ガチャ×異世界=混沌   作:ロドリゲウス666

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第二形態はラスボスのみの特権

 

 

 

 バカでかいワームが、視力を獲得した。

 それだけでも厄介だというのに、黒い塊を吐き出すという遠距離攻撃まで仕掛けてきた。

 

(不味い! 不味い! 不味い! 普通、こんな所で敵が進化するなんて思わねえだろ!? 第二形態の解放は、魔王だけの特権ってのはファンタジー世界での常識だろうが!)

 

「ご主人様! これ、不味いです!」

 

 遠距離攻撃が有効だという事に気付き、黒い塊を吐き出し続けるワーム。

 狙いは杜撰。

 精度はゴミ。

 

 しかし、籠めた弾は巨大。

 適当な方向に撃ち込んだとしても、運悪く命中してしまう可能性は十二分にあり得る。

 

「んなもん! 誰の目から見ても明らかだよ! 不味いよ! やばいよ! これ、どうするんだよ! 奴が視力を獲得した時点で、考えてた作戦の全てがパァ! パァだよ! クソがぁ! マジで笑えねぇ! 寧ろ滅茶苦茶泣きたい! 泣いても良い?」

 

「ご主人様、昨日自分が言った事もう忘れちゃったの!? 台無しじゃん! 昨日はご主人様の事、カッコイイって思ったのに!」

 

「今もカッコイイに決まって……って、あぶねぇ!」

 

 弾数は無限大なのか!? と思ったが、ワームは苦しそうに呻くと撃ち方を止める。

 

「チャンスだ! 今の内に奴をタコ殴りにしろ!」

 

 隙があるとすれば、今しか無い。

 徹達は全速力で走る。

 対するワームはそこら辺にいた黒い魔物に食らいつく。断末魔の悲鳴は上がらない。グチャリと粘着質な音と共に、黒い魔物は元のインクへと戻る。

 

 ソレをワームは啜る。

 所謂、燃料補給という奴だろう。

 だが奴が燃料を完全に補給するよりも先に、徹達が到着する方が強い。

 

「これで遠距離を封じる事は出来た。が、次は第2ラウンド。近接バトル、って所か?」

 

 距離を詰める事は出来たが、ワームから焦りは感じられない。

 当然だ。

 追い詰められていないのだから。

 

 再び、黒いインクを吐き出す。

 それは全身に纏わり付き、新たな部位を生成する。

 枯れ枝のように細長く。しかし、禍々しいオーラを放つ、2本の腕へと。

 

 両腕の掌を使い、ワームが跳ねる。

 吐き出す黒いインク。

 膨大な質量を内包した塊ではない。今度は、少量。

 

 攻撃の為ではないのは明らか。

 

(だったら、何の為に……?)

 

 答え合わせは直ぐにやって来る。

 地面にへばりつく、黒いインクは、やがて生き物の形をとる。

 魔物の姿へと。

 

「ッ、お前が吐き出したものも魔物になるのかよ!」

 

 そして、地面に潜るワーム。

 黒いインクに気を取られてしまい、失念していた。奴はワーム。本来は地面を掘り進め、地中から姿を現して獲物を仕留める。

 

(? だとしたら、どうして魔物を出した? 幾ら視覚を得たとしても、地中だと使い物にならない。振動を感知しなければ、居場所を割り出す事なんて出来ないのだから。寧ろ、魔物が存在している分、居場所の特定は……)

 

 では、デメリットを承知で魔物を生み出した理由は?

 

「皆! 今すぐ、その魔物から離れろ! 恐らく、ソイツが目印だ!」

 

 徹が叫ぶ。

 同時に、地面が盛り上がった。

 バゴォッ! とけたたましい音と共に、地面が割れる。砂埃が舞い、土塊が無作為にばら撒かれる。

 

 気にする余裕はなかった。

 何故なら、ワームの餌食になったのはイーナだったのだから。

 

「イーナ!」

 

 衝撃によって、思い切り打ち上げられる。

 白色の髪を靡かせながら、少女は空中を舞う。

 着地点に存在するのは、大きな口を開けているワーム。

 

「テメェ、なにうちの仲間を食べようとしてるんだァ!」

 

 倉庫からアイテムを呼び出す。

 出すのは銭湯。

 巨大な建築物が、ワームに向かって襲い掛かる。

 

 まさか、自分の頭上に巨大な何かが降って来るなんて、想像もつかなかったのだろう。ワームは直撃を食らい、大きく怯む。

 

「メイドル! ウィンドワンドを使って、クッションの代わりに出来ないか!?」

 

「分かった」

 

 魔力を限界ギリギリまで注ぎ込んだのか、ウィンドワンドが淡い光を帯びる。

 

「お願い」

 

 激しい風が吹く。

 イーナに直撃。

 それによって、落下の勢いが多少なりとも削がれる。

 

 徹は地面を蹴り、イーナを思い切り抱きしめた。

 触れてみて、改めて理解する。

 かなりの重傷だ。

 

 当然といえば当然。ワームの攻撃が直撃したのだ。

 幸いにも息はある。

 

「……悪いとは思ってるけど、死ぬよりはマシだ。だから、我慢してくれよ」

 

 徹は消費期限切れのポーションを飲ませる。

 きっと、効果はある筈だ。

 

「ご主人様! イーナちゃんは……」

 

「何とか無事だ。……だが、ジリ貧だな」

 

 銭湯の直撃を食らい、怯んでいたワーム。

 しかし、あの爆裂鉱石の直撃を食らっても尚、ピンピンしていた正真正銘の化け物。銭湯の直撃を食らった所で、目に見えたダメージを与える事は難しい。

 

(でも、どうしてだ? どうしてアイツは、俺達に対して攻撃を仕掛けて来なかった? 銭湯の一撃で怯みはした。だが、俺達に襲い掛かる事も出来た筈だ。なのに、何故?)

 

 多少怯んだとしても、無理をして襲い掛かることは出来た。

 寧ろ、徹達に襲い掛かる絶好の機会といってもいい。

 にも関わらず、奴はその機会をみすみす逃した。

 

「……あ」

 

 奴から与えられた情報は幾つかある。

 1つ1つは些細な情報だ。

 しかし、点と点で繋がる。

 

 繋がったから、新たな情報が出て来る。

 根拠はない。

 机上の空論になるかもしれない。

 

 だが、今この状況では万に一つだって勝ち目はない。だったら、使える物は例えなんであったとしても使うしかない。

 皆で無事に、迷宮を脱出する為に。

 

「シス」

 

「はい。ご主人様」

 

 彼女に耳打ちをする。

 内容は簡潔に。

 シスは僅かに眉を潜める。

 

「可能と言えば可能です。ですが、私の力量だと難しい……いいえ、はっきり言って不可能だと思います」

 

「だったら、コレを使えばなんとか出来るか?」

 

 徹は倉庫の中から1つ、アイテムを取り出してシスに渡す。

 渡されたソレを見て、僅かに目を見開くシス。

 

「はい。必ず」

 

 研摩されたルビーのような瞳で、徹の目をはっきりと見ながら頷く。

 

「分かった。それじゃあ、さっき言った通りに頼む。皆! この状況を打開する為の方法を見つける事が出来た! だが、時間を稼がないと難しい! まだ、行けるか?」

 

 徹の呼びかけに対して、サードは馬鹿にした様に笑う。

 

「ご主人様? 何言ってるわけ? この状況を何とかしてくれるなら、気が済むまで付き合ってるに決まってるじゃん!」

 

「私もサードと同じ。私は一番のお姉ちゃんだから、頑張る」

 

 気を失っているイーナを倉庫に避難させる。

 1人が脱落して、1人は戦線を離脱。

 5人中、2人も居なくなってしまった。

 

 敵は強大であるにも関わらず、大幅な戦力ダウン。

 それでも敵に立ち向かうのだから、もしかすると徹達は救いようのない馬鹿なのかもしれない。けれど、馬鹿でも構わないと徹は思う。

 

「さあ。正念場だぜ。渡辺 徹。諦めたら、全て失うかもしれない。だから伸ばせよ。手を。きっと、欲しい未来に手が届く筈だから」

 





尚、イーナが辛うじて生きていたのはスキル「虚弱体質」のお陰です。虚弱な代わりに、即死攻撃を体力を1残して必ず耐える事が出来ます。
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