ガチャ×異世界=混沌   作:ロドリゲウス666

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今回で、迷宮脱出編はフィニッシュとなります。


祝勝会

 

 

 無事、ワームの討伐を果たす事が出来た。

 行われるのは祝勝会。

 

 シス達を召喚し、銭湯を手に入れた後は、毎日どんちゃん騒ぎ――とまでは行かないものの、賑やかな日々を送っていた。

 それでも、普段と比べれば五割増しで騒いでいただろう。

 

「今日は祝勝会です! お祝いです! 私も腕によりをかけて、ではありませんが! スキルを使ってカレーを生成するので、気軽に申し付けて下さい!」

 

 テーブルの上にあがり、千鳥足なステップを踏むシス。彼女の橙色の髪に負けず劣らず、頬は朱色に染まっており、彼女の手には瓶ビールが握られている。

 以前、徹がガチャで引き当てたご当地ビールの内の一本だ。

 

 彼女がお酒が好きだという事は知っていたが、まさかここまで酔っ払ってしまうとは知らなかった。

 注意しても良いのだが、今回は無礼講だ。

 それに、徹自身も騒ぎたい気分だったので、寧ろその輪の中に混ざる。

 

「わーい! って喜びたい所だけど、正直毎日カレーばっかりだから飽きてるんだよね。偶たまには別の物も食べたいなー」

 

「……例えば、納豆とか?」

 

「それは絶対に無い」

 

 メイドルの提案に対して、真顔で返答するサード。

 ワームの直撃を食らってしまったイーナ。

 瀕死の重傷だったが、咄嗟に徹が飲ませた消費期限切れのポーション。アレが効果を発揮したことによって、無事に回復した。

 

 尤も、ワームの攻撃で負ってしまった傷を回復することは出来たが、消費期限切れによって発生した腹痛までは如何にも出来ない。

 

「…………」

 

 目の端に涙を浮かべ、苦しそうにお腹を抑えるイーナ。

 申し訳なさが凄い。

 彼女を見ていると、現在進行形で罪悪感を刺激される。

 

「イーナ。その、大丈夫か?」

 

 あの時はコレが最善だと思っていた。

 しかし、愛らしい彼女が目に涙を溜めて、苦しそうに顔を歪ませている姿を見ると、果たして自分のした事は本当に正しかったのだろうか? と。

 そんな疑問に苛まれてしまう。

 

「!」

 

 しかし、イーナは弱音を吐かない。

 心配させまいと笑顔を浮かべ、サムズアップを決める。

 空元気である事は分かっている。

 

 それでも、彼女の思いを汲んであげる事が徹に出来る唯一のこと。

 

「分かった。何かあれば、俺やシス達に言ってくれよ。皆、お前の為になら力になってくれる筈だ」

 

 両手でサムズアップを決めるイーナ。

 もう二度と、この様な事が起こらないように気を付けなければいけない。

 

「折角ですし私のスキルを使い、いっそのことお風呂ごとカレーにする、っていうのも面白いと思いませんか? いいえ! きっと、とても面白い! という訳で、私はお風呂を全てカレーにして来ます!」

 

 酔いが回りすぎた結果、素面では絶対にしないような事を口走った上に、早速実行に移そうとするシス。

 

「おい! 誰か止めろ! お風呂が全部カレーになったら、風呂に入る所じゃないぞ! と言うか、排水溝が詰まる! ヤバイ! マジでヤバイ!」

 

「お姉ちゃん! お願いだから正気に戻って! 自分が今、どれだけヤバイ事を言ってるのか自覚し……痛い! この姉、普通に殴って来た!」

 

「シス。落ち着いて。良い子だから、一度私の話を……」

 

「姉さん。退いてくれない? 邪魔なんだけど」

 

「…………ゴフッ」

 

 止めようとしたサードをぶん殴り、立ち塞がるメイドルに対して心無い言葉を口にするシス。結果として、1人は物理的に。1人は精神的にノックダウン。

 

 イーナは腹痛の為に、安静にしておかなければいけない。

 残ったのは徹1人。

 

「マジで!? え!? 俺1人で、あんな酒乱モンスターを相手にしないといけない訳!? こちとら、魔物とタイマン張ったら確実に負けてしまうような雑魚なんだぞ!?」

 

 型や、場合によっては単騎で魔物を討伐する事も可能なスーパーメイド。

 酒が入ってしまっている今、もう何も恐くない無敵モードに突入しているといっても過言ではない。

 

 それでも守るしかない。

 心の洗濯場である、風呂を堪能する為に。

 

「っしゃ、おらぁ! かかってこいやぁ! ご主人様、舐めてるんじゃねぇぞ、オラァ!」

 

「食らえ! ローキック!」

 

「とか言ってる癖に、正確に顔面を狙ってるんじゃねぇ!」

 

 玉砕覚悟で徹はシスへと突っ込むのだった。

 

 

 

 時間は深夜。

 本来であれば、誰も彼もが寝静まる時間。

 今日は怒涛の一日だった。

 

 疲労度でいえばMAX。

 今すぐにでも、ベッドに寝転んで熟睡する事が出来る筈だった。しかし、疲労感とは裏腹に目はギンギンに冴え渡っており、目を瞑っても一向に眠りの世界に誘われることは無い。

 

 たまに発生する、眠いのになかなか寝付くことが出来ない謎現象。

 それが今まさに発生してしまった。

 明日は大切な日になると言うのに。

 

「……マジで眠れねぇ。いっその事、ホラー漫画を読む事によって、余りの怖さに失神して強制シャットダウン睡眠を敢行しようとも思ったが、一向に失神する気配もない」

 

 寧ろ、常に自分の背後に誰かがいるような気がして落ち着かない。

 トイレに行きたくなった時、果たして1人でトイレに行く事は出来るだろうか?

 残念ながら自信がない。

 

「ご、主人、様!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァ!」

 

 小悪魔を彷彿とさせる声音。

 それと共に、勢いよく背中を叩かれる。

 思わず絶叫してしまった上に、読みかけのホラー漫画を放り投げ、そのまま座っていた椅子ごと後ろに倒れてしまう。

 

「……えっと……大丈夫?」

 

 上を見れば、サードが徹を見下ろしていた。

 ツーサイドアップに結ばれていた緑色の髪は解かれている。

 悪戯に成功した小生意気な笑みは浮かべておらず、寧ろ徹を気にかけてくれている。

 エメラルドの様に美しい瞳の奥には、驚きと僅かな呆れが。

 

「よう。サード。もしかして、お前も眠れなかったのか? 悪い子だ。夜更かしは美容の大敵だって、知らなかったのか?」

 

「ご主人様。椅子ごと後ろに倒れてる状態で、そんな事を言っても全然カッコ良くないと思うよ。というか、ダサい」

 

 ダサいという言葉に傷付く。

 取り敢えず、倒れてしまった椅子を直す。

 

「それで何の用なんだ? 夜更かしは褒められた事じゃないが、ここにある膨大な数の漫画を読みたい、って言うなら話は別だ。何故なら、俺も練る間を惜しんで読みたい! って思える作品が沢山あるからな」

 

 徹が今現在いるのは、銭湯の漫画コーナー。

 種類は充実している。

 読みかけのホラー漫画を棚に戻す。

 

 改めて考えると、失神して眠るのは無理があった。

 徹の言葉に対して、サードは苦笑する。

 普段の笑みとは違う。

 素の反応だ。

 

「違うよ。全然違う。用があったのは、ご主人様の方だよ」

 

「俺? 何かあったか? 別に何も借りて無いし、貸してもいない筈だが」

 

「貸しとはちょっと違うけど、ご主人様は私に大切な物をくれたじゃん。それとも、もう忘れちゃったの? たった、昨日の出来事なのに?」

 

 思い出すのは、昨日彼女の相談に乗った事。

 正直に言えばなんの確信も無かった。

 単に、サードを泣き止ませる為に、自分に出来る事を精一杯にやっただけ。というか、ワーム戦のどさくさに紛れて前言撤回していた気もする。

 

 今更になって後悔してしまう。

 ワームを討伐した現在、アレは滅茶苦茶ダサい。

 黙っておけば良かった。

 

「いや、覚えて無い訳じゃ無いけど、俺ってその後に結構ダサい事も言っちゃってたし。寧ろ、聞かなかった事にしてくれた方が此方としてもありがたいというか、助かるというか、何というか……」

 

「でもさ、ご主人様」

 

 徹の隣に座っていたサードは立ち上がり、開けた場所に向かう。

 そこでクルリクルリと回り、楽しそうに踊る。

 

「今日も皆で笑い合う事が出来た。馬鹿な事をして、騒がしくて、そして最後は疲れて寝ちゃう。今日も、そんな一日になる事が出来た。言わなくても良かったかもしれない。でも、ご主人様のあの一言があったからこそ」

 

 サードは近づく。

 徹の視界全てを、自分で埋め尽くす為に。

 緑色の瞳は爛々と輝き、徹から視線を離さない。

 

「私は前を向く事が出来た。だから、ご主人様。本当に、ありがとうございました。私を励ましてくれて。そして、今日も皆で笑い合う事が出来て」

 

「……ああ。どういたしまして」

 

 ふと、今日のガチャを引いていない事に気付く。

 

「今日くらい、何か良い物が来ても良いんじゃないか?」

 

 果たして結果は。

 

 

・甘納豆

 

 甘い納豆という名称だが、納豆要素は豆以外は皆無に近い。

 粗目の砂糖がまぶされており、とても美味しい菓子。

 

 

 現れたのは、個別包装された甘納豆。

 合計で5つ程袋に入っている。

 

「ご主人様、これは何なの?」

 

「甘納豆だ」

 

「え? ……甘、納豆?」

 

 納豆という言葉を聞き、分かり易く顔を顰めるサード。彼女にとって、納豆はそれ程までに苦手な食べ物だろう。

 苦笑しながら徹は説明する。

 

「納豆って言ってるけど、正直納豆要素は皆無だよ。甘い豆に砂糖がまぶされている、所謂お菓子みたいなもんだ。試しに1つ、食べてみろよ」

 

「えー、本当に?」

 

 説明を受けても尚、疑念は晴れないのか、疑わしそうな視線を向けるサード。

 意を決して、甘納豆を口に入れる。

 そして、その優しい甘さに思わず顔を綻ばせる。

 

「え!? 意外と美味しい!」

 

「だろ?」

 

 明日に対する不安はある。

 果たしてどうなるのだろうか? という、漠然とした不安が。

 それでも、きっと大丈夫だろう。

 尚、起きてしまったシスに発見され、徹とサードの2人は叱られる事になるのだった。

 

23日目。

 

 徹達はとうとう迷宮から脱出した。

 そして、その数分後に大量の兵士に囲まれて、拘束された。

 

「いや、なんでだよ!」

 

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