テンション上がると思います。
15日目。
無事、巨大な魔物を討伐する事に成功した。
上層へと続く階段は簡単に発見する事ができ、早速上の階層に進む。
再び巨大な魔物が鎮座していたら困るな、と思っていたが巨大な魔物は存在しておらず洞窟が広がっていた。
どうやら、昨日討伐した巨大な魔物は迷宮におけるボスのようなものだったのだろう。迷宮の中腹辺りに鎮座していたので中ボス。
(だとすると、ここの迷宮のボスってどれくらいの強さになるんだ?)
今年で19歳になる徹であったが、未だに最強論争が好きな年頃だ。当然、この迷宮内で最強のボス! という言葉に惹かれてしまうが、中ボスでもギリギリの戦いだった。
戦ってしまえば、全滅してしまう確率が高い。
挑むつもりなど全くない。
只、一度見て見たいな、とは思った。
中ボスを討伐した事によって迷宮攻略は再開される。
上層に進めば進む程、出口に近づいているのか、襲い掛かって来る魔物達も最初に比べればかなり弱い。
とはいえ、油断は禁物だ。
しかし、確実に近づいている。
迷宮から脱出するという目標に。
「という訳で、ガチャの時間だ!」
昨日と2日前もガチャを引くのを忘れてしまっていた為、今日の分も含めて合計でガチャを3回も引く事が出来る。
単に毎日引くか、貯めて引くかの違いでしかないが、1日に1回しか引く事ができないのを鑑みると、かなり期待値は高い。
(それに、割と有用だったアイテムも幾つか失ってしまったしな)
後で確認したが、作戦成功へと導いてくれた兵器「メカモグラ」は倉庫内から消えてしまっていた。
巨大な魔物の攻撃によって傷ついてしまった上に、自爆まで作動してしまっていたのだから、当然といえば当然だ。
しかし、コレで前々から抱いていた疑問は解消される。
アイテムを失ってしまえば、二度と戻ることはない。
ついでに使用用途の分からないクリティカルチケットもいつの間にか消えてしまった。説明文を読む限り、所持者に対して何らかの幸運を運んでくれると書いていたが、文字通り幸運を運んで来たのだろう。
何時使用されたのか分からないが、きっと徹を助けてくれた筈だ。
アイテムを失ってしまうという事は、ユニット達も失ってしまう可能性があるという事。この世界は異世界であって、ゲームなどではない。
ゲームのようにリセットする事はできない。
だからこそ、その事実を決して忘れてはいけない。
唯一の疑問としては、結構な高さから銭湯を落としたにも関わらず、銭湯自身は傷がついていなかった事だ。
まあ、出して暫くの間は無敵時間が発生するとかそんな所なのだろう。
「それじゃあ最初の1回目!」
良いの、来い!
・SAN値
失ってはいけない物。もしもゼロになってしまった場合、その人は発狂する事になってしまう。使用する際に1d100を振り、出た目に応じたSAN値を対象に付与する。
ポトン、と。
SANと書かれた板が現れる。
今の所使い道は無さそうだ。
「次! 良いの、頼む!」
・コイン
100枚集めたからといって、残機が1増えるなんて事はない。
意外にも重量があり、鈍器としても使える。
ゴドッ! と落ちる。
先程よりも重量がありそうな音。
正しく、コインと呼ぶに相応しい見た目をしている。かなり重い。
使い道は特に無し。
「次! 次こそは……!」
・ギザ10
発見したらテンションが上がるものの、実際の所値打ちは無かったりする。
醤油に掛けるとピカピカと光ってかっこよくなるが、その代わりに醤油臭くなってしまうという欠点が存在する。
チャリーン、という音と共に現れる10円玉。
縁がギザギザしている。
「どうしてだよ!」
膝から崩れ落ち、拳を地面に叩きつける。
コインは3枚も存在していた筈なのに、出てきたのはガラクタばかり。こんな物で、一体どうやって迷宮を攻略すれば良いのか。
「俺にはガチャを引く才能が無いっていうのか!」
あり得ない。
そんな事はあり得ない。
ガチャをこよなく愛して数年。
危機的な状況を、何度も乗り越えて来た。爆死も幾度となく経験して来たが、その辛さを乗り越えて強くなって来た筈だ。
「いや、まだだ! まだ、俺にはミッション報酬が残っている!」
もしかすると何かしら達成しているかもしれない。
早速確認してみる。
・無慈悲なレッドノートを討伐しよう。
達成していた。
「無慈悲なレッドノート?」
そんな名前の奴、居たのだろうか? と考えて、昨日討伐した巨大な魔物の名前だという事に気付く。
「アイツ、そんなにかっこいい名前だったのか。さて、報酬は……コイン10枚!? えぇ!? もしかして、夢の10連ガチャが出来るんですか!?」
これは嬉しい誤算だ。
早速報酬を受け取り、コインを10枚獲得。
早速、10連ガチャに突入しようとする。
「……それで、君はどうして俺の事をずーっと見ているのかな? サード君」
が、ここでとうとう我慢の限界が来てしまった徹。
無言で。尚且つ、至近距離から。
緑色の瞳で、此方を余す事なく観察していた美少女メイド三姉妹の内の1人である、三女のサードに対して話かける。
よくぞ声をかけてくれました! と言わんばかりの態度を見せるサード。
ニコニコと、まるで欲しい玩具をねだる子供のように笑いながら、こういった。
「ご主人様。私もガチャを引いてみたい!」
「駄目だ」
徹は即答する。
サードは口を膨らませる。
「なんで! 良いじゃん! ご主人様、後10回はガチャを引く事が出来るんでしょ!? だったら、少しくらい私に引かせても良いじゃん!」
「言っておくが、ガチャは遊びじゃ無いんだぞ? 出てくるアイテムによって、俺達の明日が決まるといっても過言じゃないんだ。それに、レッドノートの様な魔物が次に何時出て来るかも分からない。ガチャを引いて、此方の戦力を増強しなければいけないんだ」
「それ、私にも出来るじゃん! というか、ご主人様はさっきも引いていたけど、良いの全く出て来てなかったじゃん!」
「グフッ!」
事実というものは、時に人を傷付ける。
ましてや、ガチャを愛している徹にとって、爆死の二文字は何としてでも避けたかったりする。無論避ける事は出来ず、心にクリティカルヒットしてしまった訳だが。
「……分かった。お前がそこまで言うなら、ガチャを引かせてあげようじゃないか! 但し、俺とお前、互いに5回ずつガチャを引き、どちらの方がより良いアイテムを出したかで勝負をしろ! そして、俺が勝った時は先程の発言を撤回しろ!」
「うん。分かった。じゃあ、私がご主人様に勝利したら、時々でいいからガチャを引かせてね?」
契約は成立。
一応、サードもガチャを引くことが出来るのか試してみたが、ちゃんとガチャを引く事は出来た。
それから数分後。
「ば、馬鹿な。……そんな、こんな展開……これは、夢だ。夢に違いない。神引きの徹を自称していたこの俺が、こんな、こんな結果になるなんて……あ、あり得ない」
「わーい! 私の勝ちだ! やったー!」
勝敗は呆気なくついた。
尚、徹が引き当てたアイテムは、
・謎の魚
・キノコ
・灼熱の炎帝・ボージャックヘルカイザー
・納豆
・福袋
だったのに対して、サードが引き当てたアイテムは、
・スタンガン(違法改造)
・パワードスーツ
・賢者の石
・グリムビーバーの着ぐるみ
・宇宙人用更衣室
名前からして、サードの方が有用そうなアイテムを当てている。
「なんだよ……賢者の石って、俺が引いた時は、そんな物出ない……出ていない、出る訳がない、出ない筈なのに……!」
「ご主人様? 大丈夫? ちゃんと息してる?」
項垂れる徹に対して、ツンツンと指をつついて安否確認を行うサード。
心配しているのではない。
口元は分かり易い程にニヤニヤとしており、彼女がこの状況を面白がっている事は明白だった。
ああ、イーナに会いたい。
彼女の純粋無垢な姿に、心を癒されたい。
かくして、徹は敗北してしまい、時々サードにガチャを引かせる嵌めになってしまったのだ。けれど良いアイテムを引き当ててくれるのであれば、それでも良いのかもしれない。
自分でガチャを引くより、誰かにガチャを引いて貰った方が良いのを当てやすいというのは、ガチャあるあるなのだから。
10連ガチャの結果に関する詳細は、後書きで記述します。
・謎の魚
果たして、この魚は一体何なのか? なにも判明していない、謎の塊。
味は調理したとしても不味く、生食なんてもってのほか。
と言うか、絶対にしない方が良い。
おススメしない。
マジで。
・キノコ
赤色のキノコ。
食す事によって、一回りも二回りも大きくなる事が出来る。一定のダメージを食らうと元に戻る。
毒々しい見た目をしているが、副作用などは特にない。
・灼熱の炎帝・ボージャックヘルカイザー
効果は、場に出した瞬間山札から7枚カードを引く。引いたカードの中にモンスターカードが含まれていた場合、含まれていたモンスターカードの数×1000攻撃力がプラスされる。
この時、攻撃力が1万以上だった場合、場に出ている全てのモンスターカードに対してボージャックヘルカイザーが持つ攻撃力分のダメージを食らわせる。
・納豆
美味しいが、嫌いな人は嫌い。日本におけるマーマイト枠といっても過言ではない。
・福袋
実際は在庫処分の詰め合わせ。
それでも尚、人は福袋を開封する事を止めない。何故なら中に何が入っているのか分からないと言うのは、ソレだけで購入者に夢を与えてくれるのだから。
・スタンガン(違法改造)
本来であれば、対象を痺れさせる程度に留まる威力。しかし、違法な改造を施す事によって、一撃で相手を仕留める事が出来るとんでもない品が完成してしまう。
強力な攻撃とは裏腹に、バッテリーの消費量が凄まじいことになる為、使用には細心の注意が必要となる。
・パワードスーツ
装着する事によって、使用者の筋力値が数倍に跳ね上がる。
但し、型落ち品である為、エネルギー効率が極めて悪い。
・賢者の石
使用したものは、不老不死になる事が出来ると言われている伝説の石。
しかし、どのように使用すれば良いのか? 具体的な方法は誰も分かっていない。
莫大なエネルギーが秘められており、エネルギーを利用する事が出来れば、数十年は枯渇する事無く様々な用途で使用する事が出来る。
・グリムビーバーの着ぐるみ
死神のような格好をしたビーバー。
大きなデスサイズを持っているが、殺傷能力はない。
・宇宙人用更衣室
巨大なカプセルの様な形。
中に入ると、コンマ数秒で着替えを完了させてくれる。適切な位置に立たないと事故が発生してしまう。毎年、幾人もの宇宙人達が怪我をしてしまっている。