのだろうか? コロニーを落とした畜生であるジオン軍人を殺したのだ。覚悟は出来ていたはずなのだ。

 

「シミュレーターの相手をしてくれないか? CPU相手は飽きてきていてね」

「それなら喜んで」

 

 宇宙世紀において、最強のパイロットの1人と名高いアムロ・レイとのシミュレーター上での戦闘だ。しかし、この時期のアムロ・レイはそこまで強くない。

 一年戦争において経験値となるシャア・アズナブルやランバ・ラル、黒い三連星といった連中とはまだ戦闘をしていないからだ。

 

 条件としては、こちらはロングレンジビームライフル装備のガンキャノンで、向こうはガンダムだ。不利ではあるが、こちとらジャブローのテストパイロットである。

 昨日、モビルスーツに乗ったばっかりの素人に負けるわけがない。

 

【シミュレーター開始します】

 

 このシミュレーターの設定はデブリが適度にある宇宙環境だ。CPU機体も含めた敵が存在する。

 

「敵を素早く発見し、一撃で落とす。ファーストルック・ファーストキルがモビルスーツでの戦闘での理想形なんだ」

 

 痺れを切らしたのだろうアムロのガンダムが、闇雲に飛び回っている。スナイパー相手には愚行でしかない。

 

「はい。命中」

「なっ!? どこから…!?」

 

 You winの文字が出るが、そりゃあ当たり前だ。ガンダムにはマグネットコーティングもされていないし、アムロはまだ素人に毛が生えたようなものだ。

 

「マリーさん。もう一回やりましょう」

「良いけど」

 

 アムロがとった戦法は、私の模倣だった。ガンダムで芋砂は卑怯すぎるだろ……ガンダムは近距離から中遠距離まで対応している機体なのだ。芋砂も出来る。

 

「アムロくん。それは卑怯じゃないかな?」

「あなたの真似ですよ」

 

 スナイパー対決というのは、面白くない。となれば、こちらから仕掛けるべきだ。

 

 ロングレンジビームライフルを拡散モードで乱射する。アムロから即座に狙撃が飛んでくる。

 

「くっ、素人に負けるかよ」

 

 ガンキャノンは鈍足だが装甲は厚い。かすった程度ではやられたことには入らない。

 

「これは、まさか誘爆を狙って!?」

 

 私が設定したこの宙域にはデブリが漂っている。その多くは艦艇のデブリである。通常であれば単なる物体だが、ロングレンジビームライフルの高エネルギーに晒されれば爆発するはずだった。

 

「おいおい、盾はズルいだろ……」

 

 シールドを2枚持ちしていたガンダムがこちらを睥睨していた。シールドはひしゃげ、ビーム・ライフルを喪失しているが機体は無傷だ。

 

「ガンキャノンに近接は出来ませんよね」

「こいつ……」

 

 シールドを捨て、ビーム・サーベルを構えるガンダム。こちらに振りかぶったサーベルの隙間を縫って、ヒートナイフでコクピットを貫いた。

 

「……近接装備は無いはずでは?」

「奥の手は最後まで取っておくべきなんだよ」

 

 勝てたのは最初の2回だけだった。よくて引き分けで、それ以外は惨敗だ。アムロ・レイ、強すぎる。

 

「お姉ーさんさ、モビルスーツの操縦に自信があったんだけど、無くなっちゃった」

「とても勉強になりました。もう、寝ます」

「まあまあ、私の自信をへし折ってくれたのだから、少し付き合ってくれないかな?」

 

 そして、私は強いウイスキーを飲み、アムロにも飲ませた。その結果、私は床で寝ており、アムロにベッドを取られているわけだ。別に変なことはしていない。

 

「もう、こんな時間か……」

「セラー大尉。約束の時間です」

「ホセイ軍曹。今日は、何か予定があったかな?」

 

 リュウ・ホセイ軍曹が、酒臭い私を呆れたように見る。

 

「モビルスーツパイロットの指導です。アムロと同じ素人を鍛えあげるんですよ」

「そりゃあ難儀だなぁ。アムロはもう素人じゃないよ。かなりヤル」

「大尉、未成年ですよ。連れ込むのは控えてください」

「ん?? あぁ」

 

 待て待て待て。もしかして私、アムロを部屋に連れ込んだショタコンになっているのか…? 違う。誤解なんだ。

 

「ホセイ軍曹。私は、何もしていないからな。酒を飲ませただけだ。セックスなどしていない」

「……そうですか」

 

 全然、信じられていない。終わった。私のホワイトベース生活、終わったわ。

 

「カイ・シデンで〜す。アムロの奴がガンダムに乗れたって言うんで、俺にも出来るかなって思ったんで、志願しました」

「ハヤト・コバヤシです。柔道をしてました……」

 

 カイとハヤトが志願した。原作通りの流れだ。

 

「マリー・セラー大尉だ。よろしく」

 

 2人の反応は芳しくなかった。

 

……アムロに手を出したっていう

カイさん!? ダメですよ

 

 普通に聞こえている。え、なに…? 私、君らの間でもアムロの恋人ポジになってるの? もしくは異常性癖ショタコン女となっているのか?

 このままだと、自分の陰毛を御守りとして渡すことになってしまう。

 

「聞こえている。それは事実無根な噂だ」

「げっ」

「カイさん、ほら」

「まあまあ、私は怒ってない。どうしてそんな噂が出回っているんだ?」

「大尉とアムロが朝のブリーフィングに出席しなかったからであります。また、メカニックが親密そうに肩を組む2人を目撃し、大尉がアムロを部屋に連れ込んだところも確認しているからです」

「……そうか。ハヤトくんありがとう」

 

 全部、私の自爆じゃねぇか!! クソわよ!

 

 ともかく気を取り直してモビルスーツパイロット小隊を組織しなければならない。

 

「リュウ・ホセイ軍曹。軍曹のMOSは、戦闘機だけか? コア・ファイターなら任せられるか?」

「はい。コア・ファイターなら可能です」

「なら、軍曹のモビルスーツは保留だ」

 

 MOSとはMilitary Occupational Specialtyのことである。つまり、戦闘機やら戦車やらを動かすための資格だ。リュウ・ホセイ軍曹は、戦闘機乗りであり戦闘機については搭乗する資格を持っている。

 

「ジョブ・ジョン伍長。初等MOSは持っているな。ガンキャノンを任せる」

「はっ。了解しました」

 

 問題は素人2人だ。どうするかと悩んでいたところで、カイが口を開いた。

 

「大尉さんよ。アムロがガンダムってやつに乗るってなら、そのキャノンに俺は乗るぜ」

「なら、決まりだな。カイくん。君はガンキャノンに、ハヤトくんはガンタンクだ。シミュレーター訓練と実機に触れておけ。ホセイ軍曹、ジョブ・ジョン伍長。君たちが教育担当だ」

「了解しました」

「はっ……了解しました」

 

 訓練しないと死ぬから頑張ってくれ。マジで頑張って欲しい。

 

「訓練で出来ないことは本番で出来ない。訓練あるのみだ。サボるようなら営倉にぶち込んでやる。返事は?」

 

 カイとハヤトのぎこちない返事を聞き、ブリッジへ向かう。完全に二日酔いだ。頭が痛い。

 

 

 

 

「ザクを全機失ったぁ!? 赤い彗星、貴様という奴が居てもか!!」

 

 シャア・アズナブルは、ファルメルの艦橋で映像越しに上司であるドズル・ザビから罵倒されていた。

 映像と音声は乱れており、ノイズがところどころに混じっている。

 

 元々、威圧感のある顔であるドズルの表情が、酷く歪んでいる。ノイズ混じりの音声は、非常に耳障りだった。

 

「連邦の新型モビルスーツ。その性能が脅威的だったということです。特に戦艦以上の射程と威力を持ったビーム砲。その射手である赤いモビルスーツ。あれのパイロットは恐ろしい腕でした。超長距離射撃を初撃で当ててきました」

「言い訳は不要だ。貴様が、ザクを全て失ったのは事実だ。敵が強かったというのは言い訳にならん」

 

 ドズルは、シャアに対して厳しい態度を取っていた。ジオン軍きってのエースである赤い彗星が、コテンパンにやられたのだ。その事実はにわかには信じ難いものだったし、期待を裏切られたという感情が強く残っていた。

 

 シャアの頬を一筋の汗が伝う。シャア自身も内心には焦りがあった。何しろ、想定外の狙撃をされたのだ。助かったのは完全に運が良かったからである。

 あと数メートルずれていればシャアはこの世から消滅していた。

 

「戦力の逐次投入は避けねばならん。だが、敵が脅威であることは確かだ」

「はっ。その通りです」

「貴様には補給と腕利きのパイロットを送る。アナベル・ガトーとその部下だ。シン・マツナガ隊も送る。ガトーもマツナガも腕は勿論だが気骨も良い。ザク3個小隊で、確実に木馬を葬れ」

 

 望外な戦力だ。しかし、シャアからすればあまり面白くない事態だった。

 ダイクンの遺児であるシャアは己の才覚により若くして出世してきた。木馬を己の部隊のみで仕留められれば、莫大な功績によりシャアの出世は早まるだろう。

 

「……分かりました」

 

 忸怩たる思いで、シャアはドズルの提案を了承した。

 

「貴様のS型だが、在庫が無かったためツィマッド社のテストモビルスーツを送る。ヅダだ」

「ヅダですか…??」

 

 ヅダ…? ヅダだと…? あれはコンペティションで爆発した欠陥機だ。それを自身に押し付けるつもりなのか。

 

「通常のザクの数倍は速い。シャア、貴様なら乗りこなせる」

 

 シャアは少し、運命の悪戯を呪った。

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