隻眼の木遁使い   作:EKAWARI

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ばんははろEKAWARIです。
本作では名有りのオリキャラはガマ次郎三郎のみの予定ですので、それ以外の名前があるキャラはオリキャラではないデスよ、とか先に言ってみる。ではどうぞ。


62.予選

 

 

 

 オビトがうちは一族族長うちはフガクと、来年の新年の宴に出ることを約束した日から数えて四ヶ月後の夏の盛り……オビトは、普段は年に二回の中忍試験で使われる里内の大競技場(スタジアム)へと訪れていた。

「よし……!!」

 自分に活を入れるように頬を叩き、オビトは会場へと足を踏み出す。

 そこには、今日自分が戦うべき相手と審判、そして観客席にはただ一人、銀髪の相棒が眠そうな目をして何かの本を読みながらヒラヒラと自分に手を振っている。

 

「それではこれより、第28回武練祭の予選三回戦……日向イロハ対うちはオビトの戦いを開始する」

 審判がそう告げながら、手旗をバッと高く掲げる。

 相対するのは、オビトとそう年の変わらない日向一族分家の男……日向イロハ。

 お上品な日向一族の例に漏れず、「よろしくお願いします」と言わんばかりに黙礼する姿は爽やかでさえあるが、目の奥に宿ったギラついた光はオビトを打倒せんとする闘志に燃えている。

 ……まあ、当然か。

 そういう人間でなくば、そもそも武練祭への予選になど登録はしない。

 

 武練祭。

 それは後に二代目火影を継いだ真眼のイズナが始めた、三年に一度の祭典だ。 

 夏至の日に木ノ葉主導で行われるその祭りは、戦神に武練を奉納するそういう祭りである。

 この祭りの目玉は、厳かで見応えのある神に捧げられる剣舞神楽と、その半刻後に谷の決戦場で行われる当代火影様の戦いとなっている。

 出店なども出ているし、色んな国や地域から人が集まるとても大規模な祭りだ。

 その売上金は必要経費を除き、里の運営する孤児院や忍者学校(アカデミー)の運営費などに宛てられる事も、この祭りが出来た当初からの伝統となっている。

 そしてオビトは昔っからこの祭りが好きだった。

 いつか、あの谷の舞台で火影様と戦う自分を夢見てきた。

 しかし、火影様と戦えるのはただ一人、前年に希望者の中から予選を勝ち抜いた者だけだ。

 オビトの夢は火影である。

 そして三代目様も、四代目であるミナト先生も、どちらも火影になる前に武練祭の予選を勝ち抜き、あの谷の決戦場で現役時代の二代目様や三代目様と戦っているのだ。 

 例外は毎年引退するまで、オビトの曾祖父であるあのじじい……うちはマダラとドンパチしてた初代様世代くらいである。

 オビトが上忍に上がった時に知らされた事だけど、そもそも武練祭の始まりは初代様と戦えなくて鬱憤を溜め込んでいた歩く鬼神……うちはマダラのガス抜きだった、という側面があったそうな。

 故に当然かも知れないが、初代様の時代の武練祭では、そもそも火影様との対戦相手を予選で選出するという考え自体なかったらしい。

 なので、武練祭で初代様と二代目様が戦ったことはなかったとか。

 それを初めて知ったとき、オビトは吃驚したが同時に納得もした。

 なにせ、オビトは件の問題児……うちはマダラの実際の人となりをよく知っている。

 困った老人を助けるをモットーにしているオビトから見ても、助けたくねェ……と思わせるじじいだった。

 てか、六十代になってもあれだけ大暴れ、大立ち回り出来るとかあのじじい絶対おかしい。

 第一次忍界大戦でのマダラの暴れっぷりは、彼の子孫であるオビトから見ても、ドン引きものレベルである。

 ……なんで還暦も過ぎたようなジジイが、三忍でもどうにもならなかった山椒魚の半蔵に、おまけに現役の水影と土影も仕留めているんだ……。

 でも生前のマダラの姿を思い浮かべれば、出来るか出来ないかで言われたら、やるだろうなあと思わされるあたりが負の信頼がヤバい。

 平和な時代にあれほどそぐわない人間も珍しいだろう。

 あのじじいは戦闘狂(バトルジャンキー)なのだ。

 それを平和という枠に収める為、定期的に初代様と心ゆくまで戦わせようと思いついた二代目様は、文字通り真眼だったのかもしれない。

 まあそんな思惑はともかくとして、初代様が引退すると同時に、武練祭という舞台を使ってわざわざ歩く鬼神(うちはマダラ)を縛る必要もなくなったわけで、しかしその時点で毎年のように開催されていた武練祭はもう里の歴史と共になくてはならないものになっていた。

 辞めると言ってもファンからのブーイングが出るだろうし、祭りの売り上げは孤児院やアカデミーの運営費になっているのだ。

 火影の武力を誇示するのは他国への牽制にもなるし、止めるという選択肢はない。

 とはいえ、マダラのガス抜きとしての仕事は初代様が引退したことによって終わってもいる。

 だからだろう。

 二代目様の時代以降では、武練祭は毎年開催していた頻度を三年に一度に落とし、そして対戦相手も里の上忍の中から、予選を勝ち抜いた希望者と戦う事にする、とそう改訂したのは。

 武練祭で火影様と戦えることは誉れだ。

 だが、その栄誉を与れるのは、三年に一度、たった一人だけなのだ。

 確か、一昨年の第27回武練祭でミナト先生……四代目火影と戦ったのは、日向家当主日向ヒアシ様……だったか。

 生憎、その頃のオビトはまだ山で修行をしていた身であり、里にいなかったので実際に見たわけではないが、名家の当主と黄色い閃光の戦いに祭りは大盛り上がりだったとか。

 羨ましい、オビトも叶うならば自分の目で見たかったものだ。

 とはいっても、その戦いがヒアシにとっては最後の我が儘だったのだろう。

 以降、彼は日向家当主として後継者を育てる事に専念するために、里の上忍として任務を受けることも無くなったそうだから、きっともう武練祭に出る事は無い。

 というのも、武練祭で火影様との対戦相手になる為の予選には、参加基準がある。

 その一つが『現役の上忍である事』だ。

 子は宝であり、未来だ。

 だから、下忍を育て上げている最中である上忍師は、たとえ上忍として危険な任務に宛てられる事が少なかろうが、現役の上忍としてカウントされるが……一族の為に一線を退き、上忍としての依頼を受けないとなると、実質引退しているとカウントされ、参加権を失う。

 武練祭の予選に参加出来るのは現役の上忍で、出場を希望するものだけなのだ。

 武練祭での火影様との武練演舞は、他国のスパイに見られている事を前提に行われている。

 はじまりがあのじじい……うちはマダラへのガス抜きと、他国への牽制、抑止力の誇示から始まっているのだから当然だ。

 そのことから、武練祭の戦いでの立ち回りは、他国へ見られても困らないもの、問題の無いもので構成するのが暗黙の了解となっており、故に知られていない事こそが最大の強みになるようなスタンスで戦う者は、そもそも武練祭の予選に参加することはない。

 だから、火影様との武練演舞は人気は高くとも、実のところ里に所属している上忍の数を考えれば、意外なくらいには火影様と戦う事を希望する者は少なかったりはする。

 見られても構わない戦闘スタンスで、なおかつ派手さ見応えがあり、客席を沸かせる存在……と考えれば、そりゃ日向一族は最適だろう。

 なにせ、日向一族が得意とする柔拳は日向一族の血継限界である白眼を前提としたものであり、他国のスパイに見られた所で真似出来るものでもないからだ。

 きっと今年の予選に分家であるイロハが出てきたのも、もう武練祭に出場する事のない、当主であるヒアシに変わり、日向の力を見せつけてやれと、そういう思惑なのだろうと分析する。

(ま、出場するのはオレだけどな……!)

 ニィと口角を上げながら、オビトは笑う。

「それでは、始め……!!」

 審判が旗を振り下ろし、同時にオビトは駆け、素早く印を結んで牽制がてらに火遁業火球の術を放つ。

「ハッ」

 それを柔拳がいなし、危なげなく避ける。

 白眼に備わった透視能力や動体視力、チャクラ視は写輪眼以上の性能だ。

 これくらいはやるだろう。

 だから、既に次を発動している。

 右手を地面に打ち付け、土遁で地中に穴を掘り、イロハの背部に通して木遁で右手から伸ばした樹を急成長させて拘束に向かう。

「それも視えているぞ、うちはオビト」

 日向を舐めるなと、回転で対処する茶髪の男に、オビトは手裏剣とクナイを投擲する。

「はあ……!!」

 全て打ち落とされる。

 だが、それでいいのだ。

 火遁と木遁、忍術に体術を駆使して、男と暫し競り合いを興じる。

 白眼にはチャクラの流れや、人体の経穴(ツボ)を見抜く透視能力が備わっているため、専用の戦闘術として昇華された柔拳と組み合わせれば、当たればただではすまないが、当たらなければ問題ないし……なにより、あたっても、それが元より義肢である右手や右足であれば問題は無い。

 表立って知られているオビトの欠損は左目だけであるが、実のところオビトの肉体の三分の一が作り物だ。

 右腕も右足も、そして内臓機能の多くも、柱間細胞をベースにした義肢であり、疑似臓器だ。

 作り物の腕には痛覚も、突かれて困る経穴もそもそも存在していない。 

 だから右腕と右足で男の柔拳をいなし、はじき、そして…………。

「な……」

 ほぼ360度の視界を持つ白眼にある僅かな死角から這い寄り、チャクラ吸収の性質を持つ木龍で拘束昏倒させた。

「そこまで。勝者、うちはオビト!」

 種はそこまで難しいわけじゃない。

 何度もクナイと手裏剣を投げたのは、ほぼ360度近い視界を有する相手の死角を探すためと、飛雷神のマーキングをばらまくためだ。

 あとは男がオビトに攻撃を加えようとして前に拳を突き出した体勢を取った時に、死角の位置にあるマーキングクナイから男の真後ろに飛んで、チャクラを吸収してやればいい。

 写輪眼に比べるとコスパが良い白眼とはいえ、能力発動中はずっとチャクラを消費し続けているのだ。

 そのチャクラを奪ってやればいい。

 その術は既に知っているのだから。

 そんな風に、昔では考えられないほどに冷静に勝利を収めたオビトに対し、パチパチと気の抜けた拍手の音が鳴り響く。

 音の発生源は観客席。

 そこに座っている銀髪の青年……はたけカカシは気怠そうにまあ勝って当然だよねと言わんばかりの目をしていたが、それでも唯一の観客として一応、祝ってくれる気はあったらしい。

 気の抜けた拍手を続ける相棒に、オビトはサムズアップしてニッと笑った。

 

 さてさて。

 先にも述べたとおり、武練祭の予選に参加出来る者は現役の上忍か、上忍師とそう決まっているわけであるが、言うまでもなく、上忍や上忍師ともなれば忙しく、予選をするからといって全員が一同に集まれるかと言われたら難しいところがある。

 故に、予選のルールであるが、希望者は武練祭の前年の五月までに予選への参加希望書を提出し、その上で六月~九月の間に、予定が合うもの同士で対戦を組んで競技場で戦わせるという運びになっているので、対戦相手や対戦日はクジなどで決まるわけでは無く、それぞれの任務状況や非番の兼ね合いで決められている。

 なので三回戦とはいうものの、このあとも連続して誰かと戦うというわけではない。

 今日、武練祭出場希望者で、時間が取れたのはオビトとその対戦相手だった日向イロハ。あとはオビト達が終わった二時間後に戦う予定のうちはイナビと油女タツマの試合で本日の予選は終わりだ。

 オビトが予選に参加するのは本日で二度目だったが、あと二回か三回勝ち抜けば、来年の武練祭に出場する事が出来る。

 そう考えると、やる気も満ちるというものだ。

 子供の頃から望んでいた憧れの舞台は、もう手が届く所にあるのだから。

 しかし、この後はどうするか。

 イナビとタツマの試合を観戦するか、それともカカシと飯でも食いに行くか、悩むところだ。

 そんな風にオビトが少し悩んでいる時だった。

「ホッホホ、久し振りに会うたが元気そうじゃな、オビトよ」

 そう好々爺染みた笑みを浮かべた、老人……同期の父親でもあるけど、に声をかけられたのは。

「先代!?」

 ぎょっとしてオビトが振り向くと、その食えない笑みを浮かべた六十歳前後の老爺は、見間違えることなき三代目火影である猿飛ヒルゼンだ。

 見た目は小柄で人当たりの良さそうな老人であるが、戦い方としてはインテリパワーファイターと呼ぶベきもので、教授(プロフェッサー)とも呼ばれるその膨大な術の知識により、即座に敵の術を相殺し、その九尾をも吹き飛ばすような膂力でぶん殴ってくるというスタイルで知られた先代火影である。

 彼が第25回武練祭で見せたミナト先生との戦いぶりは、今も語り草になっている。

 オビトは三代目火影である猿飛ヒルゼン政権下で生まれ育った身だ。

 三代目はオビト幼少期の現役火影として一番身近な憧れであったし、オビトの同期であるアスマの実父でもあるし、当然知らない相手ではないが、しかしわざわざ自分に声をかけるとは一体どういう要件だろう。

 三代目が火影を退いて早六年……時折見かけることはあっても、四代目の治世に影響を与えないようにと考えてか、主に里外でボランティア活動などに従事してたりで、老人達の集まりでもそこまで見かけることはなかったのだが……。

「オレに何か用ですか?」

「何、おぬしに会いたいという客人がいてな」

 そういって三代目はチラリとカカシに目配せをする。

 するとカカシは、粛々と頭を下げて去って行く。

 どうやら、あまり大勢の目に触れさせたい相手ではないらしい。

 とりあえずどちらにせよ、三代目に声をかけられてそれを無下にするという選択肢はない。

 オビトのモットー的な意味でも、里の忍びとしても。

(昼からの試合の見学は諦めるか……)

 でもそこまでして見たかったというわけでもないし、まあいっか。

 そう思い、三代目火影猿飛ヒルゼンの背をついて歩く。

 三代目に気付いたのだろう、里内を歩いていると「先代様こんにちは」や「良い天気ですね」などと話しかけてくる声の主がひっきりなしに現れる。それに、好々爺よろしくにこやかにヒルゼンも返していく。

 そうしていくうちに、猿飛一族の本邸が見えてきた。

 わかっていた事だが、流石は名門一族の家。

 でかくて重厚な屋敷だ。

「こっちじゃ」

 白髭を生やした老人は、そういって軽快な足取りで屋敷内の中庭のほうへと案内する。

 そこには蝶柄の白い着物を着こなした女性が一人、優美に立っていた。

 

「おまたせしましたな」

 そうにこやかに三代目が声をかけると、おそらくオビトに会いたがっているとヒルゼンが言ってた当人たる夫人が振り返る。

 それは美しく年を取った、そんな印象の……見た目四十代前半くらいの貴婦人だった。

「あらまぁ、先代火影様。それほど待たされてはいなくてよ。 それで……そっちの彼がオビトくん? まあ! 随分と大きくなったわね……」

 そう言って懐かしそうに客人は目を細める。

 シャンと伸びた背に、品のある指使い、足運び。

 美しい言葉遣いに、往年の美貌を思わせる整った(かんばせ)

 今告げられた言葉からして多分、会った事がある相手なのだろうとは思う。

 だが、オビトの知らない顔だ。

 木ノ葉隠れの里に住んでいる全老人の顔を覚えていると豪語しているように、オビトは見たことのある人間の顔を忘れる事は滅多にないのだが、それでもこの御夫人が誰なのか見当もつかない。

 そんなオビトの困惑に気付いたのだろう、長い髪を後頭部で一つに結い上げ、一本の簪で纏めた貴婦人は、「覚えていなくも無理はないわ。私が最後にアナタに会ったのは、アナタが四つの時の事だもの」と、広げた品の良い扇子で口元を隠しながら、そうコロコロと笑い、告げる。

「……本当は三年前にも、師の墓参りを兼ねて、アナタに会いに来たのだけれど……生憎その時はアナタには会えなくてね……やっと会えて、光栄だわ。隻眼の木遁使いさん」

 目元がおばあさまによく似ているわね。

 そう嬉しそうに彼女は笑う。

「……ばあちゃんを知ってるの?」

「ええ、それはもう、よく」

 そういってマダムは告げる。

 

「改めまして。(わたくし)、アナタのお祖母様の一番弟子で、かつて、五大国一の舞姫と呼ばれていた者ですわ」

 祖母の一番弟子。

 そこからすぐにその名と素性に思い至る。

 血筋も定かでない孤児の身で有りながら、かつてその道で知らぬ者はおらぬ舞姫とまで呼ばれるようになった女性がいた。

 二十年前まで、一世を風靡した舞姫。

「少し、お時間頂いても宜しいかしら?」

 彼女は年を感じさせぬほどに華やかに、四十路くらいに見えたが……実年齢を考えると、五十代後半だろう老女は、牡丹のように美しく笑った。

 

 続く




舞姫。
転生イズナから続投のオリキャラ。
年齢は56歳前後で、オビト祖母の一番弟子だった元孤児。
15年ほど前に弟子が一人前になったのを期に現役を引退。その際師に挨拶に向かったところ、当時4歳だったオビトに会ったらしい。
一世を風靡し、かつては知らぬ者はおらぬと呼ばれた舞姫であった。

因みに三代目は彼女の全盛期を知っている事もあり、彼女のファンである。
武練祭で剣舞神楽を舞う彼女に見惚れて、妻のビワコにどつかれた事がある。

次回「未完成」
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