ダンガンロンパの真宮寺是清がまのさば世界で黒幕の片割れやってる世界の話。
一応、ダンガンロンパサイドの方の直接的なネタバレはなしです。

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まのさばの短編で何か書いてみたいと思っていたところ、ダンガンロンパの新作情報が来てなぜか塩主役のクロス作品になってしまいました。
続きません。


僕と私の魔女裁判

 魔法少女。

 魔女。

 大魔女。

 魔女因子。

 

 真宮寺是清にとって、そのようなことはあまり関係がないことだった。

 ただ、困ることがあるとすれば、

 

「……まあ、魔女になっちゃうと姉さんのところに送れなくなるからこまるんだけどネ」

 

 この一点だけだ。

 何せ魔女は死なない。

 生きている限り、どれだけ姉の友達にふさわしい相手であっても姉の元に送ってあげることができなくなるのだ。

 

 そんな風に思いながら、手元の資料を確認する。

 

「ふむ、これが今回来る姉さんの友人候補たちということかナ」

 

 真宮寺がそう呟きつつ、一枚一枚資料をめくる。

 

「あ、あの……」

 

 そんな中、気弱そうな声が背後からかけられる。

 

「それは、あなたのお姉さんのお友達候補じゃなくて大魔女様の候補たち、です……」

 

「まあ、気にしないでヨ。ちゃんとキミにも協力するからさ、氷上さん」

 

 彼女――氷上メルルに真宮寺はそう言いながら、一枚一枚資料を確認する。

 かつて、超高校級の民俗学者と呼ばれた彼が紆余曲折の末にここで管理者まがいのことを任されている。

 

「これまでだって、色々と協力をしてきたよネ。そんな目で見ないで欲しいヨ」

 

「それは確かにそうですけどお……」

 

 人間関係のトラブル、ストレスの溜め方、これまで超高校級の民俗学者として、そして「姉友探し」で培った知識を用いて魔女候補の少女達の魔女化にも協力してきた。

 

「正直、あなたのお姉さんのお友達にされてしまう人はかわいそうです……」

 

 語尾を弱くし、涙ぐむメルルに対し、真宮寺は告げる。

 

「そんなこといってもネ。それが僕への、報酬のはずだヨ」

 

 彼がここでの管理者を引き受けるに当たって、報酬としているのは一点。魔女候補の少女たちから姉の友達にふさわしいと判断した相手を、一人だけ遠くにいってしまった姉の元に送ってあげることだ。

 

「第一、君がやっていることの方がかわいそうだと僕は思うけどネ」

 

 ぐすぐすと小さく泣くメルルに対し、心の底から残念そうに真宮寺は呟くように言う。

 

 魔女として凍り漬けにされてしまった者も、ナレハテとして洗脳されかつてと自分と同じ境遇の少女達を管理する役割を担わされてしまった看守も。

 何てかわいそうなのか。

 

 ――そして、何ともったいないのか。

 

(あれじゃあ、姉さんのところに送れないヨ)

 

 あの状態の彼女らは、死ぬことができない以上、姉の元に送ることはできない。

 

「まあ、とにかく。今回もよろしく頼むヨ。今回来る姉さんの友達候補の資料は僕もちゃんと目を通しておくからサ」

 

「だから、あなたのお姉さんのお友達の候補じゃなくて大魔女様の候補、です。ちゃんと探さないといけないんですから」

 

 ぐすぐすと気弱な仕草ではあるが、はっきりとした口調でそう告げるとメルルはこの場から去って行った。

 

「……全く、惜しいネ。彼女は本当に惜しいヨ」

 

 治癒の魔法にしてもそうだし、性格もそうだ。

 心優しく、誰であっても手厚く看護するその様はまさに姉の友としてふさわしい。一度は、彼女を姉友として姉のところに送ろうかと考えていたこともある。

 だが、彼女は何よりも大魔女を優先し、彼女の評価点も長所も全てが塵芥のごとく消えてしまう。

 ゆえに、不合格だ。

 

「まあ、迂闊な真似をしないで良かったヨ。念入りに選ばないとネ」

 

 毎度毎度、うまくいっているわけではない。

 ちょっとしたトラブルから初日から殺し合いが発生してしまうような事態になってしまえば、姉友探しの審査どころではなくなるし、仮に合格者がいても全員が亡くなってしまったり魔女化してしまっては意味がない。

 

「まあ、一人や二人が見せしめとして退場するのは、順調にストレスをかけれると考えれば都合がいいんだろうけどネ」

 

 だが、その一人が姉友としてふさわしい存在であるかもしれない可能性を考えれば――やはりもったいないのだ。

 

 魔女裁判も、大魔女探しもどうでもいい。

 姉にふさわしい友を探すことのみが、何よりも大事なのだから。

 

 そう思いつつ、地下の一室で今回来る「姉友候補」の少女たちの資料を真宮寺は確認する。

 しばし目を通してから、一言。

 

「まあ、彼女は資料見る範囲でも不合格だヨ」

 

 興味なさげに一枚の資料を乱雑に後ろに投げ捨てた。

 資料に書かれてある名前は「宝生マーゴ」。

 彼女には早々に不合格の烙印を押していた。ギャンブラーや詐欺師など、姉の友として不適格もいいところだ。

 

「……へェ」

 

 続いて、興味深そうに別の資料にも目を通す。

 

「沢渡ココ。彼女は大晦日にあった無差別殺傷事件の生き残り」

 

 弟がいる、いやいた姉。そこに少し興味を引かれる。

 

「家族を頭のおかしなヒトに殺されてしまったのか、気の毒なことだネ」

 

 意味もなく人間を殺めるなど許されることではない。

 

「全く、何でそんなひどいことができるのか僕には理解できないヨ」

 

 無差別に、意味もなく。

 そんなことは許されていいわけがない。

 

「まあ、そんなひどい事件の被害者であってもそれとこれとは話が別だネ」

 

 いじめられっ子が、元いじめっ子だったりする事があるように。

 いじめっ子が、実は元いじめられっ子だったりする事があるように。

 悲惨な事件の被害者であろうとも美しい性格をしているとは限らない。

 いかに悲劇の事件の犠牲者といえども、今の性格とは切り離して考える必要があることだった。

 

「実際に、見てみたいとわからないよネ」

 

 その結果、合格ならば改めて考えてみればいい。

 

「さて次は……」

 

 相次いで、資料を捲っていく。

 そして目を通し、背景を知る。

 

 いかにして効率的に、魔女化を進めるか。

 仕事として与えられている以上、真面目に取り組む必要があった。

 

「とはいえ、あまりやらせがあるのもよくないネ。こういうのは自然そのものの方が本質がよくわかるヨ」

 

 ある程度の仕込みは必要かもしれないが、必要以上のことをやり過ぎるとそれはそれで興ざめする。

 

「それにしても」

 

 そう言って、屋敷の構造を確認しながら呟く。

 

「本当はシャワールームだけじゃなくて、もっと大きな大浴場でも作って欲しいんだけどネ」

 

 不潔な娘なんて、それだけで大きく減点する必要がある。

 近づくだけで匂ってくる子なんて、よほど聖人のような性格でもない限り不合格だ。

 

「いや、肝心なのは清潔であろうとする心だよネ。それがわかればいいヨ」

 

 もちろん、シャワールームを覗こうなどと、不埒な考えをしているわけではない。

 だが、普段の様子をカメラ越しに見ることができれば身だしなみに気を遣っているかなど、すぐにわかる事だった。

 

「さて、と。こんなところだネ」

 

 おおよその事前準備は終わった。

 後は、牢屋敷をおとずれる囚人たちを待つばかりだ。

 

 ただ唯一、恐れることがあるとすれば、初日でみんなで大暴れして一気に全滅してしまうような事態だけだ。

 そうなれば、もしかすれば合格だったはずの子も、巻き込まれる形で魔女化してしまうかもしれない。

 そうすれば、姉のところに送ることができなくなる。

 

「そんなもったいない事だけは、何が何でもさけたいヨ」

 

 だが、イレギュラーは起こる。

 どれだけ気を遣ってもだ。

 

 しかし、その恐れがあるからといって少し審査しただけの状態で初日から姉の元に送ることはしない。

 じっくりと審査した上で、合格判定を出した後だ。

 そうでなければ、もしかしたら恐ろしい本性を隠しているかもしれない相手を姉の元に送ってしまうかもしれない。

 

 あくまで慎重に、そして正確に。

 姉友は選ばなければならないのだ。

 

「前回の『彼女』は残念だったけど、約束は約束だし仕方がないネ」

 

 今より一つ前、合格判定を出し是非とも姉の友達にと考えてい娘がいたのだが、残念ながら魔女として処刑されてしまった。

 そして今回の看守として選ばれている。

 

「もし、何か奇跡でも起きて、人間に戻れることがあれば――その時は姉さんと友達になってよネ」

 

 その時は、今度こそ友達になってもらおう。

 大事な姉の。

 

「まあ、それはそれとして切り替えて行こう」

 

 改めて今回の魔女候補たちに真宮寺は思いを馳せる。

 

「ああ、楽しみだヨ! 今回は一体、どんな娘が来るんだろうか、どんな輝きを見せてくれるんだろうネ」

 

 神に祈るように。

 真宮寺是清は、資料を前に両手を広げる。

 

 こうして、彼は動き出す。

 ただ、誰にも理解されない倫理観の元、魔女でも理解できない価値観の元。己の絶対的な存在を信じ、姉の友になってくれるかもしれない少女を求めて。

 ただひたすらに、姉友を探し続けるだけだった。






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