ガチャ×異世界=混沌   作:ロドリゲウス666

30 / 35
カードバトラー玲

 

 

 

 弾切れ。

 銃火器という武器は強力ではあるものの、異世界においては避けて通れない課題だ。無論、スキルか何かで代用する事が出来れば特に問題はないが、徹達はそう言ったスキルを持っていない。

 

 そもそも、こう言った問題は初めてではない。

 かつてイーナの使用していた、強力な武器である光線銃スターラインVer2.4。あれもエネルギーが切れてしまい、使えなくなった。

 

 解決策としては、代替品を見つける事。

 もしくは、使えなくなった原因を取り除くしかない訳だが、この世界は剣と魔法のファンタジーな世界。

 

 銃とは無縁の世界だ。

 弾丸が無くなってしまったなら、新しく作ったり、買えば良いじゃない、という発想にはならない。

 

「い、一応……だ、弾丸は多めに、持って来たん……です、けど。依頼主や皆さんに、良い所を見せるんだー、って張り切り過ぎたら……こんな状態に……なりました」

 

『梟』は自身の愛銃である狙撃銃を見せてくれる。

 無骨で物々しい。人を殺す為に作り出された武器。持ち主である『梟』が大切に扱っている為なのか、全体的に奇麗だ。

 

 仮に狙撃銃の代わりを徹が持っていたとしても、恐らく『梟』は受け取らない。彼女は自身の狙撃銃を大切にしているから。

 唯一の解決策は弾丸を手に入れる事。

 

 残念ながら、徹は弾丸を持っていない。

 しかし、持ってはいなくても、幸いにも手に入れる手段は持っている。

 

「どうにかする事は難しいかもしれない。でも、俺なら可能だ。このラッキーボーイ、渡辺 徹の手に掛かれば、君の悩みなんてあっという間に払拭出来る筈だ」

 

「さ、流石は……依頼主。……お、お願いします!」

 

 前髪を手で搔き上げながら、キメポーズ。

『梟』は尊敬するような眼差しで、徹を見つめる。

 実に気分が良い。

 

「さあ! 刮目せよ! そして、俺の運の良さに震えろ!」

 

 尚、当たらなかった時の事は考えていない。

 勝負に望むというのに、何故敗北した時の事を考えなければいけないというのか? 何時だって、想像するのは勝利した自分の姿。

 

 徹はガチャを引く。

 それから数分後。

 

「……して……どう、して……」

 

 爆死という名の現在を背負う、哀れな男は部屋の隅で転がっていた。

 目から涙が流れ、水たまりを作らん勢いだ。

『梟』はどうして良いのか分からず、オロオロとしている。

 

 最初の一回目はログインボーナス。

 結果は、

 

 

・マイホーム

 

 誰もが一度は夢見てしまう、自分だけの家。

 夢のマイホーム。

 家の中には家具が一通り揃っている。

 庭に、風呂に、ピアノまで。

 愛しいお嫁さんと一緒に、ここで幸せな家庭を築きましょう!

 

 

 可もなく不可もなく、という結果だ。

 そもそも、今の今まで彼女すら居た事がなかったというのに、嫁と暮らす家など貰っても全く嬉しくない。

 

 嫌がらせか! と叫びたくなった。

 なにはともあれ、ハズレ。

 徹の目当ての品ではない。

 

 ログインボーナスは終了。

 普段であれば、ここでガチャは終了する所だった。

 しかし、ガチャを引く者にとっての頼もしい味方。「ミッション」が存在している。ミッションを意識して達成した事はないが、いつの間にか達成している事が多い。

 

 それ狙いで「ミッション」を確認してみると。

 

 

・ガチャを50回引こう。

・ログインを30日、行おう。

 

 

 の2つが達成されていた。

 達成報酬として得たのは、コイン5枚。

 

 10連に比べればやや見劣りしてしまうが、貴重なコインだ。そして、ガチャを引く回数が多くなるという事は、目当ての品が手に入る確率も高くなるという事。

 徹はまだ、終わってなどいない。

 

「二回目!」

 

 

・漢字ドリル

 

 小学一年生向けの漢字ドリル。

 例文の途中が穴抜けになっており、そこに適切な漢字を書く。小学一年生から六年生まで販売されている。

 

 

「ハズレ! 次、三回目!」

 

 

・リアル脱出ゲーム(販売禁止)

 

 フルダイブ用のゲームソフト。

 内容は、迷宮からの脱出。罠や化け物が配置されている。痛みや感触などを極めてリアルに再現しており、リアル過ぎる為に怪我人が続出。

 販売が禁止されてしまい、現存しているソフトは極めてレア。

 

 

「そもそもゲーム機本体を持ってないわ! ハズレ! 次、4回目!」

 

 

・成功者のいろはーこれで君も成功者になれる!

 

 自己啓発本。

 レビュー評価は脅威の星1.5。

 

 

「評価低すぎるだろ! 絶対、古本屋の100円コーナーに売られてる奴じゃねぇか! ハズレ! 次、5回目! 頼む、何か良いの来てくれ! この調子で終わったら、俺の精神がもたねぇよ!」

 

 

・香川のうどん

 

 香川県の名物。

 コシがあり、とても美味しい。

 

 

「グァァァァァ!? また、ハズレだァァァァァ!」

 

 まごう事なきハズレ。

 物理的なダメージなど受けていないにも関わらず、徹の体は吹き飛ばされ、建物の壁に体を強く打ち付けられる。

 

 もしかすると、自分は悪い夢でも見ているのではないだろうか? ガチャを引いた回数は5回。にも関わらず、目当ての品は出ていない。それどころか、個人的に良いと思える品だって出てきていない。

 

 引き当てたのは、全て微妙なものばかり。

 

 香川のうどんは何に使えば良い? コシが凄いから、ロープの代わりになれますよ、とでもいうつもりなのか? 自己啓発本はどう使えば良い? レビュー評価1.5とか、薪の代用品にしかならないだろ。漢字ドリルも意味無いし、ゲーム機本体のないゲームソフトなんて、パンのないサンドイッチと変わらない。

 

 唯一使えそうなのはマイホームだが、何だか腹が立ってくる。

 

「俺は無力だ! 幸運が欲しいのに、自分の手で掴み取る事が出来ない! 誰か、誰か俺を助けてくれ! この、永遠に抜け出せない地獄の螺旋から、俺を助けてくれ!」

 

 床に膝をつき、その場で打ちひしがれる徹。

 救いの神など存在していない。

 そう思っていた。

 しかし、確かに存在していた。しかも、すぐ傍に。

 

「あ、あの……その……えっと、良ければ、わ、私がァ! ……ひ、引きましょうか? 依頼主の代わりに」

 

「……良い、のか? お前に、そんな宿命を背負わせても」 

 

 悪くない提案だ。

 以前、サードが徹の代わりにガチャを引いた際は、徹よりも良い結果を出した。

『梟』もサードと同じように、良い結果をもたらしてくれる可能性は低くない。

 

(だが……! 例えそうだったとしても! いや、そうだとしたら、相対的に俺の運は低いという事が証明されてしまう! だけど……もしも『梟』が引いた際、微妙な結果だったとしたら? ……ッ、俺は一体、何を考えているんだ! そんな事を、考えるべきじゃないんだ! 今は、何かしらの結果を残さないと!)

 

 葛藤は一瞬。

 徹は全てを『梟』に託す。

 

「頼む。『梟』。俺は、お前に全てを託す」

 

「あ、は、はい! が、頑張ります! あ、後、私は『梟』って呼ばれてます、けど。本当の名前、は……パレット、と言うので、今度からは、そう呼んで頂けると、嬉しい……です! はい」

 

『梟』改めパレットはガチャを引く。

 良いのが当たって欲しいという気持ちと、悪い結果であって欲しいという気持ち。二つが胸中の中で反発し合いながら、徹はガチャの結果を見届ける。

 果たして、結果は……!

 

 

・カードバトラー玲

 

 

「え?」

 

 一体、誰が発した声だったのだろうか?

 説明文はない。

 しかし、目の前に現れるソレ。

 それが意味するのは、つまり。

 

「うわぁぁぁぁぁ!? ユニットだぁぁぁぁぁ!」

 

 嬉しさと悔しさ。そして、自分の運は割と悪いのかもしれない、という事実に気付きかけて、徹はその場で気絶。

 対する、パレットはというと。

 

「よぉ! 俺の名前は玲! 情熱 玲、って言うんだ! ここが一体どんな場所なのか知らないけど、俺と一緒にカードゲームしないか! 今、初めてあったばかりだけど、きっと俺達は友達になれると思うんだ!」

 

 太陽と形容してもよい、邪気のない澄んだ笑顔。

 ソレを向けられた瞬間に、パレットは発狂した。

 

「ギャァァァァァ!? よ、陽キャだァァァァァ! こ、怖いィィィィィ! わ、私に近寄らないでェェェェェ!」

 

 玲から急いで距離を取ろうとして、足を躓く。

 そのまま体を強く打ち付け、そのまま気絶。

 残ったのは、召喚されたばかりのカードバトラー玲。

 基、情熱 玲ただ1人だけだった。

 

「……へ? これ、どういう事?」

 

 なにがなんなのか分からない。

 目が点になり、ただただ困惑するのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。