なんで、私がホワイトベースに!?   作:むにゃ枕

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03 チキチキ大気圏突入作戦!

 ホワイトベースは妨害を受けることなくルナツーへ到着した。

 シャアの乗艦であるムサイ級ファルメル。それに輸送を行うパプア級を迎撃するのが本来の流れである。しかし、そうはなっていない。

 私がシャアザクを吹っ飛ばしたからだろう。とはいえシャアは無事だ。何らかの揺り戻しが来るのではないかと心配している。

 

 ルナツーへ到着するや否や、MPがなだれ込んできてホワイトベースクルーは軟禁状態に置かれた。

 しかし、私とパオロ艦長はルナツーの応接室へと通された。

 

「パオロ・カシアス中佐だ……げほっ、ワッケイン少将……御足労いただき感謝する」

「パオロ先生、容体はいかがですか?」

「なに命に別条はない。艦の指揮は無理だがな」

 

 パオロ・カシアスは瀕死の重傷を負い死亡するはずだった。しかし、彼はまだ生きている。

 サイド7で、私がシャアの襲撃を警告したことで彼の負った傷は軽かった。また、シャアザクを大破させたことで精神的疲労が軽減したのだろう。

 バタフライ・エフェクトというやつだ。

 

「彼女が、次席指揮官のマリー・セラー大尉だ」

「マリー・セラー大尉であります。ホワイトベースモビルスーツ隊の指揮官を務めています」

 

 ワッケイン少将は、私のことをジロジロと頭から足元まで見た。

 

「セラー大尉。コーウェン少将の秘蔵っ子として君の噂は聞いている」

「それはどうも」

 

 私がジョン・コーウェン少将の秘蔵っ子……? そんな評価は全く知らない。どんな噂が有るんだ……

 

「パオロ中佐は、ルナツーで療養生活を送っていただく。セラー大尉。君が首席指揮官となる」

「はっ……了解しました」

 

 ここでノーと言えるわけがない。少将相手に、嫌だと言える大尉が居るわけがない。

 

「ワッケイン少将。ホワイトベースに正規クルーを補充することは可能ですか?」

「可能ではあるが、許可できない。我々はルナツー駐留艦隊であり、ジャブローの指揮下にあるホワイトベースの人事権に関与していない」

「当然ですね。管轄を無視した人事は軍紀を乱します。とはいえ、非正規な手段ならば可能ではないですか? 例えばルナツーのサラミス級が故障しホワイトベースが救助に当たるという手段は可能でしょう?」

 

 パオロ中佐が、私を睨む。それから、咳をしながらも口を開いた。

 

「セラー大尉。それは越権行為だ」

「艦長も、V作戦の重要性は御存じでしょう? 無理を通さねばならない場面もあります」

「V作戦の重要性には同意する。だが、貴官の言い分は我儘だ。無理なものは無理なのだぞ」

 

 ワッケイン少将が咳払いをする。

 

「ジャブローへの大気圏突入に際してはサラミス級を1隻付ける。これがルナツーとしての最大限の譲歩だ。異論はあるかね?」

「ええ。ワッケイン少将もパオロ中佐もV作戦について、当然御存じでしょう。しかし、改めて本作戦の目的を説明します」

「セラー大尉!! 貴様! 越権行為だぞ!!」

 

 病人とは思えぬ声量でパオロ艦長が怒鳴る。傷口が疼いたのか、腹部を押さえた。

 

「セラー大尉。貴官が単なる大尉ならば戯言と一蹴していたぞ。コーウェン少将に感謝すると良い」

 

 コーウェン少将は私のことを宣伝しているのだろうか? 正直、原作知識があるとコーウェン派は外れだ。腰掛け程度に思っていたが、認識を改めなければならない。

 

「ありがとうございます。では改めてV作戦の概要について説明します。

 本作戦は、サイド7から次世代量産機ジムの試作機であるガンダムを回収することを目的としています。最重要事項はジオン軍から、新型モビルスーツであるガンダムを守りジャブローへ輸送することです。ここまで、相違ありませんか?」

「ああ」

「大尉、無駄な話は終わりにしたまえ! ルナツーの好意を無碍にする気か!?」

 

 パオロ艦長がすごく喚く。予備役軍人の知識としては、この程度だよな……とはいえ、私にも確たる証拠があるわけではない。ここからはハッタリだ。

 

「ここまでは、表向きの話です。

 ジャブローはこの作戦を、新兵器の輸送作戦ではなく囮作戦と考えています。わざわざホワイトベースという新型艦で新型モビルスーツであるガンダムを迎えに行く、敵に察知してくれと言わんばかりの動きです。

 本作戦の重要事項は、敵の目をガンダムに集中させ、ジムから逸らさせることです」

「待て! 大尉! 私はそんなことを聞いていない! 貴様の妄想だ!」

 

 パオロ艦長は分かりやすく狼狽えている。演技なのか素の反応なのかは分からない。

 

「ガンダムには教育型コンピューターが積まれています。ジャブローで十分に訓練を受けた私というパイロットが、敵と交戦しそのデータをジムにフィードバックします。

 量産機であるジムの性能は格段に向上するでしょう。本作戦には連邦軍の未来、ひいては地球連邦政府市民の未来が掛かっているのです!」

 

 ワッケイン少将から、目立った反応はなかった。

 

 突然、背中に氷を入れられたようだ。冷や汗が止まらない。喋りすぎた。ここはジャブローではない。ワッケイン少将の匙加減でどうにもなる場所なのだ。最悪、処刑すらあり得る。

 

「……くっ、ハハハハ! セラー大尉。コーウェン少将が期待するわけだ。連邦市民の未来と来たか。ならば、連邦軍人として坐しているわけにはいかんな。分かった。ルナツーは、全面的にホワイトベースを支援する」

 

 私は賭けに勝った。これでホワイトベースが、ジャブローに辿り着ければ完全勝利だ。

 

 私は出世しジャブローのモグラとして過ごすだけである。たが、本当にそれで良いのだろうか……? アムロのような子供を戦わせて、自分はのうのうとそれを見ているだけで……

 

「ワッケイン少将……よろしいのですか?」

「パオロ先生。未来とは彼らの手の中にあるのです。寒い時代を嘆くよりも、持ち駒を切るべきでしょう」

 

 サイド7からホワイトベースに乗り込んだ難民は、ほとんどがルナツーで降りた。ルナツーは持てる限りの支援物資をホワイトベースに持たせた。

 

 

 

「マダガスカルのリード中尉だ。ホワイトベースをエスコートする」

「セラー大尉です。エスコートに感謝します」

 

 サラミス級マダガスカルが紡錘陣の先鋭となった。ホワイトベースを中心にコロンブス級宇宙空母フォーミダブル、マゼラン級1隻、マダガスカル以外にもサラミス級が3隻いる。

 6隻からなる大艦隊だ。流石のシャアも6隻相手に攻撃しようとは思わないだろう。

 

「こちらフォーミダブルコントロール。熱源3感知しました。艦影からしてムサイ級です」

「ミノフスキー粒子濃度上昇しています!!」

「敵艦より熱源多数。ミサイルと推定されます!」

 

 襲撃しないと思っていたのがフラグとなったようだ。ムサイ級3隻か……しかもこのプレッシャーはシャアだけではない。

 敵エースだろうか。面倒な奴がいる気配がする。

  

「全艦、対ミサイル防御! AAM及びCIWS展開!」

 

 フォーミダブルの管制官は有能だが、1つ見落としている。無線周波数を合わせ、警告を送る。

 

「フォーミダブルコントロール。こちらセラー大尉だ。敵はミサイルと同時にモビルスーツを射出した。恐るべき練度だ。出撃を急げ」

「は? ほ、本当だ。フォーミダブル隊、全機出撃してください!! スクランブル!!」

 

 無線が慌ただしく鳴り始めた。スクランブル発進がはじまったのだろう。

 

「セラー大尉。なんで、敵が分かったんですか?」

「カンだよ」

 

 アムロは私をすごい目で見た。端的に言ってドン引きしていた。お前も出来るだろうが!!

 

「アムロくん、先に出てくれ。今回の敵は強い。死ぬなよ」

「はい。アムロ・レイ、ガンダム出ます!」

「マリー・セラー、ガンキャノン出る」

 

 リュウ・ホセイのコア・ファイターだったり、ジョブ・ジョンのガンキャノンは出さない。彼らは宇宙に出すには練度が低すぎる。

 

「通常のザクの5倍のスピード。それに赤い機体! 赤い彗星シャア・アズナブルです」

「白いザクを光学にて確認。データ照合します。白狼シン・マツナガ。エースです」

「敵ザク小隊、指揮官機、アナベル・ガトー……最近撃墜数を伸ばしているジオンのエースです!」

 

 無線にざわめきが広がる。敵にはエースが3機いるのだ。

 

 虎の子であるフォーミダブルの鹵獲ザクは2小隊。合計8機である。それにホワイトベースのガンダムとガンキャノンを合わせて10機だ。

 敵ザクは3個小隊。合わせて9機である。微々たる差だが数の利はこちらにある。

 

「来たな。プレッシャー!」

 

 赤い機体が先頭だ。間違いないこの気配は、シャア・アズナブルだ。

 

 味方の鹵獲ザク小隊の中でも、撞木鮫のエンブレムをあしらった機体の動きが異常に良い。隊長機として、部下を上手く使いバズーカでシャアを牽制し続けている。

 

 シャアの機体が異常な加速を見せる。撞木鮫小隊は置いていかれた。

 

「ヅダだと…!? 勝手に爆散するんじゃないか??」

 

 私も眺めているだけにはいかない。スコープを覗き込み、シャアの軌道を予想し狙う。

 

「そこ…!! 外した!?」

 

 シャアの速度が予想より早かった。だから外れた。そして嫌な予感がした。咄嗟にキャノンを機動させる。

 

「あッぶな!! この距離を狙う。対艦ライフルか。ヅダはシャアだけじゃないってことか」

 

 撞木鮫がシャアとやり合っている間、アムロはシン・マツナガとアナベル・ガトー相手に一歩も引いていなかった。鹵獲ザク小隊の援護もありガンダムは既に2機のザクを撃破している。なんかアムロくん強くないか? 宇宙での初陣から、私とシミュレーターしかやってないのに……

 

「デュバル少佐、敵の狙撃型はニュータイプだ! 気を付けろ!」

「ええ。シャア少佐こそリミッターにはお気を付けて!」

「分かっているとも」

 

 混線した無線から聞こえた男の声。違う。私を狙ったのはコイツじゃない。誰だ…?

 

「ッまた!」

 

 的確に狙ってくる。混線した無線から聞こえてくる、戦場には似つかわしくない古臭いポップス。

 

「クソわよ!! あーもうやだぁぁ!!」

 

 3機のヅダがこっちを狙っている。撞木鮫小隊は、アムロの援護に向かっている。

 

 敵機を2機落としたが、こちらは4機が落とされている。ガトーとマツナガ、2人がかりでガンダムを近接戦に持ち込んだらしい。その間に敵のザクが浸透し味方の鹵獲ザクをやったようだ。

 

「フォーミダブルコントロールです!! 地球降下軌道まで残り5分!! 全機離脱してください!!」

「こちら、ホワイトベース!! 被弾しました!! 予定コースを逸れます!! ガンダム、ガンキャノン撤退してください!!」 

 

「時間だな。デュバル少佐、撤退しよう。また会おう。連邦のニュータイプ」

 

 シャアのターゲットが私になってる……!? なんでだよ!?

 

 味方の鹵獲ザクが引くのに合わせて、敵機も引いていく。ホワイトベースは被弾により予定コースに入れなかった。作戦目標であるジャブローへの降下は完全に阻止されたのだ。敵の勝ちだ。

 

「おかえりアムロくん。無事に生きて戻れて良かったよ」

「……悔しいです。もっと僕がガンダムを上手く使えれば、あの人たちは死ななかった」

「職業軍人の本分は市民を守ることなんだ。アムロくん。私は、君も守られるべき市民だと思うんだ。その重荷を君は背負わなくて良い」

 

 少年を兵器に乗せて戦わせるなんてことが、あって良いわけがない。アムロ・レイは少年なのだ。子供だ。この時代は狂っている。

 

「ブライトキャプテン。ホワイトベースはどこに降りるんだ?」

「ミライ、予想地点は?」

「北アメリカ大陸の北部です」

 

 私が何をしようと、因果は収束するのかもしれない。少し宇宙(ソラ)にいただけなのに、重力がとても懐かしかった。

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