推しのターンって怖いね、ドンドン文量増えていくのだから。
というわけで60話です。
「こんばんは、オビトさん」
少しお時間よろしいですか?
そう静かな声で、オビトの眼前に現れた少年は言葉を紡いだ。
刻は黄昏。
赤い夕焼けが世界を染める頃。
紅く染まる長い黒髪の少年が、落ち着きを湛えた瞳でオビトを見上げている。
深い知性を感じさせる夜の湖面のような瞳は、遠目で見た時も大人びているとそう思わせるものであったが、こうして間近で見ると余計に、今だ齢九つの子供であることが悪い冗談かのように深い色を見せている。
大人が子供に化けているだけと言われたほうが、まだ信じられる。
同じ天才少年という評判でも、幼少期のカカシとはまた違ったタイプの早熟な少年だ。
チャクラにも、時空間にも乱れは見られない。
気付いたら目の前にいた……が、多分瞬身の術を使ったわけでも、オビトのように飛雷神の術で時空間を飛んできたわけでもないのだろう。
ただ、人の意識の死角から、スルリと眼前に現れた。
チャクラの乱れも、感情の乱れも、微塵も感じられない。
この少年はただ、巧いのだ。
そして先ほど、弟らしき幼児と手を繋いで帰っていた姿も、見間違いでもなんでもない。
だが、オビトの写輪眼で見ても、この少年と先ほどの少年の違いは見つからない。
それから分かる事実は……。
「そっか……その歳で影分身使えるのか、お前凄いな」
この少年は影分身であり、本物のうちはイタチではないということだ。
それに誇るでもなく、黒髪黒目に、人形のように整った顔立ちの少年は、「ええ」と肯定した。
影分身の術。
それはオビトの第二の師でもあった、千手扉間が考案開発した、木ノ葉隠れの里の高等忍術である。
術者のチャクラを均等にわけて作る影分身は、実態のある分身の術であり、潜入諜報囮色んな場面に使える便利な術だ。
手が足りない時に「もう一人、自分がいたらなあ」と思った事のある者は珍しくはないだろうが、見た目だけよく似た非実体である分身の術と違い、その夢を叶えるような術である。
ただし、分身の術同様に、影分身もまた一定以上の攻撃を受けると消えてしまうし、影分身を作り上げる際に自身からわけたチャクラが戻ってくることもない。
多分この術の原型になったのは、扉間の兄である柱間が使っていた木分身の術だろう。
木分身の下位互換のような性能をしているので、木遁を使えるオビト自身が使うことはないが……それでもかなり便利な術には違いない。
とはいえ、ものには相性というものがある。
うちは一族が誇る写輪眼は、常に発動中はチャクラを消費し続ける関係もあり、自身のチャクラを均等に分割して作る影分身の術との相性はあまりよく無かったりする。
それでもオビトくらいチャクラ量があれば微々たる消費といえるが、精神エネルギーに優れるうちは一族といえど、生憎オビトほどチャクラ量に恵まれているものはそうはいない。
それはそうだ。
オビトは彼の半身を占める柱間細胞によって、普通では考えられないほどに、体が作り上げるチャクラ生成量が増大しているのだから。
だからオビトはともかく、純うちは一族と影分身の相性はそれほどよくない。
また、影分身は高等忍術でこそあれ禁術ではないが、影分身の発展系である多重影分身の術は禁術指定されており、許可を取った上忍しか閲覧許可が降りない。
なにせ大量の影分身を同時に出すということは、それだけチャクラというリソースを大盤振る舞いするという事なのだ。未熟者が使えば……若しくは必要チャクラ量が足りてないものが使えば、チャクラ枯渇からの昏倒……最悪死に至る危険がある。
そういう術なのだ、多重影分身とは。
とはいえ、リスクに見合ったリターンが存在するのも確かだ。
幻影である通常の分身の術と違い、影分身には実体があるから、影分身を作る際に使ったチャクラが消えるか、術者が消すか、一定以上の攻撃を加えるまでは現世に残り続けるし、術者が消す場合は影分身が得た知識や経験は本体へと還元される。
多分この少年が影分身を選んだのもそういうことだ。
必要な会話を終えたらそのまま影分身を消して、その時得た情報を本体はいつも通りの生活を送りながら、家族に不審に思われることも無く受け取る。
(そこまでしてオレと何が話したいのやら……?)
正直な話、オビトと
同じ一族で、相手は現族長の長男だ。
だから全く知らない相手というわけでもないが、それでもオビトとイタチでは一回り近く歳も離れているし、なによりオビトはうちは居住区外に住んでいる上に集会もサボりがちで、年寄り以外の一族の人間とはあまり交流がないのだ。
そんなオビトの心境を読んだかのようなタイミングで、フッと少年は笑みを口元に浮かべながら、「そんなに緊張せずとも……何かと今話題のアナタと少し世間話をしようと思っただけですよ。隻眼の木遁使い殿」と言うが、その笑い方や言動がまず実年齢不相応なことは自覚があるのかないのか……もしかして面倒くさいやつに捕まったのかもしれない。
なんて考えながらオビトはガリガリと後頭部を掻いた。
* * *
うちはイタチの影分身と共に、オビトは木ノ葉隠れの里を一望できる里の名スポット……顔岩の上にある公園へと足を運んでいた。
流石に特に親交もない子供を自宅にあげる気にはなれないし、本体ならともかく影分身……それも忍びとしては一人前にしても、年齢一桁の余所の子とこんな時間に飲食店に入るのはどうかと思うし、だからといって日が沈んでいく中、来た道を引き返してうちはの演習場の森で話を聞くっていうのも、なんか嫌だ。
そう思いオビトが「話をするのは良いけどよ……行きたいところとか、あるか?」と正面から訊ねてみたところ、彼の少年のお袋さんである族長夫人であるミコトさんによく似た綺麗な笑みを浮かべながら、「なら……」とリクエストされた場所がここだった。
ここからは里がよく見える。
写輪眼があるから尚更だ。
人々の営み。
親と手を繋いで歩く子供達に、任務が終わったのか明るい顔をして仲間と肩を組んで居酒屋に向かう大の男に、足をくじいた爺ちゃんを木ノ葉病院まで送っているらしき、犬塚のオッちゃん。
それに嗚呼、里は本当に平和になったなと、つい一週間前も覚えた感想がオビトの脳裏をよぎったと同時に、ポツリと黒髪を赤い髪紐で結った少年も呟く。
「里も平和になりましたね」
まるで、自分の心を読んだかのようなタイミングで、本当にコイツ人の心読んでるんじゃないんだよな? とついオビトはジト目になってしまうが、それに構うことなく現族長の長男たる少年は眩しそうに目を細めながら呟く。
「オレはこの景色が好きです」
幼さに似合わない、愛おしさを孕んだ声だった。
「……オビトさん。アナタは火影を目指していると聞きましたが……あまり一族に近づかないのはそのせいですか?」
うちはイタチの影分身は里を見つめながら、振り返ったりオビトのほうを一瞥すらすることなく、そう黒髪隻眼の青年に問いかけた。
「それとも……お母上のことがあるから?」
その不躾とも言えるプライバシーに踏み込んだ質問に、オビトはガシガシと後頭部を掻きながら、暫し答えあぐねた。
何故オビトがうちは一族に近づかないのか?
そんなもの、
確かに昔のオビトにとって一族は
どんなに落ちこぼれだの、ドベだのドジだの泣き虫だのと言われようと、自分だってうちは一族なんだから、いつか写輪眼に開眼して……そうしたらあのエリートカカシだって、追いついて、追い抜いて、リンだって、自分に振り向いてくれる筈。
みんな、オレを見てくれる筈なんだ。
って……そんな幼子の強がりだ。
自分に自信がなかったからこそ、ルーツである一族だけを拠り所とした。
でも外では強がりを兼ねて、自分が一族であることを殊更に主張はしていたけど、同時にオビトは一族に対し疎外感を感じてもいたのだ。
カカシ達他のみんながいうように、うちは一族はエリート揃いだ。
優秀な人間ばかりの中、落ちこぼれとして生まれ評価されていたオビトはそれに疎外感を覚えていた。
その理由も祖母によって母が千手の人間であった事を教えられて謎が解けて、扉間先生に師事を受けていくうちに、うちはであることをオレが声高に叫ぶ必要性もないのではないかと、そう思えるようになっていったのだ。
だって、オビトはもう昔のオビトじゃない。
わざわざうちはだって叫ばなくても、オビト自身を見てくれる人がいることを知ってしまったのだから。
そしてその火の意思を、託されたのだから。
うちはは今でもオビトのルーツではある。
この眼と火遁に、一族の術に誇りは持っている。
だが、一族自身に対しての執着はもうあまりない。
多分、それだけの話なんだ。
「さァな。それより、それで言うならお前はどうなんだよ?」
そう、並んで木ノ葉隠れの里を眺めながら、チラリと自分より頭二つ分近く小さな少年を見ながらオビトが問う。
「お前も火影を目指してんのか?」
オビトがそう思ったのは、何も理由もなくではない。
さっきイタチはこの光景を見ながらこの景色が好きだと言った。
そこにはこの光景をなんとしてでも守ると、そんな意思が秘められているように聞こえた。
この里で育ったオビトがそうであるように、きっとこの少年もこの里が好きなのだ。
なら、この里を守る為に火影を目指すのは、とても自然な事であるとオビトは思ったのだ。
「さぁ……」
しかし、オビトの予想に反して、黒髪長髪の少年は淡々とした声で呟く。
「里を守るならそれも手かもしれない、とは思いますが。しかしもし、アナタが次世代の火影となるのなら、
「……?」
それについ、どういう事? とオビトが疑問符を頭に浮かべると、それに気付いたのか、イタチはオビトのほうに真っ直ぐとその黒い眼を向け、大人が子供に語りかけるような声で続ける。
「火影というのは里の顔です。この里は元よりうちはと千手という敵対関係にあった一族が手を取り合い、生まれた場所だ。憎しみも恨みも乗り越えて、未来を見て先人はそうした。火影となれば、自分の所属する一族より里全体の利を優先する義務が発生する。それを……同じ一族から連続で出すべきではない」
それはあまりにも子供らしからぬ言い分であった。
「況してや、オレは父の……うちは一族族長の息子ですから。同一族が二代連続で火影の座を取るとなると、下手をすれば、うちはが里を乗っ取ろうとしていると見なされかねない。実際にそうであるか……の問題ではない。それは他国につけ込まれる隙になり、戦争の火種になる可能性があるって事です。そしてオレはその可能性を看過出来ない」
だからオレが火影を目指すことはないのだと、子供らしからぬ論調でイタチは言葉を終えた。
それに思わずオビトはヒクヒクと米神をぴくつかせた。
(か、かわいくねー……!)
思えば同じ天才児という評価でも、幼少期のカカシはクソ生意気ではあるけど、もうちょっと子供らしいという意味の可愛げはあった気がする。
(なんだこいつ……)
しかし、こっちの天才児はなんていうかアレだ。
カカシみたいな生意気さはないけど、大人びすぎていて、逆に不気味である。
絶対九歳そこそこが心配するような内容じゃない。
この歳なら政治的な配慮とか考えず、オレは火影になるーって言っても赦される筈だ。
それをどんだけ未来見て、妙な遠慮してんだ。
絶対これ子供の生き方じゃない。
「じゃあお前は将来なにがしたいんだよ? 木ノ葉警務部隊に入んの?」
暗にオヤジさんの跡を継ぐのかと訊ねると、イタチは「さぁ……どうでしょう。弟のサスケは将来そうしたいようですが」と答える所を見ると、別に警務部隊に入る気はないらしい。
日が沈む。
やがて暗くなるに従い、里のあちこちからポツポツと灯りが点っていく。
そんな中里を見下ろす少年の瞳には変わらぬ慈愛が宿っている。
……どこかで昔見たような瞳だ。
どこだっけ?
と思いつつも、オレはこの景色を守れたらそれでいいのだと言わんばかりに、里を愛おしそうに眺める少年を見ながら、ふっとオビトは唐突に気付いた。
(もしかしてコイツ……迷っているのか……?)
自分が将来どうすればいいのか。
そう思えば、途端先ほどまで大人びすぎていて、どこか不気味にさえ思えたこの子供が、酷く不器用なだけの迷子のように思えてきた。
何故大して親しくもないオビトに、こんな事を言い出したのか。
多分、親しくないからこそだ。
親しい相手には強がって傷を隠してしまうのは、それはオビトにも覚えのある感情である。
そして同じうちは一族だからこそ、親しくは無くても他人というほど遠いわけではない。
それでいて自分よりも大人で、火影になると公言しているオビトだからこそ、正直な気持ちを話していいとそう思ったのだろう。
多分、これは遠回しな人生相談だ。
そしてきっと、オビトがこの子に相談相手として選ばれたのは、オビトが同一族で火影を目指していたから、それだけの話だ。
誰が見てもわかるほどに、いっそ異質なまでにこの子は聡くて……だからこそ子供らしく甘えることも上手く出来ず、遠慮して、思うことがあっても飲み込んでしまうのだろう。
大人のような態度で、並の大人よりも明晰な頭脳でそういう風に振る舞えるから、おそらく周囲は小さな大人のようにこの子を扱っていたのだろう。
彼の真眼のイズナの再来であると、そう囁かれているからこそ余計に。
だが……子供だ。
どんなに賢くても、大人びていても子供なのだ。
多分、この子に必要なのは、この子をキチンと子供として扱って、その上でその悩みを無下にするでもなく、正面から彼と向き合ってくれる大人がいるのだろうと、そうオビトは思った。
だから、敢えて軽い調子でオビトは言った。
「ならさ……教師になるってのはどうだ?」
「……え」
「さっき見たぜ、お前凄いな。あそこまで手裏剣術を極めたヤツ、見たことない。そういや、二代目様……真眼のイズナも、神懸かり的な手裏剣術の達人なんだっけ?」
確か、そうであると聞いたことがある。
「初代アカデミー校長は扉間先生だったけど、最初にアカデミー教師になった三人のうちは一族は、イズナ様から直接師事を受けたイズナ様の直弟子だったって、そう扉間先生に聞いた。二代目様が弟子達に教えていたノウハウがあったからこそ、木ノ葉隠れの里の
いつかの授業時間の合間に教えられた話だ。
木ノ葉隠れの里が出来る前から、うちはイズナは子供達が生き延びれることを第一に、そうアカデミーの真似事を少年の時からしていたという。
うちは一族から代々アカデミー教師の道に進む者がそれなりに多く出ているのも、その影響だ。
子供は宝だ。
彼らを守る為に、後の二代目火影うちはイズナは教育を重視した。
そして初代火影であった千手柱間が、里を作ったのは子供達を守る為でもある。
チラリと、少しだけ驚きにか黒い眼を見開いている一回り年下の少年を見やる。
天才少年という評価であるが、派手な何かがあるとかではなく、見たところ、こいつは基礎をトコトン突き詰めたようなタイプの天才だ。
足運びも、手裏剣術も、人の死角からスルリと歩み寄ってくる技術も、生まれついてのチャクラ量すら関係ない、誰でも出来る技術を徹底的に磨き上げて、神業レベルに昇華したものに過ぎない。
そしてそれだけ基礎が出来るのなら、他者を指導することも然程難しくないだろう。
この性格に物腰は、同年代や……無駄にプライドばっか溜め込んだような年上からはウケが悪いかもしれないが……多分、ちゃんとした大人や、年下からはそうでもない。
「それにお前、面倒見良いみたいだし……向いてるんじゃねーか?」
「……」
先ほどの光景を思い出す。
幼い子供……フガクさんの次男のサスケにキラキラとした眼を向けられて、兄さん兄さんと慕われている姿を。
他人であるオビトの目から見ても、優しく面倒見の良い理想的な兄そのものだった。
そんな軽い調子の思いつきのような言葉を聞いて、イタチは暫し瞳を閉じる。
彼の脳裏に浮かんだのは、一年ほど前に自分が世話係としてついてまわった茶髪青目の美女の姿だ。
故郷を愛し、故郷のために何が出来るかをずっと考え続けてきた霧隠れのくノ一。
「そうですね……それも良いのかも知れない」
そう言って瞳を開け、凛として立つ少年の姿には何かが吹っ切れたような爽快さが宿っていた。
「オビトさん、ありがとうございます」
「? オウ」
-――……うちはイタチが教師になり、教育システム改革の教育委員会を立ち上げ、文化交流も兼ねて霧隠れの里のアカデミーに赴任する事となったのは、この九年後の事だった。
うちはイタチは後にアカデミー教育の改革者として名を遺すことになるが……それはまだ未来の、別の話である。
* * *
(よくわからんが、解決したな)
そんな事を思いながら、オビトはヒラヒラと消えていくイタチの影分身に手を振っていた。
ていうか、思いつきで教師になれば? と言ったが、まさか真に受けられるとは思わなかった。
(ま、いいや)
あくまでもオビトは提案しただけであり、するもしないも決めるのはアイツ自身だ。
そんなことより……。
「で、お前はいつまで見てるつもりなんだ?」
そうジト目でオビトが茂みのほうをジトリと睨むと、思ってたとおりの少年が現れて「いやぁ、うちのイタチが世話になって」なんて兄貴分を自負していそうな台詞をカラカラと笑いながら放った。
モシャモシャの癖の強い短い黒髪に、一本睫毛の釣り目に、大きめの口と団子鼻。
瞬身のシスイの名で有名な、二代目忍者学校校長うちはカガミの孫息子のうちはシスイだ。
「でも、助かりましたよ。アイツ、オレにも自分の悩み、言おうとしないから」
イタチとシスイは年が離れているが、親友だとは聞いている。
だが、だからこそあんまりイタチはシスイに言いたくなかったのかも知れない。
対等でありたいから。
オビトにも覚えのある感情だ。
それから時々、イタチやシスイとはあったら一言二言会話するような仲になった。
結局イタチは将来経験を積んでから、アカデミー教師になることを目指すことにしたそうだ。
オビトにはよくわからない教育改革案を、淡々とした口調と表情で語りかけてくる様は相変わらずガキっぽくなかったが、分かりづらいだけで本人的にはわりと上機嫌なんだろうなってのもなんとなく伝わってきたので、そう思えばガキっぽく見えないだけでやっぱりイタチは子供だった。
こいつ絶対気性で損してるな……なんて思いつつ、将来族長を継ぐ気はあるのかというのも聞いてみた所、「うちはの族長にはシスイのほうがきっと合ってるし、オレとしてはシスイに継いでほしいと思ってるが……もし
そんなある日、現族長の息子であるイタチに将来のうちは一族族長と目されているシスイにオビトは言われた。
「オビトさんは今年も、新年の宴に出ないつもりなのか?」
うちは一族では毎年、年が明けた新年の満月の日に新年の宴を行っている。
新年以外も、一族は月に一度南賀ノ神社で集会を開いているが、そちらの参加者が一人前と認められた一族の者限定であるのに対し、新年の宴は、忍びも、忍びでない一族の者や子供達も参加が可能だ。
とはいえ、始まるのが戌の刻であるので、流石にアカデミーにすら入学出来ないような幼児を参加させる親はいないのだが。
その宴にもオビトはこれまで三度しか参加したことはない。
うち、忍びになってから参加したのは一度だけだ。
祖母はうちは一族の先々代族長の娘であったが、忍びの道を選ばなかった人だったし、オビトのアカデミー在籍時代や下忍時代の評判は、ドベ、一族の面汚しといったものだった。
オビトにとって新年の宴は決して居心地の良い場所ではない。
「……」
だから、オビトはそのシスイの質問に、聞こえなかったふりで返事を返さなかった。
そして時は流れて、木ノ葉隠れの里が出来て65年目の如月……オビトが十九歳の誕生日を迎える五日前のよく晴れた日であった。
オビトはその日、一ヶ月に及ぶ護衛任務が終わり、漸く里に帰ってきたところであった。
却って早々困った老人にお約束のように出くわし、その手伝いも終わり、火影塔にも報告が終わった。
休みも貰えたし、夕飯の買い出しをしたらゆっくり休むか、と思っていたそんな時だった。
通りがかったアパート近くの公園でシスイにばったり会い、ジト目で見られたのは。
「久し振り、オビトさん」
「お、おお……シスイ。久し振りだな……なんで怒ってるんだよ」
寧ろ、なんでわかんないの? って視線で見られて思わずオビトが視線を逸らすと、瞬身のシスイの名で知られているいくらか年下の少年はため息を一つ、それから確信に満ちた声でこういった。
「オビトさん、アンタさ……新年の宴に出たくないあまりわざと長期任務受けただろ」
任務で里にいなかったら、仕方ないって言い訳しやすいもんな。
とそうシスイは言った。
その言葉にふいとオビトは視線を逸らす。
直接的には言っていないし、任務は選り好みするものではない。
ないが……多少、そういう部分はあったからだ。
多分、ミナト先生には元直弟子の気持ちはお見通しだっただろうし、そういう意味ではシスイの指摘は的外れとも言い切れない。
そんなオビトを見て、はあとため息をもう一度零した後、うちはシスイは真剣な目でオビトを見ながら、彼にしては思っていない言葉を口にした。
「オビトさんは火影を目指しているんだろう? もしその夢が叶って火影になったなら、その時アンタを支える基盤になるのは一族だ。あまり蔑ろにするべきじゃない」
それは諫言であった。
多分、余計なお世話であることはシスイ自身にもわかっていたのだと思う。
そういう顔をしていた。
だが、将来自分よりよほど未来の族長に相応しいと
「アンタが、一族と距離を置きたがっているのはわかっている。それでもアンタはうちは一族だ。アンタが本当に火影を目指しているのなら、一族から逃げるべきじゃない。向かい合うべきだ」
それも出来ない男が火影になどなれるはずがない。
痛すぎる諫言と共に、シスイはそう言葉を締めくくった。
続く