なんで、私がホワイトベースに!?   作:むにゃ枕

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04 ガルマ死す

 身体に掛かる重力と、窓越しに照り付ける太陽が地球に戻ってきたことを私に実感させる。ブリッジクルーも地球に降り立ったことで、気分が高揚しているようだ。

 

「ブライトキャプテン。今後の我々のプランはどうするんだ?」

「セラー大尉こそ、この状況をどう考えています?」

「あまり宜しくないな。北米大陸はジオンのジャブロー攻略の足場だ。連邦とジオンの勢力が入り乱れている。現在位置を特定し、味方の勢力圏に逃げ込むべきだろう」

「……私も同感です」

 

 ブライトが細い目をさらに細めてこちらを見る。

 

「セラー大尉、あなたが艦長をしたらどうかしら?」

「セイラくん、私はパイロットだよ。ブリッジクルーじゃない。人には適切な役割がある」

「あら、そう」

 

 オスカーとマーカーが、ホワイトベースの現在位置を特定した。現在位置は旧カナダ領だ。

 コロニー落としによって起きた微弱な地軸のズレにより、気象に異常が生じているが、季節感が狂うまでではない。

 なので、まだ雪は降っていない。私は泥濘地でモビルスーツ戦闘なんてしたくないのだ。

 

「マーカー、付近の味方基地は?」

「200km先にオーガスタ基地があります。しかし、現在位置は、ジオンの勢力範囲内です」

「そうか……」

 

 オーガスタ基地。一年戦争では厄ネタである。しかし、ホワイトベースの推力は被弾により低下している。早急な修理が必要なのだ。選り好みをしていられる状況ではない。

 

「進路は決まったな。発見を避けるため極限まで高度を低下させる」

「ブライトキャプテン。どうやら敵の方が上手だったようだね。敵の判断が早い」

 

 いくら何でも早すぎる。こちらの大気圏突入後に、ジオン軍はスクランブル発進をしていたのか…??

 

「……ッ高熱原体多数! 速度からして戦闘機と大型輸送機です。識別信号は味方のものではありません! ジオン軍です」

「出撃か……アムロくんを起こしてくる」

 

 重力下での戦闘にも、アムロはすぐに適応した。私は、そもそも地上戦の方が得意だ。

 戦闘機相手に空中戦をするわけではなく、こちらがホワイトベースの上から大口径ビームで落とすだけである。

 

 私のロングレンジビームライフルは、ホワイトベースの電源ケーブルと接続しているため銃身交換も含めれば長時間の射撃が可能だ。

 ガンダムは、2丁のバズーカを装備している。予備弾倉も持っているようで弾切れになることはなさそうだ。

 

 相手は、ジオン軍の戦闘機であるドップだ。空力性能を無視した奇抜な見た目だが、そこそこの能力がある。

 見た目に関しては連邦軍のコア・ファイターも相当だ。今回も、リュウ・ホセイ軍曹の出番はない。ドップの群れにコア・ファイター1機突っ込ませてもどうしようもないからだ。

 

「終わったな。ドップ相手に苦戦はしないか」

 

 戦闘機は小さく当てにくい的だが、アムロも私もバンバン落としていく。はっきり言って楽勝だ。

 

「ガウから、モビルスーツが落下…!? いえ、こちらに向かっています!」

 

 ドップは先鋒だったらしい。ガウ攻撃空母から展開してきたモビルスーツがこちらへ飛んできている。

 

「……グフ・フライトタイプ」

「セラー大尉。敵の機体を知っているんですか?」

「ジャブローのテストパイロットだったからね」

 

 私は咄嗟に誤魔化した。ジャブローはそこまで有能じゃない。これは単なる原作知識だ。

 

 グフ・フライトタイプはそこそこ粘ったが、私とアムロの前に物言わぬ鉄塊となった。ドダイYSはいないので、これで敵の戦力は打ち止めだろう。

 

「アムロくん。敵母艦に飛び移る。ガンダムとキャノンの推力なら可能なはずだ」

 

 ガウの指揮官は、戦闘に慣れていないようだ。早く逃げれば良いのに、まだ撤退を決められていない。

 

「混乱しているのか…? まさか指揮官が混乱するわけがないか」

 

 敵の指揮官は、大気圏突入直後の消耗したホワイトベースにドップの編隊とガウ攻撃空母、最新鋭機であろうグフ・フライトタイプをぶつけるほどの決断力を持っているのだ。

 熟練の指揮官だろう。それがパニックになっているはずがない。

 

「宇宙のようには飛べないが、地球の空も良いだろう?」

「いえ、あんまり……」

 

 この、重力の中で藻掻いている感覚こそ、私にとってはモビルスーツを操ることなのだが、アムロはそうは思っていないようだ。

 

「ようやく撃ってきたか。アムロくん、先陣は任せたよ」

「はい。任せてください」

 

 ガウは、私たちの意図を悟ったのか、猛烈な対空砲火を浴びせてきた。砂を投げつけるような猛烈なものだったが、そこは経験が浅いとはいえ撃墜王アムロ・レイだ。難なく取り付いた。ガンダムが砲台を壊していく。

 

「いやー。先に行ってくれて助かったよ。キャノンの重装甲に救われたね」

「一発も当たってないじゃないですか」

「運が良かったんだ。そもそも高速で動く物体に弾を当てるのは難しいからね」

 

 ジャブローでテストパイロットをやっているから、これくらいは出来る。出来なければ死ぬだけだ。

 

「シャア!! 話が違うぞ!! 部隊が全滅した!! 木馬と敵の白い奴を、大気圏で瀕死にまで追い詰めたのではなかったのか!!」

 

 敵のガウに取り付いたことで、無線が混線したのだろう。慌てている敵指揮官の声が聞こえてきた。

 

「我々は、宇宙攻撃軍のエースパイロット3人で、大気圏突入を妨害した。そして木馬と、敵のモビルスーツに損傷を与えた。さらに護衛に付いていた敵の鹵獲モビルスーツを4機撃墜した。これで敵を追い詰めていないと考えられるかな?」

「馬鹿な!! 何が損傷だ!! 敵はピンピンしているぞ! クソッッ!! モビルスーツが飛ぶなんて!! ガウに取りつかれた!!」

「私も2、3日後にはザンジバルに乗り換え地球に降下する。それまで、君が生きていれば再会を祝おうじゃないか。ピンチを切り抜けてこそザビ家の男だろう??」

「謀ったな!! シャアッッ!!」

「ガルマ。君の生まれの不幸を呪うが良い」

 

 なんだろう。ちょっと待ってほしい。おいおいおい!? このガウにガルマ・ザビ乗ってるやんけ!!?

 

「アム…ロ…くん、あっ、もう撃ってる……」

 

 アムロに攻撃を止めさせようとしたが、足元のガウは既にコクピットを撃ち抜かれていた。

 

「どうしました…?」

「あ〜。いや、何でもない」

 

 そっか……そう言えばTV版だと地球降下後の初陣で、ガウにガルマ・ザビ乗ってるんだったわ。殺しちゃったよ。いや、まぁ……う〜ん。

 

「会話を聞く限りこのガウには、ザビ家の一員が乗っていたんだ。これから血眼で敵が向かってくるぞ」

「はぁ」

 

 アムロはイマイチ現状を理解していないようだった。

  

 ホワイトベースに戻り、事情を説明するとブリッジ内はどよめきに包まれた。ブライトは、キャプテンシートからずり落ち、ミライは口を大きく開き固まっていた。

 そして、セイラ・マスは眉間を抑えていた。やったの、お前の兄だよアルテイシア(セイラ)さん。

 

「あの、待ってくださいよ。セラー大尉とアムロが落としたガウにザビ家のお偉いさんが乗ってたってことッスよね?」

「そう。カイくんの言う通りだ」

「別に今までと変わらないんじゃないすか? 大気圏突入で敵のエースに散々やられましたよね」

「確かに、そうだ。変わらないな」

 

 やることは変わらない。向かってきた敵を倒すだけだ。

 

 

 

 シャア・アズナブルは、ドズル・ザビに胸ぐらを掴まれていた。ドズルは、怒りを隠そうとせずシャアを怒鳴り散らした。

 

「シャア!! ガルマが死んだぞ!! 貴様が、貴様がガルマを殺したんだ!!」

「まさか、とんでもない。私はガルマに手柄を立てて貰いたかっただけです。大気圏突入で、我々は敵に大きな打撃を与えました」

 

 同室していたアナベル・ガトーとシン・マツナガが気まずそうに頷く。

 

「ドズル閣下。マツナガ大尉は部下を失いながらもガンダムと渡り合ったのです。確かに我々は敵に打撃を与えました」

「ガトー! なら何故、ガルマは死んだ…!?」

「それは……」

 

 アナベル・ガトーもガルマ・ザビが迂闊だったとは言えなかった。そもそもガトーは、宇宙攻撃軍では新参者である。

 ドズルの幼馴染であるエースパイロット、シン・マツナガ。ルウム戦役で戦艦を5隻沈めた赤い彗星シャア・アズナブル。この2人と比べると格が落ちる。

 

 とは言え、アナベル・ガトーは紛れもないエースパイロットであり、ジオンの精鋭ではあった。

 

「ドズル閣下、ガルマ様の指揮に問題がありました。手柄を逸ったのでしょう。ガウとドップ編隊による無謀な襲撃をした結です」

「シィンッッッ!!」

  

 ドズルは、シン・マツナガを殴り飛ばした。シン・マツナガは実直すぎるところがあった。

 

「ガルマは優しい奴だ。だが、愚鈍ではなかった。シャア、貴様ガルマに何を吹き込んだ!!」

「ありのままを報告しただけです。私は彼に手柄を立てて欲しかった」

 

 いけしゃあしゃあとシャアは宣った。

 

「仮にそうだったとしても、貴様はガルマの無謀な出撃を止めるべきだったのだ!!」

「ドズル閣下……言い過ぎです」

 

 ガトーの忠告に、我に返ったドズルは、シャアに詫びた。

 

「…………すまん、無茶を言ったな。シャア、お前にチャンスを与えよう。ランバ・ラルと共に木馬を沈めろ」

「はっ」

「沈められるまで、宇宙に居場所は無いと思え」

 

 ドズルは、大きな感情に呑み込まれかけていた。けれど、ジオンの将であり、立場が彼の感情を抑え込んでいた。

 

「おいおい。なんでここに負け犬がいるんだぁ??」

「木馬を見逃した赤い無能さんよぉ〜? どんな顔してドズル閣下に会ったんだ〜?」

「貴様ら、やめろ」

「分かったよ。ラル大尉殿」

 

 そこに居たのはマッシュ、オルテガ、ガイアだった。ランバ・ラル隊に加え、黒い三連星がザンジバル級で待っていたのである。

 

「シャア。お前もザンジバルに乗せてやるよ。ヅダだったか? 爆発する不良品は地上でも使えんのか?」

「……使えないな」

 

 地球方面軍は、突撃機動軍の傘下にある。よって補給も突撃機動軍に依存することとなっている。

 宇宙攻撃軍と突撃機動軍は、表向きは良好な関係を築いていた。しかし実際のところは軋轢を抱えている。

 

 突撃機動軍が物資を製造し、宇宙攻撃軍がそれを護衛し地球方面軍まで届ける。単一の軍組織が輸送を行えているわけではない。

 たまに物資が消えることもあり、両組織では、輸送を巡って深刻な対立が生じていた。

 

 このザンジバルも突撃機動軍の所属であり、シャアやランバ・ラルといった宇宙攻撃軍が便乗することとなっている。

 

「木馬は俺たちが沈めてやるよ。ラル大尉殿、その赤いアホを野放しにしない方が良いですよ」

「ふん。赤い彗星の名が泣いてやがる。ざまあないぜ」

 

 ガルマの仇討ち部隊に、結束というものは全くなかった。シャア・アズナブルは、ランバ・ラル隊の一員のような形となった。

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