隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
今回はタイトル回収回。
構想出来上がった時から書きたかったシーンが書けて余は満足じゃ。


12.隻眼の木遁使い

 

 

 

その日、運命の十月十日。

「ふぁあ~」

 うちはオビトはいつも通り困っているその辺の老人を助けたり、迷子の子供を届けたり、千手屋敷で木遁の勉強と管理人夫婦に初代火影様の思い出話を聞いたりなど、非番を満喫していた。

 昨晩に商人へのCランク護衛任務をこなし木ノ葉に帰還したところだった為、今日は休みを言い渡されたのである。相変わらず、柱間細胞を使った義肢や疑似臓器への検査の関係で、一週間以上かかるような任務を言い渡されることはないのだが、それでも前よりは下忍がやるような任務から、中忍に任されてもおかしくない任務に近づいているのではないだろうか。

 少しずつ前進している。

「へへっ」

 最近は任務への遅刻も随分と減った。

 元々遅刻魔なオビトであるが、別に彼はわざと遅刻したくて遅刻しているわけではない。

 急いでる時に限って何故か彼の前に困っているお年寄りがよく現われるだけだ。そして困っているお年寄りを助けるのをモットーにしているオビトは、それを見過ごすことが出来なかった。

 そしてその性質は身長だけは一端の大人並に伸びた今も変わらない。

 じゃあ、どうして遅刻しなくなったかといえば簡単だ。

 四代目火影の代名詞とも言える時空間忍術……飛雷神の術である。

 これを師から習い習得したオビトは、自宅、演習場、そして里の正門といえるあうんの門のすぐ側に、自分のマーキングをつけた手裏剣をそっと隠すように置いているからである。

 飛雷神の術はあらかじめマーキングしておいた対象を座標軸にして、瞬間移動するそういう時空間忍術だ。

 なのでマーキングとチャクラさえあれば、遠方にも一瞬で飛べる。これによって移動時間は大幅に短縮された。

 因みに余談だが「最近オビトが遅刻する話を聞かないな?」と怪しんだカカシに、元ミナト班三人で集まった際に聞かれて、正直に飛雷神の術でショートカットしている旨を告げたら、「任務前から無駄にチャクラ使うとかお前何考えてんのこのバカオビト!」とか罵倒されて思わず「うるせー! 遅刻するよりいいだろーがよ!! 術の訓練にもなるし! ちょっとはマシになったと思ってたけど相変わらずカチカチ頭だなお前は!!」と返し、久し振りにつかみ合いの喧嘩が発生したわけだが、以前はこういう場面に出くわすと「まあまあ二人とも止めなよォう」と止めに入っていたリンは、何故か微笑ましそうにニコニコ見守っていて居心地が悪かった。

 とはいえ、カカシに言われてやめるオビトではない。

 あとカカシの心配は的外れだとも思っている。

 何故なら、オビトは自分の半身を失った神無毘橋破壊任務につく前に比べて、保有チャクラ量が爆発的に増えているからだ。

 成長期で身長が伸び体が大きくなったことで増えた身体エネルギーの分もそうだし、写輪眼開眼で増えた精神エネルギーの分もそうだが……最大は柱間細胞を使った義肢の影響だろう。

 細胞が馴染めば馴染むほど、オビトの体が作り出すチャクラ量も驚くほどに上がっていった。

 そんなオビトからすれば、飛雷神の術で正門まで飛ぶのに使うチャクラなど誤差のようなものだ。

 飛雷神の術自身はSランク忍術であり、単身でこの術を使えるのは開発者である扉間自身と、四代目火影にして師の波風ミナト、そしてオビト自身だけなのだが、それは時空間忍術の適正を持つ者が少ないのも理由と言える。

 複数人で運用出来るものなら、四代目の護衛小隊の面々や先代火影の教授(プロフェッサー)猿飛ヒルゼンなどもいるのだが、単身で使うのは時空間忍術への適性だけでなく、術に対するセンスも問われる。

 マーキング先を座標に登録して、そこまで自身を口寄せするのがこの術のキモであるのだが、それを果たすこと自体がとても難しいのだ。だが、幸運な事にオビトは時空間忍術に対して天性の素養があった。

 うちはの落ちこぼれとして長いこと扱われてきたオビトであったが、時空間忍術に対するセンスと生まれ持った感覚については間違いなく天才のそれである。そのことに、アカデミーの先生達も、師であるミナトも実際に飛雷神の術を彼が習うまで気付くことはなかった。何故なら、時空間忍術の適性を持つ者自体がレアであり、わざわざ確認するものでもなかったからだ。

 オビトにとってはそうでなかったというだけで、飛雷神の術の習得難易度は冗談抜きに本当に高い。

 だが、チャクラ量が潤沢とは言い難い波風ミナトが、この術を多用して木ノ葉の黄色い閃光の名を欲しい儘にしたように、飛雷神の術自体の消費チャクラはそこまで多くない。

 飛ばす対象と距離によって消費量は変わるが、人一人が飛ぶだけなら大したことないのだ。

 故にオビトにとっては、この術を控える理由の方がなかった。

 

 日課も終わったことだし、このあとは夜九時まで修行でもするか。

 そう思い忍者ポーチに忍具をしまい、馴染みの演習所まで向かっている、そのときであった。

 冷えた膨大なチャクラを感じ、オビトの背にゾワッと悪寒が駆け抜けた。

 刹那、轟音と爆風。

「きゃあ!」

「大丈夫か、おばちゃん!」

 道の対面にいた女性が自身を支えきれず転びそうになったところを咄嗟に助け、彼女を庇うようにその発生したチャクラ源と音のほうにばっと右目を向ける。

「な、なんだありゃ……?」

 それは神話に謳われた怪物の姿。

 尾を持つチャクラの塊、九本の尾を最強と謳われた尾獣……九尾が顕現していた。

「グァアアア~~~!!」

 轟音の如きうなり声を上げて、九尾が里で暴れる。

 何故こんなところに九尾が現われのかわけがわからず、瞬間呆然とするオビトであったが、すぐに理由などどうでもいいと考え直す。

「おばちゃん、避難して! 早く!!」

「え、ええ……」

 助けた女性に避難を指示するなり、黒髪隻眼の少年は駆け出す。

(今はあいつがなんで現われたのかなんでどうでもいい……!! 助けにいかねーと!)

 ここは故郷で、今この里は危険に晒されている。理解なんてそれだけで十分だ。

 そして彼は木ノ葉隠れの里に住んでいるジジババとはほぼ全員顔見知りであり、その中には足が悪くて避難が難しい老人達も幾人もいることを知っている。ならば、自分が助けにいかないと。

 そんな気持ちで里を駆ける。

 ゴシャ。

「あ……ああ……あ」

 九尾の攻撃が瓦礫にあたったのだろう、倒壊する建物に押しつぶされそうになっている老夫婦を見とめるなり、バッとオビトはマーキングを施したクナイを飛ばして飛雷神の術で老夫婦の前に割り込み、それから無意識で咄嗟に印を組み、無我夢中で術を繰り出す。

「木遁・樹界降誕……!!」

 瞬時に生み出された木々は器用に老夫婦を避けて根を張り、それはグンっと一瞬で大きくなって降ってきた瓦礫も倒壊する建物も完璧に支えてのけた。

 オビトは騒がしい上に抜けているところが多いためアホだと思われることが多いが、実のところ彼はそこまで頭が悪いわけではない。自分できちんとものを考えることが出来るし、木ノ葉隠れに住む老人達の顔一人一人つぶさに覚えているし、洞察力もそこそこある。要領が悪いだけで、物覚えは決して悪くないし努力も出来る。

 だから、扉間との勉強会で言われた言葉もキチンと覚えている。

 木遁は尾獣に対して特攻があり、特に兄柱間が使った木龍の術はチャクラを吸収する性質があった為、チャクラの塊である尾獣に対し非常に有効であったと。

 ならば……自分は……。

 チラリと脳裏に白髪赤眼の研究者の姿がよぎる。

 千手扉間。

 伝説の木遁忍術を操った初代火影、千手柱間の実の弟であり、オビトにとってはもう一人の師といえる男。

 彼とオビトは約束をしていた。

 木遁は初代火影である柱間しかこれまでは顕現させたことのない力だ。だからもし、オビトやヤマトがその力を持っていると発覚すれば研究のため他国に狙われるだろう。だから、自衛出来るだけの力をつけるまではその力を人前では使わないようにと、そう再三念を押されていた。

 だが……。

(これは仲間を守る為に得た力だ……!! 今使わないで、いつ使うんだよ!)

 ルールや掟を破るヤツはクズ扱いされる。カカシの実父がそうだった。

 だがオビトは、ルールに固執して仲間を大切にしないヤツはそれ以上のクズだと思っている。自分を案じて扉間先生が禁じたことは理解している。それでも、ここで木遁を使って、それで里を、仲間を守れるのならオビトは何度だって同じ選択を選ぶだろう。

「大丈夫か? 金物屋のじいちゃんばあちゃん」

「あ……ああ、オビトやワシらは大丈夫だ……」

「オビトちゃん、これは一体……」

 呆然としながらオビトの生み出した木々とオビトを交互に見る金物屋の老夫婦に手を差し伸べ、彼らを助け起こしながら「ここは危ないから早く行って」そう告げるオビトに、「ワン!」と聞き覚えのある忍犬の鳴き声を聞いてオビトは背後を振り向く。

 そこには相棒であるうちはの忍びと一緒に、慌てた様子の警務部隊の制服をきた犬塚の男がいた。

「おい、オビトお前こんなところでなにしている!?」

 自分を子供の頃から可愛がってくれている犬塚家先代当主の弟だ。

「犬塚のおっちゃん! 丁度良かった!! 金物屋のじいちゃんとばあちゃんを頼む。ばあちゃんは足を挫いてるみたいなんだ」

「いや、そりゃこっちで受けるが……って、おい、オビト!」

 顔見知りの警務部隊員に二人を預けた少年は、次に向かって駆け出す。

 その間も破壊音が聞こえてきて、九尾が現われて僅か十分ほどでもう滅茶苦茶だ。

 

「おい、おい、オビト!!」

 そんな風に駆ける少年を、老夫婦を相棒のうちはの忍びに預けて犬塚家の先代当主の弟が追いかける。

 それに、少年も焦りから来た苛立ち紛れに「何!?」と足を止めずに返して、犬塚の男は「あーもう!」と頭の後ろをガリガリとかきながら、怒鳴るような声でオビトに言った。

「お前ら若い忍びにゃ避難命令が出てんだよ!!」

 その言葉を受けて、瞬時にオビトの脳内が回り出す。

 若い忍びに退避命令を出した理由……もしかして、里は。

「じいちゃんやばあちゃんたちはどうする気だよ!?」

 自力で動けない老人達を切り捨てる気なんじゃないかと、そんな予想が脳裏をよぎった。

「それはオレ達警務部隊がなんとかするのが仕事だ!」

 本当の事を言えばその言葉を信じたい。オビトが行かなくてもじいちゃんやばあちゃん達を助けてくれるって。だがオビトはその言葉から嘘の匂いを嗅ぎ取った。

 ……里は自力で動けない老人達を切り捨てる気だ。

「だから、いいから言う事をきけ! 逃げろオビ坊!!」

「逃げれるかッ!!」

 売り言葉に買い言葉。そんな口調でオビトは思わず怒鳴り返す。

 すると犬塚の男は、これまで見てきた中で一番怒っている顔をしながら、黒髪隻眼の少年に鋭く言葉を放つ。

「お前は、上からの命令を無視する気か!?」

「そうだ!」

 オビトは吠えた。

「例えルールや掟を破ることになろうと……!! オレは仲間を……木ノ葉の皆を守る!! それがオレの忍道だ……!!」

 そしてバッとまたも印を組み、術を練り上げた。

「木遁、木分身の術!!」

 木分身の術。

 それは木遁で生み出された実態のある分身の術だ。

 わけたチャクラの分だけ分身それぞれが自身の意思で術の行使も可能で、それだけ聞くと影分身と違いがないように思えるが、これの最大の特徴は影分身より耐久性が高い上に、リアルタイムで分身と本体で情報を共有することが出来るという点だ。

 それを現在同時に出せて問題なく運用出来る最大数である六体生み出し、オビトは「行け」と四方八方に指示を出し、本体である彼自身も時空間忍術で飛んだ(・・・)

 

「……も、木遁? オビトあいつなんで……」

 一人その場に取り残された犬塚の男だけが、わけがわからないと呆然と呟くも、生憎返事を返してくれる相手はどこにもいなかった。

 

 * * *

 

 タバコ屋の老女主人が木ノ葉隠れの里に両親と共に移り住んだのは、里が出来て五年目……彼女が十歳の時の事だった。

 元々彼女の両親は千手やうずまき御用達の行商人で、自衛のためにいくつか気配を経つ系の忍術を覚えているだけの忍者ではない一般人だった。

 それが、永の仇敵であった千手がうちはと手を組み、里を興したと知ったときは大層驚いていたものだ。

 この争いあってた二族が手を取り、本当に共存出来るのか? 疑っていた期間が五年で、その間も両親は年を取り、そろそろ腰を落ち着かせたかったのと、信じられないが木ノ葉隠れの里と名付けられた場所での千手やうちはその他多くの忍びの共同生活体は上手くいっているらしいということで、千手との縁を頼りにこの里に根を下ろしたのだ。

 だから彼女は木ノ葉隠れ以外の場所の事も知っていたし、この里の成り立ちや平和さが奇跡のようなバランスで成り立っているとそう分かっていた。

 彼女自身は忍びではない。夫は忍びだったけど、いい年して万年下忍で自分がほぼ食わせていたようなものだが、存外悪くない生活だったように思う。もっとも、その夫も第一次忍界大戦の時に亡くなったのだが……。

 そんな彼女には忘れられない思い出がある。

 あれは十八歳の時の武練祭だ。

 その年は里で武練祭という夏のお祭りが始まって十年目の節目のような年で、毎年楽しく観覧に行っていたけれど、まさかまさかの九尾がうちはマダラの口寄せ獣として火影様との戦いに登場したのだ。

 あれは度肝を抜かれた。

 尾獣は恐怖の象徴としてこれまで伝わってきた。

 だが舞台となった谷で、結界越しに初めて目にした九尾は、大きいはずの彼より更に三倍は大きな初代様の木龍や木人と戦わされていて……その必死に抗う姿に、その日彼女が胸に抱いていた甥っ子が思わず叫んだ。

「九尾たん、がんばれー」

 ……と。

 その声を皮切りに「いけーそこだー」「頑張れー」と九尾を応援する子供達の声援が溢れて、その年は九尾たんぬいぐるみや九尾たん饅頭や人形など九尾の狐が火の国中でブームになり、事の発端になった当時三歳の甥っ子もニコニコとご機嫌に須佐能乎纏った九尾人形を抱いていた。

 ……もう40年以上も昔の出来事だ。

 結局、武練祭で九尾が出てきたのは後にも先にもその時一度っきりだったけど、実際にその戦いを見たものは九尾に親しみを覚えていたのは確かだ。

 だが……。

「あ……」

 今、この里で暴れているあの化け物は……果たして本当にあの時の彼と同じイキモノなのだろうか。

 忍び里に、ただの一般人として生活してきた老婆にはわからなかった。

 あの時はあんなに親しみを感じていたのに、あの禍々しく暗く冷たいオーラをもつ怪物と、彼女の記憶の中の九尾の姿が繋がらない。

 どうしてこんなことになったのかも、ただ耄碌していくだけの我が身にはわからない。

 へたりと、腰が落ちる。

 ……立てない、動けない。

 もう、どうすればいいのかもわからない。

 あの時、九尾をいともたやすく押さえ込んだ初代様の木龍はここにはいない。

 わからない。

 どうすればあの化け物が止まるのかも、自分はどこに逃げればいいのかも、なにもかも。

 

(助けて……助けて、初代様……柱間様……!)

 

 ただ何も見たくないとぎゅっと眼を瞑り、忍びの神とかつて呼ばれた方に向かって祈る。

 彼女は気付いてしまったのだ。

 ずっと、ずっと、火影様に、里に守られていた。

 だから人々は忘れていたのだ……尾獣という名の化け物にたいする、絶望を。

 破壊と死の化身に対する……恐怖を。

 

 尾の一振りで瓦礫が散らばる、動けない自分はもう、逃げられない。

 潰されて、死ぬ。

 確信した次の瞬間、突如としてどこからともなく大樹が根元から一気に伸びて根を張り、しっかりと瓦礫を受けとめ守った。そこには一人の男が立っていた。

 左側の耳の横で幅広にとった額宛の布を結び、木ノ葉の中忍ジャケットを羽織ったひょろひょろと背丈ばかり高い黒髪隻眼の赤い目をした少年。

 よく迷子になった自分を家まで送り届けてくれた、心優しい男の子うちはオビト。

 いつの間にかこんなに大きくなっていた。

 広い背中だと、初めて思った。

 

「ばあちゃん! 大丈夫か?」

 心配そうに駆け寄り自分の手を取り体を起こす、その姿が、手の温度がいつか子供の頃転んだ自分に手を差し伸べてくれた千手柱間(ほかげさま)を思わせて、「ああ……初代様……ッ」と老婆は泣き崩れた。

 

 里を興した初代火影千手柱間が操ったと言われる伝説の木遁忍術と、その後を継いだ二代目火影うちはイズナと同じ写輪眼の赤い目を持つ隻眼の少年。 

 千手とうちはどちらの能力も併せ持つ架け橋となる希望の子。

 後にうちはオビトの代名詞となるその二つ名は、この日産声を上げた。

 人々は畏れと敬意を込めて、彼をこう呼んだ。

 

 ―――隻眼(赤眼)の木遁使い……と。

 

 続く

 




次回第13話「鬼面のうちは」!
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