原作でオビトが使う術の中で、わいが一番好きだった術をやっと出せたぜイェイイェイ。
というわけで56話です。
襲ってきた忍び達を木遁で拘束し、幻術にかけ、手裏剣とクナイで牽制し、時に火遁で焼き払う。
ヤマトは上手いもので、一般的な忍びの技だけを使用しているように見せかけながら、オビトの使う木遁にしれっと便乗する形で木遁を使いこなしている。
元々、同じ木遁使いと言っても、オビトは攻撃系の木遁忍術に強い適性があるのに対し、ヤマトは拘束や建築系の木遁忍術に強い適性を示していた。
そう考えれば、オビトがやっているように見せかけてはいるものの、木遁・黙殺縛りの術などの扱いはヤマトの方が上手いのは、ある意味当然だったのかもしれない。
雨の国を発ってから約五時間。
待ち伏せをしていたのだろう忍び達から襲撃を受けるのは、これで三度目だった。
これだけ共闘を重ねれば、何故波風ミナトがオビトの部下に今回ヤマトをつけたのか、何故この若さでヤマトが暗部にいたのかも、わかるというものだ。
うちはオビトは、『隻眼の木遁使い』の二つ名と共に、史上二人目の木遁忍術の使い手として知られている。
これまでの忍界の歴史でも、唯一生命を生み出す遁術である木遁を発現したのは、初代火影であった忍びの神……千手柱間ただ一人だ。
オビトやヤマトが木遁を使えるのだって、体に移植された柱間細胞に、拒絶反応を起こすことも無く適合する才が合ったから……その副産物のようなものであり、柱間細胞が移植されてなければ、木遁が使える日など来る事はなかっただろう。
だから自力で木遁を発現したのは、やはり柱間だけなのだ。
しかし、そんな事情は他里には知られていない。
どうやってオビトが木遁を手に入れたのかも、この体の三分の一が作り物で、柱間細胞をベースにして出来た疑似臓器や義肢義腕で、欠損した肉体を補っている事も、木ノ葉のトップシークレットなのだ。
だから、木遁を発現したオビトやヤマトの身柄が、他里に盗られる事は避けねばならない。
故に、オビトは人生二人目の師であった扉間に、口が酸っぱくなるほど、狙った者を逆に返り討ちにしてしまえるくらい強くなるまでは、木遁が使える事は伏せるよう指導を受けていた。
尤もその気遣いも、四年前の九尾事件の時にオビトが大々的に木遁を人命救助に使ったことで、ご破算となったのだが。
その時からオビトが木遁使いであることは世間に知られているし、あの時木遁を使ったことをこの黒髪隻眼の青年は全く後悔していない。
だから自分は良いのだ。
それに対して、ヤマトは違う。
オビトと違って彼が木遁を使える事は、世間に知られてはいない。
いつかは知られるだろうが、でもそれは今じゃない。
だから、木遁使いであることが少しでも発覚するのを遅らせるために、表の任務では無く裏の任務につく暗部に配属したのだろう。
暗部は皆仮面で素顔と名を隠すから、たとえ暗部に木遁使いがいると噂が流れたとしても、それがどこの誰なのか特定することは難しい。
そして今回オビトの下につけたのも、ヤマトに経験を積ませるためだろう。
オビトは既に、木遁使いとして世間に広く知られている。
だから、ヤマトが木遁を使ったところで、オビトがやったものだと誤魔化せるから、今回のことはヤマトに表の任務を経験させる良い機会だったのだろう。
今回の任務がオビトとヤマトの
人が増えれば利点も増えるが……逆に
秘密を知る者は少ない方が良い。
……にしても、今回の任務はどう考えても中忍二人で熟す規模ではないよな、とも愚痴るように黒髪隻眼の青年は思わざるを得なかった。
(オレ達なら大丈夫って、そう信頼して貰っているからこそなんだろうけど……ミナト先生も人使い荒いよな)
そんなことを考えながら、淡々と黒髪隻眼の青年は目の前で土遁を発動させようとしている敵の忍びを、得意の足技で蹴り飛ばしてから意識を刈り取るのであった。
「……! 先輩!」
その後輩の言葉に即座に反応し、オビトは視線を後方斜め後ろに向ける。
気配を消し、瞬身の術を使いながら長門に近寄る人影を認識するや否や、オビトは飛雷神で即座に長門の眼前に置いていたマーキング手裏剣へと飛び、バッと印を結んで地面に打ち付け、うちはの秘術とも言えるその技を発動した。
「うちは火炎陣!!」
ゴゥと高音の炎が長門とオビトを囲むように空高く打ち上がる。
うちは火炎陣とは、名の通りうちは一族に伝わる秘術の一つで、炎のチャクラで対象を囲み敵から身を守る結界忍術である。
オビトが知り、行使出来る術の中で尤も強力な結界術であり、対象に触れようとしたものは手酷い火傷の洗礼を受けることになる攻防一体の術だ。
元々は家に伝わる秘伝書で知っていただけの技であったが、これをオビトは自来也と旅していた三年間で、試行錯誤しながら身につけ、自分のものにしていた。
「ィ、ギャアアア……!?」
うちは火炎陣の発動と共に、長門を狙って彼に近づいた忍びは全身に大火傷を負い、そのあまりの熱さと痛みにのたうち回りながら転がる。
先ほどの悲鳴を最後に喉も焼けたのだろう、もう声すら出せぬまま助からないレベルの大火傷を負った男にオビトはそっと近より、それ以上苦しまぬよう一撃でその命を絶った。
「どうやら、その人が最後みたいだ」
その長門の言葉に、オビトは自身でも周囲を警戒しながらも、長門を囲むように張ったうちは火炎陣を解く。
この中で尤もチャクラ感知に長けているのは長門だ。
だからおそらくそれは正しいのだろう。
実際オビトの感知にも引っかかる者はもういない。
それから幻術にかけて転がしていた忍びから情報を抜き取る。
どうやら、今回の襲撃者は石の国に雇われた抜け忍のグループだったようだ。
差し向けたのはその国の商人のようであるが、風の国と土の国に囲まれた石の国には忍び里は存在しておらず、故に食うに困った抜け忍達を使い捨ての鉄砲玉として、さし向けたのだろう。
「オビト先輩、お疲れ様です」
そう労りの言葉をかけながら、ヤマトは生き残った敵の忍び達をテキパキと拘束していく。後ろ手で印を組めぬように両親指をワイヤーで拘束しているのが、抵抗したら指が落ちるぞと脅しているも同然で中々えげつない。
長門は口寄せ動物をポンと二匹呼び出し、一匹に抜け忍達の監視を頼むと、もう一匹にこの抜け忍達を回収する人員を頼みに走らせる。
これが三度目というのもあり、スムーズな事後処理だ。
……はじめに襲撃を受けたときは、本当は長門も戦おうとしていたのだけれど、例え裏の任務が火の国に入る他国の忍び……長門に対する監視だろうと、一応表向きはオビトとヤマトは長門の護衛として雇われた身である。
だからオレ達の仕事を奪うのはやめてくれと説き伏せて、襲いかかってくる忍び達はオビトとヤマトの二人で対処することにしていた。
それに長門はにっこり、「じゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな」と弟を見守る兄の如き微笑みを称えながら返事をしたものだが、それでも事後処理くらいは手伝わせてほしいということで、こうして口寄せ動物を使った襲撃犯への監視と、引き取り手の呼び出しを任せているというわけだ。
「それにしても、いくらなんでも襲撃多過ぎねェ……?」
コキコキと首を鳴らしながら、オビトがそうぼやくと、長門は苦笑しながらも明るい声で言う。
「ハハッ、オレ達暁を邪魔に思っている人は、それなりに多いからね。でもまあ、その妨害も火の国の大名様に謁見するまでだと思うよ」
「へいへい、しっかり守らせていただきますよ、兄弟子様」
そう掌をヒラヒラさせながらオビトは返して、火の国の首都に向かってまた三人で歩を進めた。
とはいえ、夜に闇雲に進むのもまた危険なものである。
護衛任務なら尚更だ。
というわけで、三度目の襲撃を受けてから忍びの足で更に一時間ほど進んだ先で、今日は野営を取ることにオビトは決めた。
とりあえずは今夜の宿としてオビトは木遁・四柱家の術で家を作り上げる。
相変わらず、オビトと建築系の木遁忍術との相性はイマイチのようで、出来上がったのはどう見ても家というよりも掘っ立て小屋だった。
「……先輩」
それにヤマトから、オビト先輩は相変わらずなんですねと言わんばかりの口調と視線がジットリと突き刺さる。
「うぐっ」
わかっている。
この後輩が建てれば、それはもう立派な御殿が建つ事くらいオビトとてよくよく知ってる。
もし、ここでヤマトもこの術を使えば、その同じ術とはとても思えないクオリティ差から二度見されるのは間違いないことも。
だが、しかしだ。
表向き、公式には今木ノ葉隠れの里に存在する木遁使いはオビトだけなのだから、戦闘のどさくさならともかく、表立ってヤマトに木遁を使わせるわけにはいかないんだし、仕方ねェだろう、と内心で言い訳する。
大体、これは任務中の野営なのだ。
掘っ立て小屋だろうが、屋根があるところで眠れるだけ恵まれていると言える。
だからオビトは堂々としてていい……はずなのだが。
「夕飯! ちょっと夕飯の材料調達してくる!」
そう言ってヤマトにお前は長門の護衛を頼むと言い捨てて、オビトはその場を飛び出した。
まあ、なんとなく顔が合わせるのがいたたまれなくて、少しだけ一人になりたくての言ではあったが、しかし彼は一流キャンパーオビト。
サクッとその辺でウサギと食べれる野草や山菜を回収して、彼が二人の元に戻るまで十分もかからなかった。
その場で調理器具を作り出し、血抜きと臭み抜きの処理をして、ウサギを捌き、半分は鍋へ、半分は串焼きにして塩を振ってたき火であぶる。脂が滴って実に美味そうだ。
「ほらよ」
それを手慣れた動きでオビトが二人に差し出すと、礼を言いながら長門とヤマトは受け取り、一口囓ると驚いたように長門は呟く。
「これは、美味いな……」
「……先輩って料理、上手かったんですね」
山菜と乾燥キノコ、ウサギ肉に岩塩で作ったスープを啜りながら、ヤマトもまた感心したように呟いた。
どうやら、先輩としての威厳を取り戻す事に成功したようだ。
そう内心で胸をなで下ろしながら、オビトもまた自分が作った鍋を啜り、焼いたウサギの肉にかじりつく。
それから人心地ついた所で、今夜のことについて話す。
野営である以上、人除けの結界を張るとは言え、夜間の見張りは必須である。
だが、しかし何度も襲撃を受けている以上、眠って体力とチャクラの回復に務めるのも同じくらい大事なことであるし、なによりヤマトは……成長期の十代前半の子供である。
いくら忍びとして一昼夜くらい寝ずに戦えるよう鍛えているとは言え、成長期の少年が碌に寝ないのは好ましくない。
忍びが忍術などに使用するチャクラは、身体エネルギーと精神エネルギーからなるものであるから尚更だ。
寝る子は育つという。
そういう意味では体を大きくすることも、身体エネルギーの増大及び、将来のチャクラ量の増加に繋がるので大事なことだ。
故に、見張りは三時間交代で、夜の二十一時から正子まではオビトが見張りにつきヤマトは休み、深夜十二時から三時まではヤマトが見張りにつきオビトが休み、夜三時から朝六時までオビトが見張りについて、再びヤマトは休むことで話がついた。
長門は、そもそも護衛対象であるので、夜間の見張りは無しだ。
好きに寝て好きに起きてくれていい。
「では先輩、お先に失礼します」
「オウ」
律儀な後輩は少しだけ申し訳なさそうな顔をするも、なんだかんだ連戦に次ぐ連戦で疲れていたのだろう。
オビトが木遁で出した、畳三畳くらいのサイズの掘っ立て小屋……もとい、今夜の宿で横になると、いくらもしないうちにくぅくぅと静かな寝息が聞こえてきた。
それを小屋の前で組み立てた、たき火の傍でなんとなしに聞きながら、オビトが少し口元を綻ばせると「少しだけ、良いかな」と赤髪の青年が黒髪隻眼の青年の隣に腰を下ろしながらに言う。
……まだ時刻は夜の九時を過ぎたところだ。
それに話しながらでも警戒は出来る。構わないだろう。
そう思いオビトが「どうぞ」と言うと、優しげな面立ちをした痩身の男は困ったような顔で苦笑する。
「うーん、君とは色々話してみたいとは思っていたんだけど……いざとなると何から話せばいいのか、何も思い浮かばないね」
「なんだそりゃ」
オビトが思わず呆れたように呟くと、長門はフフッと悪戯っ子のように笑いながら言う。
「逆にオビト、君が気になっていることとかあるかな?」
気になっていることは……ある。
「なぁ……もし、答えたくないなら答えなくていいんだけどよォ……長門ってもしかして、うずまき一族の人……だったりする?」
折角の兄弟弟子なんだ。話しやすい口調でいい。
そうい言われていたので、ちょっと迷いつつも気安い口調でオビトは恐る恐るそう訊ねる。
それは今日一日ずっと考えていたことだ。
四代目火影波風ミナトの妻、波風クシナ……旧姓うずまきクシナ。
今日、出会った時に長門が岩忍相手に放ったチャクラで出来た黄金の鎖、アレにオビトは見覚えがあった。
そう、四年前の九尾事件の時だ。
あの時、クシナが九尾相手に放った鎖とそっくりだった。
何より、顔も雰囲気も別に似てはいないが、長門の赤い髪。その色が四代目火影の妻たる彼女にソックリで、チャクラの質もよく似ていたから……だからうずまき一族なのではないかとオビトは考えた。
そのオビトの言葉に苦笑しながら、長門は言う。
「……うーん、そうとも言えるし、違うとも言える、かな」
「?」
どういうことだ? そんな疑問を顔に出しているオビトに静かな声で赤髪の青年は語る。
「これは自来也先生に言われた事を元に調べて、オレも初めて知ったことなんだけど……オレの会ったこともない祖父母は、うずまきの忍びだった。でも……オレの父さんも母さんも忍びじゃないんだ」
「それって……」
「忍び一族の生まれだけど、一般人だったよ、父さんと母さんは」
長門は幼少期の思い出を反芻するように、そっと目を閉じ言う。
「オレは自来也先生に指摘されるまで、自分がうずまき一族の血を引くことも知らなかった。父さんも母さんも、うずまきの名は捨てていたんだ。だから……オレはうずまきの血を引いてはいるが、うずまき長門じゃない、ただの長門だ」
そう語る声には万感の思いが込められているように思えた。
オビトは何も知らない。
長門のことは、ただ兄弟子だと……自来也先生の弟子の一人であると、結局オビトが知っているのはそれくらいだ。
「オレの……ばあちゃんもそうだった」
「……え」
「長門のトコと違って、うちはの名を捨ててたわけじゃないけど、先々代族長の一人娘なのに、忍びの道選ばなかったんだ。多分、風当たりは強かったと思う。でも自分がなりたいのは忍びじゃないからと、自分を貫いたんだ」
「……そうなんだ」
オレ達少し似ているのかもしれないな、そう赤髪の青年はどこか肩の荷が下りたような声で呟いた。
「……なァ、オレあまり雨の国の事よく知らないんだ。アンタたちの事も。だから、教えて貰ってもいいか?」
「良いよ」
そう言って長門は静かに微笑んだ。
* * *
雨の国についてだったね。
これは知っているかもしれないけれど、雨の国は火の国、土の国、風の国の大国三国に挟まれる立地に存在する小国だ。
名の通り、その気候は一年の殆どが雨で、晴れ間が差すことは滅多に無く、花が育つ事も稀だ。
そう、察しての通り貧しい国だよ。
だから、大名様にとっても、価値のない国だったんだよね……戦国時代の終わりと共に、気付いたら雨の国からはそういった人達も消えていたんだ。
だから、雨の国の治世を動かしていたのは、雨隠れの半蔵様だった。
半蔵様の事は知っているかな?
山椒魚の半蔵の名で知られた方で、歴戦の忍びだった。
そう、自来也先生達に「三忍」と名付けたのも、半蔵様だよ。
雨の国という、五大国から見れば小国の生まれながらめげる事も無く、「和」を目指して、忍五大国をまとめることで、忍の世界を一つにすることで世の平穏を目標に掲げていた……立派な方だったよ。
え? 好きだったんだなって?
そうだな……今もオレが、いや、オレ達が尊敬して目標にしている方だ。
オレ達、雨の国の民にとっての憧れで英雄だよ、今も。
……雨隠れは、大国に囲まれた小国だったから、大国同士が戦えば戦場になることが多かったんだ。
大国の忍びに対抗出来るのは、半蔵様だけだった。
半蔵様は戦ったよ、雨隠れを、雨の国の民を守る為に。
その中にまだ若かった頃の自来也先生達がいた。
……違うよ、オビト。
半蔵様を討ったのは、先生達じゃない。
マダラさ。
うちはの赤鬼、歩く鬼神と呼ばれた男だ。
あの男が現れたのは、半蔵様が三忍を退けたその二週間後だったそうだ。
半蔵様とあの男の戦いは半日続き、地形は裂け、毒と炎が地面を焼き、何も残らなかったとそう言われている。
? ごめんなさい……ってなんでオビトが謝るんだい?
オビトが悪いわけじゃないだろう。
それに……終わったことだし、仕方ない事だよ。
悪いのは、戦争と、それを起こしたヤツだ。
……ともかく、雨隠れと雨の国を纏めていた半蔵様が亡くなって、もう雨の国を纏められる人間が誰もいなくなった。
空中分解ってヤツさ。
それで、当時半蔵様の右腕と呼ばれていた忍びが木ノ葉に頭を垂れたんだ。
もう、雨の国に力は無いから、降伏するから守ってくれと。
でもその意見が雨の国の総意ってわけじゃない。
半蔵様が亡くなった途端に、うちこそが正当な政権であるとそう主張する組織がいくつも出てきたんだ。だから、火の国木ノ葉隠れの里にとっても、その男の言葉が戯言に聞こえたのは仕方ないことだ。
それでも、先代火影だった赤鬼の弟……真眼のイズナは、個人資金から戦災孤児達への援助と、出来るだけ雨隠れを戦場にすることは避けるように口利きをしてくれる事を約束してくれたから、全く恩がないわけでもないんだけどね。
実際、戦火は完全になくなったわけではないけど、規模が小さくなったのも確かだったみたいだし。
オレ?
オレは……第一次忍界大戦当時はまだ齢四つの子供だったからね、あんまりよく覚えていないんだ。
ただ、父母の胸に抱かれながら、雨の国の中をあっちへこっちへと逃げ回っていたような事をぼんやり覚えている。惨い遺体に出くわすことも、珍しくなかったよ。
酷い光景だった。
オレは戦争を憎んだよ。
……父さんと母さんが死んだのは、戦争が終わった一年後、オレが五歳の時の事だ。
戦時中に仕掛けられた罠がね、地面の中にあったんだ。
そこに足を踏み入れたものを対象にして発動するタイプの、起爆札を使ったトラップだ。
父は即死。
母は咄嗟にオレを庇って瀕死だった。
傷だらけの母が、無傷のオレを抱きかかえて冷たくなっていくのを、彼女の腕の中でずっと感じていた。
アナタが無事で良かったって、痛いはずなのに母さんは笑って言うんだ。
たまらなかったよ。
嫌だよ、置いていかないで、って何度も泣いたよ。
でも無駄だった。
少しずつ血が流れて、命がこぼれて、それで終わり。
それでもオレは生きていかなきゃいけない。
生き残ったから、生かされたから。
オレが死んだら、父と母の命が、願いが無駄になるから。
それから間もなく出会ったのが、似たような境遇だった弥彦と小南だった。
オレ達はたちまち仲が良くなった。
戦争が憎かった、平和な世界を望んでいた。
でも力がなければ、何も出来ない。
力が欲しかった。
世界を変える力が。
だから、自来也先生に弟子入りしたんだ。
木ノ葉に対しては思うところも色々あったけど、それでもうん……自来也先生に出会えて良かったと思っているよ。
何より、先生もオレ達の思想に、人々が対話によって分かり合う世界を目指す事を、理解し、共感してくれたから。
そうして二年、自来也先生と共に暮らして、別れて……オレ達は自分の足で歩き出した。
子供の頃のオレ達のような思いをする子供を、少しでも少なくする。
オレ達暁こそが弱者を守る牙となり、盾となる。
いつか来る、人類の夜明けを目指して。
……暁というのは、夜明け直前の時間を差す言葉なんだよ。
いつかくる夜明けを願って弥彦がそう名付けた。
だが、戦争はまた始まった。
第二次忍界大戦だ。
このままでは、また雨の国は蹂躙される。
もう抑止力となっていた半蔵様もいない。
だからオレ達「暁」が立ち上がったんだ。
力なき人々を守る為に。
それが全てだよ。
* * *
「オレ達暁が目指しているのは、世界平和だ」
壮絶な半生を語ると共に、長門は遠い理想を見つめるように月を見上げながら、そう静かなのに力強く兄弟子たる青年は言葉を締めた。
「ねえ、オビト。聞いて良いかな。君が目指しているものは……なんだい? 君は何を望んでいる?」
続く