ガチャ×異世界=混沌   作:ロドリゲウス666

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巨大なカマキリ

 

 

 

26日目。

 

 早朝。

 小さな窓から差し込まれる日の光は、狭い室内を十分ではないものの満たしてくれる。

 微かに、小鳥のさえずりも聞こえてくる。

 

 気持ちの良い朝。

 その反面、徹の気分はどんよりとしていた。

 

「あー、お金が欲しい」

 

「どうしたんですか? ご主人様。そんな、俗っぽい発言をして。私の元メイド仲間であるマニーちゃんみたいな事を言ってるじゃ無いですか。最終的に、税金の支払いを拒み続けた結果、監獄にぶち込まれてしまいましたけど」

 

 寝起きという事もあり、ややボサついている赤色の髪をとかしながらシスは言う。

 

「前々から思ってたけど、お前らのメイド仲間って癖強すぎない? もう少し、まともな奴とかいないの?」

 

 強烈過ぎた為、思わずツッコミを入れてしまう。

 

「名が性格を体現しているお前の知り合いは兎も角として、現状稼ぎが少なすぎるんだよ。いや、駆け出しの冒険者だから仕方がないと言えば仕方が無いんだが、それでもかなり渋いんだよな」

 

 寝ぼけてベッドから落ちそうになっているイーナを助けつつ、徹は説明する。

 

「ご主人様の言ってる事は分かるよ。正直、あんなに大変だったのに、たったこれだけなの!? って思わなかったと言えば、嘘になるし」

 

 寝間着からメイド服へと着替えるサード。

 解いていた髪を、ツーサイドアップに結びながら、徹の言葉に賛同する。

 

「だとしたら、冒険者を続ける意味は無いと思うけど」

 

 未だ、ベッドに寝転び続けるメイドルは、至極真っ当な意見を言う。

 

「言っている事は正しいんだけどな。かと言って、他に働き口があるのかどうなのか? って言われると……」

 

 迷宮都市ラビリスは人の入りが激しい。

 その為、労働力に関して言えば割と足りている。

 

 よしんば空きがあったとしても、徹達の身分は冒険者オンリー。身分不詳に比べれば幾分マシにはなったが、それでも怪しい人物である事には変わりがなく、そんなのを雇うくらいなら身元を明らかにしている奴を雇った方がまだマシ、と判断されるだろう。

 

「どちらにしても、今は冒険者で頑張るしかないか」

 

 冒険者の需要が無くなることはない。

 彼らの仕事は基本的にハイリスク、ハイリターン。

 どれだけ報酬が少ない依頼であっても、常に危険がつき纏う。

 

 普通、人はなるべく危険は避ける。しかし、危険な場所じゃ無ければ果たせない目的も存在している。

 そんな時、必要になって来るのが冒険者だ。

 

 彼らは自ら進んで、危険の中へと身を投じる。

 だからこそ冒険者の需要は無くならない。

 

「迷宮に再び入る事が出来れば、また別の稼ぎ方もあるかもしれないが、何方にしても俺は迷宮にはもう潜りたくないからなー。依頼を受ける一択だな」

 

 今現在も、迷宮は封鎖されている状態だ。

 恐らく、封鎖する原因となったバカでかいワームは徹達が討伐したが、迷宮内で突如として発生した異常。黒い魔物。

 アレの出現によって、今も迷宮は封鎖され続けているのだろう。

 

「と言う訳で、俺は考えた! 一体、どうすれば報酬のしょっぱい依頼であっても、金を稼ぐ事が出来るのか! 昨日の晩、眠たくなるまで考えた」

 

「ご主人様。もしかした暇なの?」

 

 サードのメイドにあるまじき言葉は聞かなかった事にする。

 

「ズバリ分担だ!」

 

「……分担?」

 

「前回の依頼は、6人全員で依頼を受けただろ? だが、正直な所、あの依頼は3人くらいで受けても問題なく達成出来る依頼だった」

 

「あー、成程。つまり、ご主人様は人数を分けて、それぞれ別の依頼を受注する事によって、お金を稼ごうとしているんですね」

 

「正解だ。という訳で、早速冒険者ギルドに行こう。もしも駄目、って言われた時は最悪土下座すれば許してくれるかもしれないし」

 

「ご主人様。最低限のプライドは、持っておいた方が良いと思うよ」

 

 何ともいえない眼差しを向けつつ、呆れた様子でいうサード。

 心にグサリと突き刺さる為、そんな事は言わないで欲しい。

 

 

 

 

 冒険者ギルドの受付嬢さんに聞いてみる。

 

「パーティーを分けて、それぞれで依頼を受ける、ですか? ……うーん、本来であれば駄目なんですが、皆さんは駆け出しですからね。全く問題ないと思いますよ」

 

 望んでいた答えを聞けて、徹は内心でガッツポーズする。

 

「え? でも、大丈夫なんですか? 私達以外にも、依頼を受けたい方っていますよね?」

 

 やや驚いたように、受付嬢に質問をするシス。

 

「はい。依頼を受けたい方はいますよ? ですが、駆け出しの皆さんって誰も彼も英雄に憧れているので、討伐依頼や迷宮関連の依頼は受注してくれるんですが、それ以外はさっぱりなんですよ。なので、結構依頼が溜まっている為、此方としても依頼の数が減ってくれるのは寧ろ大助かりなんです」

 

「へー、あそこの掲示板に貼られている以外も、依頼って存在するんですか」

 

 それは知らなかった。

 徹の言葉に「そうなんですよー」と間延びした声で了承しつつ、件の溜まってしまった依頼を見せてくれる。

 

 受付嬢曰く、掲示板などに貼られている依頼は最新の依頼であったり、優先順位の高い依頼らしい。

 逆に急を要していなかったり、依頼者自身が依頼期間を長く設定している依頼は、こうやって溜まった依頼の一覧の中に加わる。

 

 依頼が一枚一枚ファイリングされている辺り、冒険者ギルドの丁寧さが伺える。

 その中から、比較的簡単そうな依頼。そして依頼している場所が同じ依頼を選び、それらを受注する。

 

「はい。わかりました。溜まっている依頼を消化してくれるのは、此方としても助かるのでじゃんじゃん受注して下さいねー」

 

 メンバー分けは以下の通りだ。

 静か平原を活動場所とする、徹、イーナ、『梟』の三人。迷宮都市を活動場所とする、メイドル、シス、サードの三人。

 

 選出の理由は至極単純。

 シス達はメイドが本職である為、迷宮都市内での依頼の方がやり易いと思ったからだ。

 逆に、徹達はやや不安が残ってしまうが『ガチャ』があるし、イーナも『梟』もかなり強い。

 

「それじゃあ、依頼が終わった後は今泊っている宿で合流しよう。お互い、頑張ろうぜ」

 

「はい! ご主人様の方も。後、気を付けて下さいね? こことは違い、あそこは魔物だって出て来るんですから」

 

「勿論気を付けるに決まってるだろ? そんな、気にするなよ」

 

 冒険者ギルドの前で、5人は分かれる。

 徹達は静か平原へ。

 シス達は迷宮都市の依頼主の元へ。

 それぞれ向かう。

 

 

 

 

「早くも、俺の判断は間違いだったかもしれない、って思い始めて来た!」

 

 徹が受注した依頼は複数枚。

 そのうちの一枚は、静か平原近くに存在している森の、とある木になっている実をとって来て欲しいという物。

 

 普通に買えば良いと思わなくもないが、冒険者は依頼内容に従うだけ。

 途中までは順調だった。

 しかし、突如として出現した熊並の大きさをしたカマキリが出現した瞬間、一気に窮地へと追い詰められる。

 

「不味い不味い不味い! あれ、どうやって倒せば良いんだよ! 足を止めたら死ぬ! 攻撃を仕掛けようとする前に、あの巨大な鎌に切り裂かれて死ぬ!」

 

 頼みの綱であるイーナはダウン。

 何事においても興味津々な彼女だったが、巨大なカマキリは刺激が強かったらしい。

 

 白色の顔を真っ青に染め、そのままダウン。

 今現在は、徹がお姫様抱っこの状態で抱え、死に物狂いで逃げている状態だ。

 

「なにか……なにか無いのか!? この状況を打破してくれる、素晴らしいアイテムは!」

 

 走る! 鉄の処女は既に呼び出し済みだ。

 体格差のせいで、食らいつく事は不可能な為、周辺の魔物が近づいて来ないように掃除を行って貰っている。

 

「あ! そう言えば、コイツがいた! コイツなら、もしかしたらいけるかもしれない! いけ! キングカイザーエンペラーオオカブト!」

 

 徹が呼び出したのは、一見するとただのカブトムシ。

 しかし、カブトムシには似つかわしくない強大なオーラを纏っており、そんじゃそこらの虫とは明らかに違う事は明白。

 

 以前はサードに敗北してしまったが、今度の相手はカマキリ。

 同じ昆虫であれば、キングカイザーエンペラーオオカブトに軍配が上がる筈だ。

 

「さぁ! あの時の雪辱を晴らし、その勇名をとどろかせろ!」

 

 呼び出すと同時に、羽を大きく広げて飛び立つキングカイザーエンペラーオオカブト。

 いざ、激突! ……かと思いきや、キングカイザーエンペラーオオカブトは突如としてUターン。徹の顔面に、ペタリと貼り付く。

 

「ギャァァァァァ!? チキってるんじゃねぇ! というか、俺の顔に貼り付くな!」

 

 貼り付かれた事によって、前が見えなくなってしまう。

 徹は、木の根元に躓いてしまい、盛大に転ぶ。

 

(あ、不味い。これ、追いつかれ……)

 

『安心しろ! 私が居る!』

 

 眼前まで迫っていた死神の足音は、しかし微かに耳朶を打つ銃声によって掻き消される。

 首狩り兎のように、真っ赤な花が咲く訳ではない。

 

 それでも眼球を撃ち抜いた事によって、巨大なカマキリは悶える。

 巨大なカマキリを倒すか? 否か?

 倒した時のリターンよりも仲間の安全を優先した徹。

 

「『梟』。俺達は逃げる! お前も、何処に居るのかは分からないが、逃げろ!」

 

 未だ、気絶したままのイーナを抱えつつ、徹は逃げる。

 比較的危険度の低い魔物が多い中、あれ程までに危険な魔物は存在していただろうか? と内心疑問を覚えながら。

 

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