「取り敢えず、2人の格好をどうにかしないといけないな」
徹の提案に対して、サードは首が千切れんばかりに思い切り頷く。
とはいえ、現状は一文無し。
頼る事が出来るのは、自身のスキルのみ。
「……そういえば、前にガチャで当ててたな。服っぽいの」
倉庫の中から目当てのアイテムを探し出し、それを出す。
現れるのは、紫色のローブを羽織った、二頭身のビーバー。手には身の丈程の大きさのデスサイズが握られており、サイズは徹達より一回り程大きい。
「ご、ご主人様? これは……何なの?」
突如として現れた、得体のしれない何か。
サードは恐る恐る聞く。
イーナは見た目が気に入ったのか、思い切り抱きしめて顔を埋めている。
「グリムビーバー君だ。いや、正確にいうならグリムビーバー君の着ぐるみ、って言った方が正しいかもしれないな」
フードを捲り、背中を見れば中に入る為のチャックが用意されている。
一応中を確認してみるが、誰も入っていない。
「これに私達が入ればいいという事でしょうか?」
「問題ない。……けど、狭いかも?」
「お姉ちゃん達、痴女みたいな格好なんだから、文句を言わない! ほらっ! 入って! 早く! ほら!」
色々といいたい事はあったのかもしれないが、その全てを飲み込んで、サードはメイドルとシスの2人をグリムビーバー君の中へと押し込む。
腹が盛り上がり手の形が浮かび上がってきたり、明らかに二足歩行の動物がして良い挙動ではない動きを見せたり、不可解な痙攣じみた振動によって周囲の子供達を怖がらせてしまう、などといったハプニングが発生しつつも、何とか2人を入れることが出来た。
「それで、ご主人様。お金がないっていう問題だけど、私、いい方法を思いついたの」
話を切り替えるように、咳ばらいを行った後、サードがそう提案する。
イーナは不可思議な挙動をみせるグリムビーバー君が大層気に入ったのか、今も尚、嬉しそうに抱きしめていた。
可愛い。
「良い方法? なにか、名案でもあるのか?」
「うん。ご主人様ってさ、ガチャを引いて色々なアイテムを手に入れるでしょ? 役に立つアイテムもあるけど、役に立たないアイテムだってある」
そこで、サードが何を言いたいのか理解する。
「成程。つまり、俺がガチャで引いた不要なアイテムを、何処かに売ってお金にするっていう事か!」
「ご主人様、大正解! 寧ろ、ご主人様が真っ先に気付くべきだったのに、全然気付かなかったという事実を恥ずかしく思って下さーい!」
次第に普段の調子を取り戻すサード。
「売るのは良いとして、何処で売りに出すんだ? 言っておくが、不要なアイテムの中には、明らかにこの時代にはそぐわない物だって存在するし、逆に二束三文で買いたたかれる可能性だってゼロじゃない」
「そこは大丈夫だよ。ご主人様。私、交渉ごとに関してはお姉ちゃん達よりも得意だし、人を見る目にも自信があるの。さっきは全然駄目駄目だったけど、ここで挽回させてよ」
胸を張り、自信満々に断言するサード。
元より、拒否する理由もない。
「分かった。お願いしても良いか? サード」
売れそうな場所が何処にあるのか分からない。
しかし、店であった場合は店頭に看板が置かれたりしている事が多い。
1つ1つ当たってみれば、換金できる店も見つかる筈だ。
早速、店を1つ見つけた一行。
中に入る。
「失礼しま……」
「いらっしゃ、って、何だ!? 新種の魔物か!?」
「あ、ヤバい」
グリムビーバー君を目に入れた瞬間、叫ぶ店主。
そうなってしまうのも仕方がない。
1人用の着ぐるみの中に、2人も入れてしまった現在、グリムビーバー君の挙動は余りにも不気味過ぎた。
端的に言って気持ちが悪く、その姿を見た子供は化け物に出会ってしまった!? と言わんばかりに泣きじゃくっていた。
店主の反応は、至極まともだった。
そんなこんなありつつも、店を転々とする徹達。
主にグリムビーバー関連で、問題事が発生してしまう事は多かったが、幸いにも騎士に取り囲まれてしまうという事態に陥ってはいない。
が、それも時間の問題といえた。
早急に換金を行い、2人の洋服を購入しなければ、事態はどんどんややこしくなってしまうだろう。
「換金? なんだ? 要らない物でもあるのか? だったら買い取るが……一応言っておくが、その得体のしれない化け物の換金をお願いしたとしても、俺は全力で拒否するぞ。こんなもん、売り物になる訳がないだろ」
「アハハハハ。……ソウデスヨネー」
店主は顔が厳つい上に、傷だらけという、何とも裏社会に縁がありそうな人物。
本当に大丈夫なのか? とサードにコンタクトを取る。
大丈夫、と頷くサード。
仲間の判断を信じて、徹は適当なアイテムを1つ出す。
ずっしりとした、重量感のある金色の塊。
コインだ。
「これの買い取りをお願いしたいんですけど、可能ですか?」
店主はコインを手に取り、触れたり、匂いを嗅いでみたり、眺めてみたり。様々な角度からコインを観察し、査定を行う。
約、数分後。
「悪いがコレを買い取ることはだけない」
店主による、無慈悲な査定結果。
「つまり、コレは売り物にならないって事なんですか?」
「いいや。違う。逆だ。コレは売り物にはなる。売り物にはなるが……かなりの高値がつく。そういった代物だ。1つ聞きたいんだが、一体コレを何処で手に入れた? これ全て、金だぞ? 純金だ。混ぜ物なんて一切ない、頭の天辺から爪先まで、まごう事なき金の塊。おまけに、この重量だ。かなり高値がつくとは思うが、生憎うちではそういった物は取り扱ってない。買い取った所で、面倒事に巻き込まれるのがオチだ」
徹とサードは、互いに顔を見合わせる。
イーナは、シスとメイドルが入っているグリムビーバー君と遊んでいた。
何とも予想外の結果だ。
アイテムで入手した外れアイテム、と思っていたが、とんでもない値打ち品だった。
しかも純金。
微量でも高値で取引されるのに、その数十、数百倍。
金額の想像など付かない。
文字通り、沢山のお金を手に入れる事が出来るだろう。
「あ、やっぱり良い! 何処でこんな物を手に入れたのかは知らんが、兎に角こんな高価な物はうちでは買い取れん。諦めろ。……後、これは善意の忠告だが、おいそれと人に見せない方が良い。きっと、碌な事にならん」
店主の忠告に関しては、徹も全面的に同意だ。
取り敢えず、コインを倉庫に戻しておく。
「分かりました。忠告、ありがとうございます。さっきのアイテム以外にも売りたい物があるんですけど、見て貰う事は出来ますか?」
店主は、やや面倒くさそうに溜息を吐きながらも査定してくれた。
幸か不幸か、コイン並の高価な品が見つかることは無かった。
「一時はどうなるかと思いましたが、本当にありがとうございます。ご主人様。私たちの為に、新しくメイド服を買って頂き」
「やっぱり、いつもの格好の方が落ち着く」
徹が売りに出したアイテムは3つ。
一生ゲーム、福袋、画家「雨水 真心」の傑作品。風景画「水面」。
2つはガラクタ同然だった為、そこまで高い値段では無かったが、風景画に関してはかなりの高値で売れた。
総額、8万5300ガレア。
シス達に新しいメイド服を購入し、人数分の冒険者登録を行ったとしても、多少は余裕を持つ事が出来る金額だ。
「頼むから次は、自分の服を掛け金にして、賭け事とかするなよ? 今度、お前らが下着姿や全裸になったとしても、俺は助けないぞ。いや、マジで」
「勿論ですよ。ご主人様。今度はちゃんと、予備のメイド服も持っていく事にします」
全然分かってなかった。
「無事、お姉ちゃん達の痴女問題が解決できたのは良いけど、新しいメイド服を買って貰ってるのは何か納得がいかない! ご主人様! 私にも、後で何か買ってよ!」
「分かった。分かったから、子供みたいに駄々をこねるな。後、買うにしても高い物は止めろよ? 今は余裕があるけど、何が起こるか分からないからな」
2人のメイド服を新調したが、見た目に大きな変化はない。
せいぜい、生地の色合いや、施されている意匠が異なる程度だ。
「よしっ。取り敢えず、もう一度冒険者ギルドに戻って登録しにいこう。出来れば、そのまま依頼を受ける事が出来れば良かったが……流石に、この時間帯だと難しいな」
色々な事がありすぎた結果、既に日は沈み始めている。
依頼を受けるにしても、時間に余裕があった方が良い。
暗闇は危険だ。
反論が出る事はなく、徹達は冒険者ギルドで冒険者登録を行った後、近場の安宿にて一夜を明かすのだった。
尚、本来であれば4人用の部屋だったにも関わらず、5人入った事で、かなり狭かった。
今日のガチャ!
・宇宙海賊の宇宙船
有り合わせのパーツを作って作成している為、市販品に比べてもかなり性能が落ちる。基本武装は、レーザー光線と追尾ミサイル。
室内はかなり狭い上、使用者が粗野で粗暴という事もあって、かなり汚くなっている。衛生面は良くない。
かなり大きいのか、出現することはなく、倉庫で保管された。