リコリス•ギア•リコイル   作:レゾリューション

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今回は友人からメタルギアネタが入った、読んで面白い、リコリス•リコイルの二次創作を書いてくれと頼まれたので書きました。


Coffee First, Duty Later

10年前──

 

 

街の中心にそびえる巨大な電波塔が、爆風に軋みながら揺れていた。

 

人々は逃げ惑い、耳をつんざく轟音に悲鳴をあげる。後の「旧電波塔事件」と呼ばれる惨劇の始まりだった。

 

混乱の只中に、ひとりの少女が立ちはだかっていた。錦木千束。リコリスの象徴にして、ファーストリコリスとまで称される存在。

 

彼女は恐怖に囚われることなく、冷徹な判断と卓越した射撃技術で次々と敵を無力化していく。動きは流麗でありながら迷いがなく、見る者すべてに「最強」という言葉を思い起こさせた。

 

しかし、戦いの終局はあまりに唐突に訪れる。追い詰められたテロリストの最後の抵抗。仕掛けられた爆薬が連鎖し、電波塔を震わせるほどの巨大な爆発を生んだ。

 

轟音と共に火炎が吹き荒れ、千束の身体は烈風に呑み込まれる。

 

白い肌を焼く熱気、耳鳴りを伴う衝撃。彼女は崩れ落ちる瓦礫の中に沈み、DAは「最強のリコリスの終焉」を覚悟した。

 

──だが奇跡は存在した。

 

重傷を負いながらも、彼女は生き延びた。意識を取り戻したとき、彼女の周囲には支えようと奔走する仲間や関係者の姿があった。

 

組織もまた、彼女の復帰を願い、リコリスの象徴を再び前線に立たせるために尽力した。

 

とはいえ、傷の深さは容易に癒えるものではない。かつての切れ味そのままに戦場へ戻るには、まだ時間がかかる。回復と訓練を重ねる日々の中、DAは彼女の力を求め続けていた。

 

そして──千束が姿を見せぬ間に育まれた陰謀と新たな火種が、静かに都市の暗部で動き始める。

 

最強と謳われた少女の復活を待ち望む者たち、あるいはその不在を利用せんとする者たち。さまざまな思惑が交錯する中、やがて再び物語は千束を中心に回り出す。

 

「旧電波塔事件」は、終わりではなかった。

 

それはむしろ、新たな物語(サーガ)の幕開けだったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Direct Attack」通称DA。

テロリストや犯罪者を影で葬ることで、未然に事件を防ぐ治安維持組織。警察や自衛隊とは異なり、独自の権限を持つ秘密のエージェント集団。その存在は公には語られず、しかし確実にこの国を支えていた。

 

彼女の呼び名は──リコリス。

 

孤児として育ち、戸籍を持たず、DAによって暗殺者として教育された少女たち。制服の色でランクが分かれ、上から赤はファースト、紺はセカンド、ベージュはサード。もちろん錦木千束は現在もファーストの服を着ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな千束の朝は思いのほか早い。パジャマ姿のままベッドから飛び起きると、手際よくリコリスの制服へ着替え、窓のカーテンを勢いよく開け放つ。差し込む朝の光に「ふぁ〜」と大きく伸びをしてから、テレビをつけるのが彼女の日課だった。

 

画面では、完成間近の「延空木」が日本の新たな平和の象徴として報じられている。キャスターが笑顔で説明しているのを横目に、千束はコーヒーメーカーへ向かった。

 

「よしよし、今日もいい感じ〜」

 

湯気を立てるカップを両手で抱え、窓の外に広がる街並みを眺める。コーヒーを一口飲む瞬間こそ、彼女にとって至福の時間。これによって彼女の一日が始ま.........らないのがお約束なのである。

 

 

「毎回毎回.....タイミング悪すぎない?」

 

 

コーヒーを唇に近づけたその瞬間、部屋に無粋な電子音が響き渡る。

 

千束は眉をひそめ、わざとらしくため息をつきながら携帯を取った。

 

「は〜い、千束ですよ〜。ただいまご機嫌ナナメで〜す」

 

少し不機嫌さをにじませた声に返ってきたのは、低く落ち着いた男の声だった。

 

『千束、仕事の時間だ』

 

「おはよ、先生。けどまだ予定の時間より早いよ?」

 

コーヒーの香りを恨めしそうに吸い込みながら、千束は電話口で文句をこぼした。

 

『トラブル発生だ。こっちも合わせるしかない』

 

「ちぇっ。わたしの一口目の幸福を奪うなんて、罪深いよ?」

 

『……そういう愚痴は後でいくらでもきく』

 

「じゃあまずはリコリコの高いコーヒー奢ってからにしてよ〜。ブラックでね♪」

 

『……分かった。報酬から天引きする』

 

「えっ!?ちょいちょいちょい!待って!?冗談!冗談だってぇ!」

 

携帯から無情に切断音が響く。千束はカップを置く。

 

「も〜……こっちの心のケア費用は経費に落ちないのかな〜」

 

ぶつぶつ言いながらも制服のジャケットを羽織る彼女の顔には、どこか楽しげな笑みが浮かんでいた。

 

千束はマンションの階段をドタドタと駆け下り、駐輪場に停めてあった原付へ飛び乗った。

 

「しゅっぱーつ!」

 

と気合を入れたものの、心の中では「本当はコーヒー飲んでからが良かったなぁ」と未練がましい。

 

エンジンをかけながらも、まだ頭の中には熱いコーヒーの香りが残っていた。

 

原付は軽快なエンジン音を響かせ、やがて目的地のビルへと滑り込み、バイクを適当に停めると、そこから再び階段を駆け上がった。

 

「現場は何階だっけ?」

 

息を切らしながら問いかけると、通信の向こうでミカの落ち着いた声が返る。

 

『6階だ、急げ』

 

「ひー!こっちの苦労も知らずにー!」

 

階段を一段飛ばしで駆け上がりながら、千束は半分泣き言のような声を上げる。足は悲鳴をあげている。が、愚痴を言いつつも脚は止めなかった。

 

ようやく6階に到着した千束の目に飛び込んできたのは、想像以上に物騒な光景だった。

武装した数人がセカンドリコリスを人質に取り、銃を突きつけている。その奥には──黒髪のリコリスが立っていた。

 

彼女は迷いのない動作でPKM機関銃のボルトを引き、銃口を構える。金属の乾いた音が空気を裂いた。

 

「……へ?」

 

間抜けな声が口から漏れた直後、部屋全体を揺らす轟音が鳴り響く。

 

反響する銃声と共に、銃弾が火花を散らしながら壁や床、ガラスを破壊する。人質を除いた武装集団は、悲鳴をあげる暇もなく撃ち倒されていった。

 

静寂が戻ると、硝煙の匂いが漂い、床一面には薬莢が散乱していた。

 

「ありゃ〜……」

 

千束は頭をかき、目に映る惨状を前にしてまた、間の抜けた声を出す。

 

結局、自分の出番らしい出番がなかったことに、少しだけ不満を浮かべる。

 

ここまで走って来た私の立場は?と心の中で抗議しつつ。

 

『....終了だ。とりあえず千束、お前はその場から引き揚げろ』

 

「了解〜ミk....先生」

 

通信のミカの声は冷静そのものだった。任務完了を確認すると、千束は肩をすくめ、階段を下り始める。

 

「千束〜」

 

外では仲間のミズキが車を横付けして待っていた。助手席のドアを開けると、千束はひらりと座席に滑り込む。

 

ただ、その前に視線は自然と原付へと向いた。

 

無残に割れたガラス片や飛び散った弾痕のせいで、愛車は見るも無惨な状態に成り果てていた。

 

「……また買い直しかぁ〜」

 

苦笑いを浮かべてぼやく千束。頭の中ではすでに「次はスクーターにしよっかな」とか「いや、いっそ自転車?」なんて本気で悩み始めていた。

 

「お財布に直撃なんだよねぇ、こういうの」

 

そんな彼女をよそに、ミズキはハンドルを切る。エンジン音と共に車は滑り出し、現場を後にした。

 

千束は助手席で窓の外を眺めながら、未練がましく小さくつぶやく。

 

「……せめてコーヒー飲んでからにしてほしかったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都内の下町の一角に、ひっそりと佇む小さな和風喫茶店。

 

名前は「喫茶リコリコ」。

 

引き戸を開ければ木の香りが漂い、畳敷きの小上がりや、古時計の音が落ち着いた空気を演出する粋のいい喫茶店……が、その正体はDA(Direct Attack)の支部。テロや凶悪犯罪を影で処理する、いわば「裏稼業の隠れ家」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここまでは立派な設定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ふたを開けてみれば実態はかなりズレている。

 

リコリコにくる依頼といえば「電球が切れたから替えてほしい」「うちの犬が脱走した」「コーヒーの配達」「保育園の支援」といった地域支援のものばかり。

 

何でも屋というより、ほとんど便利屋。いや、下手をすれば「町内会公認の雑用係」と言っても差し支えない。

 

肝心のリコリスとしての任務についても、千束の信条により「ターゲットは殺さず、生きたまま捕縛」が基本方針。

 

捕らえた相手はDAに引き渡すわけでもなく、提携している“クリーナー”に現場修復のついでに押しつける始末。時には、明確に「殺せ」と指示されたターゲットをこっそり匿ってしまうことすらある。

 

そのせいで当然ながらDA本部からは煙たがられ、リコリコ支部は「異端」「問題児の左遷先」として扱われていた。

 

しかもその筆頭(問題児)が、歴史最強リコリスとまで謳われる錦木千束なのだから、皮肉な話である。

 

 

「なんか.....説明でディスられた気がするけど........」

 

 

千束がぼそっと呟くが、もちろん気のせいである。

 

「まぁ、色々言われだけど、私が錦木千束だよ!」

 

 




友人の為に書きましたがやっぱり皆さまの感想やお気に入り登録して頂くとやる気になるのでよろしくお願いします!
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