隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
この小説を書くにあたり、オビトの登場シーンを原作読み直しててふっと思ったんですが、心臓の呪印札のこと知っていたってことは一度は自殺を試みた事があるってことで、女々しい気付いてアピールといい、ミナト先生に怒っていたことといい、ひょっとして原作オビトって九尾襲撃事件の時に憧れの火影になったミナト先生に、断罪してオビトとして殺してほしかったんかなってちょっと思いました。
そんなこんなで9話です。


09.うちはオビトの才能

 

 

「フウッ、よし、完了」

 そういって、黒髪隻眼の少年、うちはオビトは左腕でぐいと汗を拭い取り、振り返ってから手伝いにきてくれた同期の二人に礼の言葉を言う。

「アスマ、紅、ありがとうな!」

「おう、良いって事よ」

「ま、困った時はお互い様って言うしね」

 そういって三代目火影の息子猿飛アスマはニカッと男臭く笑い、黒髪赤目の美少女……夕日紅は大人びた微笑みで返した。

 オビトが木ノ葉病院を退院して今日で三日目になる。

 唯一の身内である祖母が亡くなったオビトは、元住んでいた家を引き払うことにした。

 というのも、もう帰っても自分を出迎えてくれる者がいないあの家に住んでいても、祖母との暮らしを思い出して虚しくなるだけだし、一人にはあの家は広すぎて寂しかった。

 とはいえ、退院が許されたとはいえ、まだまだオビトは本調子ではなく、柱間細胞で作られた義手義足は無理をすると崩れてしまう。体力も戻ったとは言い切れず、なんとか歩くことは出来ても今のオビトは走ることすら出来ない。

 なので一昨日は実家で持って行くものと捨てるものの選別をして、昨日は一日掃除や片付けに近所への挨拶等をして過ごし、今日漸く引っ越しするという運びになった。

 元住んでいた家は来週には売りに出される予定だ。

 どこに引っ越すかは今まで一人暮らししたことのないオビトにとっては悩むところだったが、毎日のようにオビトの見舞いに来ていたカカシに「オビトさ、住む所探してるんデショ? ……オレの住んでいるアパートにしなよ、空きあるし」と言われたのと、毎日毎日飽きることもなく律儀に自分の病室に通い続けるカカシの精神状態に対して、『こいつ放っておいても大丈夫なのか……?』と一抹の不安を覚えていたオビトは、まあとくにどこに引っ越すかとか決めてなかったしなと、家が近けりゃアイツの様子見に行くのも楽だろと思って、そのままカカシの提案通り彼が住んでいるアパートの、カカシの部屋の一つ下の階に引っ越すことに決めた。

 隣室とかは例え空いてたとしても流石に嫌だし、まだ本調子ではないオビトにとっては二階の部屋より一階の部屋の方が有り難い。

 そうして引っ越し当日を迎えたわけだが、生憎リンもカカシも任務で今日は捕まらず、だからといってまだまだ体が不自由で重い荷物とかを運ぶことが出来ないオビトとしては、一人で引っ越し作業をした所で今日中に終わるかどうか怪しいわけで、どうしたものかと困っていたタイミングで、「今日は非番だしね」と「お前とは同期だろうが、水くせえぞ」と手伝いを買って出てくれたのがこの二人だったというわけだ。

 それでオビトが今日手伝ってくれたお礼をしなきゃなと言えば……。

「ま、快気祝い代わりだな」

 と、気にするなと快活に笑う三代目の息子がそこにいた。

 

「アスマァ……」

 お前本当に超良い奴だな、とジーンと感動で涙を眦に溜めるオビト。

「ホント、オビトって泣き虫よね」

 そんな風にからかうように言いながらも、アスマも紅も少し安心していた。

 この二人は別にオビトとそこまで親しくしていたわけではない。あくまでも同期で元クラスメイトだったってだけだ。ただ、縁がないわけでもないので、同期の誼で一度だけオビトの入院中に見舞いに行ったのだ。

 その時のオビトは今と違って義手義足をつけていたわけではなかったので、初見の感想としては中々に衝撃的だった。

『お、アスマと紅も見舞いにきてくれたのか』

 と、オビト本人はあっけらかんとしていたし、悲壮感の全くない暢気ともいえる態度と表情であったが、右腕は肩関節の付け根の部分から存在していなかったし、右足も質量があったのは太ももの内側の極一部だけで、そこから下が存在していないのはズボンの上からでも一目瞭然だった。

 左目には眼帯が巻かれてそっちの目はカカシにやったというし、右側は右側で顔には痛々しい皺のような渦巻きのような傷が無数に走っているし、首から下は真ん中あたりから左右で皮膚の色も変色していた。おそらく、右は岩に潰された皮膚を一から再生したためにそんな差が生まれたのだろう。

 いくら本人が気にしていないとはいえ、それは以前のうちはオビトの姿を知っているからこそ、見ているだけでも痛々しい姿だったのだ。よくあんな大怪我で生き残ったなと感心すると共に、これだけズタボロになって忍びとして再起不能と見なされかねない傷を負いながら、よくあそこまで前向きになれるなと驚きもしたものだ。

 ドジで泣き虫で遅刻癖が酷くて成績もぱっとしないそんな同期だと思っていたが、実は案外大物だったのかもしれないと見直した瞬間である。

 

 まあ、とにかく引っ越し作業が終わったときには少し遅い昼飯の時間だった。そのまま三人で一楽のラーメンを啜り、アスマと紅は「ま、無理せず頑張れよ」「あまりリンに心配をかけるんじゃないわよ」と声をかけてオビトとは別れた。

「オウ!! 二人とも今日は本当にありがとうな~!」

 そういって、オビトは元気よく手を振り、二人と別れる……が、一人になった途端困った老人に出くわすのがうちはオビトクオリティである。

「おや、オビちゃん久しぶりだのゥ……」

 プルプルとしたよく知っている六十五歳前後くらいの老婆がシワシワの目を細めながら、ヨタヨタとオビトに近寄ってくる。

「タバコ屋のばあちゃん」

「ところで、うちはどこかのう?」

 そういってキョロキョロと周囲を見回す老婆を見ながらオビトは苦笑した。

「まーた、迷子になってんのかよ……ほら、ばあちゃんちはこっちだって」

 そういってオビトは、生身の左手でタバコ屋の女主人の手を引いて、彼女の自宅へと送り届ける。

「オビちゃん」

「ん?」

「ありがとねェ……」

 そんな老婆のお礼の言葉に、オビトは嗚呼自分は漸く日常に戻ってきたんだな、と実感して、ニッととびっきりの笑顔を浮かべながら「どういたしまして!」と返した。

 そうして自宅に戻る途中でも、二、三人ほど困った老人の手助けをしていると、子供の頃からよく見知った中年の男性が声をかけてきた。

「よぉ、オビ坊じゃねーか、久しぶりだな!」

「犬塚のおっちゃん!!」

 黒髪に顎髭をしてでっかい犬を連れた彼は、犬塚家の先代当主の年の離れた弟で、木ノ葉警務部隊に所属している男だ。

 昔からなにかと迷子の老人を届けたり、老人の荷物持ちをしたり、困っている人の落し物探しの手伝いを買って出たりすることが多かったオビトは、警務部隊の見回り隊の職員とは大体小さな頃からの知り合いであるのだが、特に自分を可愛がって親しくしてくれていたのがこの犬塚のおっちゃんだった。

 とはいっても戦争の影響で、こうして顔を合わせるのは随分と久しぶりで会ったのは八ヶ月くらい前が最後だ。

 木ノ葉警務部隊は里の治安維持と地元住人の相談窓口と、犯罪者の取り締まりがその業務であるのだが、戦時中特例で、東と西の派出所を閉鎖し、木ノ葉警務部隊所属隊員は戦争に行く者と警務部隊の職務に従事するもので半数にわけ、半年に一度入れ替わるという方針をとっていたのだが、終戦が決まり、派出所の封鎖も解かれ、隊員も全員前線から本来の業務に戻ってきたのである。

 その為か、戦時中のピリピリした空気は既になく、この犬を連れた中年男性から感じる空気も、ゆるゆると気が抜けたものだ。……あまりに気が抜けすぎて、犬塚のおっちゃんとパートナーのうちはの忍びは呆れた顔を隠そうともしなかったが。

「なんだなんだ、オビ坊、デッケェ傷こさえて男っぷりが上がったじゃねェか? ええ?」

 そんなことを言いながら、犬塚家の先代当主の弟はグリグリとオビトの頭を撫で回す……否、押しつぶす。

「いていて、痛い痛い、だぁあーーー!! やめろよおっちゃんハゲるゥ……!!」

「しっかしおめえさん、まだ下忍じゃなかったか……?」

「中忍だよ!!」

 なんでこんな大怪我してんだ? と言わんばかりに訊ねてくる自分をいつまでも子供扱いしてくる知人に、オビトが憤慨して叫ぶと、「……おめぇさんが中忍、ねぇ?」と信じられないなーと言わんばかりの声で続ける犬塚家の男であったが、ぽんと肩に置いた子供の腕の部分が生身のそれと感触が違うことに気付き、はっと一瞬触れた手を強張らせた。

 うちはオビトの右腕はまるごと義手となっており、そこに人らしい温度はない。

 だが、彼もまた忍びだ。任務中に負った傷は名誉でこそあれ、蔑むものではない。だから、彼はオビトの右腕が作り物でしかないことに気付いたが、敢えて以前と同じ調子で、「オビ坊は、もう仕事復帰するのか?」とまるで一瞬自分が強張ったことなどなかったかのように訊ねる。

「あー、うん……まァ、リハビリ兼ねて暫くはDランク任務しか任せられないって言われてるけど……明日からオレ忍びに復帰するんだ」

 途中の辺りでボソボソと小声になりつつも、素直にそうオビトが答えれば、犬塚家の男は「そっかそっか」と今度は犬の頭を撫でるようにクシャクシャと優しく少年の頭を撫でた。

 それから、にっと笑って男は言う。

「『仕事奪いのオビト』に活動されたら、オレ等見回り隊の仕事がなくなっちまうぜ! ガッハッハ」

「なんだよ、それぇ」

 警務部隊の職務には迷子の捜索や、落し物預かりなども業務に含まれている。しかし、この目の前の少年は困っている人……特に老人を放っておけない性分で、本来は警務部隊職員がやるはずの仕事を知らずに横取りしていた。そのことから警務部隊見回り隊内でつけられたオビトの渾名が『仕事奪いのオビト』である。

「ん……? 『老人会のアイドル』のほうが良かったか?」

「よくねーよ!!」

 また、木ノ葉中のジジババは皆知り合いを豪語するオビトは、老人受けが非常にいい。文字通り木ノ葉隠れの里に住む老人でオビトが知らない相手なんて、それこそ見た目は中年実年齢老年な千手扉間等、外見年齢と実年齢が釣り合っていない相手くらいのものだ。

 相手を老人に限定すれば、うちはオビトほど広い人脈を持つ者もそうそういなかった。

 木ノ葉隠れの里に住むジジババなら皆知っているジジババキラーオビト。

 それは一種の才能と言い換えても良いのかも知れない。

 

 * * *

 

 オビトが忍びに復帰して二週間が過ぎた。

 その間彼に回ってきた仕事とはいえば、中忍がやる仕事とは思えないような子守だの、急に欠員が出た店の店員の代わりだの、オビトが普段からやっている雑用の延長線上のようなもので、しかしまだ柱間細胞を使った義肢が体に馴染んでいない以上無理は出来ないこともわかっていたから、これはリハビリだ、リハビリとオビトは自分に言い聞かせて真面目に任務に取り組んでいた。

 それに、Dランク任務ばかりなのも悪いことばかりでもない。

 オビトは任務と老人の手伝いをしていない残り時間はそのまま自身の修行に充てており、Dランク任務は低賃金で簡単なものばかりな代わりに時間に融通が利きやすい。走るのはまだ無理があるのだが、その代わり木登りや水上歩行など走らなくても出来るチャクラコントロールの訓練と、それと恩師に強請って教えて貰ったある忍術(・・・・)の修行に打ち込んでいた。

 

「ハァハァ……よし、出来たぞ」

 周囲にクナイや手裏剣が散らばっている中、そう、嬉しさににやけそうな顔を必死に押し隠しながら言うと、どこからともなく大好きな上忍師の声が聞こえてくる。

「ん! やってるね」

「ミナト先生!!」

 ぱぁあーと顔を輝かせながら自分の元にやってくる教え子に、にっこりとこれまた爽やかな微笑みで返した金髪碧眼の美青年波風ミナトは、よくやったと言わんばかりに優しく黒髪の少年の頭を撫でる。

「まさかここまで早くものにするなんてね……凄いよオビト」

「へへっ」

 と嬉しそうに笑う少年は、顔の傷に目を瞑ればとても無邪気だ。

 忍びはあまり感情を表に出すべきでないけれど、それでもそれを咎める気にはならないし、実際に波風ミナトは今とても感心をしていた。

「100メートル以内なら今のところ問題なく移動出来るぜ、どうよ! 先生」

 その言葉にミナトは二週間と少し前の事を思い出す。

 

 * * *

 

「飛雷神の術を教えて欲しい……?」

 うちはオビトが自分の師に退院祝いに願ったもの。それは波風ミナトにとっては青天の霹靂といってもいいくらいに、意外なお願いだった。

 飛雷神の術は波風ミナトの十八番だ。

 術の開発者は初代火影の弟にして木ノ葉忍術研究所初代所長の千手扉間。

 一般的には物凄く早い瞬身の術だと思われがちな術だが、実際は口寄せの原理を利用して作られた、マーキング先へと時空間移動する忍術である。

 その取得難易度はSランク。

 これまでこの術を戦闘に使えるレベルで使いこなせたのは開発者である扉間自身と、この若き天才である波風ミナトただ二人だけだ。

 そして波風ミナトの通り名である「木ノ葉の黄色い閃光」という異名もまた、飛雷神の術を多用した超速戦闘から名付けられている。

 だが、飛雷神の術はあまりに使い手が少ないためにその知名度はほぼないに等しい。木ノ葉隠れの里の約六十年の歴史の中で使い手はたった二人だけなのだ。

 そしてミナトは今まで教え子に自分の使う術が、時空間忍術である飛雷神の術であると教えたこともない。

 彼らは自分たちの上忍師が使う術を、とてつもなく早い瞬身の術だと誤解していた筈だ。

「……オビト、どこで飛雷神の術を知ったんだい?」

「扉間先生に聞いた」

 オビトは柱間細胞を使った義肢の被験者になる同意書にサインを書いて以来、週に一度定期検診義務と共に扉間自らに一時間ほど座学で色々な事を教わっていた。

「未来の火影が教養がなくてどうする。兄者はバカ者だったが、それでも勉強は出来たぞ」

 とか言われたら、もう二度と口先だけの人間になりたくないと思っているオビトとしては、歯を食いしばってでも苦手な座学も頑張るしかなかった。

 そしてある日の講座に出てきたのが飛雷神の術だ。

 瞬身の術だと思われがちだが、実際はワシが口寄せの原理を応用して開発した時空間忍術で、貴様の師である波風ミナトが使っているのが、それだとサラリと言われた。

 その時から考えていたのだ、オビトは。

 ミナト先生に飛雷神の術を教えて貰うことは出来ないかと。

「そうか……扉間様が」

 そうしてふむ、と金髪碧眼の優男然とした師は少し顎に手を当ててから、自分がいない間にとんでもない人脈を手に入れていた弟子に向かって、彼にとっては当然の疑問を放つ。

「ねぇ、オビト……君は扉間様に習おうとは思わなかったのかい?」

「? なんで?」

 オビトは酷い傷跡に不似合いな年相応の幼い顔でキョトンと目を瞬かせて、心底不思議そうに首を傾げてミナトを見上げる。

「オレの師匠はミナト先生だろ?」

「……!」

「オレは四代目火影の弟子だから、オレは先生に習いたい」

 先に退院祝いを贈りたいと言い出したのはミナトのほうだ、それに弟子にここまで師匠冥利に尽きることを言われたら応えないわけにはいかないよね、とそう思ってミナトは「……いいよ」とそう返事をした。

 

 だが正直な話を言えば、波風ミナトはうちはオビトが本当に飛雷神の術を使えるようになるなんて期待していなかった。

 何故なら、木ノ葉隠れの歴史上この術を一人で使いこなせたのは、己と開発者である扉間自身だけだったのだ。他に使える者は、教授(プロフェッサー)の異名をもつ三代目火影猿飛ヒルゼンを含めて、2人以上の複数人でしかこの術を運用出来なかった。

 波風ミナトはうちはオビトが忍者アカデミーを卒業して忍びになった日から今日まで、彼のことをよく知っている。うちはの落ちこぼれと言われて、遅刻癖が酷くて、中忍に上がっても未だに戦場で泣いてしまうくらいに感情の抑制が出来ていない。だが、困っている人を見捨てられないし、仲間思いの優しい子だ。

 こんな体になってもめげずに夢に向かって努力している。オビトのそういう所をミナトは買っている。

 だが……それでも、師としてずっと見てきたミナトの目から見たら、オビトに忍びとしての才覚があるようには思えなかったのも確かだ。

 ミナトは当然努力もしてきたが、生来の天才肌だ。

 出来ないものの気持ちなどわからないし、同じ天才型で精神的に不安なところがあるカカシのほうがよほどわかりやすいし、目が離せない。

 飛雷神の術の会得難易度はSランクであり、時空間忍術の適性を持つ人間自体稀だ。

 オビトが会得出来るとは到底思えない。

 だが……一度再起不能になったかと思われたこの子が、それを教えることでこんなに喜んでくれるなら、使えるようになるかは置いといて教えてもいいんじゃないかとミナトは思った。

 それに万が一もある。

 単独でマーキング先に飛ぶ飛雷神の術を覚える事が出来なくても、複数人で使う飛雷陣の術のほうだけでも会得出来たなら、それはうちはオビトの新しい武器になる筈だ。師として弟子に出来るだけ多くの選択肢を与えてあげたかった。

 ……ある意味、波風ミナトはうちはオビトという人間の才覚を舐めていたのだ。

 だから実際に術を教え始めたその日、ミナトは過去一この黒髪の弟子に驚かされることになる。

「……先生、出来た!!」

 ……なんとなくで、出来る術ではないはずだった。

 失敗を前提として教えた時空間忍術の……飛雷神の術の基礎の基礎。

 それを感覚だけでオビトはスルリとクリアした。

 ミナトは想像もしていなかったのだ。

 これはうちはオビトという少年が持つ天性の才能だ。

 まさかオビトに……時空間忍術の才能があるなんて思っても見なかった。  

 

 * * *

 

 そんな二週間前の事を思い出しながら弟子を温かい目で見る師に対し、黒髪隻眼の少年はもじもじと照れくさそうに鼻の頭を赤らめながら、「なぁ、ミナト先生」と声をかける。

「ん? どうしたんだい、オビト」

「ん……!」

 オビトはすっとミナトが使うものとはまた違うマーキングが施された手裏剣を一つ、己の師へと差しだして恥ずかしそうに言う。

「これ……オレのつけた中で一番出来の良いヤツ……クナイだと先生と被っちゃうから……」

「オビト……」

「オレ、先生に何かあれば飛んでいくから。絶対飛んで助けにいくから……!!」

 そう言って照れくさそうに真っ赤な顔をして宣言する弟子に、まあそんな状況まずないだろうけどねと内心苦笑しながらも、その気持ちが嬉しくて、ミナトは優しく微笑みながら「ありがとう、オビト」と返した。

 有り得ないと想定から切り外したその状況が来る未来を、今の二人が知るはずがなかった。 

 

 

 続く

 

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