隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
おまたせしました、48話です。今回は何故第二部冒頭のオビトが長髪設定だったのかのある意味答え合わせ回です。ではどうぞ。


48.既視感

 

 

 

 霧隠れとの調印式を五日後に控えた二月二日。

 この日、オビトとカカシは今日は……というべきか、今日もというべきか、霧隠れの忍者養成学校(アカデミー)のほうに顔を出していた。

 湯の国での会談以来、色んな依頼に引っ張りだこであったオビトとカカシの両名であるが、流石に調印式の日が近いので二月に入ってからはそれもなくなった。

 なので、午前中は霧隠れとの交流の一環として将来有望そうな若い忍びと忍び組み手を行ったり、水影様と調印式の当日のことについて色々話し合ったり、忍具の点検をしたりなどして、夕方くらいからアカデミーの一年生達と遊んでやったり修行を見てやったりと、そんなスケジュールになっている。

 調印式は火の国と水の国の丁度間にある、木ノ葉隠れの里から見て友好国の渦潮隠れの里が場所を提供することになった。

 渦の国で一番立派な高級旅館を貸し切って午前中に調印式を執り行い、午後からは調印式の為に招待された各国の使者や重要人物、そして今回調印式の為に奔走した立役者達を招いての二次会とも呼べるパーティーが行われる。そのパーティーに出席し、他国の要人とも交流を深めたら、そのあとはそのまま霧隠れの面子とはお別れし、木ノ葉隠れの里に帰還する予定だ。パーティーの終わりと共に、この三ヶ月に及んだSランク任務は終了となる。

 勿論、親善大使であるオビトやカカシも、調印式後のパーティーに正式に招かれた客の一人である。

 公平性を保つため、会場の警備は渦潮隠れの里に依頼され、渦忍が執り行う予定である。

 なので、パーティーのほうではあくまでも招待客の一人として、正装で出席するようにと言われている。誰かの護衛をする必要も無いし、客の一人としてパーティーを存分に楽しんで欲しいと、そうやぐらは穏やかな微笑みを浮かべながら労を(ねぎら)うように、木ノ葉隠れからの親善大使であるオビトとカカシ両名に告げた。

 生憎パーティーの出席に適しているような衣装は持ってきていないため、パーティ当日着ていく服に関しては、霧隠れの里にある呉服屋に依頼を出して仕立てて貰うこととした。調印式に間に合うよう急いで仕上げてくれるそうだ。

 オビトは藤納戸色に、黄色の差し色をした装束を、カカシは若菜色の羽織に、麹色の着物を仕立ててくれるそうだ。家紋も入れましょうか、と言われたので頼んで置いたが結構豪奢な衣装になるらしい。それも経費で落ちるので、自腹を切らずに済んでラッキーだった。

 まあ、なにはともあれ、調印式当日までオビト達に出来る事は特にない。

 あとは野と為れ、山と為れ。何事も起きず無事終わることを祈るばかりだ。

 その点、何も知らない子供達と遊ぶのは良い気晴らしになる。

 オビトは今日も忍術を織り交ぜた影鬼や、鬼ごっこなどの子供達の遊びに付き合い、カカシは面倒くさそうに手裏剣の投げ方などを子供達に見本として見せてやったり、投げ方を指導してやっていた。

 ここに通うのも、あと三日ほどだろう。

 霧隠れでは結局、一番居心地いいのはどこかと言われたらここ、アカデミーであったような気がするとオビトは思う。子供の順応性って凄い。こうやって子供達の相手をしている間は余分な事を考えずにすむから、オビトとしても助かるのだ。

「……」

 ふっと、脳裏によぎるのは一昨日に出会った壮年の男の姿だ。

 白髪(しらが)が沢山入り混じった、針鼠みたいなボサボサの長い黒髪で、顔の半分以上が衣服で覆われてよくわからなかった浮浪者のような中年の男。何故か、オビトを見て嬉しそうにしていた、不健康そうな肌に黒い硝子みたいな瞳の……二重まぶたの男。

 その男の事については当然、カカシや四代目水影に報告している。

 そもそもオビトがあの湖に行ったのは、息抜きも兼ねてとはいえ、不審な人影を見かけたとのことからの調査依頼の一環なのだから、報告するのは当然のことだろう。

 だが、あの時出会った男の事が気になって仕方ないのは……。

(やっぱり、どこかで見たことがあるっていうか……あのオッちゃん、誰かに似ていた気がするんだよな……)

 ……既視感が離れないからだ。

「いて」

 その時、コツンと頭に紙飛行機があたって、オビトは振り向く。

「うちにいちゃん、何ぼーとしてんだよ」

「なあなあもっと遊ぼうぜ」

「つまんなーい」

「悪ィなお前ら、ちょっとぼーとしちまった」

 そういってオビトは子供達の頭をくしゃりと撫でた。

 子供達はそれだけで機嫌を直して、きゃきゃと実に楽しそうだ。

「……オビトさん」

 子供の高い声が、高さに似合わぬ落ち着きと遠慮を孕みながらオビトの名を呼ぶ。

 ここの子供達はオビトとカカシのことは、当初先生に教えられた名の「うちにいちゃん」「たけにいちゃん」と呼ぶから、2ヶ月前の会談後に本名を名乗って仮面を外した後も、わざわざ呼び方を本名のほうに訂正して呼んできたのは、ここの子供達の中では一人だけだ。

(ハク)

「少しいいですか?」

 そういって黒髪色白のとんでもない美貌を持つ子供は、遠慮がちな上目遣いでオビトを見上げた。

 

 二人でベンチに座ってゆっくり話す。

 思えば白とこうやって二人で話すのも、少し久し振りな気がするなとオビトは思う。

 白はまだ5歳だか6歳だかだろうに、年に似合わず落ち着いていて聡明な子供だ。だからこそ、他の子とオビトが遊んでいるとどうにも遠慮してしまう所がある。

 まだ子供なんだし、そんな遠慮なんてしなくてもいいのになとオビトは思ってしまうのだが、そのあたりはこの子供の性分って奴だろう。ならば、オビトが口を挟むことでもない。

「そうですか。ではもうすぐ再不斬さんはかえってくるんですね」

 もうすぐ行われる調印式……それ自体は大々的に告知されているので、機密情報でもなんでもない。なので、調印式の前日に霧とはお別れをする旨をオビトが告げると、白は少し弾んだ声で口元を綻ばせる。

 オビトが木ノ葉隠れに帰る、ということは、当然木ノ葉隠れに滞在している霧からの親善大使であるあの二人……照美メイという名前らしいくノ一と、白の大好きな桃地再不斬も霧隠れの里に帰還するってことだ。

 これだけの情報でそこにすぐ辿り着くあたり、やっぱりこの子は頭が良いんだろうなあとオビトは思う。

 多分、白は天才ってやつなんだろう。

 でも幼少期のカカシと違って鼻につかないのは、この子が人への気遣いを忘れない控えめで優しさに満ちた子だからだ。その年に似合わぬ聡明さや垣間見える天才性に、幼少期の相棒との共通点を見出すことも多々あるのだが……ものすごく可愛げがなくてツンケンしてたカカシの子供の頃に比べると、白はちょっと良い子過ぎるくらいに良い子である。

(もう少し、肩の力を抜いて生きてもいい気がするんだがなァ……)

 だがそういうのは、他人が言ったところで響くものでもないだろう。

 ふと、それまで嬉しそうにしていた白がその鳶色の瞳に憂いを乗せて、ポツリと呟く。

「……でも、少しさみしい気はしますね。せっかくオビトさんとなかよくなれたのに、かえっちゃうんですよね」

 再不斬さんが帰ってくるのは嬉しいけど、と複雑そうに苦笑する子供の艶やかな黒髪にポンと手を置いて、「ま! そんな顔すんなよ。これからは霧と木ノ葉は同盟国になるんだから、また会う機会もあるだろうぜ」だから今は再不斬の帰還を素直に喜んどけ、とそう頭を撫でながらオビトがニッと笑うと、つられるように白も「はい」と花のようにはにかみながら笑った。

 それから白はややあってから、何かを決意したような顔で黒髪隻眼の青年を見上げ、言う。

「あの、オビトさん。ぼく……ずっと、オビトさんに言わなきゃと思ってることがあって……でもいいだし辛くて……」

「……ん?」

 白が何を言おうとしているのか、検討もつかないオビトはその言葉にキョトンと目を瞬かせる。

「オビトさん、あの……ぼく、ぼく……」

 白は名前の通りに雪のように白い肌の目尻を赤め、瞳を潤ませながら、まるで赤い薔薇のような色をした唇をふるふると震えさせ、オビトを見つめる。

(え、何この空気)

 オビトの背中に冷や汗がたらりと一筋流れる。

 彼の認識では、この白という子供が好きな相手は霧隠れの鬼人と呼ばれる桃地再不斬の筈である。

 実際に、再不斬さん再不斬さんと嬉しそうにその男の話をする白の姿は何度も見てきている。

 白は、リン以外の女性など眼中にないオビトの目から見てもものすごい美形だし、良い子だ。

 雪のように抜けるように白い肌に、サラサラの艶めいていて癖一つ無い、烏の濡れ羽色の髪。パッチリとした鳶色の瞳に長い睫毛、薔薇色の唇。まさに十年後には絶世の美女になっているだろうと、そう思えるほどに全てのパーツが美しく整っている、奇跡のように愛くるしい子供。

 そんな将来絶世の美女になるだろう子供が、瞳を潤ませながらオビトを上目遣いで見上げてくるものだから、動揺するなってほうが無理だろう。

(おかしい、白が好きなのは桃地再不斬の筈だろ……!)

 オビトには白がオビトに何を告げようとしているのかがさっぱりわからない。

 だが、恥ずかしそうに目尻を赤らめ、潤んだ鳶色の目で見上げられ、前から言わなきゃ、いいだし辛くて……とか言われると、なんだか、自分が告白されそうになっているようにしか思えなくて、オビトは内心ものすごく焦っていた。

(え、オレ白に告白されるの……?)

 いや、ちょっとまて、白がいくら良い子で将来有望でも無理だって……! オレにはリンが、心に決めた女性(ヒト)が……どうする、どうすればいいんだこれ!? とオビトの脳内は余計な事を考えてパニック寸前であった。

「……ご」

「ぼく、男なんです……!!」

 思わず、ごめんと謝ろうとしたオビトの声にかぶせるようにそんな白の声が響いた。

「……へ」

 漸く言いたかったことを言えたからか、白はさっきまでのもじもじとした……オビトの目にはまるで好きな人を前に恥じらっている乙女かなにかのように見えた……な雰囲気を綺麗さっぱり消し去って、どことなくスッキリしたような顔で、気楽そうに言葉を続ける。

「オビトさんがぼくのこと、女の子だってかんちがいしてたのは気付いてましたけど……やっぱりいいだし辛いじゃないですか……でも、いつまでもごかいさせたままでいるのもどうかなって思ってたので、オビトさんが帰る前にていせいできて良かったです」

 これでスッキリしました。そう晴れやかな顔で将来絶世の美女になるだろう子供改め、正しくは将来絶世の美少年になるだろう子供が無邪気に笑った。

「ではオビトさん、木ノ葉に帰ってもおげんきで。いままで仲良くしてくれてありがとうございました」

 そう言って、ぺこりと礼儀正しく頭を下げて白は自分が今住んでいるアパートのほうへと去って行った。

 オビトはといえば、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、ぽかんと彼を見送り、ややあってからポツリと呟く。

「白が……男」

 脳裏をよぎるのは、恋する乙女のように頬を赤らめながら、嬉しそうに桃地再不斬について語っていた白の姿だ。そんな風に大好きが溢れている白を見て、オビトは白が再不斬に恋をしているんだなあと思っていた。

 そう、幼いながらも恋をしている少女、なのだと。

 オビトはなんの疑いもなく白のことを女の子だとそう思っていた。その根底が白の発言によって覆る。

「はァ……!? 白が男……? 嘘だろォ……?」

 頬を赤らめ、嬉しそうに瞳をキラキラさせながら再不斬について語っていた白。

 つまりあれは恋……ではなくて、憧れの大好きな兄貴分をオビトに自慢していただけだったのか、とオビトは漸く気付いた。

 いや、確かに白くらいの年齢なら色恋よりそっちのほうが自然なのかもしれないが……あれだけ可愛いのに、まさか白が男の子とは。

「……世の中って不思議だなァ」

 そんなオビトを、少し離れている場所からカカシが残念なものを見るような眼で眺めていることに、気付く余裕のないオビトであった。

 

 * * *

 

 ピュルルル、と冬の木ノ葉隠れの里に鳥の声が響く。

 この里に来て約三ヶ月になるけれど、雪は降れど霧隠れよりも暖かく、自然も豊かだ。

 そんな事を思いながらチョコレート色の長い髪を指で払いながら、青い瞳をした絶世の美女が厚ぼったい唇から吐息を一つつく。

 飽きもせず、火影岩の上から木ノ葉隠れの里を眺めるのは、既に照美メイにとっては木ノ葉隠れの里滞在中のルーチンの一つとなっていた。

「もうすぐ、この景色ともお別れですわね……」

「寂しいですか……?」

 そう声をかけるのは、黒髪黒目の落ち着いた物腰をした幼い少年だ。癖一つないストレートの長い黒髪を赤い髪紐で首の後ろで一つに結わえ、年に似合わぬ苦労皺らしきものが目の下に浮かんでいる聡明そうな齢十前後の少年……うちは一族族長うちはフガクの長年うちはイタチである。

 結局メイにつけられた世話役はこの少年から変更されることなく、今日(こんにち)まで迎えた。

「そうね……寂しくないといえば嘘になります」

 さて、寂しいのはこの景色と別れることか、それともこの少年と別れることか。

 とはいっても多少の寂寞感など、故郷に帰って霧隠れで暫く任務に没頭すれば忘れてしまえるのかもしれないが、それでも惜しいなと思ってしまうのは、メイ自身存外木ノ葉隠れの里に滞在している日々を……正確にはこの少年とのやりとりを楽しんでいたからなのだろう。

 ふと、少年が笑う。

 微かに口元を綻ばせた大人びた微笑は、子供らしくはないけれど、それでもこの少年にはよく似合っていた。

「また、会えるさ」

「そうね……」

 クスリとメイが笑う。

 こうして三ヶ月ほど共にいて気付いた事がある。この少年は器用だけど、とても不器用だ。聡明で、聡明すぎて大人びすぎて……同年代とはどうあっても噛み合わない。それを仕方ない事だと受け入れて受け流しているのは、強さでもあるかもしれないが、同時に悲しいことでもある。

 でも憐れむのもまた間違いなのだ、とメイは思っている。

「うちは一族は将来、アナタが継ぐのかしら……?」

 これまでの三ヶ月で何度か会話を交わし、情報も収集してきた。その結果、メイはこの少年の父親が名門うちは一族の頭領にして警務部隊の署長を務めていることは既に把握している。

 だから普通に考えてその長男であるイタチが跡継ぎかと思っての質問だったが、その質問に子供らしからぬ落ち着きをもった少年は「さあ、どうだか」と肩を竦め、言う。

「確かに今のうちは一族当主はオレの父で、父もその父から受け継ぎましたが……先々代族長は別の家でしたからオレが継ぐとは限らないかと。オレは……次代のうちは一族族長にはシスイが相応しいのではないかと、そう思ってます」

「瞬身のシスイ、ね」

 その名前はメイも聞いたことがあった。瞬身のシスイ。十代前半のまだ年若い忍びであるが、中々のやり手だとして裏の世界のビンゴブックにも記載された少年だ。

「……噂の隻眼の木遁使いさんは候補には挙がらないのかしら?」

 ふと、会談の場で木遁忍術を駆使した青年を思い出してメイは尋ねる。

 隻眼の木遁使い。

 突如三年……いや四年前、というべきか、に表舞台に出たうちは一族で隻眼である事以外は正体不明(アンノウン)とされた存在だ。史上二人目の木遁使いというわけで名前だけは有名だけど、実態はほぼ知られていないし、メイにとってもあの日あの会場で見た姿が唯一その存在について知るところである。

 これは鎌かけだ。こうすればあの青年の名前や一族内の立場などがもしかしたらわかるかもしれない、という鎌かけ。

「さぁ……」

 だがまあ、イタチはそれに引っかかるような子でもない。それもメイはわかっていた。だからこれは遊びで有り、あくまでも二人にとってのコミュニケーションの一つなのだ。

「でも本人はやりたがらないのではないかと思いますよ」

「あら、どうして?」

「噂によると火影になりたいんだそうです」

「あら」

 思わずぱちくりと目を瞬かせる茶髪青眼の美女を見ながらくすりと笑って、イタチは言った。

「もしかしたら、将来アナタ達が並び立つ日も来るのかも知れませんね」

 そうなればいいと、それはまるで祈るような言葉だった。

 

 * * *

 

 白が実は男の子だと知った、オビトにとっては衝撃的な日から一夜明けた二月三日、朝。

 日の出よりも早くオビトは自然と眼を覚まし、ぐっと伸びをした。

(よく寝た……)

 コキコキと首をならしながら見てみれば、まだカカシは眠っているようだ。

 とはいえ互いに忍びで、それもカカシはとびっきりのエリートである。オビトが物音を立てたらその時点で眼を覚ましてしまうだろう。時計を見ればまだ朝の五時ににもなっていない。

(もう少し寝かせてやるか……)

 思えば隊長であるカカシはオビトよりこれまでも多忙であった。起こすのは忍びない。

 そう思いそろりと寝床を抜け出しトイレに向かう。

 用を足せば、スッキリと頭も冴え渡るというものだ。

(それにしても妙な夢を見たな)

 夢は潜在意識の顕れともいうが、それにしたっておかしな話だ。

 最初は過去の夢だった。

 まだオビトがアカデミー生だった子供の頃、いっぱい遊んで、修行をして家に帰ってばあちゃんただいまと駆け寄る。ばあちゃんは夕飯を作りながら『オビトちゃんおかえりなさい』と微笑む。懐かしくて幸せな夢だ。

 だが、幼いオビトがばあちゃんに抱きつこうとしたらそれがあの……湖で出会った浮浪者みたいな男に替わってたのだ。あの男は、嬉しそうにオビトを見ながら両手を広げてソワソワと待っていた。

 夢なんてそんなもんだ、といわれたらその通りなのかも知れないが、意味が分からない。

 なんでばあちゃんとの夢にあんな一度しか会ったことない男が出てきたのかさっぱりだ。

 オビトとしてはばあちゃんとの思い出にケチをつけられたようで、少しだけ思い出すとムッとする。

 だが、不思議とあの男に対して嫌悪感とかもないのだ。

 それはやっぱり……あの男に妙な既視感を抱いていたからなのか。

(オレはあの男を、誰に似ているって思ったんだ……?)

 ばあちゃんか?

 確かにあの抱きしめ方はばあちゃんを思い起させるものだった。

 でも、違う。

 あの顔立ちや髪の感じがなんだか、誰かに似ているって感じたんだよなあ……と、そんな風にモヤモヤしながらオビトはカミソリと歯ブラシを持って洗面所へと向かう。

 歯を磨き、髭を剃るために鏡に向き合ったオビトは、先日あの湖で邂逅した男に覚えた既視感の正体に突如気付いてあっと驚いた。

 男とはまず年齢が違う。表情の作り方も纏っている雰囲気も似ても似つかない。だから気付かなかった。

 あの男を見た時、何故既視感があったのか。

 どこかで見たことある気がして……誰に似ていると感じていたのか。

 オビトは別にナルシストではない。

 故に自分の顔をマジマジと見ることなど殆ど無いので気付かなかった。

 だけど、漸く分かった。

 初対面の筈のあの男が、一体誰に似ていると感じていたのか、その既視感の理由を。

 あの湖畔で出会ったやたら髪の長い壮年の男は……自来也師匠に連れられて旅に出ていた時代の、髪が長かった頃の……オビト自身によく似ていたのだ。

 

 続く




次回で第二部最終回「調印式」お楽しみに。


 オマケ隻眼の木遁使い年表


 オビト誕生2年前、イズナ58歳、マダラ63歳の時に第一次忍界大戦勃発、大戦開始三週間後にオビトの父方の祖父が亡くなる。

 オビト誕生1年前、第一次忍界大戦の最中、オビト両親が結婚。オビト父は当時22歳、オビト母は当時19歳だった。
 同年に、自来也、綱手、大蛇丸の三人が山椒魚の半蔵に三忍と名付けられる。

 オビト誕生2ヶ月前、二代目水影鬼灯幻月がマダラに討ち取られる。

 オビト誕生1ヶ月前、二代目土影無がマダラに討ち取られる。

 オビト生後2ヶ月、第一次忍界大戦が終結。自来也が波風ミナト他二名の上忍師となる。

 オビト生後半年、第一次忍界大戦が終結して4ヶ月の戦後処理期にオビト両親他数名が任務中に失踪。現場には血痕のみが残される。

 オビト生後8ヶ月、オビト両親他への捜索打ち切り。

 オビト2歳、波風ミナトが中忍になる。

 オビト3歳、綱手が加藤ダンと結婚して、木ノ葉病院の院長に就任する。

 オビト4歳、自来也が雨隠れで小南、弥彦、長門(※当時8歳)の3名を弟子にして2年ほど暮らす。

 オビト5歳、オビトがアカデミーに入学、二代目火影うちはイズナに出会う。

 オビト6歳、波風ミナトが上忍に昇格する。

 オビト8歳、はたけカカシがアカデミーを卒上。

 オビト9歳、二代目火影うちはイズナ死亡、享年69歳。

 オビト10歳、曾祖父うちはマダラ死亡。マイト・ガイがアカデミーを卒業。

 オビト11歳、第二次忍界大戦が勃発。翌月、オビトは忍者アカデミーを卒業し、ミナト班に所属する。
        同年の8月の終わりにマイト・ダイが死門を開き、霧隠れの里の忍刀七人衆を半壊させる。

 オビト12歳、うちはオビト、のはらリン、中忍に昇格。
        同年の初夏の頃、突如として三代目風影が失踪。
        砂隠れが事実上の降服宣言でもって木ノ葉隠れの里に同盟を申し込む。

 オビト13歳、春。はたけカカシ上忍に昇格、神無毘橋破壊任務で、オビトは半死半生となる。(第一部開始)
        秋、第二次忍界大戦が終結。火の国と風の国の同盟が正式に発表される。
        同年初冬、波風ミナトが四代目火影に就任する。

 オビト14歳、ヤマトがアカデミーを卒業。扉間の下でオビトとヤマトが木遁を習いはじめる。
        夏、波風ミナトとうずまきクシナが正式に結婚。以後、波風クシナになる。
        10月10日、九尾事件勃発。マダラの眼と培養した柱間細胞の一部が黒ゼツに盗まれる。
        千手扉間死亡。ナルトが誕生、人柱力になる。
        一週間後、オビトは自来也に預けられ、3年の旅に出る。

 オビト15歳、のはらリンがはたけカカシに告白する。(玉砕)
        大蛇丸が三代目木ノ葉忍術研究所所長に就任する。

 オビト16歳、妙木山でオビトはガマ次郎三郎と意気投合し、口寄せ契約を結ぶ。

 オビト17歳、春。桃地再不斬による血の卒業式事件発生。
        その2ヶ月後、霧隠れでクーデターが発生。三代目水影を倒したやぐらが四代目水影に就任。
        そのとばっちりで水の国の大名も代替わりをする。
        秋、うちはオビトが木ノ葉隠れの里に帰還を果たし、Sランク任務を受けて霧隠れへと旅立つ。(第二部開始)

 ※補足説明
 マイト・ガイはオビトより1年早くアカデミーを卒業しており、ガイのチームメイトだったエビスゲンマはオビトより2歳、ガイよりも3歳年上。忍刀七人衆の襲撃を受けたとき、ゲンマは中忍になっていた為、河豚鬼の認識が中忍なりたてのガキ共であった。
 忍刀七人衆半壊事件の数ヶ月後に行われた中忍試験でオビトはガイにコテンパンにされており、その試験でガイは中忍に昇格しているため、ダイが死んだ時のガイはまだ下忍である。
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