隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
オビトの保有チャクラ量ですが、原作でマダラの輪廻眼を片目移植だけで飲み込まれそうになったと供述しながらそれでもなんだかんだ制御して六道仙人化まで成功していることとか、原作でチャクラ切れになってたっぽい描写がカグヤの時空間に繋げようとした時くらいしか見当たらなかった事とか考えて、長門の三分の一くらいの量なのかなあと思って書いてます。
柱間細胞移植済みのオビトのチャクラ量って、純粋うずまきには負けてそうだけどハーフうずまきくらいは普通にありそうダネ。


18.復興

 

 

 

 九尾事件の際、若い忍びにはその場にいなかった四代目火影の代理として、三代目火影権限で退避命令が出されていた。それは九尾という天災にも等しい存在を前に万が一から次代を守る為の命令だ。

 しかし、その命令対象の一人である少年うちはオビトは、ルールを破っても仲間を助けるのがオレの忍道だと豪語し、当時千手扉間に人前で使うことを止められていた木遁忍術を使ってまで里の皆を助けるために駆けた。その御陰で助かった人も幾人もいたのは確かだ。当代の火影夫婦もそうだ。

 それでも命令違反は命令違反である。

 ルール違反には罰が必要だ。

 だが、彼の功績が大きかったのも事実だ。

 その為か、四代目火影である波風ミナトがオビトへと下した罰は「木遁を使った里への無償での復興作業労働への参加を命じる」とのことであり、一週間の無償労働……つまりは復興のボランティア活動が罰だったわけだが、しかし普段からお年寄りのお手伝いが生き甲斐のようなオビトにとっては、それは寧ろ望むところで、見せかけの罰に過ぎなかった。

 その事に師への敬意を益々深めたオビトが嬉々として復興労働に従事して、今日で丁度約束の一週間だ。

 

「ふぅ、おばちゃん、出来たぜ」

 木遁・連柱家の術で仮設住宅を6っつほど作り上げ、オビトは汗を拭いながらこの地区の担当の中年からやや老年にさしかかったくノ一に告げると、「ありがとうねえオビトくん」とニコニコ笑いながら水と手ぬぐいを差しだしてくれた。

 それでぐいと額の汗を拭いながら、水を飲んで一息をつき、自分の作った家……というか倉庫? 掘っ立て小屋? を見ながら、オビトはしみじみ思う。

(やっぱオレ、建築系の木遁忍術は向いてねーな……)

 木遁忍術で出したその家々は、確かに屋根はあり、床はあり、窓はあり、壁があるので一応家の形をしているのだが、まあそれだけだ。一応小屋の形をしているだけでクオリティは大層低い。だが、まあ急ごしらえの長屋くらいにはつかえるだろうという、そんなレベルだ。

(こういうの得意なのはヤマトなんだが……あいつは公然での木遁の使用許可下りてねーだろうし、しょうがねェよな……)

 そうして脳内で比べてしまうのは、春からずっと扉間の下で共に木遁の修行をしていた新米下忍の姿だ。

 昔事故にあって柱間細胞を移植しそれに適応したという三つ四つ年下の少年ヤマト。

 同じ後天的な木遁使いといっても、彼はオビトが攻撃系の木遁忍術への高い適性を示したのとは裏腹に、こういう建築系や捕縛系の木遁へと高い適性を示していた。

 同じ家を作る四柱家の術を使っても、オビトだとどうしてもただのだだっ広い掘っ立て小屋か山小屋のようなものにしかならないのだが……ヤマトが使うと屋根から門まで完璧に立派な一軒家が出来上がるのだ。

 多分あれはヤマト本人の才能なんだろう。まあ彼は建築関係の本を読むのが趣味らしいし、そのあたりの知識が反映された結果ああまで高クオリティの家を作る事が出来るのかもしれない。どちらにせよ、同じ木遁使いとはいえオビトには真似出来ない領域である。

 だが、それでもオビトは春からずっと木遁の細かい制御を高めるために、扉間より木遁忍術で出した花を一から育てるように課題を出されていた。おかげでか、はじめて使ったときは小屋らしき何かでしかなかった四柱家の術で作った家も、半年の修行の成果により、今は仮設住宅として使う分にはいける程度に家の体裁整っているのだから、オッケーだろう、多分。

 それにもう一つオビトのほうがヤマトよりこういう作業に向いている部分がある。

 それはスタミナとチャクラ量である。

 先に断っておくが、柱間細胞に適応したヤマトのチャクラ量は年齢に似合わずかなり多いほうである。

 だがオビトは、元々精神エネルギーに優れるうちはの血統な上に、最近は成長期の御陰で身体エネルギーも向上しているし、母親は傍系とはいえ千手の血統だ。体の三分の一は柱間細胞を使った義手義足疑似臓器に置き換わっているしおまけに……九尾事件の最中に細胞が体に完全に馴染んだため、今では義手義足とは思えないくらいに普通の手足と変わらない感覚になってもう崩れる心配もないし、それと共に半身から作り出されるチャクラ量は更に増大したし、吃驚するくらい自己治癒……を通り超して、自己再生能力が上がった。

 多分、今この里でオビトよりチャクラ量に優れる相手など、片手の指に納まる程度しかいないんじゃないか?

 という自負が成り立つくらいには今のオビトはチャクラおばけであった。

 まあようは後天的な木遁使いになり柱間細胞に適応したという点は同じでも、ヤマトとオビトでは素体が違うのだ。

 そして木遁というのは水遁と土遁と……プラス何かの要素……判明していない、を加えて発動する類いの血継淘汰らしくて、だからこそ普通に水遁や土遁を使うよりも消費するチャクラ量は木遁忍術の方が大きいのだ。

 だからマトモな家を建築させるのであれば圧倒的にヤマトのほうが向いているのだが、それが大量生産となるとヤマトは干からびてしまうだろう。年下にそんな目に合わせるのは気が引ける。ならやっぱり、たとえヤマトが許可されていたとしてもオビトが作ったほうがいいのだ。スタミナ的な意味で。

 とはいえ復興作業も終わりが見えてきたのだが。

「他にもやることってある? オレに出来る事ならなんでも言ってくれよ」

 そういってオビトは疲れを感じさせない笑顔を浮かべて、この地区の担当くノ一のおばちゃんへと尋ねた。

 

「よォ、木ノ葉の英雄! やってるな」

「奈良のじいちゃん!」

 ブラブラと着流し姿で現場に来たのは、先代奈良家の当主だった御隠居様だ。

 木ノ葉隠れに住むジジババは皆知り合いを豪語するオビトにとっても、当然顔見知りである。

 老爺はよく働くオビトの様子に、感心感心と言わんばかりに肯いていたが、ふと白く染まった顎ヒゲを撫でながら少年に尋ねる。

「ところでお前さん朝からずっと働きっぱなしだが飯はちゃんと食ってるのか? なんならうちで食ってかねーか? カカアに用意してもらうからよ」

「あー、食ってる食ってる。さっき向こうで作業してるときにいただいたからだいじょーぶだ……! 心配してくれてありがとな」

 そういってにっこりと天真爛漫な少年の笑みを浮かべてオビトは言う。

「なら、いいけどよ、ほどほどにしとけよ」

 そういって御隠居は顔つきは幼いままながら、成長期を迎えて大分背が高くなったオビトの頭に手を伸ばしてグリグリと撫でた。

 ……嘘だ。

 本当は朝から人助け中にヨタヨタおばあちゃんに貰った飴しか食っていない。

 オビトは今回の九尾襲撃事件の最中に柱間細胞で出来た義肢が完全に馴染んだ。それによりチャクラ量が増えたり、本物の手足のような感覚になったり、自己治癒能力が向上したりと恩恵の方が多かったのは確かだ。だが、その一方で元より完全に馴染む前から減っていた食事量が益々減り、飯を殆ど食えなくなっていた。

 同じ後天的な木遁使いで、柱間細胞に馴染んだ存在であるにも関わらず、ヤマトにはどうやら自分と同じ症状は起きていないらしいので、もしかしたらこれは内臓のいくつかを柱間細胞に置き換えた副作用なのかもしれないが……食べた方が具合が悪くなるのだ。

 だが、ジジババの善意での申し出に、食った方が具合悪くなるから食べませんなんてとてもじゃないが言えない。ので、オビトはこういう場面ではサラッと嘘をつくことにしていた。嘘も方便という奴である。

 本当のことを言って心配をかけるぐらいなら、嘘をつくほうがずっとマシなのだ、オビトにとっては。

 そんな風にやりとりをしながら作業に従事していると、「おーい」と聞き覚えのある声がしてオビトは振り向く。

 その先に先代火影の次男たる同期、猿飛アスマが中忍ベスト姿で手をヒラヒラさせながら、近寄ってきていた。

「アスマ」

「オビト、四代目がお呼びだ」

「四代目が?」

 

 * * *

 

「四代目様、うちはオビトお呼びにより参上しました!」

 そう、びしっと敬礼のようなポーズを取ってオビトがいうと、元担当上忍だった火影様は、いつも通りの爽やかスマイルを浮かべながら、「ん! よく来てくれたねオビト」と声をかけてくれた。

 それから五分ほど、復興作業はどう進んでいるか、オビトの目から見た里人の様子はなど質問され、それにオビトも答えていきながらも彼は疑問だった。

 復興作業の報告なら報告書で事足りるだろうに、忙しいなかそれだけの為に自分を呼んだのか。ミナト先生が? 先生は公私の区別はつけるタイプだから他にもなにかあるはず……と抱いた疑問の答え合わせはすぐだった。

「さて、復興作業も目処が立ったし、知っての通り明日には慰霊式典が行われる。それで一応、今回の九尾事件は終息したと見なされる。これだけ早く復興が進んだのはオビト、君の御陰だ。ご苦労だったね。ありがとう」

「いえ、そんな……」

 思わず照れて頬をかくオビトだったが、言葉を続ける師を見てぎくりと肩を強張らせる。

 ……目が笑っていない。

「オビト、君は今回の件で名前が売れすぎた。『隻眼の木遁使い』の名は恐らくもう他国にも浸透しているだろう。だから、オビト……明日の慰霊式典のあと、君は一旦里を出るんだ」

「は……?」

 オビトは一体今目の前の美丈夫が何を言ったのか理解出来ず、思わずフリーズした。

 そんな風に固まる黒髪隻眼の少年を前に、師にして里長でもある青年は淡々と言葉を続ける。

「君の面倒はオレの師でもある自来也様に頼んでいる。そうだね……ほとぼりが冷めるまで三年ほど、自来也先生に修行を見て貰うといいよ。先生なら君の事も正しく指導してくれるはずだ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……くださいよ! なんで急にそんなこと……」

 オビトはこれまで一度も里を出ることなんて考えたこともない。ミナト先生の言う事に間違いはないと思っているが、それはそれ、これはこれだ。

 大体、自分の第二の師は千手扉間だ。修行の旅に出るのまではいいが、何故その相手が三忍の自来也なのか、扉間先生でいいじゃないか。オビトにはことの成り行きがさっぱりわからなかった。

「大体扉間先生はなんて言ってるんですか……!?」

「扉間様は亡くなられた」

「……え?」

 まさか、死んでいたなんてオビトからすれば青天の霹靂だ。

 そりゃ、オビトは扉間が実際に戦っているところを見たことはないが、それでも失礼ながら殺しても死ななさそうだなと、100歳まで生きそうだなってそう思っていたのだ。

「なん……で」

 驚き固まる弟子に気にする素振りすら見せず、四代目火影波風ミナトは淡々と言葉を綴る。

「九尾事件の犯人の仲間と思われる奴等にアカデミーで襲撃されてね、子供達を庇って立派な最期だったよ」

 先ほどは殺しても死ななさそうと思っていた扉間であるが、そうして話を聞けばそれはどこまでもあの人らしい最期に思えた。

 千手扉間は背が高くガッシリした体格の強面で、実年齢に見合わず若々しい見た目の老爺であったが、それでも彼が誰よりも子供達を慈しんでいる教育者であったことは、彼の研究の被験者でもあり弟子でもあったオビト自身よく知っている事だったから。

「扉間様が亡くなった事は、明日の慰霊式典で発表される予定だったんだ。彼と他にも亡くなった十三人も英雄として木ノ葉の慰霊碑に名を刻まれる事になる。この意味がわかるかい……?」

 ミナトはその碧眼に少しの哀れみをのせながら、まっすぐに弟子の黒い隻眼を見る。

「君を庇護してくれる存在は無くなった」

 言外にオレは火影だから君だけを特別扱いは出来ないと乗せて、それでも強い瞳で先に夢を果たした先達でもある師は言う。

「だから、オビト、強くなりなさい。君が本当に火影に為りたいと望むのなら……仲間を守りたいなら誰よりも強くなるんだ」

 オビトはドジで要領が悪いだけで、実のところ馬鹿ではない。

 だから、考えればわかったことだ。

 扉間先生は何度も言っていたのだ。そもそも何故自衛手段を得るまでは木遁を人前で使うなと言っていたのか。その理由を。木遁はこれまでの歴史で初代火影である千手柱間しか発現したことのない、唯一生命を作りだす遁術だ。

 だから、その力を宿していると他国に知られれば研究対象として狙われるだろうと。だから返り討ちに出来るだけの力をつけるのが先だとそう言っていた。

 だが、今回オビトは里を……仲間を守る為にその扉間との約束を破ってしまった。

 オビトが木遁使いであることは、ここまで来ると隠蔽出来ない。

 つまり、里にオビトがいるそれだけで、木遁を狙った襲撃や間者を呼び込む危険性(リスク)が増えるということだ。

 だからこれはミナト先生なりの、里を守る火影としての判断なのだろう。

 第二次忍界大戦が終わって一年、九尾事件が終息してまだ一週間……少なくない犠牲も出た。これ以上火の国も木ノ葉隠れの里も他国に弱みを見せるわけにはいかない。だから、わかりやすい危険(リスク)であるオビトが今この里にいることそのものが望ましくないのだ。

 それでも、情はある。

 だからこそ、誰より信頼する自分の師をオビトにつけることにしたのだろう。

 そこまで考えて、ふとオビトの脳裏をよぎったのは春から共に扉間の下で学んできた長髪の少年だ。

「あの、ヤマトは……?」

「ん! ヤマト君は知られていないし、彼のことは大蛇丸さんが面倒を見てくれることになっているから心配いらないよ」

 だからオビトは自分の心配だけしていればいいよと、ニッコリと笑いながらミナトは言う。

 確か、三忍の大蛇丸といえば、木ノ葉忍術研究所の次期所長といわれている人だった筈だ。なら、きっと本当にヤマトは大丈夫なんだろう、良かった。そう思って黒髪隻眼の少年はほっと息をついて、それから深々と頭を下げながら言った。

「御厚情感謝します、四代目様」

 それから退室する前に漸く周囲を見回す余裕が出来て、オビトは気付いた。

 四代目火影であるミナトの後ろには二人の暗部が控えているが、そのうち片方が見覚えのある体格と髪色をしていることに。

 そしてオビトの視線に師であるミナトも気付いたのだろう。「ああ」と言いたそうな顔をして、その見覚えのありすぎる銀髪の暗部に目配せをする。

 そして彼は、火影室から出て行くオビトの為にドアを開いて、すれ違い様に紙片をオビトの左手に握らせた。

 そこには戌ノ刻とだけ書かれていた。

 

 * * *

 

「よっ、カカシ」

 時刻は夜の20時……約束の時間ピッタリに銀髪の左目を額宛で隠した少年はたけカカシは、オビトのアパートのベランダへとやってきた。

「……お前さァ、玄関から来いよな」

 オビトが呆れたように半目で見ると、「こっちの方が早いから別にいいデショ」とふてぶてしい態度でのたまい、それにはぁ―と息を一つ吐くと、「飯、まだなんだろ、食ってけよ」そういってカカシを部屋へと上げた。

 まあ、でもこんなやりとりも慣れたものだ。そもそもカカシの住んでいる部屋はオビトと同じアパートの丁度真上の階なのだ。忍びの身体能力からしたら確かにベランダを伝って下りてくるほうが早いのも確かである。

 そうして、カカシの前には茄子の味噌汁、鮎の塩焼きに頂き物の奈良漬け、ほうれん草のおひたしを並べ、オビトは自分自身の食卓には茄子の味噌汁だけを並べた。

 朝に舐めた飴玉一つに、夕飯の茄子の味噌汁。それだけがオビトの本日の食事の全てとなる。

 成長期の男子の食事として……否そうでなかったとしてもどう考えてもおかしい食事内容だったが、カカシは特にそこに何も言わなかった。そうしてカカシは何も言わないことを知っているからこそオビトはカカシを食事に誘ったのだ。

 オビトがカカシやリンに、自分が碌に食べられない体になったことを知られて約三ヶ月。

 それからオビトは平均すると週に一度ほどの割合でカカシを食事に誘うようになった。

 はっきり言ってオビトは空腹とは無縁の体である。もしかしたら食べなくても生きていけるのでは? と薄々思っている。それでも食事をとるのは、人間らしさを維持するためだったのかもしれない。

 そして腹が減ることがないからか、甘いとか、しょっぱいとか、辛いとかはわかるのだが……オビトは段々食事が美味いのか不味いのかといった事がわからなくなっていった。そんな状態なのに、一人で食うのも虚しくて、だからといってオビトが碌に食えない体質になってしまった事を知らない相手と食事をするのは、普通のフリをしている手前割と苦痛で……。

 だからこそ、リンより先にオビトが食事を取れないことに気付いたカカシを誘うことを思いついたのだ。

 一人分作るも二人分作るも手間は大して変わらないし、どうせなら食材だって美味しくいただける相手に食われたほうが幸せな筈だ。それにこいつも自分も一人暮らしだし、同じアパートに住んでいるんだから、呼ぶにしても行くにしても楽だ。

 まあ、それも今日で終わりになるかもしれないが。

 そんなことを味噌汁を啜りながらオビトは思う。カカシがこの食事会をどう思っているのかは知らないが、嫌だったらそもそもはっきり断っているだろう。それを、断らず乗っている時点でカカシも悪くは思っていない筈だ。

(こいつも案外、一人の食卓を寂しいって思ってたクチだったりしてな……)

 なんて。

 まあ、でも食事はついでだ。別に本題じゃない。

 だから、カカシが食べ終わった食器を台所の流しに置いたときに、オビトは「カカシ、お前さ暗部になってたんだな」と声をかけた。

「……まァね」

 神無毘橋破壊任務を共に受けたあの時から約一年と半年が経った。

 その間オビトとカカシは同じ任務につくことはなく、別々の任務が割り振られた。これは当然だろう。カカシは既に里でも有数の最年少上忍様で、オビトはまだ中忍な上にリハビリや検査などがあったのだから。それに任務には守秘義務もある。誰が暗部なのかなんて表立ってする話じゃない。

 まあだから、教えてもらえなかったのは寂しいけどそれは仕方ないことだ。置いてかれたみたいで悔しいけどな、とそう自分に言い聞かせるオビトに、カカシは彼にして見れば意外な言葉を続けた。

「ま、将来火影になる誰かさんを支えるなら、オレは色んな経験積んどいた方がいいでしょ」

「……へ?」

 それからカカシは、昔の生意気な時代を知っている身としては驚いた事に、オビトに向かって頭を下げていった。

「ごめん」

「へ、え? いや、何が……?」

(あのふてぶてしくて生意気でいつだって冷徹ツンケンしてたカカシが、オレに謝罪しているだとォ……!?)

 なんだこれ夢か幻術なのか? オビトは動揺し、混乱した。

 そんな黒髪隻眼の少年の前で銀髪の少年の謝罪の声が続く。

「オレ、昔お前なんかが火影になれるわけないだろって言ってただろ……ごめん、あれ撤回する」

「……!!」

 そこまでカカシが言って、オビトは一体彼が何に謝っているのか漸く理解した。

「お前なら、良い火影になれると思うよ、オレは。だから、オビト……頑張れよ」

 そう少し照れたような声でカカシは告げた。

「…………お前が優しいとか、変だ」

「はァ……!? 折角人が勇気出したのに……て、お、オビト?」

 そういって、怒りに顔を上げたカカシだったが、見上げた先のオビトの顔を見て、ぎょっとして固まった。

 何故なら、オビトはボタボタと大粒の涙をこぼしながら泣いていたからだ。

 それをぐしぐしと袖で拭いながらオビトはティッシュを手にとり鼻を啜る。

「泣くなよ……なんで泣いてんだよ……」

「ウルセぇ……バカカシ」

 悔しいから絶対に本人に言いたくないけど、オビトはずっとカカシに認められたかったのだ。 

 リンはカカシのことが好きだ。リンに惚れられているカカシが羨ましくて仕方なかった。おまけに一つ年下のくせにツンケンしててスカしている嫌な奴で、まるで水と油みたいにそりが合わないと何度思ったことかわからない。だけど、本当は憧れてもいた。

 頭脳明晰で責任感が強くて、なんでも軽々こなして冷たいけど優しい……凄い奴だと格好いいと、本当はリンがカカシに惚れるのも無理ないなとも思っていたのだ。悔しいけど、二人はお似合いだ。

 自分のことを認めさせたかった。写輪眼が開眼したらお前なんか追い越してやると、そんな大口を叩いていたのだって、自分を見て欲しいからだ。カカシの眼中にないって態度に腹が立っていた。

 だから、これは嬉し泣きだ。

 カカシに認められたい、とそんな願いが叶ったんだから、これが泣かずにいられるか。

 それに対し銀髪の少年はオロオロしている。

 これが二年くらい前なら「まーた泣いてるのかよ、お前ホント忍者失格」くらいの嫌味を言ってきただろうに、こうしてオビトの心配をしているあたり、カカシもまた変わったのだ。それに今はまだ、慣れないけど、ああでも悪くないなとオビトは思った。

「……ありがとうな、カカシ」

 それでも礼の言葉は照れくさくって小声になったけど、どうせこいつの事だからちゃんと聞き取れているんだろ、そう思っておかしくなって笑った。

 

「すぐにお前に追いついて抜かしてやるから覚悟してろよ、左目(カカシ)

「ま! そう易々と追い越されたりしないが……精々頑張れよ右目(オビト)

 そういって二人でコツンと拳を合わせた。

 穏やかな夜だった。

 

 続く




次回第一部少年編最終回「旅立ち」! ファイ!
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