今回は今作唯一の名有りオリキャラ登場回です。
2026年も隻眼の木遁使いを宜しくお願いします。
「起きろ、オビト」
「……ん、起きてるって……」
野営明けの午前四時半頃、日が明けるより早くうちはオビトは起床となった。
朝食はカカシは携帯食を二口で済まし、オビトはそもそも朝食を必要としない為、近くの川の水で顔を洗う。
木遁で作った家は枯らして、野営の痕跡も消し終わったら日の出と共に出発予定だ。
月が明るい為、まだ日が昇っていないわりにはそこまで暗くは感じない。
顔を水で洗って少しスッキリしたオビトは、淡々と荷物の点検をしている銀髪の少年に対し、「あ、カカシちょっといいか」と声をかける。
「何?」
昔のように「オビトの事だからどうせ下らないことでショ」という決めつけをしてくることがなくなったカカシは存外こういう時は素直だ。そんなところになんだか背中がムズムズするような感覚を覚えるオビトであったが、喧嘩にならないならそれが一番だとも思っているので、彼もまた素直に案件を伝えることにした。
「出発する前にお前に一応紹介して置こうと思って」
そういってオビトはバッと印を結び、ガリッと指を噛んで、「口寄せの術!」と契約獣を時空間を通して呼び出す術を発動させた。
「……!!」
モクモクと煙が立つ。
その中から現れたのは小さめの一軒家ほどのサイズをした赤紫色の体色に、オレンジを基調に藍色の差し色の入った羽織を羽織った巨大蝦蟇であった。
ただ、まだ暗いのでそこまで正確にカカシにその色の判別が出来ているわけではないのだが……太陽の下で見たら実に色鮮やかだろう色彩の蛙である。
「よっ、ジロー久し振り!」
その巨大蝦蟇に対して、黒髪隻眼の青年はぴっと敬礼しながら気安く声をかける。
すると、若い快活な男の声で蝦蟇もまた気安そうに返答した。
「おお、オビトじゃねえか! おいおい、3週間ぶりじゃあまだ久し振りってほどじゃないじゃろーがよォ! して、用は何じゃあ? それっぽい気配はないが敵か? 敵なのか? 誰をぶっ飛ばすんじゃあ?」
「ハハッ、ちげえって、敵じゃねえよ。カカシにお前を紹介しとこうと思ってさ」
この赤紫色をした巨大蛙、見た目は中々にゴツいのだがまだ年若い蝦蟇なのか、オビトがジローと呼んだその巨大蝦蟇は、血気盛んにウキウキとした口調でそんな言葉をオビトに吐いている。
それに応えるオビトもまたにっこにこだ。普段は意地っ張りな上に目つきも口も悪いくせに、なにその緩んだ顔とカカシは思った。
心許してますって心境ダダ漏れな気安い態度に雰囲気をして、赤紫色の巨大蝦蟇の前足をべしべししている。人間であれば肩でも組んでいそうなくらいの距離感と雰囲気だ。そう、リンやミナト先生を前にした時と同じくらいにオビトはその蝦蟇に甘えている。
(……は?)
それを見て、カカシは目を据わらせた。冷気を放ってそうなくらいに、機嫌悪く眉間には皺が刻まれている。
まだ辺りは暗いのもあり、そんな銀髪の少年の不機嫌に気付くことも無く、ウキウキでオビトは巨大蝦蟇を紹介する。
「紹介するぜ、カカシ。こいつは妙木山でオレの相棒になった、ダチの仙人蝦蟇見習いのガマ次郎三郎だ!」
「おお、おぬしがカカシか! オビトから話は聞いとるぞー! オビトの人間の友で相棒だとなー! オビトのダチの誼だ、
「へへ、オレとジローのコンビネーションにかかりゃあ大抵の敵は一捻りだぜ!! 実はさ……」
そこまで上機嫌でオビトが口にした時、カカシはぶち切れた。
「ハアアア!? オビトの親友で相棒はオレでショーがァ!!?」
ビシッと蝦蟇と黒髪隻眼の青年のコンビに指を突きつけ、そんな啖呵を切る銀髪の少年にオビトはあっけにとられた。カカシの血管には青筋が浮いており、眉間には凶悪な皺の谷間が出来ている。
「は、え、カカシいや、お前何言ってんだ……!?」
急にキレだした銀髪の少年にオビトは狼狽え混じりに目を白黒させるも、尚もプリプリ怒りながら「こんなぽっと出よりオレとオビトのコンビネーションのほうが凄いに決まってんだろ!」とか普段の彼なら絶対言いそうにない台詞まで言うもんだから、オビトは突如食らったカカシからのデレににやければいいのか、それとも契約獣相手に張り合うことに呆れれば良いのか、混乱と動揺しつつも、とりあえず落ち着けといわんばかりに手を上下に振りながら説得を試みる。
「あのな……カカシ、オレにとってのジローはお前にとってのパックンみたいなもので……」
とりあえず、カカシが契約している忍犬を引き合いに出して説得を心見ようとするオビトであったが、どうにも逆効果だったのか「ハァアア!? パックンはオレの家族なんですけどー!? 一緒にしないでくれるー!?」と益々ぶち切れるカカシであった。それに、元々気が短いオビトもキレた。
「ハアア!? パックンがお前にとって家族なら、ジローだってオレにとっちゃ兄弟みてーなもんだっての!!」
「オビトの兄弟がこんなぽっと出の蝦蟇とかオレは認めない……!!」
「お前さっきから本当になんなんだよ!? ジローに失礼だろうが! てか、カカシ、今日のお前ぜってーおかしいぞ!!?」
これまでオビトが気付いていなかったから問題にならなかっただけで、カカシはオビトへの感情を見事に拗らせていた。
はっきり言ってカカシはオビトを親友としてみているというより、信仰対象として見ているのである。ただ、本人にはオビトを偶像視して信仰対象としてみているという自覚はなく、当人の認識ではあくまでも自分たちは親友であるという点が、更に問題をややこしくしているのだが。
そして彼はオビトが親友と呼ぶのも相棒と呼ぶのも自分だけだと自惚れていた。つまり、あれだ。自分以外を相棒と称するオビトは解釈違いだったのである! 初見の蝦蟇相手に相棒と呼んで紹介してきたオビトに、オビトの相棒はオレだけ! と思っていた自尊心を傷付けられて、ミナト班でもない相手にデレているオビトにこんなに怒っているのだ。気分は差し詰め自分だけに懐いてくれていたと思っていた猫が、余所様の飼い猫だと判明した瞬間である、全く面倒くさい男だ。
だが、まさか自分がカカシの中で半偶像と化している事実など知る由もないオビトとしては、カカシがなんでここまでキレているのかなんてわかる筈がない。
いつもはクールでもっと生意気なくせに、なんでこいつ今日はこんな面倒くさいんだ!! と頭を抱えるばかりであった。
とはいえ、こういうのは外から見たほうがよくわかるわけで、オビトにはなんでカカシがキレているのかさっぱりわからなかったが、第三者としてこの場にいるガマ次郎三郎は、カカシがなにやらオビトに対して親友と呼ぶには複雑骨折している感情を抱いてそうだなーというのが伝わってきたわけで、彼はこそこそとオビトに尋ねた。
「……なあ、オビト、お前さん本当にこれが親友でいいのか? なんか
「へ? いやいやいや、今日はなんかちょっと変になっているだけで、カカシの奴いつもはもっとマトモだし、それに本当は良い奴なんだって……! 今日はこんなんだけど……! 本当にいつもはこんなんじゃないんだって!」
「そうじゃった! お前さんも大概面倒くさいんだったな!」
お手上げだ! と天を仰ぐガマ次郎三郎であった。
* * *
ザアザアと雨が降る。
いつ訪れてもこの国で晴れ間が差すことは珍しい。
「この国も相変わらずじゃのう……」
そんな言葉を呟きながら、下駄を履いた白髪の大男……蝦蟇仙人である三忍の自来也は空を見上げた。
彼がうちはオビトと別れたのは今から10日ほど前の事だ。別れたその足で自来也はここまで来た。
直弟子にして現火影である波風ミナトに、オビトを弟子にして面倒を見て欲しいと頼まれたのは今から三年前の事だ。なんでワシがそんな面倒なことをせねばならん……と思わなかったといえば嘘になるが、オビトを里に置いておくわけにはいかない理由も説明され、頼みますと頭を下げられれば、自来也もまた木ノ葉隠れの里の忍びである以上受けざるを得なかったのも確かである。
だからまあ、はじまりは不本意であったのは確かだが、最終的にはオビトとの師弟関係はそう悪いものでもなかったのも事実である。本人に知られるのは癪だから言いたくないが。
四代目火影である波風ミナトをはじめ、数々の弟子を育ててきた自来也であるが、彼の目からみてうちはオビトはさてどんな弟子だったか。
まあ、才能があるのかないのかよくわからんやつだったなあ、というのが第一の感想である。
あの術開発の天才、千手扉間に基礎を鍛えられていただけあって、色々な術の習得が思ったよりはスムーズに進んだわけだが、根はかなり不器用そうな感じがした。が、そのくせ本来は難易度の高い筈の時空間忍術に関しては特に苦労することもなくするすると覚えるのだ。才能のスキルツリーがなんとも歪な男だ。
ぎゃんぎゃんと口うるさいし、騒がしいやつだったが、お人好しの世話焼きで困った奴……特に年寄りは見過ごせないらしくて、放っておけばいいトラブルにも自分から首を突っ込む。なんともめんどくさい奴だった。
ただ、面倒くさいが同時にかなり素直な奴でもあった。
少し褒めただけで忍びとしてどうなのかと思うくらい真っ直ぐに喜んで、ダメだしをすると涙目で落ち込む。
そんなオビトと暮らしているうちに、なんというか、雨隠れの里で今頑張っている弟子達との生活を思い出して懐かしくなってしまったのだ。
あれは第一次忍界大戦が終わって4年後のことだった。
その日は久し振りに綱手と大蛇丸の猿飛ヒルゼン班だった三忍一緒に
大蛇丸は相変わらず酔狂ね、と笑い、綱手は無責任な事をするなと呆れていたが、世界を変えようと足掻く小さな子供達の煌めきに、自来也はかつて蝦蟇仙人に下された予言を思い出したのだ。一番の候補は直弟子のミナトであったが、もしかするとこの子達かもしれん、とそれが動機だった。
そんな風に昔を懐かしんでいると、よく知った気配が複数近寄ってくる。
「自来也先生、お久しぶりです……!」
最初に喜色でぱっと顔を輝かせてそんな風に走り寄ってきたのは、赤い髪に中性的な顔立ちが特徴の青年……うずまき一族の血を引いていると思われる、弟子の長門であった。
続いて、紫の髪をお団子に纏めた美女……小南と、快活そうな笑みを浮かべたオレンジ色の髪をした青年弥彦もまた、揃いの赤雲模様が入った黒い装束をして、歩み寄ってくる。
「おお、お前達も元気そうだの。会うのは……五年ぶりだったか?」
「先生、五年じゃ無くて七年ぶりだよ……!」
「まだボケるのには早くなくて?」
そんな風にからかうように笑う二人も和やかな空気だ。
「で、急に来るなんてどうしたんだ?」
「何、お前達が頑張っていると聞いてな、久し振りに顔でも見ようと思ってのう」
「なら、上がっていってよ。積もる話もあることだし」
そうしてチラリと見たアジトのほうには他にも複数の気配があった。
「オレ達今ではかなり賛同者や仲間も増えたんだぜ? みんなのことも紹介させてくれよ、自来也先生」
そう言って弥彦は彼らの組織である暁の中へと自来也を招いた。
お互いに自己紹介して、丁度これから朝食だったとのことで、わいわいと複数で食卓を囲み談笑する。お互いの近況を語り語られ、和やかな時間が過ぎていく。そんな中で三人……特に弥彦が興味を示したのは、10日ほど前に別れたという自来也の新しい弟子の話だった。
「へえ……そんなことがあったのか。面白そうなやつじゃないか? オレ達の新しい弟弟子は」
流石に弟子といっても里外の人間である三人に、木遁や柱間細胞の義肢などのことは話せないから、自来也がオビトについて語ったのは主にオビトの人となりや妙木山でオビトが起こしたハプニングの数々に、やたらサバイバル能力が高くて努力家だけど努力の方向性が斜め向こうだとかそんな話だったのだが、話のタネとしては十分だったらしい。
「ま、弥彦、少しお前に似ていたかのう……」
「オレに?」
そこでピクリと赤い髪の青年が反応する。
「へえ……弥彦に似ているんだ……? オレも会ってみたいな。そのオビトって子に」
そういって長門は微笑んだ。
* * *
……途中ぐだぐだとしていたが、当初の予定通り夜明けと共にカカシオビト両名は野営地を出発することとなった。
その際、冷静な状態に戻ったカカシに当初の予定通り、自分とガマ次郎三郎が揃えば何が出来るのかも伝えることも出来て、一先ずほっとしたオビトである。
オビトがガマ次郎三郎を呼んだのは何も、自分が契約した契約獣をカカシに自慢するためではない。
今回の任務を遂行するにあたり、敵の襲撃や囲まれる状況などを想定して、その際何が出来るのかを隊長であるカカシに把握して貰う為に呼び出したのである。
何故なら今回の霧隠れとの同盟締結の補助任務で隊長を務めているのははたけカカシであり、オビトに与えられた役割はあくまでもカカシ隊長のサポートなのだ。チームワークの大事さも報告連絡相談の大事さもオビトはこれでもしっかり認識しているつもりだ。だからこそ、隊長であるカカシに自分が出来ることを報告するべきだと思った。だから、今朝のカカシの暴走は完全にオビトの想定外である。
とはいえ、本来カカシは任務においては頗る優秀なやつだ。オビトが何が出来るのかをしっかり伝えると「確かにそれは有用だと思う」とお墨付きを貰った。こういう判断については、私情を挟まない奴なのだ。
そうしていくうちに潮の香りがオビトの鼻にも届き出す。
海が近い。
もうすぐ目的地の水の国行きの船を出している港町に到着だ。
「それで、オビト? お前ちゃんと変装について考えてるんでしょうね?」
もしも感知系の忍びが交ざっていた場合変化の術だと見破られる可能性がある。
そのため、変化ではなく、変装して水の国には向かうことになっていた。キャラ設定からしてしっかり考えてメイク道具を出しているカカシだったが、大丈夫だろうと信頼して特に聞かなかったが、ここまできてカカシはオビトが変装先の設定をきちんと考えているのか不安になったらしい。
そんなカカシにニヤリとしながらオビトは「まあ、何任せとけ」と笑うのであった。
続く