9日目。
ホムンクルスと仲良くなれた。
仲良くなった決め手が、彼女をのぼせさせたシス達を叱りつけていたから、と言うのはやや複雑ではあるものの、雨降って地固まるという奴だ。
気にしたら負け。
尚、自分が迷宮を脱出したい旨を説明したら快く了承してくれた。
滅茶苦茶良い子だ。
因みに、シスがスキルで作成したカレーを食べている際、顔がこれでもかという程に緩んでいた。
なんなんだ? この子。滅茶苦茶可愛い。
今は無理だが、何時かはパフェやラーメンとかも食べさせたい。
流石にホムンクルスと呼ぶのも可哀想だと思った為、彼女に名前をつける事にした。とはいえ、徹にはネーミングセンスなんてものはない。
彼女が持つ検体番号AB117を参考にして、イーナと名付けた。
これで良いのかな? と不安はあったが当の本人は喜んでいた為、これからはイーナと呼ぶ事にする。
彼女は声を出す事が出来ず、身振り手振りなどでコミュニケーションを取る。
彼女が持っているスキルも3つ。
・実験用ホムンクルス 検体番号AB117 名称イーナ
スキル『虚弱体質』『万能な手』『アップデート』
不穏なスキルとしては『虚弱体質』なのだが、本人に聞いてみた所、『ドジっ娘』並に厄ネタではない事が判明した。
名前は物騒だが、恐らくはイーナを助けてくれる物なのだろう。
『万能な手』に関しても、名前からある程度判別する事が出来る。手を使う作業に関して、何かが起こると推測出来る。
逆に最後の『アップデート』に関しては、イーナ本人も良く理解しておらず、不思議そうに首を傾げていた。
スキル所有者がよく分からないのであれば、徹としてもお手上げだ。
迷宮を攻略するに当たって、イーナには以前徹がガチャで引き当てた武器の1つである、光線銃スターラインVer2.4を渡しておく。
武器でありながら軽量で扱いやすく、しかも強力。
彼女の助けになる事だろう。
そして、徹が装備するのは拳銃(コピー品)。
若干心許ないが、無いよりはマシだ。
「さて。それじゃあ皆。今日から、迷宮の攻略を開始する。皆で力を合わせて、この迷宮から抜け出す為に頑張るぞ!」
ベタではあるが、5人でえいえいおーをやっておく。
「そう言えば、迷宮ってどっちに進めば脱出する事が出来るんだろう?」
「ここら辺は洞窟っぽいですし、上に進んで行けば脱出できるんじゃ無いですか?」
「多分、上」
「私も上だと思う!」
「!」
全会一致で、迷宮の天辺を目指す事になった。
そもそも、迷宮の構造も把握していない訳ではあるが。
今日のガチャの結果は、
・クリティカルチケット
消費すれば、使用者に幸運が舞い込んで来る。
手に入れる確率は、脅威の5%。手に入れる事が出来た貴方は、まごう事無き幸運です。胸を張りましょう。
徹の手元に現れるのは、1枚のチケット。
Cとでかでかと書かれている。
が、具体的な使い方は分からない。
紙であるにも関わらず頑丈で、破る事は出来ない。
10日目。
洞穴を出て、周囲の散策を行う。
魔物との戦闘は、基本的に避ける方針で。
やむを得ない場合であっても、なるべく戦闘を長引かせない。
嬉しい誤算があるとすれば、イーナがスターラインを十二分に扱えているという事。狙いが正確である為、基本的に魔物を一発で仕留めてくれる。
頭を撫でて上げると、嬉しそうに顔を綻ばせる。
滅茶苦茶可愛い。
が、同時にこんな俺が彼女の頭を撫でて良いのだろうか? という、軽い自己嫌悪に陥ってしまう。
サードが相手なら平気なのに。
やはり、邪気の無さが罪悪感を刺激してしまうのかもしれない。
迷宮内は広く、調査は難航していたが上層へと続く階段を発見する事が出来た。
今日のガチャ結果!
・ご当地ビールの詰め合わせ
各ご当地のビールがランダムに入っている。
現れたのは、カラフルな色合いにポップなイラストの箱。箱には、でかでかと「ご当地ビールの詰め合わせ!」と描かれている。
「いや、俺、未成年だから飲めないけど」
「ご主人様? それ、なんなんですか?」
「お酒の詰め合わせ。でも、俺は飲む事が出来ないんだよ」
「え!? お酒なんですか!? 是非、私に飲ませて下さい!」
現れたシス。
酒と聞いた瞬間、彼女の目の色が変わる。
普段の凛々しい顔つきは何処にいったのか、まるでお酒を生きがいにしているくたびれたOLのように。
「別に渡すこと自体に問題は無いけど、酒を飲む事が出来る年齢なのか?」
「大丈夫です! 私たちは15歳で成人扱いされるので、お酒を飲んでも問題はありません! それじゃあ早速、頂いていきます!」
ご当地ビールの詰め合わせを抱え、何処かへと向かうシス。
スキップでも踏みそうな足取りで、鼻歌も口ずさみつつ。
(アイツ、お酒が好きだったのか)
メイドの意外な一面を見た。
11日目。
迷宮の上層に突入した。
魔物の種類に変化はなく、周囲の様相は相も変わらず洞窟だ。
迷宮のお約束としては、階層が変化するごとに出て来る魔物が変わったり、周囲の様子が変わったりする。
変化がないというのは良い兆候なのか? 果たして、悪い兆候なのか?
判断はつかないが、徹達のするべき事は変わらない。
方針は変わらず、上層へと続く階段を探す。
「ご主人様! 助けて! お姉ちゃんが罠に嵌まっちゃった!」
「え!? ここ、如何にも分かり易い落とし穴だったのに!?」
「……恥ずかしい」
当然ながら、迷宮に存在するのは魔物だけではない。
侵入者を排除する為の罠だって存在している。
シス達が持つスキル『ドジっ娘』と、迷宮に張り巡らされた罠の相性は悪い。かなり悪い。誘蛾灯に蛾が吸い込まれていくレベルで相性が悪いのだが……。
「ご主人様。あまり私を見ないで。一応、私も女の子だから」
「いや、頻繁に罠に引っかかるお前に呆れてるんだよ」
他2人と違って、メイドルは沢山罠に引っかかっていた。
寧ろ、そうする事こそが私の使命だ! と言わんばかりに。
頬を淡い朱色に染めて、顔を伏せるメイドル。クールビューティーのデレは貴重なのかもしれないが、こんな所で発動して欲しくなかった。
ましてや落とし穴に嵌まり、下半身が埋まっている状態で。
(……これ、感覚遮断穴とかじゃないよな?)
じゃなかった。
良かった。
今日のガチャ!
・反抗的なジャガイモ
一見すると普通のじゃがいも。しかし、その実態は隙あらば持ち主を亡き者にして、自分自身が支配者にとって変わろうと画策している。
攻撃方法は体当たり。
現れたのは何の変哲もないジャガイモ。
しかし、説明を見る限りとんでもないジャガイモだ。
これは早急に調理して、胃袋の中に収めた方が良いかもしれない。
そう考えていると、突如としてジャガイモが動きだす。
弾丸と見紛うばかりの瞬発力。
体当たりだ。
そして、その対象は――イーナ。
当の本人は何も知らず、シスがスキルで作り出したカレーを満面の笑みを浮かべながら食べている最中だ。
「テメェ! ウチの天使になにをしやがる!」
拳銃を抜き、照準を定め、引き金を引く。
コンマ数秒。
イーナを守りたい。
その一心で、徹は限界を超えた。
放たれた弾丸は反抗的なジャガイモを正確に撃ち抜き、イーナに魔の手が伸びる事はない。突然の銃声に目を白黒させているイーナを眺めつつ、徹はホッと旨を撫で下ろした。
余談だが、反抗的なジャガイモはとても美味しかった。
5人で分けて食べたが、たった1つしか無かったのが悔やまれる。
多分、限界を超えた射撃力をみせる事は二度と無いと思います。
ギャグパートなので。