隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
コメント沢山もらえたの嬉しかったのでノリで書き上げましたヒャッハー。
あと少し早いですが、三部作にするか五部作にするかアンケートは今回で締め切らせていただき、それに伴い今回の章題は変更させて頂きます。
沢山の参加ありがとうございました!


46.罠

 

 

 

 暗い洞窟に向かう道を追いかける。

「鬼鮫、どこまで行くんだ……?」

「…………」

 わざとらしいだろうか、少しだけ心細そうな声音を意識して黒髪隻眼の青年……うちはオビトは唯一松明を持って先を進んでいる大柄な少し年上の青年の背を追いかける。

 鬼鮫は何も言わない。

 この鍾乳洞の道は、はじめて霧隠れの里に入ったときの事を思い出させるが、あれともまた別の洞窟なんだろうとオビトは分析する。知らない道に、知らない洞窟。

 そんな道をゆらゆらと鬼鮫の持つ頼りなげな松明の灯りだけが照らしている。

 ぴちょん、ぴちょんと、水滴が垂れる音がする。

 凸凹で所々濡れている道は足場が悪く、うっかり気を抜けば転んでしまいそうだ。

「なぁ鬼鮫……」

 その幾度目か知れぬオビトの問いかけに、ピタリと身長2メートル近い大男は足を止めて、振り返りもせずにポツリと言葉を落とす。

「煩い方ですねェ……」

 それから、クルリとゆっくりとオビトのほうを振り向き、ボウと松明の灯りで仄かに浮かび上がる感情を読ませぬ表情で、無感動に言葉を紡ぐ。

「前から思っていましたが、気安く話しかけないでくれますか? ……木ノ葉の忍び風情が」

 その言葉を合図にするようにバッと灯りは消え、周辺を暗闇が包む。

 同時にがくりと、オビトは膝を落した。

「クッ……」

 苦悶に満ちたような声を上げ、蹲る黒髪隻眼の青年を前に、ばっと、いくつもの松明を持った忍び達がずらりと前から後ろからオビト一人を囲む。

「よくやった、鬼鮫!」

 そういって悠々と出てきたのは、丸々とした大柄な体躯に長い髪をした霧の忍び……オビトが写真でだけ見たことがある男、霧隠れ忍刀七人衆の一人である西瓜山河豚鬼であった。

 

 思い通りにことが進んでいる。

 そんな充足感を前にニヤリと笑いながら河豚鬼は、高所より洞窟の地面に蹲っている黒髪隻眼の青年を見下ろす。右の顔全面に走る渦のような皺のような無数の傷、うちは一族に多いと言われる黒髪に、傷のせいで判りづらいがよくよく見れば整っている目鼻立ち。幅広にとった布を眼帯のようにして左顔の半分を覆っている木ノ葉隠れの額宛。

 河豚鬼自身がこうして顔を合わせるのは初めてであるが、間違いない。

 これが『隻眼の木遁使い』だ。

 三年前突如として現れ、各国が欲しがり密偵を放てども、うちは一族で隻眼の男であるという情報以外全て正体不明(アンノウン)とされた男。

 これ以上ない手土産だ。

 河豚鬼は既に霧隠れの里には見切りをつけている。

 四年前のあの日、とある木ノ葉の万年下忍と呼ばれた男との戦いで、彼を含む忍刀七人衆は半壊の憂き目にあった。半数が死に、情報を持ち帰るためだと言い訳して河豚鬼は逃げ、生き延びた。

 それから河豚鬼の屈辱の日々が始まったのだ。

 この己が、忍刀七人衆の一人である西瓜山河豚鬼が、嘲笑され誰にも期待されなくなった。

 碌な任務もまわさず、下に見る扱いで、そんなもの許せる筈がない。

 だから、子供のような姿をした化け物を支援して三代目水影は消してやった。というのに、なのに河豚鬼の現状はちっとも変わりやしない。巫山戯るんじゃない、誰の御陰で水影になれたと思っている。もっと己は敬われるべき人間だろうが。

 おまけによりにもよって四代目水影を図々しくも名乗るあの男は、木ノ葉隠れの里なんかと手を結ぶなど世迷い言をほざいている。たかが人柱力の小僧風情が調子に乗りおって。

 もう、我慢の限界だ。

 見限って当然ではないか。

 だから同盟が盤石だと思わせて油断させたタイミングで、親善大使とかいう名目で里に滞在している木遁使いの小僧を手土産に、隠れて河豚鬼が呼び集めてきた同胞達と共に雲隠れの里に亡命することにしたのだ。

 木ノ葉隠れの里と同盟を結ぶことや、今の水影に不満を抱いている者は、何も河豚鬼一人ではない。

 水影からの呼び出しなんて嘘だ。

 今頃もう一人の木ノ葉から来た小僧も、同胞が葬っている所だろう。雲への手土産はこいつ一人でおつりが来る。だから白い牙の息子……白雷のカカシ、アレはいらない(・・・・)

 隻眼の木遁使い。

 忍界の歴史上、史上二人目の木遁使いにして、その素体は彼の有名なうちは一族であり、一族固有の血継限界である写輪眼も持ち合わせているという。片目しかないという点だけ残念だが、これほど美味しい土産もそうはいない。忍びの肉体というのはそれだけで機密情報の塊だ。

 一番は生け捕りが望ましいが、最悪死体でも構わない。

 手に入るならば、どちらでも。

 だが、まあ生きている方が価値が高いのも確かだ。だから二ヶ月程前まで自分の直属の部下だった鬼鮫に命じて今夜の夕餉に麻痺毒を仕込ませた。

 あそこで蹲っているのも、毒が効いて動けないからだろう。

 無味無臭で、服毒した約二時間後に効果を発揮し、症状が顕われれば丸一日は動けなくなる。副作用として毒が抜けた後も、顔面麻痺や身体の痙攣、神経の伝達障害などが出るらしいが……まあそんなのはどうでもいいことだ。そういう毒を選び、指示をした。罠とも知らず、客人は夕餉を今日も残さず食べたのだという。

 どんな手練れも動けなくすれば、葬るのも、連れ去ることも容易い。

 干柿鬼鮫はずっと世話役として、木ノ葉から来た客人共の傍にいた。関係は中々良好だったと聞く。霧隠れの里に滞在してからなんの事件も起こることがなかったのもあり、油断しきっていたことだろう。

 特に隻眼の木遁使い……うちはオビト、とかいう名前らしい、は鬼鮫に随分と心を許していたとか。

(馬鹿め)

 これだから木ノ葉は甘いのだ。

 干柿鬼鮫は西瓜山河豚鬼の従順なる部下だ。

 普通の人間ならば……真っ当な忍びも嫌がりそうな任務も、河豚鬼の命令であればどんなものでも粛々と従い、遂行してきた。河豚鬼にとって従順でそれなりに使いやすい便利な道具(ぶか)……それが干柿鬼鮫だ。

 他里の忍びを信用するからそんなことになるのだ、マヌケめ。

「さあ、鬼鮫、やるのだ……!」

「はい、河豚鬼様」

 ポトリ。

 松明の灯りに照らされた暗い洞窟の中で、血の花が咲いた。

 

 * * *

 

 人気のない森の中で、血の匂いが辺りに漂う。

「…………」

 自分を襲うため待ち伏せしていた忍びの数は全部で十五人。

 毒が効いている相手を仕留めるだけだと誤認していたからか、ここに集まった忍び達に腕利きはおらず、それらを返り討ちにすることは少年にとってはたいした手間でもなかった。

 それを無感動な墨色の右目と赤色の左目で眺めながら、あっちは大丈夫なのかね。変な所でドジを発揮してヘマしてなきゃいいけど、なんて事を考えながらはたけカカシはクナイについた血を錆びないうちに手早く拭う。

 パンパンパン。

 軽快な拍手が鳴り響き、後ろを見れば案の定、そこにはカカシが想定していた人物が少しだけ楽しそうに口元に微笑みを浮かべながら、悠然と立っていた。

「……水影様」

「見事、見事。流石は四代目火影の懐刀、白雷のカカシ。名の通り……雷のような早さだ」

 そう、飄々と幼い少年のような姿をした青年の男が笑う。

 さあ……答え合わせの時間だ。

 そう言われたような気がして、カカシは軽く肩を竦める。

「罠にかけたのは彼らの方ではなく、水影様、アナタの方ですね」

 それに正解というように枯草色の髪をした少年のような成年の男は益々深く微笑む。

 

 ……その答えを出すのは、カカシの頭脳からしたら何も難しいことではなかった。

 霧隠れの里には敵が多いが、それは里だけではない、この男本人にも言える話なのだ。

 四代目水影やぐら。

 彼は三代目水影の圧政時代に霧の忍びとなり、未来の子供達の為だとして三代目の横暴に我慢ならぬと声を上げ、クーデターの中心人物となって三代目水影を討ち取り、四代目水影の座に就いた。

 三代目政権下で苦しんできた者達にとっては英雄であるが、逆にいえば三代目政権下で甘い汁を吸っていた者からしてみれば、逆賊の徒が水影を僭称しているに等しかったことだろう。

 一部からは英雄視されているが、不満を持つ者も多い。

 それらの膿を炙り出し、他国への牽制や時間稼ぎも出来る一挙両得の策……それこそが男にとっての木ノ葉隠れの里との同盟だった。

 木ノ葉隠れからの使者……同盟設立までの人質でもある親善大使……自分たちはエサだ。

 何故今回の任務で手練れを寄越せと木ノ葉隠れの里に要請したのか、その理由。

 木ノ葉との同盟反対派を炙り出し、処分するため……その口実を作る為の生き餌だったからだ。

 手練れを寄越せと言われたら、他国にも名を通っている者が来るだろう。それを釣りに使う気だった。

 そんなやぐらにとって、派遣された二人の使者のうち、片方が『隻眼の木遁使い』というビッグネームであったことは嬉しい誤算だったのだろう。

 木遁使いは過去忍界の歴史において忍びの神……千手柱間しか発現したことのない珍しい能力だ。その史上二人目の使い手がオビトだ。おまけにうちは一族の身体に写輪眼までついている。

 ここまでエサとして相応しい人間はそうはいない。

 とはいえ、実際に敵に奪取されても困るのだ。

 あくまでも、木ノ葉から借りている生け餌なのだから。エサに何かあって木ノ葉にクレームを入れられるような事があっても困る。とはいっても、それで何かあったら、それはそれで「木ノ葉隠れからの親善大使を害した不届き者に制裁を」と遺憾の意を表してしれっと、木ノ葉へ協力して敵を追い詰める感じで乗り切るつもりだったんだろうが……それでも、敵に奪われたら木ノ葉に借りを作るし、面倒なのも確かである。

 はじめて顔を合わせた時に鬼鮫は言った。

『何、少し試させていただいただけですよ。あまりに弱すぎては困りますからねェ』

 と。

 そのことからも、自力で罠を突破できてかつ生き餌の役目も果たせる人間こそが、やぐらの求めていた使者(ひとじち)だったのだろう。

 同盟が本決定した後、派手に暴れさせていたのも、お眼鏡にかなったからだ。

 ほら、お前達の欲しいエサはここにあるぞ、美味しそうだろう?

 とそう誘いをかけていたのだ。

 四代目水影やぐらにとって、隻眼の木遁使い(うちはオビト)は不穏分子を釣り上げ、処分するための……生き餌だ。

 

 * * *

 

「ぐ……ぁ、がァア……鬼、鮫、貴様ァ……!」

 ぼたりぼたり。

 口から大量の血を滴らせ、胸から長剣を生やしながら、西瓜山河豚鬼は信じられないように目を見開き、真後ろにいる自分に従順な部下だったはずの男を睨み付ける。

「流石は忍刀七人衆に選ばれた方だ……心臓を狙ったつもりなのですが、逸らされるとは。とはいえ、肺を貫いた以上長くは保たないでしょうがねェ……!」

 そう淡々と、感情の籠もっていない声で鬼鮫は続けた。

「河豚鬼様……!!」

 動揺しながら、オビトの周囲を囲っていた忍び達が河豚鬼の名を呼ぶ。

「鬼鮫、貴様、何故だ……何、故」

「河豚鬼様」

 それに、黄色い眼にしっかりと侮蔑の色を今度は隠すでもなく宿して、青い肌の人間離れした風貌の青年は言った。

「アナタは私の専属任務がなんだったかよく御存知でしょう?」

 仲間殺し。

 それが鬼鮫の仕事だった。

 この男の下で、この男の指示で幾人も幾人も同じ霧の忍びを葬ってきた。

 情報を敵に奪われないために。

 里の為に、何人も何人も……それは頭のおかしくなりそうな日々だった。

 自分が何者なのかわからなくなる。

 自分は一体何者なのか、敵なのか、味方なのか。

 何のために殺しているのか。

 本当にこれが里の為なのか。

 自分の目的も立ち位置も何もかも判らなくなる……それが仲間殺しという任である。

 それでもずっと文句も言わず従った。やってきた。

 だが……四代目水影となったやぐらに直属の部下として引き抜かれ、鬼鮫は知ってしまったのだ。

 敵に情報を渡さない為仲間殺しを指示してきていた上司こそが敵の内通者だったことを。

 河豚鬼は霧の情報を雲に流していた。

 裏切り者だ。

 なら、一体自分は何のために殺していたのか。

 巫山戯るな、とそう思った。

 それでいいと、やぐらは答えた。

 そう思えるうちはオマエは狂ってなどいない。オマエは真面目で責任感の強い霧の男だ。

 あんな男と破滅する必要は無い。

 オレはこの里を変える。膿は絞り出す。

 手伝え鬼鮫。

 そう告げる小さな手を、鬼鮫は取った。

「……仲間殺し、それが私の仕事でした。敵に情報を渡さない為同胞を処分するのが私の仕事です。その私が……雲の内通者であるアナタを赦すはずがないでしょう?」

 そういって、鬼鮫は河豚鬼が背負っている大刀・鮫肌に手を伸ばす。

「ギィギィ……!」

 そんな声を上げて、生きた刀……鮫肌は鬼鮫のチャクラを吸い歓喜する。

「ハハッ、ほら鮫肌もアナタより私の方がいいと……そう言っていますよ、河豚鬼様……!」

 そういって鬼鮫はそのまま河豚鬼から奪った鮫肌で、河豚鬼の体を削り、「それではご機嫌よう」そんな言葉と共に元上司にして忍刀七人衆の一人であった河豚鬼の首を刎ねた。

 そんな鬼鮫を前にオビトの周囲を囲った忍び達は動揺する。

 彼らはまさか、尾のない尾獣……霧隠れの怪人を相手にすることになるとも、こんなに呆気なく西瓜山河豚鬼が死ぬとも思っていなかったのだ。だが、彼らが正気に戻るまで待っていてやるほど鬼鮫は甘くない。

「水遁・爆水衝波……!」

 周囲を自分のフィールドに変えるために、鬼鮫はその忍術を発動し、言う。

「オビトさん……いつまでそのごっこ遊びを続けるつもりですか? アナタ、本当は毒なんて効いていないんでしょう? いつまでもそうしていると周囲ごと、ヤりますよ」

 それは霧隠れの怪人の本気を感じさせるほどに、重い声であった。

 その鬼鮫の言葉にバレたか、と言わんばかりにオビトはニヤリと笑って、ばっと口寄せの印を切った。

「ぎゃああ!」

 忍法・屋台崩しの術。

 それは自来也との修業時代に彼に習った術の一つであり、巨大な蝦蟇を相手の頭上に口寄せしてそのまま敵を押しつぶす術だ。呼び出されたのは例によってオビトとの契約獣にして相棒のガマ次郎三郎である。軽く二、三人は押しつぶし、ひらりとオビトはガマ次郎三郎の背に乗った。

 そんなオビトの耳に鬼鮫の声が届く。

「水遁・千食鮫!」

 周囲を満たした水を媒体に文字通り千に近い数の鮫型の水弾が生み出され、四方八方から囲っていた忍び達に襲いかかる。

「なんじゃ、アイツおっとろしいな!」

「ハハ、鬼鮫の奴マジですげーな!」

 そんなことを言いながらオビトはガマ次郎三郎の背にしがきつき、ガマ次郎三郎はピョンピョンと軽快に洞窟内を跳ねながら鬼鮫の攻撃から逃れる。

 鬼鮫が操る術の規模は壮大であり、洞窟の中で逃げ場もなく忍び達は抵抗すらままならずやられ、押し流されていく。あの男はたった一人で数の暴力を作り上げているのだ。

 こうして上から俯瞰して見てても思うが、あの鮫型の水弾全てを自身のチャクラを水に変換して作り上げていることを思えば、鬼鮫の保有しているチャクラ量に底知れないものを感じる。

(下手すりゃオレと張るか……いや、チャクラ量はオレより多いかも)

 その事実に薄らとオビトの背に冷や汗が流れる。

 オビトは元々精神エネルギーに優れるうちは一族の生まれであるが、柱間細胞による義肢や疑似臓器で体の三分の一が置き換えられてから、一般人とは比べものにならない莫大なチャクラ保有量も手にすることとなった。

 柱間細胞移植後の自分がもつチャクラ量が、木ノ葉隠れの里でも五指に入るレベルである事は知っている。チャクラ量でオビトより明確に上と呼べたのは、四代目火影波風ミナトの妻であるクシナくらいのものだろう。

 そんな柱間細胞という名のバフで水増しされているオビトよりも、チャクラ量で上回っている可能性が高い辺り、鬼鮫の尾のない尾獣という通称は伊達ではなかった。

 程なく、洞窟に詰めていた忍び達……約四十人の沈黙を確認する。

 殆どは死んでいるが、情報を抜き取るために何人かは生かしてある。それをオビトも協力して拘束し、来て貰ったガマ次郎三郎を帰してから、改めて鬼鮫に向き合い真っ直ぐに「助けてくれてありがとうな」とオビトは彼に礼を言った。

「礼など不要ですよ。私は水影様の指示に従ったまでです。内通者の処分は私の仕事ですから。それに……気付いているでしょうが、アナタはその為のダシに使われていたんですよ。寧ろ、怒るべきだと思いますがね」

「でも、警告をくれたのはオマエの意思だろ」

 そのオビトの言葉に、鬼鮫はなんともいえない顔をしてため息を一つ零し「……私の警告があろうがなかろうが、結果は何も変わらなかったと思いますけどねェ」と愚痴るように呟いた。

「良いんだよ、オレが礼を言いたいんだから。ありがとうな、鬼鮫」

 その真っ直ぐな黒い瞳に、鬼鮫はなんともいえない顔をして「……本当におかしな方だ」とそう呟いた。

 

 * * *

 

「それで、これで木ノ葉は霧隠れに借りを返した、ということでいいんですね?」

 と、カカシは今回の顛末を水影と共に受け取りながら、目の前の幼子のような姿をした男に確認をとった。

「ああ……」

 カカシは天才忍者と呼ばれるだけあり、記憶力には自信があるし、地獄耳だ。だからよく覚えている。

 あの日、水の国火の国双方の大名が湯の国で会談を行った日、『……恩に着ます』と言った四代目火影波風ミナトに四代目水影やぐらは言った。

『何、貸し一つだ、そのうち返して貰う』

 おそらく今回のことを念頭に入れて、そう返したのだろう。

(食えない方だ……)

 カカシはそう思う。だが、影というのは……どこもそういうものなのかもしれない。

 清濁併せのんでこその施政者というものだろう。

 その肩には大勢の人間の命や願いが乗っているのだから。

「これからも、木ノ葉と霧の末永い友好を願っていますよ……」

 そういってカカシは相棒を迎えに行くため、忍犬を呼び出し、四代目水影に背を向けた。

 痛む胃を抑えながら、なんだか無性にオビトのマヌケ面が見たいなァと思うカカシであった。

 

 続く




第二部同盟編はあと三話で終了します。
次回47話「邂逅」ファイ!

「少年編」「青年編」「火影編」の三部作と「少年編」「同盟編」「青年編」「上忍師編」「火影編」の五部作とどっちのほうがいいですか?

  • 三部作で
  • 五部作で
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