隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
神威コンビの互いに対する感情はこんなイメージです。

カカシ→オビト
自称親友な少年オビト教信仰者。オビトの言葉の布教を惜しまない。ザ・宗教!(無自覚)
オビト→カカシ
内心カカシと仲良くなれて嬉しい隠れカカシファン(自覚しているが知られたくない)

※12月08日挿絵追加しました


21.長い髪

 

 

 

「オビトが帰ってきた……!?」

「うん、今日の昼過ぎにね」

 喜色と驚愕をない交ぜにしたような声を上げる、銀髪の部下ににこりと笑いながら爽やかな金髪碧眼の美丈夫が楽しげにそう告げる。

 うちはオビトが木ノ葉隠れの里に帰ってきた。

 はたけカカシがその情報を知ったのは三週間に及ぶ暗部の遠征が終わり、火影塔で任務の報告を終えた直後であった。

 はたけカカシ。

 伝説の三忍も霞むと言われた天才忍者はたけサクモの一人息子であり、本人も史上最年少で上忍に昇格したエリート忍者だ。

 年齢は先月17歳になったばかりの少年と青年の境目にあり、銀髪に墨色の瞳をして常に黒い口布と額宛で左目を隠している為、顔の半分以上を常に隠しているのが特徴の少年だ。それでも露出部分からは整っている造形が見て取れるのと、いつも沈着冷静で忍術も体術も大抵の事は器用にスマートに熟すことから、ミステリアスで格好いいと同年代をはじめとするくノ一たちから羨望と憧れの眼差しをよく受けている。とはいえ、本人は女性に興味を示す素振りを見せたことはない。

 そんなところがまたクールで格好いいとの評判の少年であり、現在は成長期真っ最中なのもあって見る度に大きくなったなあと思うこともしばしばなのだが、元担当上忍師でもある四代目火影波風ミナトからしたら、彼はいつまで経っても可愛い部下で教え子だ。

 そんな若き里長は神無毘橋破壊任務以来、どうにもカカシの中で同班であったうちはオビトの存在がかなり大きくなっていることは察知している。カカシのオビトへの思い入れの強さは少し心配な面もあるが、それでも概ねその変化は良いことだとミナト自身は判断している。

 なにより、父親を失って以来、張り詰めた針鼠のようだったカカシの肩の力は適度に抜け、精神的な危うさが大分落ち着いたようだ。

 あの任務以来、カカシがその刺々しさから人間関係を険悪にするようなトラブルを起こすような事も無くなった。多分これもオビトのおかげなのだろう。

 だから、オビトが帰ってきたと聞いたら喜ぶだろう、と思って教えたのだが、思った以上にソワソワとしてすぐにでも飛んでいきたそうなのでミナトは苦笑した。

「ん! もう報告も終わりだし、帰って良いよ。ご苦労様。明日明後日は非番だからゆっくりしなさい」

「はっ! 四代目様、失礼します」

 そういってきっちり、綺麗な角度でお辞儀をしてカカシは風のように去って行った。

 

 銀髪の少年は、暗部専用のロッカーで着替える時間も惜しいとばかりに手早く服を脱ぎ、私服に袖を通して火影塔を後にする。その姿にカカシの同班だった暗部の仲間達はポカンとしていたが、それは彼にとっては気に留めることではない。

(オビト……!)

 うちはオビトに会うのは三年ぶりだ。

 はたけカカシにとってさて、うちはオビトという存在がどんな存在かと言われたら、一言でいえばオレの英雄でオレの光である。

 憧憬であり、友でもあり、仲間でもあり、指針でもあり、相棒でありたいと願っている相手だ。

 オビト自身にも以前当たり前のように己が相棒だとそうさらりと言われた事があるのだが、しかし現実問題として神無毘橋破壊任務以降カカシとオビトが同じ任務に就かされる事はなくなってしまった。

 そのため、カカシ自身は正直オビトほど自分たちの関係は相棒であると言い切れる自信がない。それでも、うちはオビトの相棒は己でありたいと思うし、オビトが自分以外の人間を相棒と称する未来は想像するだけでも凄く嫌だ。うちはオビトの片腕……もとい片目は自分でありたい。

 オビトは抜けているところがあるし、ドジでバカだし不器用だ。だから、転んだときには手を貸してやりたいし、昔からカカシには大して夢とかはなかったけど、今はオビトが火影になって、それを筆頭補佐官になって支えてやる未来が細やかな夢だ。あいつの治める木ノ葉を見てみたい。

 まあ、ミナト先生もまだまだ若いからその未来は大分先かもしれないが。

 あと、本人にいうのは照れくさくてちょっと嫌だが、カカシ自身はオビトのことは親友だとも思っている。

 なので、その恋も上手くいってほしいし、早くオビトとリンがくっつかないかな。結婚式をするなら友人代表でスピーチしたいんだよね、オレ。とちょくちょく暴走列車じみた事も思っていたりするのだが、つまり何が言いたいかって自分の心と命、両方救ってくれたオビトには是非幸せになってほしい、というそれだけの話なのである。

 自分にとって大切なことを教えてくれて、父への敬意を取り戻させてくれたオビト。

『仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ』

 そう言い切った時のオビトの横顔はいつまでもカカシの脳内で延々とリピートされている。

 あの時のオビトの言葉はカカシにとってはなによりの宝物だ。

 凄く尊い。あの時のオビトの言葉を生涯カカシが忘れる事はないだろう。

 良い言葉なのでみんなに知って欲しい。だから、布教を惜しまない。

 ……そんなカカシは自分がオビトに向けている感情が、友情というよりもほぼ信仰染みている何かである事には気付いていないのであった。合掌。

 

 火影塔を出て僅か数分後には自身のアパートまで到着した。

 カカシの住んでいる部屋の真下の部屋がオビトの暮らしている部屋だ。もし、灯りがついていなければ明日に出直そうと思っていたが、灯りがついている。それを見たカカシは普段の彼を知る者がいると珍しいくらい衝動的にオビトの住む部屋のドアをドンドンと叩く。

「……はい、はい。誰だよこんな夜中に」

 ガチャリ、と音を立ててオビトの住む部屋のアパートのドアが開く。

「オビト! お前、帰ってきたって……!」

 そう喜色をやや交えて吐き出されたカカシの言葉は途中でピタッと止まった。

「……んだよ、カカシ。そんな変な顔して……腹でも痛いのか? 大丈夫か?」

 そう、そこに立っているのは自分の子供の頃からよく知るうちはオビトの筈だ。

 あの、ドジでマヌケで、遅刻魔だけどお人好しで、ざっくり短い黒髪に眩しい太陽みたいな笑顔がトレードマークみたいな、四年前の戦いで半身は失ったし顔に大きな渦みたいな傷跡が残ってしまったけれど、それでも明るく前向きで見ているだけで元気をもらえる、うちはオビトとはそんな少年だった筈である。

(……は?)

 もう一度全身を見る。

 まず、最初に思ったのは背の高さだ。

 カカシ自身成長期に突入したのもあってかなり伸びてきているし、うちはオビトは元から同期の中では背が高いほうだったし、カカシより年齢も一つ年上で成長期に入るのも早かった。だから、大分背が伸びた筈のカカシよりも更に5㎝~7㎝はデカそうに見えるのはまだ良い。

 もう寝るつもりだったのか、オビトは部屋着らしい濃紺の着流しに橙の帯を締めたラフな格好でそこに佇んでいたが、お前寝間着に着流しとか着るタイプだったのかよ!? という驚きがあったが、まあそれもいい。

(何、その髪)

 ずっと子供の頃から短く切りそろえられていた髪が、肩甲骨に届くほど伸びていた。

 この姿を見るまでカカシは髪の長いオビトなど想像もしたことがなかったし、カカシは今までそんなに注目してオビトの顔を見たこともなかったのだが、あまりそういう印象がなかっただけでよくよく見るとオビトの顔立ちは元々整っている。

 オビトのパッチリとした二重まぶたに彩られたやや釣り目がちな大きめな瞳と、スッと通った鼻梁に長い髪が影を差すと、なんだか憂いのある耽美系青年染みていて、陰のある色男的なそれが、カカシの中に抱いている健全で青空の良く似合う陽の化身のようなうちはオビト像と、目の前の月光浴が似合いそうな青年とのギャップを生み出していた。

「はああああ~!?」

「どわ、なんだウルセエな! ど、どうしたんだよカカシ」

 とりあえず、近所迷惑だから、とオビトはカカシの手を引いて自分の部屋の中へと銀髪の少年を招き入れる。

 それから湯を沸かして、動揺したまま席に着いたカカシの前に、コトリと茶を置いた。

「ほら、これでも飲めよ」

 そう、全く仕方ねえなといわんばかりの態度で、やれやれと年上ぶっているオビトに若干の苛立ちを感じるものの、カカシの中からは動揺が抜けておらず、正面に行儀悪くあぐらをかいて座り込みながら茶を啜る青年に言葉を投げかける。

「オ、オビト? お前、オビトだよな?」

「何を当たり前の事を聞いてんだ、バカカシ。お前にはオレが他の誰に見えるって言うんだ?」

 むっとすると下唇を突き出して、半目で睨むのは見慣れたうちはオビトの癖だった。

 ……こうしてみると背は高くなったし、髪は伸びたし、声も低くハスキーになっているが、顔自体はそこまで変わっていないのがよくわかる。カカシを守って岩に潰された時に出来た傷も一緒だし、本人の人格も旅立つ前も大差ない。ただ、その容姿から受ける印象だけが大きく異なっていた。

「その、オビト、お前さ、その髪はどうしたんだよ……?」

「ん? ああ……」

 そうカカシがオビトの長く伸びた髪を指さしながら問うと、漸くその動揺が腑に落ちたのか、オビトはクルクルと自分の長い黒髪を一房、指に巻いて遊びながら、カカシに尋ねる。

「どうしたって……伸びたんだよ。オレの髪が長いのがそんなにおかしいか?」

「変だね……! おかしいよ、全く似合ってない!!」

 食い入るような勢いでカカシは即答した。

 ……嘘だ。本当はよく似合っている。これがオビトではなく、他の誰かだったら「ま、いいんじゃない?」とか言って気にしなかった筈だ。だけど、長い髪のオビトはあまりにもうちはオビトらしくない。それがカカシには嫌だった。癪であった。自分の中の英雄はこんなのじゃないのだ。

 オレの英雄はもっと太陽が似合う感じなんだ! 決してこんな夜の静けさが似合う男じゃないんだ!!

 そんな風に思うあたり、本人に気付かれていないからセーフなだけで、カカシはオビトの厄介オタクであった。

「あーマジか。道理で……」

 そうオビトはなにやら思い当たる節があったのか、しきりに頷きながら、自分の顎を撫でている。

 それにカカシが「何?」と尋ねると黒髪隻眼の青年は「なんか今日やけにジロジロ見られるんだよな……」なんでだろうって思ってたけど、オレの見た目がみっともなかったからかあ……と落ち込んだような声で呟いた。

 そこで、ふとカカシは思い出した。

 今日、里に帰還して火影塔まで歩く道すがら、カカシの地獄耳は里のくノ一達の噂話も自然と拾っていた。

 彼女達曰く「今日なんか見たことない格好いい人がいた」「誰あのうちは系イケメン?」「あの髪の長い人でしょ? 顔に傷あって背の高い……唇の傷がセクシーな人!」「そうそう、なんか陰ある感じで良いよねー!」とかなんとか。

 それに、カカシは知らないうちは系イケメン? なにそれふーんみんな暇だねーと聞き流しつつ少しどこか引っかかりを覚えていたものだが、その時の噂話の内容と、目の前にいるその特徴そのままの青年を見て、カカシはその噂が一体誰について言っていたのか理解した。

(あれ、オマエかァーーー!)

 そして理解すると共に苛立ちもまた湧上がってきた。

 そう、たかが髪の長さくらいで解釈違いを起こしている自分も自分であるが、それでも髪が長かろうが短かろうとオビトはオビトだ。その顔も中身も対して変わっているわけではない。

 しかし、旅立つ前のオビトが里のくノ一たちにキャーキャーと言われている姿をカカシは見たことはない。

 オビトの本当のかっこよさを知らないくせに、たかが髪の長さくらいでオビトが里の女達に黄色い声を上げられているのがなんか嫌だ。オビトの良さは、そんな所にはないんだよ! とか思っているあたりがとんだ我が儘ファンボーイであった。

「……切る」

「は?」

「その、鬱陶しい髪オレが切ってやるって言ってんだよ……! ほら、さっさとハサミ出せ!」

「……お、おう? いやまあ別にいいけどよ、カカシお前なんでそんな怒ってんだ……?」

 そのカカシの勢いに戸惑いながら、オビトはハサミを取り出してベランダに椅子と散髪の際首に巻く用のタオルを用意した。どうにも銀髪の少年の勢いに負けたところはあるが、まあいいや、と黒髪隻眼の青年は思い直す。

 リンにみっともない姿は見せたくないし、別に何か理由があって伸ばしていたわけじゃないんだ。切ってくれるっていうんなら手間が省けて助かるというものである。

 

 シャキシャキと軽快な音を立てて、三年の間に長く伸びたオビトの髪が切り落とされていく。

 はじめる前はなんだかカカシの奴が怒っているみたいだったので、もっとざくざくやられるのではと内心少し不安を覚えていたオビトであったが、実際に始めてみればその手つきは繊細で丁寧だった。

(こいつ、マジで器用だな)

 あまりに手つきが丁寧なので、触れる指とハサミの心地良さに寝てしまいそうだ。忍びを辞めたら床屋でもやっていけそうだなコイツとどうでもいい事を考えて眠気をかみ殺す。現時刻は23時を過ぎている。今日、三年ぶりに里に帰郷して、うちはの会合にも参加した帰りであるオビトとしてはいい加減眠かった。

 まあ、でもこうしてカカシと会うのも三年ぶりだし? カカシの様子を見る限りこいつも任務帰りのようで疲れているのはお互い様だ。

 髪を切ると言い出したのもどうやらオレの頭があんまりにもみっともないのを見かねてのようだし、ならここは年上としてのフトコロの深さをオレが見せてつきやってやるべきだろう、こいつ年下だしな、とそんなツッコミどころの多すぎる事を考えながら、オビトはカカシの手に自分の髪を委ねていた。

「ほら」

 そう言ってカカシが終了を告げたのは10分後のことだった。

「おお……」

 鏡で見てみれば、三年前旅立つ前と同じくらいの短さに綺麗に髪が切りそろえられている。久し振りの短い髪にさっぱりと爽快感すら感じる。頭が軽い。別にオビト自身には自分の髪型に拘りなどないのだが、やはりそう考えると短髪のほうが自分の性に合うのだろう。

「ありがとうな、カカシ」

 こんな夜遅くまで付き合わせて、という気持ちも込めて心から礼を言うと、カカシは少し照れたように耳を赤くしながら「ま! お前にはやっぱりそっちのほうが合ってるよ」と首の後ろをかいている。

 素直じゃねーな、と思うが、素直じゃないのは大概自分もお互い様なのでそこにはつっこまず、オビトは別れる前にふと聞いておきたかった事を口にする。

「なあ、カカシお前明日暇か?」

「明日と明後日は非番だけど……それが何?」

「なら、付き合えよ」

 そういってオビトはくいと、手を対立の印の形に結んで「手合わせ、しようぜ」好戦的にニッとそう男臭く笑った。

 

 続く

 

 

【挿絵表示】

 




当初の予定ではカカシとオビトの手合わせまで書く予定だったのですが、長くなったので次回に続く!

因みにオビトの着流しですが、三年ぶりに帰ってきたので着れる服がなかった結果、ばあちゃんが残してくれた着流しを寝間着代わりに出して着た。
オビト自身は父親のお下がりだと思っているが、実際は曾祖父(マダラ)のお下がりである。転生したらうちはイズナでした13話でマダラが着ていた奴と同じ。
帯は自前。
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