隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
今回はみんな大好きあのキャラ登場回です。


38.指名依頼

 

 

 

 霧隠れの里にオビトとカカシの二人が来て三日が経った。

 その間元々の予定通り、木ノ葉隠れの里と霧隠れの里が同盟を結ぶにあたり、12月に湯の国で大名達が会談を行う為、その警備について木ノ葉隠れの里から来た使者代表であるはたけカカシと四代目水影やぐらが話し合いを行う。それをオビトはカカシの護衛として傍で見守る。

 この任務のリーダーはカカシであり、あくまでサポート役でしかないオビトはそこまで会談のことについても詳しい段取りを知っていたわけではないので、二人のやりとりへと静かに耳をすませ、内容を把握する。

 四代目水影との会話が淀みないあたり、やはりリーダーであるカカシにはオビトが教えられていたより多くの情報や指示が元々与えられていたのだろう。

 どうやら、会談の日はオビトとカカシの両名は水影様とその護衛小隊と共に水の国大名様の警護任務につくらしい。 

 逆に霧隠れから木ノ葉隠れの里へ、オビトとカカシと入れ替わるように旅立った霧隠れからの使者である忍び二人が、四代目火影波風ミナトと護衛小隊と共に火の国大名様の警護任務につくんだとか。

 その会話でオビトは霧隠れからも自分たちと同じ立場の人間が木ノ葉に向かったことを初めて知った。

 一部の人間の所属を入れ替えて警護につくことで、ちゃんと協力し合えること、問題を起こさないことを示すという狙いもあるのだろう。あとは……同じ任務を熟すことで連帯感を持たせるのが目的だろうか、とオビトは考察する。

 霧隠れと同盟が成立すれば霧との共同任務も増えていくことだろう。

 その予行演習でもあるのかもしれない。

 ……互いに互いが裏切ったときの保健で人質でもある、という裏は一瞬だけオビトの脳裏にもよぎらなかったわけではないが、その考えは浮かんだ瞬間に彼は流した。可能性は否定出来ないが、あまり気分の良い考えではなかったからだ。

 それに実際に四代目水影やぐらや、世話役として配属された鬼鮫と接した印象もあって、出来れば彼らを信じたい気持ちもあった。

 とはいえ、四代目水影であるやぐらは忙しい。

 あまり自分たちにかまけれいられないようで、一日に顔を合わせるのは30分がせいぜいであとの時間は正直暇を持て余している。会談が上手くいけば同盟にむけて仕事も増えるのだろうが今のところオビトに出来ることは何もないのだ。

 同盟がまだ設立していない現段階では木ノ葉隠れは霧の潜在的な敵里だし、あまり外出するわけにもいかないから部屋に缶詰だ。しょうがないから室内で出来る忍具の手入れや、体術だけの軽い手合わせなどをカカシと行っているがそれでも暇なものは暇だ。

 ついでに食事は毎回二人分運ばれてくるが、オビトは体質が体質なので最初の一口だけを食ってあとは食べたように偽装工作した上で破棄している。

 流石に他里に自分の体質を知られたくないし、オビトが隻眼で木遁使いなのは有名だから今更だが、右手と右足が柱間細胞で出来た義肢であることはトップシークレットでもある。完全に馴染んでいる以上、普通の手足と一見大差ないからバレることはまあまずないだろうが、それでも他国に知られたい情報でもないのも確かだ。

 そしてオビトが食事をほぼとれないというのも、柱間細胞で作られた疑似臓器がそもそもの元凶のようなものなので余計に知られたくは無い。なので作ってくれた人と食材には悪いと思っているが破棄させてもらっている。

 その判断自体は間違っていないと胸を張って言えるが……それでも罪悪感もあるのも確かだ。

 そんな鬱屈も手伝って鬼鮫に「なァ、鬼鮫。なんかオレにも出来ることってない?」とぼやいたのが昨日の夜のこと。そんなオビトをカカシは呆れた目で見ながらこめかみを押さえていたが、馬鹿にすることもなく鬼鮫は「水影様にお窺いしますよ」と真面目に承った。

 鬼鮫は良い奴だ、と思うオビトであった。

 そうして今朝、オビトはカカシ共々水影様に呼び出され、言われたのだ。

「アカデミーの子供達の相手をしてほしい」

 と。

 なんでも、半年前の政権交代に伴い、血霧から脱却を目指してまず最初に行ったことが忍者学校(アカデミー)教師の総入れ替えだったそうだ。

 まだ霧隠れが血霧と呼ばれていなかった二代目政権時代に活躍し、三代目時代に冷遇されていた二代目時代をよくしる古参の忍びを教師に据えたはいいが、彼らの多くが全盛期を過ぎた老年であり、元気いっぱいの子供達の相手をするのには堪える。

 なので、暗部の予備の仮面を渡すから、これをつけて子供達の遊び相手をしてやってくれと、見た目はアカデミーの子供達と大差ない……実際は成人済みだし妻子持ちらしい幼顔の四代目水影様は笑った。

「アカデミー制度を最初に作り上げたのも木ノ葉隠れの里でしたから、水影様もそのあたりをお二方に期待しているんだと思いますよ」

 と、アカデミーまでの道程を案内しながら鬼鮫は言った。

「つまり、木ノ葉隠れの里と霧隠れの里のアカデミーの違いを知りたいってことか?」

「外からしか見えないものもあるでしょうからねェ……尤も、霧の秘伝をお二人に知られるのもよろしくはないので、授業そのものはお見せ出来ませんし、お二人と引き合わせるアカデミー生も今年入学した一年生に限りますが」

 入学したばかりの一年生となると、習うのは忍術体術や手裏剣術の基礎の基礎のみだろう。他里に知られたところで殆ど問題がないのも確かだ。それにカカシは「成程」と呟く。仮面越しであれだが、怠そうな顔をしているんだろうなあと思った上でオビトは相棒のそんな状態をスルーした。

 カカシは多分オビトに余計な仕事増やすのやめてほしいんだけど、って思っていそうだが、オビト自身としてはやることが出来たのは有り難かったからだ。たとえそれが元気を持て余した子供達の遊び相手役……でしかなくても、部屋にやることもなく缶詰になるよりはマシである。

 そんな風に話しながら歩いている内にアカデミーへと辿り着く。丁度今日の授業は終わったところのようだ。

「はい、今日は皆さんに紹介したい人がいます」

 50代後半くらいの年老いたくノ一教師がニコニコとしながら、霧隠れの暗部の仮面をつけたオビトとカカシをその偽名と共に紹介する。

「これから暫く放課後に皆さんの遊びや修行を手伝ってくれるうちお兄さんとたけお兄さんです。仲良くしてやってくださいね」

 因みに偽名はまんま名字から二文字取り、「うち」はオビト、は「たけ」カカシでうちお兄さんたけお兄さんである。安直過ぎじゃない? と仮面の下でやる気なく思うカカシであった。

「どうもー。うちお兄さんです! よろしく!!」

 オビトは前に大道芸人トビを演じていた時よろしく、しゅびっと手を掲げながらノリよく応じる。

 それにわっと4~6歳くらいの子供達も駆け寄ってくる。

「なあなあにいちゃん、あんぶの人?」

「しゅぎょーみてくれるってほんと?」

「あそぼーぜ」

「たかいたかいしてよ~」

 それに面倒見よくオビトは一人一人に向き合って、時には肩車したり、リクエスト通り高い高いしたり、見本として手裏剣術を披露したりもしたが、カカシがオビトより高度な手裏剣術をしれっと披露すると遊びより真面目に修行したい勢はカカシのほうについたので、ぐぬぬっと仮面の下で悔しがるオビトであった。子供か。

 なにはともあれ、体力を持て余していたのはオビトも同じである。

 故に全力で遊び、時には子供達に花を持たせて、隠れ鬼や鬼ごっこなどの遊びに忍術を織り交ぜて、修行になるように誘導しながら接していくうちに子供達……とくに体力を有り余らせた男の子たちはオビトに大体懐いた。

 逆に女の子達はカカシに懐いたようだ。

 あいつなんで顔が見えなくても女の子に年代問わずモテるんだ、解せぬと思うオビトであった。

 そうこうしているうちに日が暮れ、他の学年の授業も終わり、子供達も帰宅の途につく。

「うち兄ちゃんまたなー!」

「おう、またな。気をつけて帰れよ」

 それをヒラヒラと手を振りながら見送るオビトであったが、ふと気配も音も立てず年齢に似合わぬ穏行を駆使しながら一人の生徒が自分に近づいてきている事に気付く。

「……どうしたんだ、オレに何か用か?」

 目線があうように屈みながらオビトはその子供に問いかける。

 それははっとするほどに美しい子供だった。年齢は……5歳前後だろうか。

 癖一つないサラサラの長い濡れ羽色の髪に、鳶色の瞳、雪のように白い肌。

 オビトは基本的にリン以外の女性に興味がなく、彼にとってはどんな醜女も絶世の美女も同価値しかなかったりするのだが、そのことはイコール美醜がわからないというわけではない。興味が無いだけで、美人を見て美人だなあと思う程度の審美眼はある。

 そんなオビトから見てもこの幼さで抜けてる美貌を持つ子供である。こんな幼さで可愛さより美しさのほうが際立つなど早々あることではない。きっと10年後には絶世の美女として騒がれるんだろうなとそんなどうでもいいことを思った。

 そんなオビトをじっと見上げながら、子供はほんの少しだけ躊躇して、それから思わぬ言葉を口にした。

「あの、アナタが再不斬さんの代わりにきた人ですか?」

「え」

 言われて数瞬たってから、オビトはなんとなく理解を始める。

 再不斬さんの代わりにきた人とこの子供は言った。

 ……その再不斬という名前は聞き覚えがある。水の国にくる船の中でカカシが言っていた名だ。確か八ヶ月前に血の卒業式を作り上げた奴だった筈だ。霧隠れの鬼人。オビトが知っているのはカカシに聞いた情報くらいだが、あまり良い印象は持たなかった。

 だが、この子供がその名を語った時の雰囲気は慕っている相手へのそれだ。

(代わりにきた人……な)

 確かカカシと四代目水影の会話に出てきた。オビトとカカシと入れ替わりのように木ノ葉隠れの里に向かった霧隠れの忍びがいると。この子供の言を元に考えるのならば、霧隠れから木ノ葉隠れへの使者に選ばれたのが桃地再不斬だったという事なのだろうか。

 とりあえず場所をベンチに移して話を聞くことにする。

「……なんでわかった?」

 オレが木ノ葉隠れから来た忍びだと、そう暗に黒髪隻眼の青年が尋ねると、とても美しい容姿をした子供は「匂いが……アナタは霧の忍びとはちがうなと……こんなじきに先生に紹介されるのもふしぜんでしたから」と声を潜めて言葉を返す。

「……すみません」

 それは隠している正体を突き止めたことに対してか、それとも困らせていることについてか。申し訳なさそうに眉をぎゅっと寄せる子供の頭をポンと撫でて、オビトは仮面で隠れて見えないだろうがにっと笑う。

「それで? 聞きたい事があるから話しかけたんだろ?」

「……アナタたちの故郷って、どんなところですか?」

 固有名詞は使わず、子供は尋ねる。その瞳には先に口に出した再不斬に対する心配が滲んでいた。

 実際霧隠れから来た使者に対する扱いがどうなのかはオビトにもわからない。ただ、四代目火影波風ミナトなら下手な扱いをすることはないだろう。そう師を信頼している。

 だからオビトはただ話す。木ノ葉隠れの日常や風景を。機密にならない範囲で差し障りなく。それは当然異国に出向いたことのない大人びた子供の興味をひいたようだ。最初は控えめに、やがておかしそうに子供は笑った。

 日が沈む。子供も……オビトも、帰らねばならない時間だ。

「今日は、ありがとうございました。ぼくは白っていいます。またおはなししてくれますか?」

「おう、またな」

 そういって手を振りオビトは子供と別れた。

 そうして帰り道を歩きながらオビトは考える。

 霧隠れの鬼人と呼ばれる男について、あまり良い印象がなかったのは事実だ。でも今日話した限り白は良い子だ。あんな良い子に慕われているなら桃地再不斬も悪い奴じゃないのかもしれない。例の血の卒業式も何か理由があったのかもしれないな……と。

 そんなことを考えているオビトは気付いていなかった。今日出会った将来絶世の美女になるだろうなと思った子供、白が……女の子では無く、男の子であるという事実に。遠くから二人のやりとりに聞き耳を立てていたカカシは気付いていた。こいつ、あの子の性別勘違いしていたな、と。

 教えようか少しだけ迷ってからカカシは黙っておくことにした。

(ま、恥をかくのも良い経験デショ)

 教えなかったのは、断じて面白がってのことではないのだ、多分。

 

 * * *

 

 霧隠れの里で過ごすようになってから一週間が経過した。

 その日、朝食の膳を下げた後に鬼鮫は「水影様に呼ばれていますので、すみませんが今日はオビトさんだけ水影様のところに来ていただけませんか?」と二人に告げた。

 それに一瞬だけカカシとオビトは目配せをする。

 この任務についてから銀髪の少年と黒髪隻眼の青年の二人は常にセットで行動していた。それは万が一を想定しての行動であり、分断を避ける為だ。そのあたりは霧隠れもわかっているのか、これまで二人別々に行動させられたことはない。

 水影様個人としては信頼出来る人柄だとは思っているが、それでも同盟がまだ成立していない以上は仮想敵里同士なのだ。そのあたりは水影様もわかっているはずなのに、ここで片方だけを呼び出すとは一体どういう事なのか。

 疑問はあるが、一応別れて行動する場合を想定して、カカシにはオビトが飛雷神のマーキングを施した手裏剣を一つ渡している。罠であればその時はその時、カカシの所まで飛んでそれから水の国のあちこちに用意したマーキングを目印に脱出すればいい。問題は無い。

 それを確認してコクリと頷く。

 そうしてカカシと部屋で別れて鬼鮫の後に続き水影の執務室に辿り着く。

「水影様、オビトさんをお連れしました」

「わざわざ呼び出して悪いな、オビト殿」

 そういって椅子に座ったまま書類と向き合う水影……やぐらは今日もかなり多忙そうだった。

「さて……『大道芸人トビ』に指名依頼が来ている」

 その言葉に思わず目を見開き、オビトは思わずばっと後ろの鬼鮫を振り向く。

 この里でオビトが大道芸人トビを名乗った覚えは無い。ならば、迎えの時にそれを見た鬼鮫が水影に報告したのかと思ったからだ。

 そんなオビトを見て、ククッと笑いながらやぐらはいう。

「十日ほど前、とある高貴なお方(・・・・・・・・)から霧隠れはある調査任務を受けた。それはそのお方の弟君を助けてくれたある大道芸人を調べ、連れてきてほしいという依頼だ」

 その言葉でオビトの脳裏によぎったのは、7歳ほどのどこぞのお坊ちゃんらしき子供の姿だ。

 まさか、とオビトの口元がひくつく。

「そのさるお方の弟君はある花を握っていた。タンポポの花だ。それは自分を人攫いから助けてくれた大道芸人トビに貰ったのだとか」

 見た目は思いっきり子供に関わらず、子供らしからぬ表情でやぐらはニヤニヤと笑いながらオビトを見ていた。

「ところで、オビト殿。知っているか? 寒冷地である水の国ではタンポポはあまり自生していない。まして春の花だ。こんな次期に咲いているわけがない」

 つまり、その大道芸人トビと名乗るものがオビトと同一人物だと、鬼鮫に聞かされる前から四代目水影やぐらは把握していたのだと暗に語る。

「そのお方は弟を助けてくれた大道芸人に大層感謝しているそうだ。一度会いたいと、弟御が語って聞かせてくれたその大道芸人の芸が見たいと仰せだ」

「……そのお方とは?」

 オビトはなんとなく嫌な予感がしながらも、尋ねた。

 それにニィっと笑ってやぐらは答えた。

「水の国の大名様だ」

 

 続く

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