隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

46 / 53
ばんははろ、EKAWARIです。
前回久し振りに沢山コメントもらえて嬉しかったので張り切って書き上げましたヒャッハー。
あ、因みに前回ラストに出てきたくノ一ちゃん名前あったらしくて、美瑠さんというそうです。教えて頂き有り難うございました!


45.お気をつけて

 

 

 水の国の都でマフィアへの捕物が行われた日から十日が過ぎた。

 あれからもオビトとカカシ両名は、水の国の大名様から依頼された数々のお掃除(・・・)に駆り出されることとなった。

 四代目水影であるやぐらには「派手に暴れて欲しい」とそう言われている為、好きにやらせて貰っている。

 カカシとの二人一組(ツーマンセル)も、数年のブランクもなんのその、寧ろミナト班でずっと一緒にやっていた頃よりも互いに阿吽の呼吸で様になっている。

 今や二人は、水の国ですっかり有名人だ。

 因みに二人が受けた依頼であるが、ややこしいが……水の大名様から霧隠れに金を払い、それを霧隠れから木ノ葉隠れへと、オビトとカカシへの指名依頼という形で仲介料を受け取った上で正式に依頼を出し、二人は木ノ葉からの指令を、四代目水影やぐらを経由して受け取るという形になっている。

 まあ、なので水の国の大名様は、仲介をしている霧隠れと二人の所属である木ノ葉隠れの両方に依頼料を支払う形になっており、余分な費用を払う分一見損をしているのだが……これも宣伝料だと割り切っているんだろう、とのことであった。

 霧と木ノ葉は上手くいっている。同盟は盤石だ。そして今代の大名である自分と霧隠れも上手くいっているんだと、そう世間にアピールするのが狙いなんだろうとそうカカシはオビトに解説した。

 オビトにはそういう上の考えはあまり良くは分からないのだが、それでもカカシの頭脳が明晰であることは知っている。天才忍者はたけカカシ。悔しいので子供の頃はあまり認めたくなかったけど、カカシのそういう所もやっぱこいつ格好いいなとそう内心では思ってきた。

 だからこそ、彼に反発する事を止めた今のオビトにとって、はたけカカシは誰よりも信頼出来る相棒だ。そのカカシがそう判断したのなら、きっとそうなのだろう。

 まああだからと言って感心してばかりもいられない。

 オビト自身もそういう政治的な裏事情を読めるようにならないと駄目だろう、火影を目指すのであれば……。

 だからこれもまた勉強ではある。

 そういう意味でも、今回への霧隠れへの派遣任務は本当に良い機会だった。

(ミナト先生には感謝してもしたりないな……)

 そう敬意を込めてかつての担当上忍であり、先に夢を叶えた先達でもある金髪碧眼の優男の顔を思い浮かべる。

 

 オビトはミナト先生……四代目火影波風ミナトのことが好きだ。

 カカシや、他の同期だったみんなのことも、里のじいちゃんばあちゃんたちも、みんなが住んでいる自身も生まれ育った木ノ葉隠れの里のことも、オビトは好きだ。大好きだ。

 一番好きなのは、思い人であるのはらリンだけれど、それでも皆に対する好きだって本物だ。

 あの日、カカシの死んだ父はたけサクモについて知ったときに、木ノ葉の白い牙を本当の英雄だって思ったのも、カカシへのおべっかなんかじゃない。紛れもないオビト自身の気持ちだ。

 たとえルールを破ることになっても、掟を破る忍びが忍界ではクズだと呼ばれるんだとしても、それでも仲間を守れる忍びこそがオビトの目指すべきものだ。大切だから、大好きだから、だから守りたいのだ。

 木ノ葉のみんなを守るたい。

 みんなのことが好きだから。

 だからオビトは火影に為りたい。

 守れるものを守れるように。

 そんな火影になることが、オビトの夢だ。

 それでも脳裏に浮かぶのは、あの日……一ヶ月と少し前にミナトに言われた言葉だ。

 抜け忍となり、会談を襲撃してきた彼らの死体を焼いたのはオビトだった。

『よく覚えておくんだよオビト……これが君の目指しているものだ』

 抜け忍となり、テロという行為で霧隠れとの同盟を阻止することを選んだ彼らは、間違っていると今でもオビトは思っている。だが、果たして彼らは悪人だったかと言われたら、そうであると肯定したくない。

 襲撃してきた彼らは元木ノ葉の忍びであった。

 あのメンバー全ての人となりを知っているわけではなかったけれど、それでもオビトの知っている顔も、それなりに親しくしていた人達もいたのだ。そしてオビトが知る限り、彼らは普通の人だった。

 子や孫を慈しみ、感謝し、朗らかに笑う。

 木ノ葉隠れの里(自分たちの故郷)を愛している、そんな普通の人。

 在りし日には『いつも有り難うなあ、オビト』そういって子供だったオビトの頭を撫でてくれて、駄賃だと飴や饅頭を貰うこともあった。三年前の九尾事件の際には、義足を破損して逃げ遅れていたじいちゃんをオビトの木遁分身がおぶったりとか、また、瓦礫に生き埋めになっていたじいちゃんをこれまた別のオビトの木遁分身が救って、涙ながらに感謝されたりといった一幕もあった。

 あの襲撃してきたメンバーおよそ三十名のうち、オビトとそれなりに親しくしていたのは約三分の一ほどであったが……彼が知っている限り、彼らは故郷を愛し、家族を愛し、火の意思のなんたるかを知っているそういう人達だった。そう思っていた。

 何故死ぬことも織り込み済みで、こんな事件を起こしたのかまだ年若いオビトにはわからない。

 でも、襲撃を受けて、宿には多大な被害が出たが故に口に出しては言えないが……彼らに悪意があったようにも、見えなかったのだ。どうして一般に伏せられていた会談と、その正確な会場を知ったのか、警備の穴をつけたのかはオビトにはわからないが……もしかして、その愛里心を誰かに利用されて焚きつけられていたんじゃないのかとオビトは思っている。口に出しては言えないが……。

 それくらい何か不自然な気がした。

 それでも動いたのは彼ら自身の意思だ。

 やったことの責任は取らなくてはならない。

 だから、彼らが抜け忍として、ただの賊として処理されることも、これから先も彼らの墓が作られるどころか、彼らが死んだことすら家族に知らされることがないことも、火影であるミナト先生が彼らを守るべき相手から除外し切り捨てたことも、仕方ない事だと思っている。

(それでも、忘れてもならない……)

 切り捨てた相手の命も背負い生きていく。それが火影なんだとそうミナト先生に言われた気がした。

 だから、オビトが彼らの為に出来る事は、してやれることは覚えておくこと、それだけだ。

 彼らという人達がいたということを。顔を、存在を、その撫でてくれた体温を。

 ただの罪人として、賊として死んでいった彼らのことを……オビトがずっと。

 それだけが生者であるオビトが死者である彼らにしてやれる、唯一の弔いなのだとそう思っている。

 

「……何考えてんの」

 その言葉にはっとして、オビトは唯一自身に残っている黒い右目をパチリと瞬かせる。

 目の前には相棒たる銀髪の少年が眠そうな瞼の下で、感情の読めない色を乗せながらじっとオビトを見ていた。

「いや、何も?」

 それに思わずいつも通りを取り繕って、いつものうちはオビトの声音を意識しながらそう返す。

 なんとなく、罪人でありただの賊とされた彼らのことを想っている事を知られるのは、ばつが悪い気がした。

 そんな黒髪隻眼の青年を前に、はたけカカシはハァとため息を一つ黒い口布越しに零すと、「あのさ、オビト……お前の事をずっと見てきたのは、リンだけじゃないんだよ」とガリガリと後頭部を掻きながら告げる。

「肩くらい貸せって言ってんの。……相棒なんだろ、オレはお前の」

「カカシ……」

 その分かりづらくも優しい墨色の瞳は、お前が何を考えているのかなんてお見通しだよと言わんばかりだった。

 そしてオビトは思う。

(昔のカカシはこんなに優しくなかった……)

 別に悪い奴だったわけではない。

 掟掟と煩くて、頭が堅い面はあったが、冷血でスカしてた嫌な野郎で……でも、決して悪い奴ではなかった。本当に困っているときは助けてくれた。真面目で修行熱心でなんでもよく知ってて、天才な上に努力家で頭の良さはピカイチ……そんなところが悔しいけど格好良くて、尊敬すらしていた。

 ……リンがカカシに惚れている事を知らなければ、もうちょっと昔のオビトだってカカシのことは素直に称賛してたはずだ……と思う、多分。

 昔のあいつの態度はまるで針鼠みたいで口うるさくて……自分とは水と油のようにそりが合わねえって本気で思ったことも何度もあるけれど、本当はカカシは良い奴なのも知ってた。

 リンが言う「カカシは優しいよォ」を口ではどうだか、と言いつつも本当はオビトだって認めていた。

 でもそれはこんなわかりやすい優しさではなかった。

「オマエ……変わったよな」

 思わずポツリとオビトの口をついて出た言葉に、思わずムッと眉間に皺を寄せながら銀髪の少年が言う。

「何、喧嘩売ってるわけ?」

「ハハッ」

 そんな風に感情を露わにジト眼で見られると、普段は大人びているクールなエリート忍者カカシが年相応のガキみたいで、思わずオビトはおかしくなって笑いを零す。

「いや……ありがとな、カカシ」

 眼を細め、心底の感謝を込めながら屈託なく微笑むオビトを前にして、ゆっくりと相手に動揺を悟られないようにカカシは息を飲み込む。

 そして愚痴るように思う。

(変わったのはオマエもだよ……昔のお前はオレにそんな風に笑いかけなかった)

 オビトがリンや先生に対してはよく笑うことは知っていたし、何度も見てきた。

 脳天気で、でも見ているこっちが元気をもらえるような太陽のような笑み。自分に向けられる事はほぼないその笑顔を、マヌケなアホ面だと思っていたのは昔のガキだった頃のカカシ自身だ。

 オビトが太陽のように笑う奴であることは知っている。

 だが、オビトがカカシにそういう顔を殆ど見せたことはなかったのもまた事実だ。

 大体記憶に残っているかぎり、昔のオビトが自分に見せる顔といえば、ぶすくれた顔や不機嫌そうな顔が殆どだった。誰かに向けている笑顔なら何度も見てきたが、それがカカシに向けられる事は本当にレアだった。

 ムッと眉間に皺を寄せて、ぶすっと唇をへの字にした顔で、なにかとキャンキャンと突っかかってきたものだ。

 カカシに片目を渡して以来、一度は死ぬ覚悟を決めた影響か、それからはあまりそういう事はなくなったけれど。でもたまにあの頃のオビトが懐かしくもなる。

 あの頃の自分はこんな風にオビトが穏やかに微笑みながら自分に礼を言う未来が来るなんて、言っても信じなかっただろうと、そうカカシは思うのだ。

 その変化をくすぐったく思う、寂しくも思う、だが悪くは無い。

 まあ、ようは……大人になったのだ、カカシもオビトも。

 いつまでも子供ではいられない。

 

 そんな事を考えながら霧隠れへの道を歩く。

 昔と違いほぼ無言の道中なのにその沈黙が不思議と悪くない。

 このまま真っ直ぐ歩けば、あと五分程で霧隠れの里への正規の入り口に辿り着くだろう。

 当初は……木ノ葉隠れから来た使者として扱われていいた時は、霧隠れへのルートは二人には隠されており、里に入る時には瞳術対策をされた目隠しを着用の元、裏口に当たる洞窟から里へのルートをわからないようにした上で入れられたものだが……霧隠れと木ノ葉隠れの同盟が本決定した後は、使者殿から親善大使殿に名称が変更されると共に目隠しを要請されることもなくなったし、あれほど厳しく張り付いていた監視の目も随分と緩くなったものだ。

 それを、正式に同盟を結ぶことが決まった以上、貴方たちを信用していますという政治的なアピールだろうとカカシは分析した。

「おや、お疲れ様です」

「鬼鮫」

 とはいえ、里内に入るときや霧隠れの里内で監視がなくなるなんてことは、まあまずないのだが。緩くなったのはあくまでも大名様からの依頼で外に出ているとき限定である。

 だからまあ、世話役という名の監視役であるこの男がオビト達が帰ってくる時間に霧隠れの里へ向かう道にいるのも、偶然でもなんでもない。そういう役目だからである。

「中々のご活躍のようで。噂はかねがね……」

「へへ、まァな」

 そう鼻の頭をこすりながら、照れて赤くなった頬を誤魔化すオビトに、鬼鮫は「オビトさん」と名を呼び、それからじっと頭半個分以上自分より背の低い青年……オビトの背が低いのではなく、鬼鮫がデカいだけだが、を見やると言葉を止める。

「鬼鮫……?」

 青い肌に鮫のような風貌をした青年を、不思議そうに見上げるパッチリした黒い右眼から、鬼鮫はフッと視線を外して、「……いえ、今日もよく冷え込みますからねェ……風邪などひかないようお気をつけて」と零した。

「……」

 それが誤魔化しの言葉であることは二人ともすぐに気付いた。おそらく、これは警告の言葉だと、オビトは直感した。そのうえで、何にも気付いていないような態度と表情声音を取り繕って、「オウ、心配してくれて有り難うな!」と二パッと笑った。

 これでも演技は得意なのである。

 

 ……そうして案の定というべきか……事件はその夜にはじまった。

 

「御夕食の時間です」

 そう言ってオビトとカカシの客室まで食事を運んできたのは、今まで見かけたことのない、善良そうな顔の年若い忍びであった。

「オウ、ありがとな」

 挨拶は人間関係の基本だ。だからオビトがそうやってにこやかに礼の言葉を言うのもまあいつも通りだ。

 そうやって部屋に運ばれてきた食事を、オビトは一口だけ口にして、後は食べたように装って破棄するのもまたいつものことであった。

 出されたスープに匙をつけ一口口に含む。

 ピクリ。

 それに口をつけた時点で、オビトはカカシにサインを出す。

 そのサインの意味は『毒が入っている。食べるな』だ。

 おそらく植物が由来の遅効性の毒だ。

 ほぼ無味無臭なので、忍犬並に優れたカカシの鼻でもわからないだろう。

 オビトにそれがわかったのは彼が木遁使いで、その作り物の右半身が人間よりどちらかといえば植物に近しいからだ。扉間先生の座学や、千手屋敷の自主学習でも植物や植物性の毒のことについてはそれなりに学んできた。

 これが動物性由来の毒であれば判ったかは怪しい。

 とはいえ、体の半身が柱間細胞産の義肢で出来ているオビトは、かなり頑丈だ。これくらいの毒ならもう少し食らっても問題なく一時間もせず解毒出来るだろう。

 とはいえ、毒だとわかっていて食らう趣味もない。

 残りの食事はカカシの分共々食べたように装い破棄をし、いつも通りに盆を外に出した。

 

 * * *

 

「それで、客人はしっかり例の食事を食べたのだろうな? 鬼鮫」

「はい、河豚鬼様」

 そう殊勝な態度で膝を折り、鬼鮫はほんの二ヶ月ほど前まで直属の上司だった相手に頭を下げた。

「クク、ならいい」

 そう言って笑う男の名前は西瓜山河豚鬼。

 霧隠れの忍刀七人衆の一人であり、大刀鮫肌の持ち主である。

 人より頭一つは大柄な筈の鬼鮫より更に大柄で、名前通り西瓜……若しくは河豚のようなまん丸くもガッシリした体躯に顔をした、長い髪の一部を頭上で結い上げた、醜悪な顔の男だ。

 この男の直属の部下であった時代、かつての鬼鮫に与えられていた専属任務は仲間殺しであった。

 情報を敵に渡さない為に、口封じとして同じ霧の忍びを殺す。

 それがかつての干柿鬼鮫の当たり前の日常だった。

 鬼鮫は自分がろくでもない人間だと知っている。

 一度でも仲間を手にかけた人間が、碌な人生を送れるとは思っていない。

 それでもこの男に比べたらマシだと侮蔑し、脳内で唾を吐く。

 だが、そんな侮蔑を飲み下して、何も感じていない事を装い深く頭を下げる。

 忍びとは、耐え忍ぶものだ。

 軽蔑に値する男だろうと、上司は上司。

「期待しているぞ、鬼鮫」

 その元上司の言葉に、鬼鮫は益々深く頭を下げた……自分の腹の内を万が一にも読み取られないように。

 

 * * *

 

「はたけカカシさんいらっしゃいますか?」

「はいはい、何?」

 夕飯の盆を持ってきた忍びとはまた別の忍びが、そんな言葉を告げながらひょっこりと二人の客室に顔を見せる。

「水影様が呼んでいらっしゃいます。きていただけますか?」

「こんな時間に?」

 今の時刻は夜の二十時だ。寝るには早いが、やぐらが二人を呼び出すのは大体が朝か昼なので、夜に呼び出すことは基本、無い。

「なんでも急用だとかで……」

「オレは?」

 その台詞に自分を指さしながらオビトがアピールすると、銀髪の少年を呼びに来た忍びは困ったように「呼ばれているのははたけカカシさんだけですので……」と返し、オビトは「えーカカシだけかよ」とわざとらしくがっくりと肩を落とす。

「はいはい、じゃあ行ってくるから」

 そういってカカシは手を軽くふりながら、トントンと足の親指で小気味よく地面を二度叩く。

 そのサインの意味は「気をつけて」。それにわかっているよ、と返すようにブスくれた顔を作って、オビトは「オウ、行ってこい」そう返した。

「……」

 そうして、五分が経ち、更に十分が経った頃……トントンとここ霧隠れに来てから既に聞き慣れたリズムでドアがノックされる。

「オビトさん、ちょっと良いですか」

「鬼鮫」

 案の定、ひょっこりと現れた青い肌をした青年は、見慣れた自分たちの世話係兼監視役の干柿鬼鮫であった。

「……私について来てくれませんか?」

 

 続く

「少年編」「青年編」「火影編」の三部作と「少年編」「同盟編」「青年編」「上忍師編」「火影編」の五部作とどっちのほうがいいですか?

  • 三部作で
  • 五部作で
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。