連続投稿2話目です。
3日目。
今更ながら、想像以上に過酷だという事実に気が付く。
水はなく、食料も人参が2本だけ。
おまけに洞穴の周辺は大量の魔物がたむろしており、気軽に外に出る事は出来ない。
「あれ? もしかして……結構、やばかったりする?」
空腹は人参を齧る事によって紛らわす。
土臭い上に硬く、まるで馬にでもなった気分になるが、腹が膨れるだけまだマシ。
問題は水。
昨日、魔物の集団から逃げる為に、全力疾走してしまった。お陰で喉が渇いているものの、潤す為の手段がない。
「唯一の望みは、俺の持つスキル「ガチャ」だけか」
分の悪い賭けだとは思う。
そもそも、ガチャから何が排出されるのかは未知数。
今まで出てきたラインナップは、野菜にボードゲーム。徹の予想が正しければ、恐らくは闇鍋。様々なジャンルのアイテム達がごった煮になっており、その中からランダムに一つが排出される。
有用な物があれば、無用な物もある。
食料があるなら、水もある筈だ。
しかし、引き当てる確率はかなり低い。
(一体、なにを弱気になっているんだ! 俺は! こんな状況は、何度も体験して来た。けれど、俺は勝利を掴んで来たじゃないか! だったら、大丈夫だ!)
ガチャを引くアイテムが尽きかけてしまい、このままでは爆死というレッテルを貼られてしまうという、正に崖っぷちに追い詰められてしまう状況。
ソシャゲにおいて、この様な事は日常茶飯事だ。
上等だ。
持っている者の実力を見せてやろうじゃないか。
ログインボーナスとして配布されたコインを一枚使い、ガチャを引く。
いざ。
・怪奇! チェーンソー男VSナタ男
C級ホラー映画。ホラー映画とは銘打っているものの、途中で路線変更が起きてしまっている。ストーリーに一貫性が無い上に、ホラー演出も安っぽい。
その上、何とも言えないラスト。
完全なる駄作。
徹の目の前に現れたのは、一枚のディスク。そこには、チェーンソーを持った巨漢の男と、ナタを握り締めた細身の男が対峙しているイラストが描かれている。
「……うん。まあ、そこまで甘くないよな」
徹は思い出す。
ピンチをものにした時よりも、結局爆死してしまった時の方が多かった事を。
ディスクをフリスビーのようにぶん投げて、ふて寝した。
4日目。
喉の渇きは限界に近い。
水無しで生きる事が出来る時間は3日。
つまり、今日がタイムリミット。
今日を過ぎれば、徹は脱水症状で死んでしまう。
おまけに昨日から何も食べておらず、空腹。
洞穴の中でずっと一人きり。暇を潰すにしても、遊ぶ事が出来るのはクソゲ―という評価を下さざるを得ない、大人気ゲームのパチモン。
限界だった。何もかもが。
洞穴の外に出る事が出来れば、また状況は変わっていたのかもしれない。が、周囲の魔物の数は多少減ったとはいえ、まだまだ多い。
気軽に出る事は出来ない。
「頼む。……もう、縋る事の出来る希望は、お前しか、いないんだ。……何か、何か、良い物が出てくれ!」
精一杯の祈りを込めてガチャを引く。
果たして、結果は……。
・Real Blood Energy
吸血鬼用に開発された、血液風味のエナジードリンク。
血液は混ざっていないものの、血の味と酷似している為、吸血鬼達からは人気が高い。が、普通の人達からすれば飲めた物ではない。
徹の目の前に現れたのは、一本の缶ジュース。
説明文は余りにも不穏だったが、今はどうでも良かった。
プルタブを開けて、中身を飲む。
瞬間、口内に広がる鉄臭い匂い。むせて吐き出してしまいそうになる。
貴重な水分だ。
頑張って堪えて、全て飲み干す。
渇いていた喉に若干の潤いが戻る。
万全とは言えない。
しかし、先程までと比べれば大分マシになった。
「飲み物が出てきてくれた事は有難いが……吸血鬼用ってなんなんだよ」
説明文に眉を潜めつつ、残りも頑張って飲み干すのだった。
5日目。
今日も今日とて、退屈な日々。
否。食料も無ければ水も存在しておらず、依然として命の危機から脱する事が出来ていない極限サバイバル状態なのだから、退屈とは若干異なるのかもしれない。
昨日は、水分にありつけた事で何とか窮地を脱する事が出来た。
しかし食料を引き当てておらず、空腹な日々が続いている。
最後に食事を取ったのは3日前。
多少猶予は残っているが、食料を当てる事が出来なければ餓死してしまう。
「だからこそ、今回は食料を! いや、出来れば飲み物も欲しい! あんな吸血鬼用のエナジードリンクじゃなくて、普通のミネラルウォーターを!」
祈りながらガチャを引く。
出てきた物は、
・拳銃(コピー品)
とある工場にて生産されたコピー品。
品質がとても悪く、弾詰まりがかなりの確率で発生してしまう。
また、銃が暴発してしまう事も多くあり、ある意味常にロシアンルーレット状態と言っても過言ではない。
使用する際は、細心の注意を払って下さい。
ゴトリ、と徹の目の前に出現する、黒色のゴツゴツとしたフォルム。
実際に手に取ってみると、かなり重い。
軽く引き金を引いてみると、指にも重い感触が。
完全に引いたら、発砲してしまう。
途中で止めた。
「……最悪の場合、コレを使って死ねと?」
何を馬鹿な事を、と鼻で笑う。
こんな場所で死ぬつもりなど、さらさらない。
生きてここを出るのだから、必要なんてない。
徹は拳銃を洞穴の隅に投げ捨てる。
「いや、でも魔物と戦う時に使えるかもしれないし」
気が変わってやっぱり回収した。