ある意味オビトのばあちゃん回です。
「少し、お時間頂いても宜しいかしら?」
そうオビトに尋ねた、見た目は四十代前半くらいの老婦人は、はんなりと品の良い扇子を口元にあてて優美に木ノ葉隠れの里内を歩く。
まるで歩き慣れた道を歩くように。
……その印象は決して間違いというわけでもないのだろう。
話に聞けば、彼女は別に忍びだったことはないそうだが、オビトの祖母に弟子入りした十の夏から八年間を祖母の下、住み込み家政婦も兼ねて、この里で暮らしていたのだそうだ。
元が孤児であり、木ノ葉隠れが経営する孤児院で育った彼女には、舞いを習うにせよ月謝を払える金はなかった。
二代目火影であったうちはイズナにより、オビトの祖母への紹介状を渡され、里に入る許可だけは貰えたけれど、その先は己で交渉することとなった。
それで交わした契約が、住み込み家政婦として家事に従事して、その給金で月謝を納めること、だったのだそうだ。
「一応家事全般は孤児院で仕込まれていたとはいえ、私もまだまだ子供だったもの。弟子兼住み込み家政婦として雇うといっても、師にも、家長であるマダラ様にも迷惑だったと思うのだけど……アナタのお祖母様は、私が弟子入りした二年程前に弟君を亡くされていてねェ……きっと弟さんを重ねていたのでしょうね。稽古中は厳しかったけど、それ以外の時間は甘過ぎるほどに優しかったわ」
まあ、でもまさか同じお屋敷に二代目様もいるとは思わなくて、あの時は口から魂が出るかと思うほどに驚いたものよ、とそんな風に懐かしさに目を細めながら、老婦人はクスクスと笑う。
「ばあちゃん、二代目様と一緒に住んでたことあるのか?」
思わず潜めた声でオビトがそう問うと、「そうよ、二年と半年くらいね」と謡うような声で老女は言う。
「二代目火影だったイズナ様は、アナタのお祖母様の弟君が亡くなるまでは同じ敷地内の離れ……まあ敷地内の離れといっても、本邸とは隣家くらいには離れた位置にあったのだけれど……に住んでいらしたそうだけど、甥を亡くした姪の落ち込みようが見てられなくて、それで本邸に越してきたらしいわ」
と言っても、当時は現役の火影様だったから、あの方も忙しいのか、夕飯時以外はそれほど頻繁に見かけたわけでもなかったけどね。
と、二代目火影うちはイズナのファンが聞けば羨ましがられるような事を、さらっと述べた。
そんな会話をしている間にも歩は進む。
この先は……うちは一族が多く暮らしているエリア……うちは居住区だ。
懐かしい、かつて通い慣れた道を歩く。
木ノ葉の中心街からうちは居住区に入って百メートルほど。
そこにかつてはうちは一族族長であったうちはマダラと、二代目火影であったうちはイズナの兄弟が、終の棲家とした屋敷があった。
オビトの脳裏にアカデミー時代の記憶がよぎる。
二代目火影であったうちはイズナが亡くなったのは、オビトが九つの時の事であった。
実際に亡くなる一年前から、肺を病んで床から出られなくなったその人の看病や手伝いを、曾祖父が忙しい時に代わりに行っていたのは、幼少期のオビトと祖母だ。
死因は病死とも言えるし、老衰とも言えた。
ただ、眠るように穏やかな死に顔であったことを覚えている。
* * *
「いらっしゃいませ。『木ノ葉隠れうちは歴史資料館』へようこそ。見学は大人二名様でよろしいですか? はい、二十両になります。丁度ですね。ごゆっくりどうぞ」
そんな風に明るい声で、オビトより五つほど年下だろう、受付に座るうちは一族の少女に代金を払い、かつて『うちはマダラ邸』と呼ばれていた屋敷の中へと足を踏み込む。
十年前までは、何度も通った屋敷と同じでありながら違うその場所に、オビトはモヤモヤとした感情を持て余しながら、キョロキョロと周囲に視線を巡らせる。
そんな挙動不審なオビトに対し、かつて一世を風靡した舞姫だった老女は、「フフ、ひょっとして、オビトくんは『木ノ葉隠れうちは歴史館資料館』になってから、ここに来るのははじめて?」と無邪気な少女のように綺麗な微笑みを浮かべつつ尋ねる。
それに、ついオビトは気恥ずかしさに、「まあ」と素っ気ない声を漏らしながら、耳を赤く染めた。
かつて歩く鬼神うちはマダラと、その弟にして二代目火影であったうちはイズナが暮らしていた邸が『木ノ葉隠れうちは歴史資料館』とそう名を変えて、オープンしたのは今から六年前の事だ。
話が出たのは、うちはマダラの娘……つまりオビトの祖母が存命であった頃。
曾祖父である彼の歩く鬼神……うちはマダラが亡くなった三ヶ月後の事であった。
うちはイズナには直系の子孫はおらず、彼が亡くなったときその財産は兄であったマダラに相続されたが、そのマダラも弟であるイズナが亡くなった一年後には大往生を迎えることとなった。
では、誰が彼の財産と家を継ぐのかと言われれば、当然うちはマダラの唯一の実子である祖母である。
だが、忍びの道を選ばなかった祖母は、実の父と叔父から継承した財産を、そのまま受け取ることを望まなかった。
「お父さんと叔父様の功績を、遺したいと思うの」
そう言って、里と一族に提案したのが、相続した二人の財産を使って、彼女にとって生家でもあった邸を、『歴史資料館』へと生まれ変わらせる計画である。
うちはマダラとイズナの兄弟は、火の国で知らない者はいないほど有名な兄弟だ。
彼らが晩年行ったという五年に渡る悪党退治の旅は、今でも『マダラとイズナ』『真眼のイズナ』『うちは兄弟世直し旅』など、絵本や小説という形でよく親しまれている。
だから、かつて本邸と呼ばれていた邸では、木ノ葉隠れの里のこれまでの歴史や、歴代火影についての展示や、有名な絵本の原本や挿絵などの展示に、初代様とマダラの旅に、うちは兄弟の旅物語などがスライドショーで紹介されている。
追加で二十両払えば、絵本の中で出てくる衣装や、うちはや千手を含め、木ノ葉隠れの里を初期に形作った有名一族の、戦国時代風の衣装の貸し出しに、中庭や、よくマダラとイズナが兄弟揃って月見をしていたという縁側での写真撮影サービスなども体験できる。
そしてかつてうちはイズナが暮らし、晩年は色んな教室という形で貸し出されていた離れのほうでは、武練祭についての解説や絵画の展示、昔の舞手が着用していた衣装や、初代様とうちはマダラの武練演舞の百分の一スケールジオラマの展示などが行われている。
忍び里のうちは居住区内という、外の人間には入る勇気が要る場所にあるが、ここ『木ノ葉隠れうちは歴史資料館』は、今では知る人ぞ知る里有数の観光スポットであるといえる。
真眼のイズナのファンであれば、一度は訪れたいと謳われる聖地スポットだ。
……きっと祖母が生きていれば、そう呼ばれていることに、きっと喜んだことだろう。
この施設について、草案を練り主導したのも、予算を出したのも、今は亡きオビトの祖母だ。
父や叔父の事を遺したいと、そんな思いで旧うちはマダラ邸は歴史資料館へと生まれ変わった。
だが……ここの完成を誰よりも望んでいた祖母が、それを目にすることはなかった。
三ヶ月後に予定していたオープンを前にして、戦争がはじまったからだ。
故に計画は凍結されそして……実際に開館したのは、ミナト先生が四代目火影に就任した一ヶ月後。
祖母は既に亡くなっているけど、『姫巫女様の気持ちを無駄にしたくない』と、そう長老会から声が上がって、そうして開館の日を迎えた。
だが、オビトは開館式には出なかった。
当時のオビトは柱間細胞に馴染みきっておらず、リハビリ中でやっと少しずつ走れるようになってきたところだったから……というのはきっと逃げるための言い訳だ。
大好きだった、唯一の家族である祖母が亡くなって、かつて住んでいた家は一人では手に余るからと処分したオビトには……かつて知っていたその邸が、全く知らない場所に変わることを直視することが堪えた、それだけの話なのだ。
それでもそれを誰より望んでいた祖母と見るのなら、きっと受け入れられたけど、当時十三歳だったオビトにはキツかった、それだけの話。
とはいえ、一度避けた以上、なんとなく行きづらくなるもので、結局歴史資料館に変わってから今日まで一度も足を踏み入れた事はなかったのだけど、流石元族長と二代目火影が住んでいた邸。資料館に生まれ変わらせて運用しても十分な広さである。
そんな事を思いながら、受付で受け取ったパンフをチラリと見つつ、最初の展示室に入る。
歴代火影のコーナー、その初代。千手柱間についての部屋だ。
目立つ位置では、デカデカと載せられた柱間の顔写真と、その功績や経歴について書かれたパネルがあり、硝子の中ではかつて千手柱間が実際に戦場で着用していたと言われている赤い鎧が展示されている。
そしてその左端には……。
(……扉間先生)
彼の弟である千手扉間とその功績について、小さく展示されていた。
当時の資料として飾られた三枚の写真には、在りし日の
そして後に三代目火影となった幼少期の猿飛ヒルゼンと、うたたねコハル、水戸門ホムラに秋道トリュフ、後に二代目
それを、唯一残った右目を眩しそうに細めながら、オビトは眺める。
……扉間先生の顔を見たのは、随分と久し振りな気がする。
オビトは実質千手扉間にとって最後の弟子であったけれど、共に写った写真は一枚もないから。
こんなことなら、一枚くらい撮っていたら良かったなって思うけど、あの頃のオビトは扉間先生は殺しても死なない気がしていたのだ。
なんの疑いも無く、きっとこの人は百まで生きると、そう思っていた。
いつ死が訪れてもおかしくない忍びの身で、おまけに高齢で、そんなわけがないのに。
でも、ここに来ればまた、先生の顔を見ることが出来るというのなら、嗚呼なんか良かったなと、そうオビトは思うのだ。
そんな感慨に耽っていると、ガヤガヤと騒がしさが伝わってきた。
それに、隣に佇む老婦人は「あら、ひょっとして社会見学の日と被っちゃったかしら?」と呟いて、それでオビトも思い出した。
確か、三年ほど前から、アカデミー高学年のカリキュラムに、社会見学と称してここ……歴史資料館への見学が加わったとかいう話である。
「ウルシ、ウルシ! 聞いたか、真眼のイズナについての展示はこっちだってさ!」
「オウ。お前も早く来いよカブト!」
「あー、もう待ってよ。全く……相変わらず強引だなァ」
「こら、お前達、遊びじゃないんだぞ、ちゃんと順番にみてかんか!!」
「やっべ、先生が怒った!」
そんな風にわいわいと子供達のはしゃぐ声がオビトの元まで届き、思わず隣の若々しい容姿の老女と顔を見合わせる。すると彼女は苦笑しながら、「もう少し落ち着いてから次に移動しましょうか」とそう囁いた。
それからもゆっくりと展示物を見ていった。
こういう施設に来るのは、オビトも初めてなもので、なんだかんだ新鮮な気持ちだ。
うちは兄弟の五年の旅を題材にした『マダラとイズナ』『真眼のイズナ』『うちは兄弟世直し旅』など有名書籍を題材にした展示コーナーでは、「カッケー」「スッゲー」など目を輝かせる子供達が溢れ、庭で貸し衣装をきてなりきった子供達が、思い思いの格好いいと思った決めポーズをとって写真を撮って貰っている。
そんな光景がなんだか平和の象徴のようで、少しだけ目の奥がぐっと熱くなった。
きっと祖母もこの光景が見たかったんだろうな、と思うと亡き祖母に無性に会いたくなった。
そんなオビトの心境をお見通しとばかりに微笑む連れに、少しだけ居心地の悪さも感じる。
だが、まあ人生経験豊かな老人から見れば、オビトなんてまだまだケツの青い若造だ。
そういう視線も甘んじて受けよう。
なんて、考えながら庭に出て敷地内の離れに向かう。
この庭も広く立派なものだが、オビトの知っている十年前とはやはり違う。
初代火影である千手柱間の趣味が盆栽や彫刻だったからか、庭には盆栽が並べられているコーナーがあり、自分が一番良いと思った盆栽に投票する事が出来るようになっていた。
因みにパンフレットによると、資料館では二月下旬から三月上旬にかけて、季節限定で
その時期にリンを連れてくるのも悪くないかも知れないな、とオビトは思った。
そうして、かつてうちはイズナが暮らしていた離れに辿り着く。
最初に目についたのは大迫力で躍動感ある絵柄で書かれた、うちはマダラと千手柱間の武練演舞の絵だ。
右のうちはマダラは、青い鎧のようなものを纏わせた九尾の上で鎌と大団扇を構えている。
対して、左のデカい巻物を背負った姿で書かれた千手柱間は、九尾より更にデカい木龍に倒すべき相手を教えるように印を組み、鋭い瞳をマダラのほうへと向けている。
そんな在りし日の御伽噺のような戦いを思わせる、絵物語であった。
そのすぐ下には、荒々しささえ感じる武練演舞の絵と打って変わって、幻想的で美しいタッチで描かれた剣舞神楽の絵が掛けられていた。
右側に白い巫女装束に、緑の隈取りをして髪を高らかに結い上げた千手の巫女姫。
左側には、対になる黒いうちは装束に、赤い隈取りをして髪を高らかに結い上げた美少年……おそらくは二代目火影うちはイズナの、若かりし頃の姿だ。
それが飾り剣を左右一対の生き物のように構えている、神々しいほどに美しい絵だ。
しかし、この二枚の絵を見て、オビトはアレと気付いた。
静と動。黒と白。右と左。うちはと千手。陰と陽……。
昔、祖母に言われた言葉が脳裏をよぎる。
『白と黒、男と女、千手とうちは、右と左、上と下。太極から生じるは両義であり、陰の中の陰、陰の中の陽、陽の中の陰、陽の中の陽、これら併せて四象と為し、四象は八卦を生じさせる。之、宇宙也』
つまり……。
(
太極だ。
ザワリとオビトの中の何かが反応する。
この感覚を知っている。
覚えがある。
九尾が里を襲った、五年前のあの日……。
「……オビトくん?」
その言葉にハッと、オビトは正気を取り戻した。
「どうしたの? お疲れかしら」
「いや、なんでもねェよ、ばあちゃん。ただ芸術とかオレさっぱりだけどよ、こいつはスゲーなって……つい、圧倒されちまっただけ」
そう誤魔化すようににっかりとオビトは笑った。
それに「そう」と、あまり納得しているようには見えないけど、老婦人は静かに笑った。
何はともあれ、展示物はこれで全部だ。
結局この御夫人はオビトをここに連れ出して、何がしたかったんだろうとオビトは内心で首を傾げる。
相手は祖母の一番弟子……とはいえ、オビトにとってはあまり関係のない話だ。
オビト自身との関わりなど、それこそオビトが四歳の時に会ったことがあったらしいという、それだけ。
そんな風に思うオビトの前で、すっと夫人は懐に今まで大事に仕舞っていたのだろう、写真を一枚取り出し、オビトに手渡した。
「これをオビトくんに」
そこに写っていたのはハッとするほどに、美しい女性だった。
黒い巫女装束を身に纏い、黒髪を高らかに結い上げ、凜々しく飾り剣を構えている、赤い隈取りをした二十代女性の古い写真。
「師が武練祭の剣舞神楽の舞手を、最後に務めた時の写真よ」
それにハッとしてオビトがもう一度写真を見る。
自分がよく知る祖母と似ても似つかないから気付かなかったが、確かに言われてみれば面影があるし、三親等の親族でもあるからだろう。先ほどの部屋に飾られていた、若かりし頃のうちはイズナの舞い姿にも似ている。
「ねぇ、オビトくん。貰ってくれる?」
そういって老婦人はオビトの手に写真を握らせ、ソッとその手を重ねた。
「なんでオレに……?」
この写真がとても大事にされてきたものであることは、一目でわかった。
大事なものだろうに、何故自分に託そうとするのかがわからない。
そんなオビトに、かつて一世を風靡した舞姫だった老女は言う。
「フフ、そうね。老い先短い私よりも、あの方の実の孫で宝物だったアナタにこれを持っていて欲しいから」
そんな私の我が儘よ、ごめんなさいねと淑やかに貴婦人は笑う。
「ばあちゃん……」
元よりオビトのモットーは困った老人を助けることだ。
否やはない。
「ありがとう、オビトくん」
これで心残りは何もないとばかりに、ほっと息を吐いて扇子で口元を隠した老婦人は笑う。
「そうだわ。お礼と言ってはなんだけど……師直伝の剣舞神楽、良かったら見せてあげるわ」
そういって彼女は受付に戻り、裏庭を借りる事を告げる。
「一時間につき、二百両になります。はい、丁度ですね。ありがとうございました。ごゆっくりどうぞ」
元より、この資料館では時間制で、展示室になっていない部屋や施設の一部の貸出制度が、開館当時から組み込まれている。
それにより、一般公開されている表の庭ではなく、畳五畳ほどのサイズの裏庭の一角を借り受け、かつて知ったる邸とばかり、迷うこともなく裏庭に続く道を歩く。
そして……。
シャン。
聞こえる筈のない鈴の音を錯覚してしまうほどに、裏庭という名の舞台に立った彼女の纏う空気と表情が一瞬でガラリと変わった。
手に持っていた扇子を剣に見立て、剣舞が始まる。
流石は二十年前まで知らぬ者はおらぬと謳われた舞姫か。
軽やかに、厳かに、見る者を魅了させる美を振りまきながら、巴を描くように、舞う。
本来は男女一対の舞いであるそれは、女が踊るにしては勇ましい振り付けも多いのだが、見る者にその違和感を感じさせることはない。
たった一人で、されどそこにもう一人を幻視するほどに、美しく荘厳な舞い。
けれど。
いつしかオビトはその目を写輪眼の赤に変えながら、胸の内にせり上がる違和感を、勘違いと切り捨てる事も出来ず、余人が見れば十中八九が絶賛するだろうそれを、厳しささえ感じさせる視線で見つめる。
(……違う。これは……)
それは彼が生まれ持った才覚からの、声。
うちはオビトは、誰よりも一つの世界を捉え、感じ取ることに特化していた。
「……もう、一回」
一通り舞い終わった彼女に、無意識にこぼれた言葉。
それに少しだけ老女は戸惑いつつも、どこか尋常ではない青年の様子に、「……ええ、いいわ」そう言って再び舞う。
その神楽を見て、オビトの中に眠る無意識が確信を告げる。
(なんで誰も気付かなかったんだ)
かつて祖母は言った。
武練祭の剣舞神楽。
あれはきっと、神卸の儀式だったと、そう確信に満ちた声で。
太極から生じるは両義であり、陰の中の陰、陰の中の陽、陽の中の陰、陽の中の陽、これら併せて四象と為し、四象は八卦を生じさせる。その先が示すは宇宙である。
天地天命に希う、神卸の義。
神の御前で奉納される武練祭の剣舞神楽は、陰陽二つの力の調和でもって悪神を祓い善神を呼ぶそういう術式なのだと、祖母の言っていた意味を唐突に彼は理解し、だからこそ気付いた。
この神楽を術式として見た時に、欠けがあるということに。
(……これはまだ、未完成だ)
続く
マダラ邸は資料館に進化した!
次回「再戦」