隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
今回の話でこの世界が辿っている水の国と霧隠れの歴史についてちょろっとお披露目でヤンス。


28.野営

 

 

 

 Sランク任務を受け、火の国木ノ葉隠れの里を午前十時に発ったうちはオビト、はたけカカシ両名は水の国のある東部に向かって火の国の森の中を移動していた。

 水の国の合流地点である村までは変装して潜入するように、という指示だが……そもそも五大国の一つである火の国は広い。おまけに霧隠れの里を擁する水の国は島国であり、現地までは船で移動することになる。なので、変装は水の国へと向かう船に乗る手前になってから、ということで国内を移動している今は変装などもせず敢えていつも通りの格好である。

 はたけカカシは木ノ葉隠れの里でも最年少で上忍昇進を果たしたエリート忍者である。

 分析力が高く、器用で応用力も高く、忍術体術幻術全てのレベルが高く、今では暗部で部隊長も任せられているほどだ。今回の任務で隊長に抜粋されたのも、まさにそのバランス能力の高さと判断力、任務遂行力の高さを買ってと言える。

 今回の任務は表向きは霧隠れの里に出向いて、当代水影に協力の下、同盟締結まで木ノ葉側の人員としてサポートを行う事だ。

 霧隠れ側からの要望により、この任につけるのは、二人、ないし三人までとなっている。

 理由はあまりに大人数だと同盟反対派に目を付けられるから、とのことだが果たして本当はどうなのやら。今回の要請自体が罠である可能性を考慮している木ノ葉隠れの里からしてみれば、疑わざるを得なかった。まあ、罠だったらその時はその時で、正確な情報を持ち帰る事こそが第一の任だ。

 それでも、本当に和平が為るのならそれは願ってもないことであるので、この要請を受けないという選択肢もまたなかったわけだが。

 そうして調停役を務めるカカシの相棒として、そのサポート役に選ばれたのがうちはオビトだった。

 オビトは九尾事件の活躍により、一躍有名人となってその「隻眼の木遁使い」という二つ名が一人歩きしているが、彼自身は特にこれといった肩書きを持たない一中忍である。オマケに片腕片足は義肢だし、左目はない。しかし、彼の師匠のラインナップには目を見張るものがあるし、彼自身も中々特殊な能力を持っている。

 なにせ、一人目の師は現火影である波風ミナトであるし、二人目の師は木ノ葉黎明期を支えた術開発の天才にして初代火影の実弟千手扉間であり、三人目の師は妙木山の蝦蟇仙人……木ノ葉の三忍が一人、自来也だ。

 一忍びの師匠に、ビッグネームがここまで揃うのはまあ珍しいだろう。

 彼自身の血筋も木ノ葉隠れの里を興した初代火影の右腕……歩く鬼神うちはマダラの子孫であり、その右半身を形成する義肢は初代火影の細胞で出来ている。その影響で彼は後天的な木遁使いであり、また彼自身の生来の才能から時空間忍術の適性も高く、木ノ葉隠れの歴史上独力で使いこなせるものは三人しかいない、飛雷神の術の使い手でもある。おまけにうちは一族の血継限界写輪眼も開眼済みなので、高レベルの幻術の行使やチャクラの目視などもバッチリだ。

 そんな特殊な人脈、才能詰め合わせ欲張りセット……みたいな感じのオビトであるが、それでも彼に実績はほぼない。

 それも仕方ないことだが。

 というのも、神無毘橋破壊任務を受ける以前のオビトの評価は、うちは一族の落ちこぼれであった。

 とはいえ、写輪眼を開眼する前から、うちは一族ならこれが出来て当たり前とされる火遁・業火球の術もしっかり習得済みであったし、水面歩行や木登りの行もきっちり使えていたので、別に言われるほど酷くも能無しでもなかったのだが……不幸なのは彼がエリートが多いとされるうちは一族出身であった点か。

 オビトは努力家ではあるが、不器用で真っ直ぐ歩くのが苦手な少年であった。大器晩成型といえば聞こえは良いが、結果を出すまでには時間がかかるタイプだ。

 大抵の事をさらっとこなせる天才肌のものが多いうちは一族には、あまりいないタイプである。

 その為、比べられて余計に悪く見えたのが、落ちこぼれという評価に繋がったとも言える。

 そんな彼にそこまで大きな任務が回されるか? といったらそれは基本的にはなかったわけで、半身を失う以前のオビトが受けた一番大きい任務こそが、彼が半身を失った原因といえる神無毘橋破壊任務であった。

 一度は命を失ったものと思われたオビトが生き延び、帰って来れたことこそ奇跡だ。

 しかし、帰ってきたはいいものの、その右腕右足は壊死していたし、内臓のいくつかは潰れていて、摘出してカカシに移植したため左目もなかった。忍びとして復帰は不可能だと思われるくらいの満身創痍だ。そこからこうして忍びとして復帰が叶ったのは、致死率が高いはずの柱間細胞への適性が高く、柱間細胞を使った義肢実験の被験者になることを扉間に提案され、それを呑んだからといえる。

 その後の彼に待っていたのはリハビリの日々である。

 義肢義足を使いこなすのにもそれ相応の努力が必要だったし、新しく彼が得た力……木遁にしろ訓練がいるし、柱間細胞義肢実験の被験者である彼には定期検査を受ける義務もあった。当然、大きな任務を任されるわけがない。

 そうして迎えた三年前の十月十日。

 通称九尾事件と言われる、里に現れた九尾の猛攻から老人達を救う為に、オビトは人前で使うことを禁じられていた木遁を大々的に使い、一夜にして里の英雄の一人となった。

 誰が名付けたか、二つ名を隻眼(赤眼)の木遁使いと、その名は他国にまで知れ渡ってしまった。

 木遁はこれまでの歴史上、初代火影である千手柱間しか発現することのなかった特殊な血継限界である。

 そのまま里に置いておけば、木遁を狙った他国からの間者や襲撃を招く。そして、オビトにそれに抗うほどの力はまだない。オビトを庇護していた千手扉間ももういないのだ。

 そう判断した四代目火影波風ミナトの決断は早かった。自身の師である三忍の自来也にオビトを預け、ほとぼりが冷めるまで里の外に出すことにしたのだ。自来也は優秀だ。彼に預ければ間違いはない。

 強くなって帰ってきてくれればいい。

 そう思ってミナトはオビトを外に出した。実際その判断は正しかったといえる。木遁目当てにオビトを付け狙っていた他国のスパイも、当の本人がいなければ手の出しようがないのだから。

 そうして、オビトは色んな経験をして、三年前と比べものにならないくらいに強くなって帰ってきた。

 だからこそ、今回の任務も任せることにしたのだ。

 ただ……彼には実績が無い。

 これまで彼が受けた任務で、世間的に評価されているものは、神無毘橋破壊任務だけだった。

 故に反対意見もなかったわけではなかったのだ。

 今回の任務は国家の趨勢に関わる(Sランク)任務だ。いくら名が知られていようが、実績も経験も碌に無い若造に任せていい任務ではないと、その反対意見を押しとどめ、オビトを推奨したのが当代火影である波風ミナト本人だった。

 曰く、今回の任務は少数精鋭が求められている。その際カカシをサポートさせるのにオビト以上の適任はいない。それにオビトは飛雷神の術を習得している。あれとオビトのチャクラ量であれば、たとえどれほどの手練れに囲まれたとしても脱出は容易い筈だ。

 開発者である扉間亡き今、木ノ葉隠れの里で飛雷神の術を独力で発動出来るのは、四代目火影であるミナト本人と、ミナトに飛雷神の術を直接習ったうちはオビトの二人だけだ。

 オビトが飛雷神の術を習得していることをミナトが上層部会議で告白すると、驚きの声が上がり、それならと、承認者が過半数を超えたため、無事オビトがこの任に選出された。

 また、オビトには実績はなく、九尾事件後まもなく里外に出された為他国に顔は知られていないが、柱間に続く二人目の木遁使いとして知名度は高いから、木ノ葉からの本気を水影及び霧隠れに知らしめるにはうってつけの人材というのも決め手となった。

 大体そういう思惑があってこの任務に選ばれたのだ。

(まあ、誰かさんの親心……ならぬ師匠心もあったんだろうけどね)

 件の上層部会議にも暗部として四代目の護衛として参加していたはたけカカシは、そんな事を考えながら、並行して森の中を進む相棒の姿をチラリと見る。

 カカシがオビトに火影になってほしいと思っているように、師であるミナトも出来ればオビトが自分の後を継いで、次の火影になってくれたら嬉しいなと思っていることを知っている。

 ただ、今のままでいけばほぼ無理だ。

 なにせ実績がない。

 あの歩く鬼神うちはマダラの曾孫で、初代の木遁を受け継いでいて、四代目の直弟子で、九尾事件で活躍した木ノ葉の英雄……ということから一応次代の火影候補に名は上がってはいるが、やはり実績のないものに任せようというほど組織というのは甘くはない。だからこそ、師はオビトに経験を積ませてやりたかったのだろう。

 霧隠れとの同盟の締結の補助。この任務を成功させれば、オビトの名声は上がるはずだ。それを切っ掛けに高難易度の任務や重要な任務を順調にこなしていけば、次代の火影も夢ではなくなる。

 長く里外に出ていた中忍にこれほどの大役を与えるのは、普通に考えたら有り得ない選択だが、それを選んだこと自体が師のオビトに対する親心ならぬ師匠心なのだろう。

 まあ、もっとも、なんだかんだシビアなところもある師のことだから、オビト自身にこの任務を遂行する能力がないと思ったら任せなかっただろうから、この任務にオビトを派遣すると決定した一番の判断材料は自分とオビトの手合わせを見て、だったのだろうが。

 そんな事を考えているカカシに、「なぁ、カカシ」とオビトが声をかける。それに「何」と返すと「今日はどこまで進むんだ?」と尋ねた。

 見れば太陽は大分傾いている。あと一時間もすれば日没だろう。

「そうだな……ここからあと5㎞ほど進んだ先に小さめの滝と川がある。その付近で今日は休もう」

「了解だ、カカシ隊長」

 今日は野宿だ。

 秋の日はつるべ落としだ。すぐに暗くなる。

 無論、忍びであるカカシもオビトも夜目も鍛えられているため、夜間でも行動できるが今は戦時中でもないし、無理をする必要は無い。体力を温存しておくのも必要なことだ。

 それに中々のハイスペースでここまできた。この調子でいけば明日の昼頃には水の国に船を出している港場へとつくだろう。そのまま午後発の船に乗って水の国に潜入だ。

 まあ、スムーズに進んだのはこれが地理感のある国内だからというのもあるだろう。水の国につけばそうもいかない。

 そう思っているうちに、今日の野営予定地についた。忍びの足だとこんなものだ。

「今日はここで野宿でいいんだな?」

「ああ、そうだ。だから……」

「木遁・四柱家の術!」

 ここで野宿だと、そうカカシに肯定されるなりオビトはバッと印を組んで術を発動させた。

 木遁・四柱家の術は名前の通り、家を作り出す木遁忍術である。

 これがもう一人の木遁使いであるヤマトであれば、立派な門構えの巨大な一軒家を作り出すのだが、生憎オビトの木遁はどちらかといえば攻撃系に特化しており、あまりこういう建築系には向いていない。そのため、生み出されたのは四畳半ほどの一応屋根と壁がついた粗末な掘っ立て小屋であった。

 それでも、野宿で雨風しのげる場所で寝れる事を考えたら破格といって良かったのだが、わざわざ野宿で家を作り出したオビトにカカシは思わず呆れて言葉を失う。

 その間に、オビトが行動に出る方が早かった。

 まず木遁で乾いたよく燃えそうな小枝をいくつも生みだし、それをキャンプファイヤーよろしく組み上げると、その上に土遁を用いて作った土鍋を載せ、そこに川の水を注いで火遁で火をつけ沸騰させ、コップ一杯分の湯をさっと掬った後に火力を少し弱めると、ポーチから乾燥キノコと岩塩、乾燥野菜を取り出して目分量でざっと土鍋の中に放り込み、次に鎖付きのクナイを空に放ち、山鳩を仕留めるとそのまま地面に落ちる前に鎖をたぐって引き寄せ、さっくり内臓を抜き取って土をかぶせ、血と内蔵を抜いた山鳩の羽をむしり、臭み抜きにさっきコップに取り置きした熱湯をかけると、早く火が通るように肉を細かくクナイでざくざく刻んで、土鍋に放り込んで蓋をした。

 この間、僅か3分。無意識で始めたとしか思えない完全な流れ作業で、いつもやっていたことを伺わせる無駄のなさであった。

「よし、これであと15分もすりゃ夕飯は完成だ。ん? どうしたんだよカカシ?」

「…………お前、変な所で随分器用ね」

「エ?」

 夕飯は兵糧丸で済ませるつもり満々だったカカシは思わず白目になった。

 任務中の野営のはずが、オビトにかかればまるで楽しいキャンプに早変わりである。

 家は作れるし、調理器具は作り出せるし、火起こしもいざとなれば水遁で水の調達もなんでもこなせる男、うちはオビト。さぞかし自来也様は便利に使っていたんだろうな~……と、二人の旅の内容を思わず想像するカカシであった。

 ……因みに、オビトが作った即席鍋は普通に美味かった。

 

 とはいえ、野営は野営だ。四時間交代で見張りを変わることにして、最初にカカシがオビトの作った掘っ立て小屋の中で眠ることなった。

 パチパチと、火の番をしながら、オビトは思う。

 明日には水の国に入る。水の国は島国で閉鎖的なのもあり、自来也との旅でもオビトは行ったことはない。

 ただ、全く知識が無いかと言われたら、それは違う。

 オビトは神無毘橋破壊任務から帰ってきて半死半生になったあと、柱間細胞義肢実験の被験者となる代わりに千手扉間の庇護下に置かれていた。そうして定期検診の際に検査と検査の合間にある待ち時間で扉間から様々なことを学んでいた。その中には水の国と霧隠れの里に関しての情報もある。

 曰く、初代水影の方針により元々五大国に属する隠れ里の中でも、屈指の閉鎖的で秘密主義な隠里であること。

 島国であることから難攻不落にして排他的で、気候風土としては寒冷地であることから忍びとしては比較的に厚着しているものが多い。また全体的な風潮として、国全体として血継限界を忌み嫌う傾向にある。

 捕虜交換に応じないことで有名な里で、他国の忍びを捕まえた際はチャクラ性質や忍術を徹底的に調べ上げ抹殺するのが常である。まあ、それは当然のことだが……と語ったあたり、多分扉間先生も他国の忍び相手に霧隠れの事を言えないことをやってたんだろうなあ……とオビトは察した。尚、先生は「だから絶対捕まるなよ」と言いたかったらしいのだが。

 ただ、それでも第一次忍界大戦の時亡くなった二代目水影である鬼灯幻月が治めていた時代は、霧隠れももっとマトモだったらしいのだが……三代目水影は初代水影の頃の方針を更に強固にして打ち出したような男で、卒業試験と称して生徒同士に殺し合いさせるなど、碌でもない男なんだと不快そうにかつて扉間先生は語った。

 まあ、そんな男が水影だったのである。

 当然、第二次忍界大戦にも参戦し、他の国と同じく木ノ葉隠れの里に宣戦布告し、襲いかかった。

 が、あれは第二次忍界大戦が始まって半年を過ぎた頃だった。とある万年下忍(・・・・・・・)と呼ばれていた男が、自分の息子とそのチームメイトを守る為、自分の命を賭して霧の忍刀七人衆を半壊させた事件が起きた。それを期に霧隠れはターゲットを木ノ葉隠れの里から雲隠れの里に切り替え、木ノ葉隠れの里と戦っていた雲隠れの忍びを背後から襲いかかったのだ。漁夫の利狙いというやつである。

 それが切っ掛けで五大国のうち四国VS火の国という構図は崩れ、泥沼に戦況が複雑化していったわけだが……木ノ葉隠れとしては助かったのもまた確かである。

 故に、第二次忍界大戦で亡くなった者達を弔う慰霊碑にも、その霧隠れが方針転換をした切っ掛けとなった英雄の名はしかと刻まれている。

 男の名はマイト・ダイ。

 オビトもよく知るあのマイト・ガイの父親だ。扉間先生は誇らしげに木ノ葉の英雄だと語った。

(英雄……か)

 今オビトは里で英雄と呼ばれている。それは九尾事件の時に碌に動けなかった老人達を何十人も救ったからだ。それは純粋に人命救助を称えた功績でつけられたもので、オビトが四代目火影波風ミナトの元に飛び、九尾と対峙して封印する手助けをしたことについてはあまり知られていない。

 第二次忍界大戦が始まって間もなく、オビトはアカデミーを卒業して下忍になった。

 その時、オビトはリンに言った。

『オレは火影になってこの戦争を終わらせる』

 ……と。実際にそれを叶えたのはオビトではなく、師である波風ミナトだったが、その言葉をリンに言ったのは好きな女の子に良い格好をしたかった、という理由もあるけれど、それでもそれだけじゃない。

 オビトは木ノ葉のジジババほぼ全てと知り合いだ。そうすると毎日のように、どこどこの誰々が死んだとか、孫を失って悲しむじいちゃんやばあちゃんにどうしても出くわす。彼らをどうにかしてやりたかった。

 英雄(ほかげ)になりたい。

 英雄になって、そうして戦争を終わらせたい。この里が好きだから、他国に手を出させたくない。

 好きな子に対する格好付けとアピールがなかったとはいわない。だけどそれもまたオビトの本心だった。

 明日には水の国につく。

 四代目水影が求めているのは木ノ葉との和平。そしてこの任務はその補助だ。

 この任務が成功したのなら、そうすればオビトが子供の頃に望んだ英雄像に自分は少しでも近づけるかもしれない。そう、なればいい。

「オビト、寝ろ。交代の時間だ」

「……ああ」

(だから、見守っててくれよ扉間先生……)

 そう願って、オビトは眠りに就いた。

 

 続く




次回サブタイトル「ガマ次郎三郎」!
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