ガチャ×異世界=混沌   作:ロドリゲウス666

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虫などが苦手な方は注意です。


理不尽な現実

 

 

20日目。

 

 この迷宮には何かが居る。

 徹達には想像もつかないような、何かが。

 

 分かっていても。

 理解していても。

 足を止める事は出来ない。

 

 引き返した所で、いつかはソレに立ち向かわなければいけないという事を本能的に理解していたから。

 攻略は順調だ。

 

 恐ろしい程に。

 魔物の数はどんどんと少なくなってく。

 罠の数は相も変わらずではあったが。

 

「……よし。皆、行くぞ。決して離れないように気をつけて行こう」

 

 とうとう、上層へと続く階段を発見した。

 今日は出会う事はなかった。

 けれど、次は分からない。

 

 どうか出会いませんように。

 徹達は階段をあがって上の階層へと向かう。

 緑色の光に照らされた洞窟。

 

 階層が上へ上へと進んでいく度に、迷宮の構造は複雑から単調に変わっていく。これも難易度調節の一貫なのだろう。

 魔物の姿は何処にもない。

 

 シンと静まり返っており、道が一直線に伸びているだけ。

 巨大な獣の口を彷彿とさせた。

 一歩足を踏み入れてしまえば、もう二度と戻れなくなってしまうかもしれない。そんな不安に苛まれてしまう。

 

 頭を振って、悪い予感を無理矢理追い出す。

 一度、大きく深呼吸。

 

「進もう」

 

 周囲を警戒しながら上層への階段を探す。

 途中、罠に引っかかってしまいそうになったり、スキル『ドジっ娘』の影響でシス達が転んでしまうというハプニングに見舞われてしまったが、概ね順調。

 

 何も起こらないのではないか?

 気が緩み始めた瞬間、異変が起こった。

 最初は微細な振動。

 

「……地震?」

 

 しかし、次第に揺れは激しくなっていく。

 

「なんだ!? 一体、何が……いや、違う。来る! 何かが、ここに……ッ! 皆、急いでここから逃げるんだ! 早く!」

 

 遅い。

 気付くのが遅すぎた。

 徹達が気付くよりも先に、奴は気が付いていたのだから。

 

 地面が陥没すると同時にソレは現れた。

 もしも避難が遅れていれば、徹達も巻き込まれていたかもしれない。

 姿を現す。

 

 同時に、咆哮を上げる。

 それは威嚇などではない。ある種の歓喜。新たな獲物と出会う事が出来た喜び。或いは、飢えを凌ぐ為の食物が運ばれて来た事への歓迎。

 

 どちらにしても、徹達にとって喜ばしくないことは確かだった。

 

「なん……なんだ? アレは」

 

 現れたそれは、酷く悍ましい見た目をしていた。

 一言で説明するなら、砂漠などで出現しそうなワーム。目や鼻や耳などは存在していない。あるのは巨大な口と、無数の鋭い歯。

 

 細長い体躯に、側面をなぞるようにして生えているのは百足らしき足。一本一本が細長く、先端は矢じりのように尖っている。

 口の端から垂れる涎。

 

 地面に触れると同時に、ジュウッ! と焼けるような音を立て、地面を溶かしていく。

 強力な酸性だ。

 

 余りにも巨大で、徹達が小人に思えてしまう。

 一生懸命逃げたとしても、あっという間に追いつかれてしまう事だろう。

 

 それでも、徹は叫ばざるを得なかった。

 自分の命を守る為に。

 何よりも、皆の命を守る為に。

 

「皆! 逃げろ!」

 

 徹の叫び声を聞き、全員がハッとする。

 ワームから背を向けて全力疾走。

 激しい運動が難しいイーナは、シスが抱えて逃げる。

 

 近くには徹がいた。

 その筈なのに、ワームは徹には見向きもしない。

 

 異常ともいえる跳躍力。或いは、それは小人側の視点から見た感想であり、巨人側のスケールからすれば何の変哲もないジャンプだったのかもしれない。

 

 距離が呆気なく詰められる。

 

「待っ……!」

 

 叫び、止めようとする。

 間に合わない。

 

 距離が足りない。

 力が足りない。

 大きさが足りない。

 

 ワームは大きな口を開けて、シス達を食らう――筈だった。しかし、ワームが口を開けて飛び掛かった瞬間には、シス達の姿は何処にも存在していない。

 

 ワームは何もない虚空に食らいつき、そのまま地面に大きな傷跡を残す。

 

「危なかったー! マジで危なかった! シス達が1つのユニット扱いされてなかったら、正直無理だったかもしれない。本当に、良かった!」

 

 徹の手に握られているのは携帯電話。

 画面に表示されているのは、ユニット一覧。

 

 丁度今、ユニットを戻しますか? という問いかけに対して、YESのボタンを押しユニット達を戻した直後だった。

 

 アイテムを倉庫に収納する事が出来るように、実はユニット自体も倉庫に収納する事が可能だ。尚、美少女三姉妹に関しては、全員を収納する事も、1人だけを収納する事も可能だったりする。

 

 実際に収納されたシス達曰く、四方八方を白い壁に囲まれた味気のない場所に飛ばされるらしい。

 

 そこにはシス達以外にも、収納されているアイテムが乱雑に置かれており、彼女達がアイテムの片づけを行っている途中で再び呼び出した際は「どうして呼び出すんですか! 今、掃除をしている最中だったのに!」

 

 と怒られてしまった事は記憶に新しい。

 この様な状況に陥った瞬間、シス達を倉庫に避難させようと考えていた。誤算だったのか、ワームの速度があまりにも素早かった点。

 

 もしも操作にもたついていたら、シス達は今頃怪物の餌食になっていたかもしれない。

 

「何とか窮地を脱する事は出来たかもしれないが、俺自身は未だ危機的状況だって事に変わりが無いんだよな! 畜生!」

 

 当然の事ながら、シス達を倉庫に避難させることは出来ても、徹自身は自力で逃げなければいけない。

 獲物を見失い、不思議そうにしているワーム。

 

 ウロウロとしており、徹には気付いていない様子。

 

(どうしてだ? 比較的、一番近い場所に俺がいた筈なのに、アイツは俺に見向きもしなかった?)

 

 目が無いから? 鼻が効かないから? 耳が存在していないから?

 どれもこれも、理由として考えられる。

 しかし、今重要なのはこの窮地をどうやって乗り越えるべきか? だ。

 

 皆を助ける事が出来たが、徹自身が犠牲になってしまえば意味はない。

 

(逃げ道は、ついさっき上がって来た階段。……だけど、奴の能力をみる限り、地面を食い破ってそのまま下層まで追いかけて来る可能性の方が高い)

 

 だとすれば、方法は1つしかない。

 撃退。

 一番良いのは、ここで奴を倒す事。

 

 それが出来なくても、ここで奴を追い返さなければ、徹の死は確定してしまう。

 

「畜生。やるしかねえか……!」

 

 今まで手に入れてきたアイテム。

 そして、短い時間ではあるが、読み解く事の出来たワームの特性。

 この2つを武器に、徹は作戦を練る。

 

 練る為の時間など存在していない。

 行き当たりばったり。

 成功する確率は低いかもしれない。

 

「諦めるなよ。渡辺 徹。手を伸ばせば届くかもしれないんだ。ここが、踏ん張り所だぞ」

 

 アイテムを出す。

 パワードスーツ。

 出現するのは、SFチックな鎧。

 

 重厚で鈍重という言葉が相応しい、何とも頑丈な見た目だ。

 既に試運転は済ませている。

 ボタンを押すと、パワードスーツの背中が開く。そこから徹は中に入り、全身にパワードスーツを纏う。

 

 開いていた背中が閉じると同時に、キュイーン! という音と共に、薄暗かった内部に淡い青色の光が満ちる。

 使い方は至極単純。

 

 体を動かせば良い。たったそれだけで、普段とは比べ物にならない程の身体能力を手に入れる事が出来る。

 

(問題は、稼働時間。説明文を読む限り、そこまで長い時間は使用する事が出来ない。短期決戦でどうにかしないといけない)

 

 掌をグーパーグーパーと繰り返し、具合を確認。

 問題はない。

 徹は足裏を使い、地面に思い切り叩きつける。

 

 ドン! という微かな振動が、地面に伝わって来る。

 瞬間、周辺をウロウロとしていたワームの動きが変化する。百足のような足を巧みに動かして、徹がいる方向に顔を向ける。

 

 思った通りだ。

 ワームには目、鼻、耳がない。

 だから、地面などを始めとする振動を感知することによって、獲物の居場所を特定する。

 

 比較的近くにいた徹には襲い掛からず、シス達に襲い掛かったのもそれが原因だ。

 走る事によって、僅かながらに地面が振動し、その微細な揺れをワームは感知した。

 

 自分の出した最適解が、まさかの悪手だった。

 これは反省しなければいけない。

 

「そして、お前の移動方法は案外単純だ!」

 

 跳躍して、獲物に食らいつく。

 一度、どういう動きをするのか見ているのだ。

 二度も同じ手を食らう馬鹿などいない。

 

 パワードスーツを纏うことによって、身体能力は大幅に上昇。幾らワームの動きが素早かったとしても、餌になる事はない。

 

「だが、何も食べられないってのも可哀そうだろ? だから、俺からのプレゼントだ!」

 

 ワームの着地地点、そこに置かれるのはバレーボール程の大きさをした鉱石。

 遠目に見ても尚、中心点は光輝いている。

 

 膨大なエネルギーが内包されているそれは、爆裂鉱石と呼ばれていた。

 

「幾らお前の動きが素早かったとしても、跳躍すれば着地点を変える事はできない。駄目だぜ、それなりに距離があるからって、ジャンプして楽をしようなんて考えちゃあ!」

 

 空中では身動きを取ることなんて出来ない。

 ワームは重力の法則に従い、先程まで徹がいた場所に着地する。

 パキッ! と、僅かに何かが砕けるような音。

 

 瞬間、眩い光が空間を埋め尽くす。

 しかし、それはほんの刹那の事だ。

 目も眩むような光と共に、砕け散った爆裂鉱石は爆発。

 

 咄嗟に身をかがめ、爆発の衝撃に備えた徹だったが、激しい爆風に巻き込まれてしまう。壁に全身を打ち付ける。

 パワードスーツによって衝撃が軽減されているとはいえ、意識を刈り取るには十分だった。

 

 ここで、徹の意識は途切れた。

 

 

 

 意識が覚醒する切っ掛けは、鈍い痛みだった。

 

「痛ッ……!」

 

 気付けば徹は寝転がっていた。

 しかし、地面ではない。

 徹の下に敷かれているのは、無数の瓦礫。

 

 パワードスーツを纏っているお陰で、寝心地はそこまで悪くはない。が、生身の体で眠れば確実に腰や背中を痛めてしまうだろう。

 直前までの記憶は、巨大なワームとの死闘。

 

 徹の狙い通り、爆裂鉱石を炸裂させる事はできた。

 奴は果たして生きているのか? 或いは、死んでいるのか?

 上体を起こし、様子を見ようとする徹。

 

 だが、体を満足に動かす事は出来なかった。

 

「あれ?」

 

 パワードスーツが起動している際は、淡い青色の光が内部を照らしてくれる。しかし、今はそれが存在していない。

 酷く薄暗い。

 

「……もしかして、動力切れ?」

 

 説明文には、エネルギー効率が悪いと書かれていた。

 どれくらいの間意識を失っていたのか分からない。が、かなり長い時間気を失ってしまっていたのだろう。

 

 パワードスーツの動力が切れてしまう態度には。

 

「誰かー! 助けてくれー!」

 

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