盆栽展デート回です。
のはらリンと彼女が率いる医療研修生部隊が雨の国から帰還した翌日、オビトは彼女にとある施設への招待券と共に、「会えないか」と手紙を送った。
返事は「喜んで」。
そして、木ノ葉隠れの里が出来て66年目の3月3日の朝10時頃……うちはオビト、のはらリンの両名は子供の頃よく一緒に遊んだ公園で待ち合わせ、一緒にその施設へ向かうことになった。
万が一にも遅刻なんてないように、オビトがアパートを出たのが約束の二時間前である、朝の八時だったのは……まあここだけの話である。
「あ、オビトおはよう!」
「お、オウおはようリン」
ぱぁあと少女時代から変わらない明るい笑顔を浮かべ、駆け寄ってくるリンに、天使かな? と心臓をドキドキさせながら考えつつ、思わず真っ赤に染まった頬をポリポリとかくオビトは、そのまま彼女と並んで近頃行く機会が増えたとある施設に向かう道を歩く。
「今日はお誘いありがとう。フフ、結構本格的で凄いって聞いてたから、前から気になってて……一度くらい行ってみたかったンだよね。資料館の盆梅展」
その言葉通りに、今日の目的地は、うちは居住区にある元うちはマダラ邸……木ノ葉隠れうちは歴史資料館だ。
歴史資料館では毎年この時期、二月下旬から三月上旬にかけて、盆梅展を実地しているらしい。
去年はじめてオビトが資料館を訪れた際、受け取ったパンフレットに、そう記載されていた。
「リンは資料館は行ったことあるのか?」
「無いよ。今回がはじめて」
だから楽しみだ、とリンは笑う。
「そういう施設が出来た事は知ってたけど、やっぱり切っ掛けがないと行きにくいし……一人で行くのもちょっと、ね」
「紅やシズネとはいかないのか?」
そうリンと仲の良い女子を頭を思い浮かべながらオビトが問うと、彼女は苦笑しながら言う。
「紅はどっちかっていうとほら、あの子お酒のほうが好きだから、花を見に行くよりも居酒屋で飲み会のほうが喜ぶんだよね……。シズネとは職場が同じでポジションが似てる分、同時に休みは取りにくくて……だからオビトが誘ってくれて嬉しかったよ」
そういってフフッと足取り軽く、リンはうちは居住区に向かう道を歩く。
「あー、はじめてなら、梅だけ見るんじゃ無く、他も見て回るか?」
「いいの? ありがとう。楽しみだなァ」
そういって笑うリンは、今日もオビトの目には世界の誰よりも眩しく輝いていた。
「いらっしゃいませ。『木ノ葉隠れうちは歴史資料館』へようこそ。ただいま盆梅展のほうも開催中です。よろしければそちらも……ああ、はい、招待券をお持ちですね。それではごゆっくりどうぞ」
受付をしているうちはのくノ一らしき女の子に、リンと並んで資料館と盆梅展の共通閲覧チケットを渡す。
歴史資料館の入場料は通常一人10両で、盆梅展の見学には追加で20両がいるのだが、オビトは前にうちはの老人達に捕まった際に、資料館と盆梅展の期間限定無料チケットをもらっていた。
彼らは正月の宴でオビトが見せた神楽を絶賛して、それから「これで好きな子と楽しんできなさいな」と、二人分のチケットを渡してきたのだ。
どちらにせよ、オビトは最初に資料館を見学した際に、盆梅展の時期にリンを誘ってこようかなあと思っていたので願ったり叶ったりといえばそうなのだが、「これで射止めるんだぞ」と言わんばかりの老人達の反応にはなんだかなあと少し複雑な気分になったものである。
それはともかく、盆梅展だ。
盆梅展の開催エリアは資料館として展示が行われている表側ではなく、普段は貸し出しに使われている裏庭とその周辺の三室ほどがそのままイベントに使われている。
舘全体から見たらそこそこ奥の立地だ。
なので、盆梅展で梅を愛でる前に、先に資料館を楽しむことにした。
歴代の火影達については、その顔こそ、木ノ葉隠れの民であれば皆火影岩で知ってはいるものの、顔写真となると火影室に飾られているものくらいしか普通は拝む機会はない。
それも、忍びであればこそで……忍びではない一般人であれば、火影室に入ることなどまずないし、そこに飾られている写真を拝見する機会もあるはずがない。
だからこんな風にかつて着用していた鎧や、写真の展示という形で、この里を治めてきた火影達の在りし日の姿を拝めるというのは、貴重で新鮮な経験なのだ。
忍びにとっても、それ以外の一般人にとっても。
オビトは二度目の見学だが、それでも木ノ葉隠れの里に育って、火影を目指す身として感慨深いものがある。
「あ、これ若い頃の二代目様なんだ? 格好良くて綺麗な人だったんだねェ」
確か、オビトとは親戚だったんだっけ? とニコニコしながらリンが二代目火影コーナーの端に飾ってある写真を見て言う。
「まあ……親戚といっても、あのじじ……オレの曾祖父の弟で五親等の親族だから、そこまでオレと血が近いってほどでもねーけどな」
そんな風にボソボソとこぼしつつ、オビトもリンが見ている写真を一緒に眺める。
それは、この里を作りあげた偉人……初代火影千手柱間と、その弟扉間、二代目火影であるうちはイズナと、その兄マダラの四人が並んで写っている古い写真であった。
どうも今から60年以上昔に撮られたものであるらしく、ここに展示されている写真の中でもとりわけ古い。
写真の中のうちはイズナは線の細い、涼やかで中性的な少年の姿をしていた。
おそらく、今のリンやオビトより三つか四つは若い頃のものだろう。
一緒に写っている他の三人は、皆それなりにガタイがいいので、この中で一人だけ背が低く、華奢で色白な美少年然としたイズナの姿が目を引く、そんな写真だった。
(しっかし若い頃の二代目様……なんか、誰かに似ているような……?)
と、前回訪れた時にも思った事を考えるが、すぐにその思考は破棄した。
なにせ、若かりし頃のうちはイズナは、パッチリとした二重まぶたに通った鼻筋、ぽってりと厚めの唇に小顔で色白の肌。少々癖はあるが赤い髪紐で一つに結わえた、長く豊かな黒髪に、豹を思わせるスラリとした体躯……と、かなりの美形ではあるけれど……その顔の特徴は、典型的なうちは顔というヤツだったからだ。
既視感があるのも、きっとそのせいだろう。
ふと、気付けば隣のリンがクスクスとおかしそうに笑っている。
それに思わず、「何?」とオビトが返すと、リンは「オビトのひいおじいちゃんってあのマダラ様のことでしょ? それをじじいって……オビトがお年寄りをそんな風に言うなんて珍しいね」と本当におかしそうに言う。
それに、つい耳を真っ赤に染めてオビトは俯く。
途中で言い直したが、どうやらリンにはしっかり聞かれていたようだ。
「ね、次行こう?」
そういってリンは次の部屋を指さす。
きっと、これが子供の頃であれば、リンは迷わずオビトの手をとって、その手を引いていただろう。そんな仕草であった。
だが、もうリンはオビトの手を引かない。
多分、それは彼女がオビトを弟分として見るのを止めたからなんだろう。
男としては対象外扱いされるのをやめてもらえたのだから喜ぶべきなんだろうが、でもやっぱり少し寂しかった。
次の部屋は、即ち三代目火影である猿飛ヒルゼンについての紹介コーナーである。
初代様のコーナーで紹介されていた扉間先生の功績についてのコーナーのように、二代目様のブースに
ただの写真とはいえ、今のオビトよりも随分若い姿をした自来也師匠の姿を拝むのは新鮮な気もするが、同時に師匠は子供の頃からあんま変わってねェな……なんて思うオビトである。
それから次の部屋に向かう。
歴代火影についての最後の紹介展示室である……当代火影、波風ミナトについてのブースだ。
といっても、流石に一般人も見るようなこんな施設で、当代火影様の詳細な情報を載せるわけがなく、ミナト先生については、火影就任式の日に撮られた写真が一枚と、火影マントを羽織った姿の等身大パネル。それから、簡単な経歴と、第二次忍界大戦においての功績などの紹介文があるのみであったが。
きっと、ミナト先生が火影を引退した暁には、資料館で展示される内容も増えるのだろう。
これまでの例でいくと、もしかすると将来的にはミナト班であった、オビト、リン、カカシの三名についての紹介コーナーも設けられるのかもしれないなと、思った。
そして火影についての展示が終われば、次の廊下を右に曲がれば盆梅展、真っ直ぐ進めばうちは兄弟の旅を題材にした書籍や原文に、参考資料などの展示室に辿り着く。
「どっちにする?」
「そうだねェ……一通り見て終わってから、盆梅展はあとでじっくり……でもいいかな?」
「オウ」
そんな会話を交わして、残りの展示を見ていく。
うちは兄弟の旅を題材にした展示も、離れにある武練祭についての展示も、以前見たものと全く同じなのに、隣にリンがいてくれる、それだけでなんだか新鮮で、とても楽しかった。
「あー、楽しかった。絵も綺麗だし、衣装も見応えあったし、お庭も凄かったし、これで見学料が10両なんて安いねェ」
オビトはどの展示物が良かった? そんなことを言いながら、指を組んでニコニコとリンは笑う。
「んー……やっぱ初代の武練演舞の絵じゃねーか? 迫力あるし、鎧纏った九尾がカッケーしさ」
「あー、あれ。良かったよねェ。荒々しいタッチも味になってて」
そんな風に談笑しながら、盆梅展の入り口に向かう。
盆梅展の閲覧には別売りのチケットの掲示が必要なだけあり、ブースの入り口ではどうやら、両足を失い忍びを引退したらしきおっちゃんが受付をやっているようだ。
「はい、ここから先は盆梅展だよ。見たかったらチケットみせてねー」
と車椅子に座ったおっちゃんが、やる気なさそうに手を差しだしてきたので、言われたとおりにチケットを差し出す。
すると、おっちゃんはチケットにポンと判子を押すと、続いて「はい」と鉛筆と紙をオビト達に渡す。
空白欄が三つ並んでいる小さな紙だ。
それをマジマジ見る若い二人に、おっちゃんは「お客さん、盆梅展ははじめて?」と聞いてきたので「初めてです」とリンが答えると、「じゃあ、説明するわ」とおっちゃんは眠そうな目で言う。
「盆梅展で展示されている花は鉢植えに番号が振ってあるから、気に入ったヤツを三点選んで、この紙に番号記入して。帰るときにオレの隣に設置してあるこの箱の中に紙を入れて、えんぴつはおっちゃんに返してなー」
詳しくはこのパンフ読んで。
そういっておっちゃんは、盆梅展のパンフをぞんざいに渡す。
ざっと目を通す。
それによると盆梅展に出展されている花はその道のプロの作ではなく、出展者各々が趣味によって育てたご自慢の作品なのだそうだ。
番号が振られているだけで、名前を表示することも無く、どれが誰が育てた盆梅なのかわからないようにしているのも、公平に来場者に本心から良かった盆梅を選んで貰う為らしい。
この来場者が匿名でつけた人気投票の紙を、盆梅展最終日に集計して、上位三位までに入った花を育てた出展者に、賞金と景品、それに加えて優勝者には火影様自らトロフィーの進呈と、湯の国にある有名旅館への宿泊優待券を授けてくれるそうである。
盆梅展をはじめた由来も、盆栽や彫刻が趣味である初代火影柱間様にあやかってとのことで、エントリーは誰でも自由で、受付期間なら無料で受けられるんだとか。
ただし、そもそもが趣味の大会みたいなものでもあるので、盆梅展に作品を出展したところで、三位以内に入賞出来なければ報酬は一切ないとの事である。
入場料として来場者から徴収したお金は、殆どが施設利用料と、三位までに入賞した作品出展者への賞金として使われるのだとか。その為か、本館のスタッフと違い、盆梅展のスタッフは全員有志によるボランティアらしく、昼飯の配給くらいで、報酬は一切存在しないんだとか。
この入り口のおっちゃんが、資料館受付のくノ一に比べやる気がなさそうなのも納得ってものである。
まあ、それは置いとくとして、盆梅展だ。
普段は時間制の貸し部屋に使われている、この資料館の裏庭とその周辺の三部屋がそのまま盆梅展のブースになっているらしい。出展されている盆梅の数も約八十鉢もあるらしい、中々大規模な催しである。
ガラリとドアを開ける。
同時、リンが「わぁ……」と思わず感嘆の吐息をうっとりと吐く。
「これは、すげーな……」
そこには素人の作とはとても思えない、見事な梅の盆栽が軒を連ねていた。
プロの作ではないと思えないくらい、非常に壮麗で見応えがある。
紅梅から白梅、黄梅まで、見せ方や置き方にも工夫されているんだろう。
どれも人目を惹くものだ。
これほど見事な梅の花の群れを、オビトは今まで見たことがない。
自然のものではなく、盆栽という形をとっているからこそ、計算して緻密に作り上げられた芸術の数々がそこにあった。
同時にこれほど、見事で凄いのならもっと知名度があってもいいだろうに、勿体ないなという気持ちも湧く。
なにせ、今この盆梅展会場にいる人間は、オビトとリンを除けば、老夫婦が三組と、中年のおっちゃん二人連れくらいしかいないのだ。
もっと大勢の人が見に来てもいいのに、と残念に思えるくらいには、見応えのある梅達であった。
「なんだか、どれも凄くて順位つけちゃうのが勿体ないね」
「だな」
と返しながら、ゆっくり見て回りたいリンの歩調に合わせのんびりと会場を見て回る。
木遁使いとして、これまで色んな花を生み出してきたし、見てきたつもりだけど、それでも知らない世界というのはまだまだあるものだ。
ただの梅にこんなに種類があることだって、オビトはこれまで知らなかった。
一通り見て回ってから、裏庭前にある縁側で休憩することにして、隣に腰掛けるリンに問われる。
「オビトはどれに投票するの?」
悩んだが、「あー、6番、22番、69番、か?」と首の裏をポリポリ掻きながら答える。
どの作品も凄いっちゃ凄かったが、幽玄世界を体現しているような儚げな垂れ梅が印象的な6番の鉢に、幹が力強く雄々しい燃える炎を体現した様な紅梅の22番、ただただ鮮やかで赤と白のコントラストを表現した69番が特にオビトの目を惹いた。
「あー、わかる。私も6番に投票しようと思ってたンだ。それにしても……フフ、22番と69番かァ」
クスクスとおかしそうに笑うリンに「何?」と問うと、「確かに良かったけど、22番の花ってクシナさんっぽいよね。やっぱり仲良いんだなーって」あと69番の花はオビト自身に似てるよねー、なんてニコニコと返してくるものだから、ついぴしりと固まる。
それからオビトがふてくされたように、眉間に皺を寄せながら拗ねたような口調で「リンはじゃあ何番に投票するんだよ」と返すと、リンは「私? 私は6番と11番、37番かなあ」と最初に述べた花以外は、可愛らしい感じでこじんまりとまとまっていた作品の番号を返す。
それについ、リンらしいなと思い、頬を緩めるオビトの不意をつくようにリンは言った。
「それで、オビトは私に話があるんだよね。何……?」
思わず、オビトは息を飲み込む。
気付けば周辺は静かだった。
先ほどまで見学していた他の客は昼時だからだろうか、既に帰ってしまったようだ。
この場にいるのは、オビトとリンの二人だけだ。
そう意識したからか、じわりとオビトの左手から汗が滲む。
そうして緊張を隠しきれない声で、隻眼の木遁使いは問う。
「なんでわかったんだ……?」
「そりゃわかるよー。ずっと見てきたんだから。今朝会った時から、オビトずっと私に何かを言わなきゃって緊張してたでしょ。隠してもダメ。ずっと見てンだから」
そう告げる彼女は、一体その言葉がどれだけオビトの心を揺さぶってきたのかわかっているのだろうか。
ぎゅっと眉間に皺を寄せる。
そうしないと泣いてしまいそうだったから。
それから蚊の鳴くような声で、オビトはずっとずっと胸の奥に仕舞っていた本心を口にした。
「……好きだ」
「え?」
声が小さかったからだろう。
聞き返すように、リンが隣に座っているオビトの目を真っ直ぐに見上げる。
猫目気味の茶色い大きな瞳。
ずっとずっとオビトが好きで、きっとこれからも大好きなリンの柔らかい眼差し。
「リンの事が……好きなんだ。ずっとずっと、どうしようもなく、リンだけが好きなんだ……だから、だから……! オレと、ぅ、く、つ、つきあって、くだひゃい……!」
最後のほうは涙声な上噛み噛みだった。
うっかり涙だけでなく、鼻水まで流れてきた。
確かに今日告白するつもりで、リンを呼び出したわけだけど、まさかここまでかっこ悪いことになるとはオビト自身思ってなかった。
涙は止まらないし、返事を聞くのは怖いし、全く、締まらない。
自分でいうのもなんだが凄くかっこ悪い。
そんな風に涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、項垂れるオビトを前に、リンは考える。
オビトが自分に惚れていること、本当はとっくの昔に彼女は知っていた。
知った上で、ずっと見ないフリをしてきた。
それは昔のリンにとって、オビトはどんなに大切で大事な存在といっても、弟のようなものでそういう対象として見るのが難しかったのもあるし、カカシのことがずっと好きだったのもある。
リンはカカシに恋をしていた。
だから、都合が悪いので、オビトの恋心は本人が言わないのを良いことに見ないフリをしてきた。
それは、関係性が変わるのが嫌だったからという理由もある。
だって、恋愛対象でなかっただけで、それでもリンにとってオビトはずっと大切で大好きな幼馴染みで有り続けたから。
だけど、こんな風に正面から想いを告げられたのなら、ここで逃げるのは卑怯だ。
オビトの恋心を、見ないフリをするのも、ここでおしまい。
リンは一度目を瞑り、自分の気持ちを纏める。
オビトは真っ向から自分の本心を教えてくれた。
なら、自分もそれに正直な気持ちを返すべきだろう。
「あのね、オビト。私ね……オビトのことそういう対象として見たことなかったよ」
「うん、知ってる」
「私ね、まだカカシの事好きなんだァ。諦めなきゃとは思ってるんだけどね。でもずっと好きだったから……まだ、昇華するには時間がかかるみたい」
「知ってる」
嗚呼、本当に知ってたのか。
ストンと、リンの胸のうちにそんな納得が落ちる。
(オビトも、私の事……ずっと見ててくれてたンだァ)
だからかもしれない。
こんなことを言ったのは。
「それでもいいなら……いいよ」
「……エ」
「私、まだオビトのことそういう目で見れないけど。それでもいいなら付き合うよ」
リン自身何故こんなことを言い出したのかはわからない。
本当を言えば、リンにはオビトを振るそんな選択肢もあった。
だってそうだ、告白されたからって必ずしも受け入れなきゃいけない道理はない。
五年前の彼女の告白を、カカシが受け入れなかったように。
別に振っても良かったはずだ。
確かに、もう弟のような存在としては見ていないけど、それでもリンはフラれて尚まだカカシへの恋心は残っていたし、オビトに、かつてカカシに抱いたような目が合うだけで胸が高鳴るような、そんな感情は一切無いのだから。
でも、振らなかったのは何故だろう。
それに、いくらなんでも、こんな言い方で告白を受け入れるのは、オビトに対しても失礼ではないかと、そんな風にリンが自分の失言を悔いろうとした矢先に、オビトは言った。
「それでもいい」
と。
「リンがまだ、カカシの事が好きでも、それでもいいんだ……! それでも、オレはリンが好きなんだ……!! 本当に、好きなんだよ……ッ」
「でも、オビト……」
好きな男が他にいるのに付き合おうとしている、そんな自分自身の不誠実さに眉を寄せるリンに、オビトはガバリと頭を下げて、思いの丈を叫ぶ。
「じゃあ、3年! これから付き合って3年たってまだ別れてなかったら、その時はオレと結婚してください……!」
ずっと見守ると約束していた幼馴染みは、そんな微妙に締まらない告白をリンに送った。
かっこ悪い告白だ。
なりふり構わず、スマートさとはほど遠いし、逃げ腰な性格さえ見えるそんな告白。
でも、そんなところもオビトらしかった。
「……うん。わかった」
どうして、その告白を受け入れたのか。
リン自身が自分でその事に気付くのは、この数年後のことである。
続く
受付のオッちゃん「おお、坊主と嬢ちゃんどれに投票したんだ?」
オビト「6番、22番、69番かな」
リン「私は6番、11番、37番にしました」
受付のオッちゃん「おお、二人ともオレの盆栽に入れてくれたのか! ありがとよ!」
オビト&リン「!?」
次回、第三部最終回「オビト先生」!