エルフを滅ぼした世界で、私は人として生きる   作:桜木 檸檬

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第5話 初めての友達、そして—―

人混みの中で王子――まだその身分を知らぬ少年――とアリアは、並んで歩いていた。

 

「お父さんとお母さんを探してるんだね。」

 

「うん。でも……どこ行っちゃったのかな。」

 

 不安そうな声に、少年はにっと笑って胸を張る。

 

「任せろ!このあたりは僕、よく知ってるんだ!」

 

 

 

 探すあいだ、2人は他愛のない話をした。

 

「ねぇ、名前、なんて言うの?」

 

「アリア!」

 

「へぇ、綺麗な名前だね。僕は—―リオン。」

 

「リオンくん!」

 

 呼ばれて、少年――リオンは少し照れくさそうに頬をかいた。

 

 

 

 しばらく歩いた後、リオンが首を傾げる。

 

「アリアは、どこから来たの?」

 

「えっとね、森のはずれの村!お父さんとお母さんと、3人で住んでるの。」

 

「森のはずれか……いいなぁ。僕、森って行ったことないんだ。」

 

「じゃぁ今度一緒に来る?すっごくきれいだよ!」

 

「……うん、行ってみたいな。」

 

 そんな約束のような会話に、ふたりの笑い声が重なった。

 

 

 

 やがて、遠くに見慣れた二人の姿が見えた。

 

「お父さん!お母さん!」

 

 アリアは嬉しそうに駆け出す。

 

 振り向いたガイルとグレイスの顔に、安堵が広がった。

 

 

 

「この子を見つけてくれたのか?」

 

「うん! レオンくんがいっしょに探してくれたの!」

 

 その名を聞いた瞬間、ガイルとグレイスの表情がかすかに強張る。

 

 レオンの服の裾に刺繍された、金糸の紋章。

 

 それは――王家の印だった。

 

 

 

「ありがとうございます。本当に助かりました」

 

 ふたりは深く頭を下げた。

 

 しかしレオンは気にも留めず、「いいよ! 友達だから!」と笑う。

 

 その無邪気な声に、胸の奥に冷たい不安が広がっていく。

 

 ――あの子が、王族と関わるなど……。

 

 それでも、何も言えぬまま、祭りの残り時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 夜、家に帰ったあと。

 

 囲炉裏の前で、ガイルとグレイスは向かい合う。

 

「グレイス……やっぱりあの少年は……」

 

「ええ。間違いないわ。王の子よ」

 

 焔がゆらめき、二人の顔を照らす。

 

「アリアに悪い子じゃなかった。でも、王族と関われば……」

 

「……何が起きるかわからん」

 

 沈黙ののち、ガイルが重く息を吐いた。

 

「明日、あの子に言おう。あの少年には、もう近づくなとな」

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

「アリア、昨日の子のことなんだがな……」

 

 パンをかじっていた少女が、きょとんと顔を上げる。

 

「レオンくん? どうしたの?」

 

「……もう、あの子には近づいちゃいけない」

 

「え?なんで?」

 

「なんでもだ!」

 

 思わず声を荒げた父に、アリアの瞳が揺れる。

 

「……ごめんね」

 

 母がすぐに抱き寄せ、震える声で言う。

 

「ごめんね、アリア。でも、あなたが大事なの」

 

 アリアはわけもわからず、ただ小さく頷いた。

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