隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
長髪オビト惜しむ声があったので(?)前回の話に挿絵追加しときました。



22.手合わせ

 

 

 

 若くして上忍となった銀髪の天才少年はたけカカシは、木ノ葉隠れの第三演習場で一人苛立ち紛れに腕を組んで立っていた。現時刻は朝の八時五分。

 昨日、ここで三年ぶりに帰還したうちはオビトと、朝八時の待ち合わせで手合わせをする約束をしたわけだが、案の定今日もあの遅刻魔は遅刻であるらしい。

 カカシとオビトは同じアパートに住んでいる。カカシの契約している部屋の真下がオビトの住まいだ。だから、遅刻しないよう朝事前に声をかけていたのに、それでも遅刻するとか本当あいつは……とイラッと混じりに考えた直後に、こっそりとオビトがここに仕掛けていたマーキング手裏剣を基点に、黒髪隻眼の青年……隻眼の木遁使いうちはオビトは、飛雷神の術によって時空間を飛んで瞬時に現われた。

「……ギリギリか?」

「いや、遅いから! なんで同じ時間にアパートを出て遅刻出来るのよ、お前は!」

 すると、気まずげにオビトは頭を掻いて「う……しょうがねーだろォ……途中目の前で階段からおちてすっころげたじいさんがいたんだ。病院まで送ってやってたの……! 別にわざと遅れたんじゃねーよ」とばつが悪そうにそっぽむいた。

 そんな三年経っても中身はまるで変わらぬオビトに、銀髪の少年は思わずため息を零す。

 ……これがもし五年前の自分だったなら、「ハイ! うそ! いつもいつもオビトの前にそんな困った人が現れるわけないでしょーが! お前、毎回しょーもないうそつくのやめたら?」と蔑み混じりに糾弾して、そこからオビトとの喧嘩に発展していただろうが、今のカカシは本当にオビトは人助けをして遅刻していることを知っている。

 自分の事には嘘をつくが、誰かを助けることについてはオビトは嘘を言わないのだ。たとえ自分が損をすることになったとしても、困った人を見過ごせないそういう奴なのだ、うちはオビトという忍びは。

 だからこそ、やりにくい。

 今のカカシはオビトのそういうところ素直に尊敬しているから。

「ん! カカシはオビトを心配しているんだよ」

「って、なんでミナトせんせ……四代目がここにいるんだよ!?」

 火影ってそんな暇じゃないだろ! と第三者として立っている金髪碧眼の見慣れた爽やかな優男にオビトが突っ込むと「アハハ、カカシとオビトが手合わせするって聞いてね。ここにいるオレはただの影分身だから安心してくれていいよ」本体のオレは今もいつも通り火影塔で働いているから。

 そういって現火影にして第二次忍界大戦の英雄はキラリと眩しいウインクをよこした。やる人間によっては鳥肌ものの寒さになるだろうその仕草も、爽やかイケメンであるミナトが行えば様にしかならないのでイケメンとは得な生き物である。

「それにオレも、今のオビトの力量はきちんと把握しときたかったしね」

「……!」

 火影として。そう真剣な碧い瞳で師が呟くと、オビトは俄然真剣な表情になって、顔を引き締める。そうすると昔よりも頬の輪郭から子供らしい丸みが取れたオビトは、途端に精悍に見えるから不思議なものだ。三年ぶりだからこそ、余計に大人びたとそう感じるのかもしれないとカカシは分析した。

「今日はオレが審判するね。体術、忍術、写輪眼なんでもありだけど、殺意が高すぎる攻撃は禁止。制限時間は10分。勝敗は相手に参ったといわせるか、時間切れか、オレの判断で勝負がついたと思ったら終わり」

 10分という時間制限を設けたのは、主にカカシのためだろう。

 カカシの左目に嵌まっているのは生来のカカシの目ではなく、オビトの写輪眼(ひだりめ)だ。

 うちは一族ではないカカシの肉体は血族のように体が適応しているわけではなく、彼自身のセンスによって運用出来ているだけで、本来の持ち主のように写輪眼のオンオフを切り替えることも出来ない。

 血族ではないものがこの目を持っていると、ただ所持しているだけで常にチャクラを余分に吸われていくのだ。

 それでも常に出しっぱなしよりは消費がマシだから、普段は斜めがけした額宛の下に左目を隠しているわけだが、本気で戦うならそういうわけにもいかない。

 写輪眼には洞察力の向上、チャクラの動きの目視、幻術眼としての行使など様々な能力が備わっている。はたけカカシのオリジナル忍術である千鳥だって、写輪眼があって初めて完成した術だ。この眼には何度も助けられてきた。だが、うちは一族ではないカカシに写輪眼の負担が大きすぎるのも確かだ。

 本来、カカシはこの若さでそこいらの上忍よりもよっぽどチャクラ量に優れているのだが、オビトの写輪眼を譲り受けて以来、チャクラ切れで入院するハメになることもしばしばだった。チャクラ切れは場合によってはそれだけで死を招く危険な状態であるが、ま、それは仕方ない。忍びである以上、命があるだけ儲けものだ。

 しかし、当然師にしてこの里の長である波風ミナトは、部下で直弟子でもある銀髪の少年のそんな状態はよく知っている。

 だからこその、後に支障を残さないための10分なのだろう。

 任務で寿命をすり減らすのはともかく、ただの手合わせで消耗させるのは本末転倒というものだ。

 

 そうしてカカシとオビトは向かい合って立つ。

 アカデミーで習ったように、対立の印を組んで立つ二人の体に静かに闘志が包み込む。

 銀髪に自前の墨色の右目とオビトから貰った赤い写輪眼の左目をもつ少年は、冷徹に隙一つない流水のような佇まいで立ち、黒髪に左顔面の半分を幅広の黒い布を眼帯代わりとして覆った、柱間細胞産の義手義足に身を包んだ青年は口の端を好戦的に持ち上げ、闘志に爛々と輝く写輪眼の赤い右眼で目前に立つ友を真っ直ぐに見据えている。

 そんな教え子二人を師の眼差しで感慨深く見守りながら、波風ミナトの影分身は口を開いた。

「忍び組み手、始め!」

 その元担当上忍師にして現里長の言葉を皮切りに、まず真っ先に動いたのは黒髪隻眼の青年のほうだった。

「火遁・豪火球の術!」

 うちは一族ならこれが出来て当たり前とされる一族お得意の忍術を、プクリと頬と腹を膨らませて即座に放つ。少年時代のチームを組んでいた時代のオビトはもっと中規模なサイズの炎を生み出したものだが、かつて知っていたものより大分でかい豪火球だ。だが、オビトなら最初にその術を放つことなどカカシには既に解っていたことだ。

 それをカカシは土遁・土流壁の術で壁を生み出し防ぐ。

 土流壁は防御に特化した忍術であり、術者によってその規模や形に個人差が大きく現れる術であるが、カカシが使うと綺麗なブロック状の壁を生み出す。

「ウラァ……!」

 その壁を自分で生み出した巨木を足台にして、上空からオビトが跳び蹴りを食らわそうとカカシに迫る。

 だが、そんな動きはこの写輪眼の前では当たり前のように見えている。

 カカシは冷静にそのままカウンターを決めるように腕を動かし、そしてその腕に雷を纏った。

 雷遁・千鳥。

 はたけカカシオリジナル忍術であるそれを前段階で止め、拡散。それを放電しながら反撃に移ることにより、カウンターと同時に雷撃での麻痺も狙っている。だが、カカシがオビトのことをよく知っているようにオビトとてカカシのことはよく知っている。

 自分の蹴りが失敗する、そう判断した時には既にオビトは上空にマーキングをつけた手裏剣を放ち、飛雷神で飛んでいた。

 しかしオビトならそうやって逃れるだろうとわかっていたのはカカシとて同じなのだ。

 即座にそちらにカカシは巨大な風魔手裏剣を飛ばす。

 それをオビトは木遁・大樹林の術で腕から生やした木で弾き、クルリと宙で一回転してバク転して着地し、豹のようにしなやかな筋肉をバネにして、遠心力を使って銀髪の少年へと向かった。

「ハッ!」

 オビトの長い足が、鋭く迫る。

 それを正確に見極め、いなしながらカカシは鋭い突きを繰り出す。

 互いに手の内を知っている者二人の組み手は、二手三手と続き、楽しそうにクツクツと笑いながらオビトが言う。

「どうした、カカシィ……!! まだまだこんなもんじゃねーだろうが! 出し惜しみかァ!?」

「あんまり、調子に乗るなよ、オビト。修行を重ねて強くなったのが自分だけだと思うなら、それは間違いだ」

 拳と足技、主体にするものが違えども鋭い体術の応酬はさらにヒートアップしていく。

 戦えている。

 あの天才はたけカカシと、互角に。

 その事実に高揚し、ニィとオビトの口端が持ち上がる。

(嗚呼、楽しい)

 前置きして置くが、別にオビトにどこぞの曾祖父(うちはマダラ)のような戦闘狂の気はない。

 強くなりたい、という渇望はあれど、それは守りたい人たちを自分の手で守る為に欲しているのであって、戦う事が好きで好きで仕方ない、曾祖父みたいな人間は寧ろオビトからしてみたら理解しがたい人種といえる。

 だが、ずっとオビトはこの一つ年下の少年の背中を追っていたのだ。

 オビトにとって彼、はたけカカシは同年代の誰よりも優秀で、口も態度も生意気で、リンの心を射止めているところも含めて凄くむかつくし、あまりに考え方が違いすぎてこいつキライって思うこともちょくちょくあったけれど……それでもその強さに、揺らがない在り方に、本当はちゃんと情深いそんなところが……なんでもスマートにこなすその器用さ鮮やかさが、凄い奴だなぁかっこいいなぁ、オレもこんな風になれたらなあと思っていた。そういう存在だった。

 うちはオビトにとってはたけカカシは一番身近な憧れである。

 いつか、追いつきたいとそう誰よりも願う相手だった。

 だから、対等に戦えている。あのカカシが、真っ直ぐに自分を見て、対等な相手として認めてくれているその事実に興奮し高揚した。

 同じ目を分け合ったからだろうか。

 次に相手が何をするのか、何も言われなくてもなんとなくわかる。

 嗚呼、だからやっぱり自分の相棒は、はたけカカシしかいないとオビトは確信する。

(勝ちてェな)

 カカシは凄い奴だ。

 だからこそ勝ちたいし、その背を追うことに意味がある。

(負けたくねェ)

 うちはオビトは、はたけカカシに勝ちたい。

 そこに理屈は関係ない。

 恋敵であるとか、そういう思考すらこの場では余計な考えだ。この問題にリンは関係ない。

 カカシは強い。強いからこそ憧れるのだ、乗り越えたいと望むのだ。

 

 幾度目かの仕切り直しのあと、オビトに向かってカカシがすれ違い様に忍術を行使する。

「千鳥流し」

 パリパリと雷遁がカカシの持つチャクラ刀を基点に広がっていく、距離的に避けられないだろう。それになすすべもなくやられるかと思われた瞬間、オビトの体は一本の木へと姿を変える。

 木遁・木分身の術だ。

「何!?」

 では本体はどこへ……その時カカシは地中から迫る腕を寸前で察知し、バク転し後方に退いた。

 これはおそらく土遁・心中斬首の術だ。

 カカシを地中に生き埋めにすることを狙ったのだろう。

「チッ」

 オビトが今まで土遁を使えるという話は聞いたことがなかったが、考えてみればオビトの操る木遁は土遁と水遁になんらかの要素が合わさって発動されているとされる血継淘汰であり、それを思えば木遁を操れる時点でオビトに土遁と水遁の素養もあるのは当然といえば当然であった。

 しかし、不発に終わった術にこだわるつもりもないらしい、オビトはそのまま地中から現れると印を組み、「木遁・黙殺縛りの術……!」と叫ぶと、豊富なチャクラ量にものを言わせて腕から木の蔓を大量に放出し、銀髪の少年の体を縛り上げる。

 そしてオビトはすかさず次の印を組み、木に捕まったカカシへと手裏剣を飛ばし、火遁・鳳仙火の術へと繋げた。

「ぐあ~、しまった! ……なんてな」

 ボン。

 そんな軽快な音を立てて木に捕まっていたカカシが消える。ついで、爆発。

 オビトが木分身に入れ替わった直後にカカシもまた影分身に入れ替わっていたのだ。そして影分身に仕込んでいた起爆札を爆発させた。

 そうして起爆札を爆発させた煙幕によって仕切り直しながら、カカシは思う。

 オビトは随分と強くなったようだ。

 そのこと自体は喜ばしく思っている。元チームメイトとしても、親友としても。

 だが、だからといって軽々と負けるのは沽券に関わるし、癪だ。

 確かにうちはオビトははたけカカシにとっては英雄である。

 だが、こちらとてこれでも天才少年と言われ、エリート忍者としてオビトより長く忍びとしてやってきた自負があるのだ。オビトの事は尊敬しているし、火影にもなってほしいと思っているが、だからといって負けてやる気などカカシにはサラサラなかった。

 自分に勝って調子に乗っているオビトの顔とか、想像するだけで凄くイラッとするしな。

(ぶっ潰す)

 冷徹に冷ややかな顔をしながら、そんなことを思うはたけカカシ少年だった。

 

「カカシィ……!!」

「オビトォ……!!」

 方や腕から木を生やしながら、方やパチパチと雷撃を腕に纏いながら黒と銀が衝突する。

 それを……。

「はい、終了。そこまで!!」

 そんな、恩師の声と腕が遮った。

「もう、10分経ったよ、二人とも。ん、時間切れだね」

「え」

 爽やかな笑顔で告げられるそんな台詞に、やり場のない高揚感を萎えさせながら、オビトが「こんな結末あり?」って顔をしながらミナトを見るが、相変わらず爽やかな笑顔が微塵も揺らがない事を知ると、しおしおと項垂れた。

 カカシもカカシで不完全燃焼であったのだが、師の判断に異存は無いらしい。静かに白雷を収めて、すっと手をおろした。

 それを見て、オビトは終わりなのを自覚したのだろう。更にがっくりと項垂れた。

 そんな自分より背丈こそ伸びたけど、まだまだ子供らしく可愛いところのある黒髪隻眼の部下に苦笑しながらミナトは言う。

「オビト、随分と強くなったね。オレも嬉しいよ。カカシとここまで戦えるなんて。……これなら問題ないかな」

「……? ミナト先生?」

 そこでくるりと波風ミナトの影分身は銀髪の少年のほうを振り返り、告げた。

「カカシ、次から表の任務に就くときはオビトと行ってくれるかな?」

 君とオビトの二人一組(ツーマンセル)ならS級任務も安心して任せられるよ。

「! ……ミナト先生、それって……!」

 そんなさらっと言われた言葉に、オビトの顔面にジワジワと喜色が迫り上がる。喜びか、感動か、眦には薄らと涙の幕が張り、頬を紅潮してぐっと唇を噛みしめている。その姿は、師に認められたことか、それとも念願のカカシと再びマンセルを組める事か、嬉しいと如実に言っていた。

 そんなオビトを見下ろしながら、カカシも眦を緩めながら言う。

「そうですね……今のオビトなら、荷物になることはないかと。私もそう思います」

 そう、火影であるミナトに対しての一線を引いた口調で冷静に言うカカシであるが、オビトのように表に出さないだけで、カカシのほうもオビトと再びチームを組むことを望んでいたことは、火影にして師でもあるミナトもよく知っている。

 素直でない部下に苦笑しながら、でもそれもこの二人の在り方かもしれないとそうミナトは思った。

「さあ、和解の印を結んで」

「はい!」

「はい」

 穏やかな空気のままに黒髪の青年と銀髪の青年が和解の印を結ぶ。

 そんな二人を現火影である波風ミナトと、今日も火影岩に刻まれた歴代火影立ちの顔岩が見守っていた。

 

 続く




次回我らがヒロインリンちゃんさん登場!
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