バトル回って難しいっすね。
それではどうぞ。
夏も終わり、漸く朝晩に涼しさを感じるようになってきた九月の半ばを過ぎた頃……。
来年の武練祭に出場するための予選試合も、遂に決勝戦を迎えようとしていた。
決勝戦、といっても本命は来年の火影様との武練演舞であるし、忍びとして、いつ何時何があるかわからない人生を送っているので、例えここで勝利したとしても、来年までに決勝戦優勝者に何かあったりして武練祭に出場出来なくなった場合は、予選試合の準優勝者が来年の武練祭に出場することとなるので、衆人の元行われる中忍試験とは違い、決勝戦といえど、見学者は殆どいない。
それでもこれに勝てば十中八九、来年の武練祭で火影様と戦える事が決定するだけあって、「決勝戦くらい応援してあげたい」と……本日は非番のリンも見学に来てくれたものだから、オビトのテンションは鰻登りだ。
その隣に立っているカカシは「張り切りすぎて、トチんなよ?」と目で伝えてくるのが、嬉しいような余計なお世話のような。
因みに来年の武練祭出場者を決める予選試合の見学者は、上忍、あるいは見学する上忍の連れ、もしくは予選出場者の身内のみという決まりになっているので、本日のカカシはリンの引率である。
この予選試合はあくまで、来年の戦いのオマケのようなものであり、関係者以外に見せるようなものでもない、ということからそういうルールになっている。
上忍とその引率者に見学権があるのは、いずれは見学を希望したその上忍自身か、もしくはその上忍が目をかけている者が将来、別の年の武練祭に出るかもしれないから、予選試合登録者達の戦い振りを勉強させる為に、見学希望書にサインを書いて提出したら、見学してもいいですよーって事になっていたりする。
事前準備に、情報収集もまた忍びの習いだ。
それに、武練祭で火影と戦う者は尚更に、他国のスパイに見られる事を前提に技や戦術を組む。
誰かに見られてまずいような技は、武練祭では使わないというのは、暗黙の了解だ。
見られて困るような戦い方をする者は、そもそも武練祭の予選に出場登録をするべきではない。
出ている以上は、自分の戦い方は見られても構わないし、対策されてもその対策を踏み潰す自信があるということなのだ。
だから、自分がいずれ当たる相手の戦い方を学ぶことは、寧ろ推奨されている。
研究し、対策し、全力を持って挑むべきなのだ。
そういう意味では、
ではあるが、本来の目的を考えたら、ただの応援の為に見学許可を取るのは制度の悪用といえなくもないので、その辺掟掟の四角人間だった過去のカカシなら、リンがオビトの試合を見たいと言っても却下していただろうから、アイツ本当に丸くなったよなあとしみじみ思うばかりである。
兎も角として、決勝戦だ。
オビトが本日当たる相手を思えば、どちらにせよ、任務が被っていない限りはカカシは見学に現れた事だろう。
「ハハハハッ! お前と戦うのは随分と久し振りだな! オビトよ……!!」
そういって快活に笑う濃すぎるくらいに濃い顔に、緑色の全身タイツ。
オビトより一つ年下ながら、彼よりも一年早く忍びの世界に飛び込み、オビトよりも一年早く上忍へと昇格した、カカシの永遠のライバルを自称する男が、決勝戦の相手として仁王立ちでオビトの前に立っていた。
そうあの、いつぞやの中忍試験の試合で、オビトをコテンパンにしてきたマイト・ガイが。
このウザいまでのテンションと暑苦しさに、少しだけ引きそうになるが、でも考え方を変えたらこれは良いチャンスだ。
一見ネタキャラか何かかと思えるような珍獣じみた男であるが、ガイの強さは本物だ。
幼い頃からカカシを永遠のライバルと呼び、オビトがカカシに相手にされていなかった時代も、なんだかんだガイはあのカカシに認められていた。
それは、本当にガイが強いからだ。
泣き虫でドベで口先だけの人間だった子供の頃のオビトと違って、ガイは体術に全てを賭けて鍛え続けた。
並外れた努力で逆光を跳ね返してきた。
だからこそ、アカデミー補欠入学という、オビト以上のマイナスからスタートしたのにも関わらず、最後には飛び級卒業が認められ、同年代の中で、カカシの次に上忍への昇格も果たしたのだ。
オビトがガイとマトモに戦ったのは結局、中忍試験のあの時だけだ。
だが、もうオビトとてあの頃の何も出来ない子供ではないのだ。
今度こそ、ガイに勝つ。
(あの中忍試験の
ぐっと傷跡の残る唇を噛みしめながら、オビトはその黒い瞳を写輪眼の赤に変え、闘志を抑える事もなく笑う。
そんなオビトを見て、良い顔をするようになったなと言わんばかりに、ガイも笑った。
「それではこれより、第28回武練祭予選試合決勝戦……マイト・ガイ対うちはオビトの戦いを開始する」
そういって予選試合決勝戦の審判を務める事となった、金茶の髪をポニーテールにした男……山中いのいちが、手に持った旗をバッと「はじめ……!」という口上と共に振り下ろす。
その直後。
「ダイナミックエントリー!!」
ゴゥ!
という風切り音と呼ぶには物騒過ぎる音と共に、先手必勝とばかりにガイの重すぎ早すぎ鋭すぎの三拍子が揃った跳び蹴りがオビトに向かった。
それを、土遁・土竜隠れの術で地面を柔らかくして、地中にさっと潜むことによって回避すると、ガイが元立っていた場所の後方五十メートル時点から地上へと飛び出た。
そんなオビトの行動が読めていたのか、ガイは黒髪隻眼の青年が地上へ出てきた場所へと正確に駆けだし、彼が地上に姿を顕わすと同時に放たれた、ガイの正拳突きをオビトは蹴り技でいなしてから、マーキング手裏剣を上空へ投擲。
瞬時に飛雷神で空中に待避すると同時に、先ほど地面を潜った時に地中に仕掛けた起爆札を爆破させた。
それをマイト・ガイは「ハアアアーーー!!」そんな気合いの駆け声と同時に回し蹴りをするように回転し、体術によって起こした風で爆風を吹き飛ばし、起爆札の脅威から逃れた。
(やっぱ体術でガイと勝負するのは、分が悪いか)
オビトとてそこまで体術が不得手なわけではないが、相手は体術のスペシャリストだ。
同じ土俵で勝負するのはまずい。
なにより、咄嗟にガイの拳を蹴り技でいなしたが、その余波だけで足がジンと響いている。
マトモに受けていなくてこれな時点で、ガイと体術勝負することのまずさを物語っていた。
そんなことを空中に滞空する間に思考し、バッと慣れた動きで印を組むとそのまま空中から火遁・鳳仙火の術を放つ。
その中に紛れ込ませていたマーキング手裏剣の一つに飛び、ガイの火をも畏れぬ猛攻を避けると、そのまま流れるような動きで木遁・突槍でリーチを伸ばし、鋭い木槍の一撃を叩き込む。
が、それもまたガイに通じることはなく、「ハァ!」とそんな気合いを入れた言葉と共にその剛拳の連打で砕かれた。
ここまでが、試合開始してから僅か八秒間に起きた出来事である。
「ハッハッハ、随分と腕を上げたな、オビト!!」
一旦仕切り直しとばかりに距離を取ったオビトに対し、ガイは気持ちの良い大笑いをすると共に、「良いぞ、これぞ青春だ!! ならば、オレもそれに応えねばなるまい……!!」そう告げ、「八門遁甲の第五門・杜門・開!」そう告げ、リミッターを外した。
途端、それまで以上にガイの動きの良さが加速する。
元々、カカシの永遠のライバルを自称するガイは、写輪眼相手の戦い方に慣れている。
写輪眼には、観察眼や催眠眼、チャクラ視など様々な能力が含まれているが、そのうちの一つが視線を合わせるだけで相手を強力な幻術に叩き落とすというものになっている。
故に写輪眼の持ち主を相手に、目を見て戦うのは悪手……であるからこそ、相手の脚の動きを見て次の行動を予測し対処するという戦い方を徹底している。
……まあ、言うは易く行うは難しというように、そんな方法で写輪眼に対処出来るヤツなどそれこそガイくらいなのだが。
それにガイが写輪眼の持ち主を相手に有利を取れるのは、彼が徹底した体術特化型なのもある。
いくら写輪眼の力があり、相手の動きを予測出来ようが、その最適な動きに体がついてくるかはまた別の話である。
写輪眼に備わった基本技能である観察眼に含まれた洞察眼・複写眼としての側面は、相手と術者の力量の差が近かったり、術者のほうが強ければ、その動きから次に相手が何の術を放つのかもわかるようになり、有利にことを運ぶことが出来るが、いくら相手が次にどう動くかわかっていても、それについていく身体能力や思考能力判断能力が足りなければ、いくら先読み出来ても対処しようがないのだ。
その点ガイはシンプルに強いからこそ、却って読みにくいし、例え動きが読めても対処するこちらの動きが追いつかない。
まあ、その辺は手数の多さでカバーしていくしかないが、考えず戦って勝てる相手ではない。
オビトが一昨年、水の国霧隠れの里に滞在中にコピーし、コッソリものにした術……水遁・霧隠れの術を放ち、水場などないのに強引にチャクラ量の多さにものを言わせて周囲に濃霧をばらまく。
それをガイは、「ハアアア―――!!」と気合いの入ったかけ声をあげて駆けだし、周囲など見えていないだろうに、瞬時にオビトがいる方向へと、木ノ葉旋風を繰り出した。
「くっ……!」
それから表蓮華、通常の蹴り、殴りの猛攻からの裏蓮華を繋げて、殺す気かと思うほどのとんでもないダメージをたたき出す。
が、そっちはダミーだ。
ボン。
そんな分身ならおなじみの音を立てることもなく、霧に紛れてオビトが出した木分身がオビトの形を保っていられず樹に戻り、それはそのままガイを閉じ込める檻とならんと襲いかかる。
それをガイは木ノ葉・大旋風で蹴散らし、その隙にその辺にばらまいたクナイへと変化して潜んでいたオビトは、木分身が解けると同時に本来の姿に戻り、ガリッと指を噛んで出血すると口寄せの術で相棒を呼び出した。
「ジロー!!」
「応よ、オビト!!」
そのまま現れた赤紫色の巨大蝦蟇の背にまたがるオビトを見て、ならばこちらも口寄せだと思ったのか、ガイもまた口寄せ契約を交わしている巨大亀を呼び出し、互いに口寄せ獣の背にまたがったまま、再び衝突を起こす。
「火遁・業火球の術!」
「ダイナミックエントリー!」
互いの十八番で再び激突。
仕切り直しに何度かガマ次郎三郎ごと飛雷神で飛び、仕込みをしていく。
木遁も火遁も、本命を隠す為の目眩ましに過ぎない。
ゲコゲコとガマ次郎三郎が鳴き、幾度目かの衝突のあとに、再び一瞬で破られる濃霧を張り、変化の術を使う。
「どうした! 先ほどから芸がないぞォ!? お前の青春はそんなものか、うちはオビトォ!!」
「ウルセエ! 前から思ってたがガイ、お前暑苦しいんだよォー!!」
そんな言葉を返しながらも、思考は冷静だ。
ガマ次郎三郎に乗ったまま、オビトがこれまでと同じように戦っていると、そう認識されているなら、
ガイの猛攻を捌きながら、滝のように汗が流れ、息が乱れる。
当たり前だ。
相手は推定この里一番の体術の使い手だ。
チャクラ量はオビトのほうが圧倒しているし、オビト自身体力には自信があるほうだが、流石にガイに比べるとその体力も凡人と言わざるを得ない。
一撃一撃を凌ぐだけで、何度もヒヤリとさせられた。
一歩間違えれば、倒れるのはオビトのほうだ。
写輪眼の性能と危機感とありったけの技術を使って、紙一重で対処しているのだから、当然そこには必死さが宿る。
集中力の切れ目がそのまま負けに繋がる。
きっと、この時間がこのまま続ければ……八門遁甲を第五門まで開いていることを考慮しても、きっと先に倒れるのはガイじゃない、オビトのほうだ。
だが……。
「ゲコゲコ!!」
オビトを乗せて今戦っている、木遁分身を変化させて作った偽者ではなく、ガイに見つからないよう隠していた本物のガマ次郎三郎が謳うように鳴き、同時にオビトはバッとその、相棒と共に編み出したオリジナル術の印を組み、発動した。
(悪ィな、ガイ。この再戦……勝つのはオレだ!!)
霧隠れの術に使う為に生みだしたチャクラの水をそのまま、水鏡に変形させ、大亀に乗ったガイを四方から囲む。
「うちは蝦蟇幻術二重奏……!!」
そこに響くは蝦蟇の歌。
それが水鏡の反響によって、輪唱しているかのように響き渡り、音幻術を発動。
例えこの幻術を避けたところで、水鏡によって反射されるオビトの写輪眼による催眠眼からは逃げられない。
視覚と聴覚、両方から訴え掛ける、今のオビトにとってのとっておきの大幻術である。
「……ぐ、おぉ……!」
流石に写輪眼対策はしていても、視覚と聴覚を同時に攻められるのはどうにも出来なかったのか、ぐるんと白目を剥いて、バタンと後ろ向きにガイが倒れる。
それから、本日の審判である山中いのいちがカウント10を取って見るも、ガイが起き上がってくる事はなかった。完全に幻術が決まったらしい。
「勝者、うちはオビト!!」
そう告げる声と同時に時間切れだ。
ガマ次郎三郎は元のボンと音を立てて消え、元の住処に帰り、一人残されたオビトはへなへなと腰が抜けたように座り込んだ。
あれだけの大乱闘をしたのだから当たり前だが、オビトの体もあちこち擦り傷打撲切り傷だらけで、下手すると負けたはずのガイよりも満身創痍だ。
「オビト……!」
どこにいても聞き間違えるはずがない女性の声が自分の名を呼び、ばっと上の観覧席からオビトのほうに下りてくる。
そんなリンに、オビトは傷跡だらけの顔にニッと明るい笑顔を乗せて、どうだと言わんばかりにサムズアップして「リン! どうだ、オレ勝ったぜ! これでオレが来年は武練祭に出場だ!」とそう告げた。
それにリンは、もう仕方ないなあと困ったように眉をひそめて、それから「はしゃぐ気持ちはわかるけど、先に傷の手当てをするよ」と、消毒液のついた清潔な布でオビトの顔や傷口を拭った。
「いてて……」
ひとまず消毒をすると、リンは次に掌仙術を発動してオビトの傷口を治していく。
流石は特別上忍を任じられている医療忍者だけあり、ほどなく傷は全て塞がった。
「へへ、ありがとうな、リン」
そういってオビトは彼女に礼を言う。
「どういたしまして、それからオビト。予選優勝本当におめでとう」
そう微笑む柔らかい眼差しに、天使かな? とオビトは思った。
そんな二人の元に、同じく観覧席にいた銀髪の青年も下りてきて、「ガイを倒すとは、やるじゃない」そういって拳を突き出す。それに、コツンとオビトもまた拳を作り突き出して、カカシの拳と会わせる。
「ったりめェだ。オレはいずれ火影になる男なんだからな」
そんなオビト相手に肩を竦めて「まっ! 次もガイに同じ手が通じるとは思わないほうがいいから、あんま調子にのるなよ」、とか言ってくるあたり、カカシのヤツ、相変わらず一言多いなこいつと思うオビトであった。
とにかくも、ガイとの再戦は勝利に終わり、第28回武練祭参加者を決める予選は終わった。
本番は来年のミナト先生との戦いである。
どんな戦いになるのか。
一年先の未来に胸を弾ませながら、隻眼の木遁使いと呼ばれている青年は太陽を目指し、笑った。
続く
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