目を覚ます。
もう死ぬ、と確信して重たい瞼を閉じたはずなのに、また目を覚ますとは。
末期の言葉はまだだった、と考えながら目を開く。
金髪の女性と、銀髪の男性がのぞき込んでいた。
誰だろうか。見知った顔ではない。海外の重鎮か?
あぁ、また眠くなってきた。意識が戻ったのは、奇跡だったのだろうか?
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三カ月が経った。
わたしは赤ん坊になっていた。生まれ変わりというものだ。
今生での名前は、「アイラ」。
意識がはっきりしている期間はとても短いが、金髪の女性が母で、銀髪の男性が父ということは理解できた。
病院ではなく家での出産とは、珍しかったような気がする。時代が違うのだろうか。
一年が経った。
歩けるようになった。しかし、階段を超えることはできないし、一人で移動させてはくれない。よく気を配っている母だ。
やけに家が広いし、多くの人がいる。いわゆる貴族とか皇族とかそういう家なのだろうか?
二年が経った。
使用人であろう金髪の女性に絵本を読んでもらい、何とかある程度の言葉をしゃべれるようになった。言語は前世の言葉とは似ても似つかないが、単語を覚えるくらいはできた。
文法はそのうち学ぶことになるだろう。
父はカイル、母はサティアという名だということを知った。
三年が経った。
片言で話すことができるようになったし、文章もある程度は読めるようになった。
言葉は英語に近かった。漢字が無いから、案外本も読めるものだ。
絵本の中身に覚えはなかったし、電気などがある様子もない。
ガス灯は実物を見たことがないからわからないが、おそらく近い。
生まれ変わったのは、大体ヴィクトリアン朝ぐらいの時期だろうか?
そして、四歳。わたしは、運命に出会うことになる。
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わたしは両親とともに馬車に乗っていた。
「ははさま、どこへ行くのですか?」
「アイラ、今日はね、魔法使いさんが来てくださるのよ。」
「本で読みました。魔法使いとは、魔法が使えるひとのことです」
「そうよ。」
「ですが、本当にいるのですか?」
母が目を見開いた。父は笑っている。
「ははは、アイラ。どうしてそんなことを聞くんだい?」
「だって、わたしは誰も魔法を使っているところを見たことがありません。」
「あぁ、なるほど。」
父は得心したように頷いた。そして、人差し指を立てる。
次の瞬間、指先がぱっと明るく輝いた。
「えっ」
「これが魔法だ。誰にでも使える。」
誰にでも使える。誰にでも。
何か、腹の底で熱いものを感じる。
「誰にでも使えるというなら、なぜ魔法使いさまは特別なのですか?」
「この光を出す魔法くらいならだれにでも使えるけれど、他の魔法は才能がいるんだ。」
「才能、ですか。」
黙り込んだわたしをそっちのけに、母が父に笑いかける。からかっているようだ。
「あなた、魔法は不得意だものね?」
「サティア、アイラの前でそういうことは言うんじゃない。そもそも才能が必要なことは間違ってないじゃないか」
「そうだけれど、アイラの初めての魔法なのだからもっと驚かせてやるような魔法を使わないの?」
「馬を驚かせるわけにもいかないだろう?」
「そうね?」
サティア、と不機嫌そうに父が母の名を呼ぶ。
それを尻目に、わたしは思考の海に沈む。
魔法とは、どれだけのことができるのか。
絵本はどこまでが真実なのか。
空は、飛べるのだろうか。
「アイラ、アイラ!」
「あ、はい、ちちさま!」
「着いたよ、アイラ。」
「ついた……あ、着いたのですね」
魔法使いの元に、到着したらしい。