星の夜が紡ぐ歌は   作:もりいぬ

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死んでいません(重要)

読者の皆様、大変お久しぶりです。そして、お待たせいたしました。
アンケート票数の最も多かったパラレルシリーズであるみのり編の投稿となります。

執筆が遅れていた理由についてですが、様々な要因が重なり軽い鬱のような状態になっておりました。これからはまた自分のペースで更新を再開させていただきたく思います。
また長文執筆が久しぶりであるため、ところどころおかしい場面がある可能性がございます。そこは笑って許していただければと思います。



約束された気絶のみのり

 

【公園】

 

 現在時刻は午前6時前。陽がちょうど昇り始め、大抵の人にとっては1日を始めるにはまだ早いであろうタイミング。

 そんな朝早くから、俺は家から少し離れた公園に来ていた。理由はただ1つ、とある少女のレッスンをするためだ。数分もしないうちに、その少女が姿を現す。

 

「あっ、おはようございます!」

「おはよう。みのりちゃん」

 

 ──花里みのり。

 俺があの日この公園で出会い、見定めた少女。あれほどたどたどしいダンスを踊っていた彼女の技術は、俺の手ほどきを受けたことで着実に向上していた。無論、成長速度が速いとは言い難い。だが俺の教えを受け止める素直さと、練習であろうと手を抜かないひたむきさは、彼女の成長を静かに、されど確実に後押ししている。実際俺の目から見ても、数か月前とは見違えるレベルで成長していた。

 

「今日もよろしくお願いします、ハルさんっ!」

 

 そう言って、みのりちゃんは勢いよく頭を下げた。その声は朝っぱらとは思えないほど元気で、聞いているこっちが少し笑いそうになる。まだまだ技術は半人前。しかし、溢れんばかりの元気さと決してくじけないメンタルの強さは間違いなくこれ以上ないレベルの逸材だ。

 事実としてみのりちゃんは俺に出会ってからも、オーディションを2回受けて2回とも落ちてしまっているという。しかし、彼女がめげる気配は一向にない。だからこそ、教えがいもある。

 

「じゃあ、まずは準備運動から始めようか」

「はいっ!」

 

 もはやルーティンになった準備運動を、みのりちゃんと一緒に始める。身体を伸ばしたり、足首を回したり、腕を伸ばしたり……。

 一見すると地味かもしれないが、準備運動というのはそれだけで怪我のリスク低減に直結するとても大事な行動だ。特にアイドルという存在は歌もダンスも手を抜けない。全身を徹底的に酷使する以上、常に怪我のリスクはついて回る。それを回避するためにも、準備運動は欠かせない。

 

 特にみのりちゃんみたいなまだまだ柔軟性も体幹も身体に追いついてないような少女なら尚更だ。俺も細心の注意を払ってはいるが、何かの拍子で怪我をさせてしまっては申し訳が立たなくなる。そのまま準備運動を終え、俺は改めてみのりちゃんに向きなおった。

 

「じゃあ今日も始めよう。……この間のステップ、練習してきた?」

「はい!」

「よし、なら練習の成果を見せてくれ」

「分かりました! ──いきます!」

 

 俺がスマホの再生ボタンを押すと、みのりちゃんが曲に合わせて動き出す。

 ……なるほど、練習してきただけあって出だしは悪くない。しかし時間が経つにつれて、粗が明確に出始める。身体の軸がブレたり、一瞬笑顔が崩れたり。こういう細かいところは、自分では気づけなくても観客は絶対に気付いてしまう。やってる側は気に留めなくとも、見てる側は嫌でも気にしてしまうものだ。

 

「はい、ストップ」

「は、はいっ!」

 

 曲を止めると、みのりちゃんはその場でぴしっと姿勢を正した。こういうところは本当に素直だ。俺は今まで事務所の活動の一環として養成所に通うアイドル候補生に指導をしてきたことがあったが、そんなアイドル候補生たちと比べても相手の言葉に耳を傾ける姿勢は間違いなく1番だ。だからこそ、やる気があるんだかないんだか分からない候補生よりずっと教えがいがある。

 

「今の、自分でどこが悪かったと思う?」

「えっと……。途中で表情が崩れちゃったかも、ってなんとなく思いました」

「うん、半分正解だ」

「半分……ですか?」

「ああ。もう半分は、身体の軸がダンスの途中でズレてる。身体の軸がズレれば、そのズレを直そうとして、次の振り付けが遅れる。そして振り付けが遅れれば、さらに軸がズレていく。結果として悪循環に入るわけだな」

「な、なるほど……!」

 

 みのりちゃんは真剣な顔で頷く。分かっているのか分かっていないのかはともかくとしても、きちんと話を聞いてくれているのは間違いない。

 

「……でも、前見た時よりはかなり上手くなってると思う。いきなり全部を直す必要はないから、まずはどっちか1つだけでも意識してみるといい」

「はいっ!」

 

 そして曲をもう一度再生しようとした、その時だった──。

 

「へぇ……。こんなことやってたんだ、お兄ちゃん」

(……!?)

 

 突如背後から聞こえてきた声に振り返ると──青髪の少女と目が合った。眼鏡や帽子で変装してはいるが……見間違えるはずもない。遥だ。俺の妹にして、「ASRUN」の絶対的センターたる桐谷遥が、どういうわけかこの公園に現れている。

 ……確かに俺は、みのりちゃんの朝練に付き合っているということを遥に話したことがない。別に秘密にしていたとかそういうわけではないのだが、単に話しても何にもならないだろうと思って黙っていたのだ。だが結果はどうだ。今の遥は、眼鏡越しにでも分かるレベルの「私、不機嫌です」と言わんばかりの眼光で俺の目を真っすぐ見据えている。

 

「は、はる……」

 

 反射的に名前を呼びかけて、すぐに口を噤む。

 ──遥はさっき、俺に向かって「お兄ちゃん」と言ってしまっている。みのりちゃんに聞かれたかは分からないが、もし遥が堂々と正体を明かせば芋づる式に俺の正体もバレる。もしそうなれば、桐谷兄妹限界オタクを公言しているみのりちゃんがどうなるか分かったものではない。

 

「えっと……知り合いの人、ですか?」

 

 一方のみのりちゃんの方を見てみると、何が何だか分かっていないようで首を傾げていた。その視線は、俺と遥の間を何度も行き来している。けれど、まだ気づいてはいないらしい。帽子と眼鏡で顔の印象を隠した遥を、桐谷遥本人として認識できていない。トップアイドルとして鍛えられた変装技術は伊達ではないらしい。

 

「ああ、まあ……ちょっとな」

「お・に・い・ちゃ・ん?」

 

 ……曖昧にしようとしたが、どうやら許しちゃくれないらしい。遥の声から感じられる圧が一層強くなった。明らかに不機嫌さが加速したのが声だけでもわかる。どうやらバッドコミュニケーション、お気に召さなかったらしい。

 

「はぁ……。俺の妹だよ」

「あっ、それじゃあこの子が、前に言ってたハルさんの妹さんですか?」

「まあ、そうなるな」

 

 みのりちゃんは目の前に立つ見知らぬ女の子が俺の知り合いだと分かったようで、警戒心を解いたらしい。ぱっと表情を明るくすると、遥に向かって勢いよく頭を下げた。

 

「はじめまして! 花里みのりです! いつもハルさんにはお世話になってます!」

 

 そうしてみのりに声を掛けられたその瞬間、遥の眼鏡越しの眼光が消え、さっきまでこちらへ向けられていた不機嫌そうな圧がすっと消えた。

 

「初めまして、花里さん。お兄ちゃんがいつもお世話になってます」

「い、いえ! むしろわたしのほうが、お世話になりっぱなしで……!」

「ふふ。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

 

 柔らかく微笑むその表情は、さっきまで俺を睨んでいた妹のものではない。テレビやステージの上で何度も見てきた、アイドルとしての桐谷遥の顔だった。完璧な笑顔に柔らかな声。流石というべきか、不機嫌だろうが拗ねていようが、ファンの前では決してそれを見せない。我が妹ながら、その変わり身の早さには驚かされる。

 

 一方で遥に声を掛けられたみのりちゃんは、どこかあたふたした様子で頭を下げる。今自分が最推しと普通に会話していることにまだ気づいてはいないらしい。たぶん、「声は似てるけど別人」とでも思っているのだろう。

 

「……えーと。とりあえず練習、再開しようか?」

「あ、はいっ!」

 

 このまま話を続ければ、どこかで必ず正体に感づかれる。そう判断して、俺は半ば強引に流れを戻すことにした。若干苦し紛れな自覚はあったが、みのりちゃんは特に疑問を持たなかったらしい。素直に頷いて、さっきと同じ位置に戻っていく。こういう時、みのりちゃんの素直さには本当に救われる。

 

「私も見てていい?」

 

 だが、そう簡単には終わらないらしい。遥が、どこか冷たさを感じる笑顔のままこちらを見ている。まだみのりちゃんが俺たちの正体に気付いてないことだけが不幸中の幸いというべきだろう。

 

「……別にそれは構わないが、手は出さないでいてくれよ」

「大丈夫。見てるだけだから。……たぶん」

(……今『たぶん』って言ったよな?)

 

 最後の一言は小声ではあったが、明らかに不穏な響きを纏っていた。

 そのまま、奇妙な朝練が再開する。程なくして、今の俺がみのりちゃんへの課題曲として使っている曲に遥が気付いたらしい。一応遥もバレないように気は遣っているようで、俺に小声で話しかけてくる。

 

「その曲、ASRUNの曲だよね? しかも、お兄ちゃんが振り付けしたやつ」

「ああ。……自分が振り付けした曲なんだから、教えやすいのは当然だろ?」

「ふーん……」

 

 遥は一応納得したような反応を返してこそいるが、あえて言おう。

 ──全然、まったく、これっぽっちも納得してないのが透けて見える。確かに俺はこの曲の振り付けに関わったし、当然その過程でASRUNのメンバーに直接指導したこともあるが、この振り付けをマンツーマンでじっくり教えたことはない。それが実の妹であろうとも、だ。

 遥はトップアイドルだけあって、吸収力が相当高い。数回の合わせ練習だけで振り付けの大半を覚えてしまい、教える側に回っていたので教えることがなかった。そう、この振り付けを1対1で、しかも手取り足取り教えているのはみのりちゃんだけなのだ。

 前にみのりちゃんの話をした時に「なんだか妬けちゃう」みたいな話をしていたが……ここまで来るともうちょっとでは済まされない気がしてきたな。

 

「えっと……どうでしたか?」

「え? ああ、そうだな……」

 

 いつの間にか指示していた分のパートを終えていたようで、みのりちゃんは足を止めていた。

 ……しまった、思考を別の場所にやっていたせいでみのりちゃんのダンスに意識が向いていなかった。かと言って、当たり触りのないことを言うのは矜持に反する。どうしたものかと、いつの間にか顎に手を当てて考え込んでしまう。辺りに、沈黙が広がった。

 

「形にはなってるけど……。まだ、足の動かし方が不安定かな」

(……!)

 

 その沈黙を打破したのは、なんと遥だった。どうやら俺が思索にふけっている間に、遥の方がしっかりみのりちゃんの方を見ていたらしい。遥はいつの間にか俺の手元からスマホを奪い取っており、慣れた手つきで操作すると、指摘したいらしいパートを再生した。

 

「特にここの振り付け。花里さんは足だけ先に出てて、上半身が少し遅れてる。だから次のターンで軸がぶれて、足元が不安定になるんだと思う」

 

 みのりちゃんの目が丸くなる。当然だろう。はっきり言って俺と同じ、いや──それ以上に鋭い指摘だ。見事な指摘だと、俺ですら感心してしまったほどだ。だがそれに感心してしまったせいで、俺は次に遥が起こした行動への反応が遅れてしまった。

 

「だから例えば……」

「あ、おい!」

 

 そのまま遥は前に出ると、さっきみのりちゃんに指摘したパートのステップを完璧にこなしてみせる。帽子も眼鏡も付けているにもかかわらず一切外れる気配がないのは、遥の持ち前の圧倒的体幹故か、それとも一切ブレない身体の軸故か。

 そうして遥がステップを踊り終えた時、みのりちゃんはほぼ反射的に拍手を送っていた。

 

「す、すごい……!」

「そう、かな? でも、ありがとう」

 

 謙遜しているように見えるが、俺には分かる。今の遥は相当ドヤ顔を決めている。

 ……しかし珍しいこともあったものだ。素顔を隠しているというのを加味しても、ここまで遥が露骨に感情の変化を表に出すとは。とはいえそれは遥と長い付き合いの俺だからこそわかるものであって、たぶん他の人間には分からない。現にみのりちゃんもまったく気付いてないし。

 そしてそんな中、遥がとんだ爆弾発言をぶつけてきた。

 

「どうせだし、通しで1回踊っていい?」

「え?」

 

 ……勘弁してくれ、という言葉が喉元まで出かかったのをどうにか抑える。代わりに俺の口から飛び出したのは、至極真っ当なツッコミだった。

 

「……いや、見てるだけって言ったよな?」

「せっかくだし、お手本があった方がいいと思わない?」

「む……」

 

 ……なんだか今日の遥はやけに言葉のキレがいい。その一言だけで、俺は反撃の手段をほぼ失ってしまった。

 遥の言うことは何一つ間違っていないのだ。手本があるのとないのでは、当然あった方が練習の質が上がる。それは俺自身がかつて、練習中に遥に対して語った言葉だった。まさか昔の自分の言葉を盾に取られるとは夢にも思ってなかった。

 

「花里さんは、どうかな?」

「それなら、み、見てみたいです!」

「じゃあ、決まりだね」

(や、やりやがった……)

 

 しかも俺がどうにかこの場を凌ぐ手段を探しているうちに、遥がみのりちゃんにターゲットを絞ったことで、大勢は瞬く間に決してしまった。俺がみのりちゃんの頼みを強く断れないことを知ってか知らずか、遥は俺を黙らせてからすぐさまみのりちゃんの言質を取るというこれ以上ない合理的な方法で、俺の退路を潰してしまったのだ。

 遥はどこか上機嫌な様子で、前に歩み出る。

 

「それじゃお兄ちゃん。曲お願いね」

「……分かった、分かったよ」

 

 そうして俺が曲を再生した瞬間、遥の目が本気になったことが眼鏡越しにも感じられた。そのまま遥のダンスが始まる。

 やはり、遥のそれはASRUNの他のメンバーと比べても完成度が頭1つ抜けている。身体の軸も、重心移動も、足さばきも、どこを見てもまったく隙が無い。難易度の高いステップは少ないものの、それでも要所要所には地力が試されるステップが挟まっている。

 

 しかし遥は、それすらも涼しい表情でこなしていく。理解度で言えば振付を考えた俺の方が上だろうが、この曲を「踊りこなしている」という観点で考えれば……遥のそれは俺をも上回るだろう。

 ぶっちゃけてしまえば、遥に大した指導をしなかったのはそれが理由だ。数回踊らせてみただけで7割くらいは完成してしまっており、残りの3割は表情やら指先への意識といった細かい点ばかりだったのもあって、俺が教えられることはほぼなくなってしまっていた。「教えなかった」というより、「教えることがなかった」のだ。

 

「……こんな感じで、どうかな?」

 

 やがて遥がダンスを踊り終えた時、呆れと感心半分の俺に対し、みのりちゃんは素晴らしいものを見たと言わんばかりの盛大な拍手を送っていた。

 

「す、すごかったです!」

「ありがとう。私も久しぶりに、ちょっと全力で踊ったからね」

「……ここで全力を出す必要があったのか?」

 

 俺の問いに、遥はただ柔らかく笑うだけだった。だが、その笑顔の奥にある得意げな気配までは隠しきれていない。

 一方みのりちゃんはその後も遥に対して感想を嵐のように語っていたが──ふと何かに気づいたように「うーん」と口にした。

 

「でも……なんだか、不思議です」

「不思議?」

「はい。ハルさんもすっごく上手なんですけど……なんていうか、妹さんの方がこの曲を『踊(・)り(・)慣(・)れ(・)て(・)る(・)』って感じがして……」

 

 ──踊(・)り(・)慣(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。その言葉を聞いた瞬間、遥の口元がほんの少しだけ緩んだ。

 

(……嫌な予感がする)

 

 さっきまでの柔らかい笑顔とほとんど変わらない。みのりちゃんから見れば、きっと何の違和感もないだろう。だが、俺には分かる。あの顔は、遥が何かを企んでいる時の顔だ。

 

「そう見えた?」

「はい! 振り付けを覚えてるっていうより、もう身体に馴染んでるみたいな……。何回も何回も、この曲を踊ってきた人みたいでした!」

「……そっか」

 

 遥はどこか嬉しそうに呟く。

 

「なら、花里さんの目は間違ってないよ」

「え?」

「だって私、この曲を数えきれないくらい踊ってきたもの」

「数えきれないくらい……?」

「うん。ライブでも、テレビでもね」

「ライブ……?」

 

 みのりちゃんが首を傾げる。その横で、遥の手がゆっくりと帽子のつばへ伸びた。

 ……そこでようやく、俺はすべてを察した。どうにか遥を制止しようと手を伸ばす。だが、遅かった。

 

「だって──」

 

 遥は帽子のつばに手を掛けると、そのままゆっくりと帽子を脱ぐ。続けて眼鏡にも指を掛け、何の躊躇いもなく外した。隠されていた青い髪が朝日を受けて揺れる。そしてその下から現れたのは、みのりちゃんがテレビやライブ、雑誌や握手会で、きっと幾度となく目にしてきたであろう顔。

 素顔を晒した遥は、柔らかく──けれど、どこか得意げに微笑んだ。

 

「──私(・)が(・)、桐(・)谷(・)遥(・)だ(・)か(・)ら(・)ね(・)」

「…………え?」

 

 ──時間が止まった。

 そんな錯覚を覚えるくらい、みのりちゃんはぴたりと動かなくなった。目を大きく見開いたまま、遥の顔を凝視している。瞬きすらしていない。さっきまで忙しなく動いていた口も、今は半開きになったまま完全に止まっていた。

 

(……やりやがった)

 

 俺は思わず額に手を当てる。この妹、とうとう何の躊躇いもなく正体を明かしてしまった。

 いや──違う。とうとう、じゃない。最初からこれが狙いだったんだ。

 

『見てるだけだから。……たぶん』

 

 今になって、さっきの遥の言葉が脳裏に蘇る。遥はあの時からもう、この筋書きを作っていたのだ。

 

(……あの『たぶん』の時点で気付けよ、俺)

 

 自分が桐谷遥だと明かすことで、連鎖的に俺の正体までバラす。それが遥にとっての最大級の仕返しだったのだろう。今の今まで虎視眈々と、みのりちゃんが自分から違和感を口にする瞬間を待っていたわけだ。そして、その策は見事に成功している。

 

「…………」

 

 未だみのりちゃんは動かない。遥を凝視したままフリーズしている。

 そうして、遥が正体を明かしてから数秒。ようやく止まっていた思考が再起動したのか、みのりちゃんの唇が小刻みに震え始めた。

 

「は、ははは……はるかちゃん!!?」

「ふふっ。握手会以来……かな?」

 

 当然の如く、叫ばずにはいられなかったようだった。というか朝っぱらの公園だぞ、ここ。周囲に人がほとんどいないとはいえ、もう少し声量を抑えてほしい。

 ……もっとも、今のみのりちゃんにそんな冷静さを求める方が酷なのだろうが。

 

 そして遥も遥で、ご丁寧に握手会の話まで出して追い討ちしてるし。

 

「ほ、本物……? えっ、本物の遥ちゃん……? え、ええっ!?」

 

 みのりちゃんは遥を見る。俺を見る。もう一度遥を見る。そこで──その表情が固まった。

 

「あ、あれ……?」

 

 さっきとは違う意味で、声が小さくなっている。

 

「遥ちゃん、さっきハルさんを……『お兄ちゃん』って呼んでたってことは……。ハルさんの妹さんが、遥ちゃんで……」

 

 一度、遥を見る。次に、ゆっくりと俺へ顔を向ける。

 

「それで、遥ちゃんのお兄さんは……。桐谷……夏夜くん……」

 

 もう駄目だ。ここまで来たら、俺が何を言ったところで答えは変わらない。

 

「じゃ、じゃあ……ハルさんは……?」

 

 みのりちゃんの顔から、見る見るうちに血の気が引いていく。

 

「ほら、もう隠しきれないんじゃない? “お兄ちゃん”」

「……やってくれたな、遥」

 

 遥はすっかりしてやったり顔をしていた。

 

 ──完全にしてやられた。

 練習を見ていたのも。みのりちゃんを味方につけて反撃の目を潰したのも。通しで1曲踊ったのも。全部、ここに繋げるためだったというわけだ。

 ……あの「たぶん」の時点で気付くべきだった。しかしこうなった以上、もはやどう隠したって無駄だろう。俺は小さく息を吐くと、つけていた眼鏡とマスクを外した。

 みのりちゃんの目が、さらに見開かれる。

 

「……そうだよ。俺は桐谷夏夜。みのりちゃんが言ってた、『夏夜くん』その人だ」

「……~~っ!!」

 

 声にならない叫び。みのりちゃんは口をぱくぱくと動かしたまま、俺の顔を凝視している。

 そのまま一歩後ろに下がったかと思えば、今度は一歩前へ出る。視線は俺と遥の間を何度も往復し、両手まで意味もなく宙を彷徨い始めている。見るからに挙動不審だった。

 

「え、えっと、つまり、ハルさんが夏夜くんで、夏夜くんがハルさんで……じゃあ今まで朝練でステップを見てもらってたのって夏夜くんででもハルさんででも桐谷遥ちゃんのお兄さんであってそれでわたしはそんな人に普通にハルさんって呼んでてしかもご本人しか知らないようなことまで聞いちゃってて握手会であんなにお話しした夏夜くんにわたし今まで普通におはようございますとか今日もお願いしますとか言っててしかもレッスンまでしてもらっててえっとえっとこれってつまり畏れ多いとかそういう次元じゃ──」

(……なんて?)

 

 何かを言っているのだろうが、あまりに口の動きが早過ぎて何を言っているのかまったく分からない。最早、本当に息継ぎをしているのかどうかすら怪しいレベルだ。

 ただ、「ハルさん」とか「今まで」とか「握手会」といった単語だけは辛うじて聞き取れる。多分今まで自分が誰と普通に話していたのか、その記憶が一気に押し寄せてきてしまっているのだろう。

 

(握手会の時も、こんな感じだったな……)

 

 今更ながら思い出す。

 俺への感想を一息でまくし立て、時間いっぱいまで喋り続け、それでも足りずに係員にはがされながら「あぁ~!?」と情けない声を上げていた少女。あの時と、まったく同じだ。

 

「み、みのりちゃん? とりあえず落ち着いて──」

 

 そう声を掛けようとしたところで、不意にみのりちゃんの口が止まった。ぴたり、と直立不動になる。そして──。

 

「……きゅう」

「……あっ」

「み、みのりちゃん!?」

 

 ──次の瞬間、みのりちゃんの身体から力が抜けた。糸の切れた人形のように、そのまま後ろへ崩れ落ちていく。

 

「っと……!」

 

 咄嗟に腕を伸ばし、どうにか地面へ頭をぶつける前に身体を受け止める。どうやら完全に限界を突破したらしいが、その顔は妙に安らかだった。俺の腕の中で綺麗に気絶しているみのりちゃんを見下ろし、それから俺はゆっくりと顔を上げた。朝焼けの空が、やけに綺麗だった。

 そして俺は、心の底から思う。

 

(……そりゃ、こうなるよな)

 

 思わず天を仰がずにはいられなかった。

 

 

 ──それから数分後。公園のベンチに横たえられていたみのりちゃんの瞼が、ぴくりと動いた。

 

「……ん……」

「お、気が付いたか?」

「…………ふぁ」

 

 ゆっくりと目を開けたみのりちゃんは、しばらくぼんやりと朝の空を見上げていた。どうやらまだ意識が完全に覚醒していないらしい。何度か瞬きを繰り返した後、俺の方へと顔を向ける。

 

「……ハル、さん……?」

 

 そして、俺の顔を見つめること数秒。どうやらすべてを思い出したらしく、みのりちゃんは勢いよく上半身を起こした。

 

「な、夏夜くん!!?」

「うおっ!?」

 

 思わず一歩後ろへ下がる。復活早々、とんでもない声量だった。さっきまで気絶していた人間とは思えない。

 

「おはよう、花里さん」

「は、遥ちゃんもいるっ!?」

「そりゃいるだろ……」

 

 ちなみに遥は、俺の隣で何事もなかったかのように佇んでいる。もっとも、みのりちゃんが倒れた直後はさすがの遥も少し慌てていたのだが。大興奮するだろうとは予想していたらしいが、さすがに気絶するとは夢にも思っていなかったらしい。

 

「えっ、えっ? じゃあさっきのって夢じゃ……」

「夢ならよかったのかもしれないが、現実だぞ」

「うぅ~~!!」

 

 みのりちゃんは小さく呻くと、両手で顔を覆った。

 

 ……まあ、気持ちは分からなくもない。

 憧れているアイドルが突然目の前に現れた挙句、数か月にわたって自分の練習を見ていた人間までその兄だったのだ。しかもその事実を知らず、今まで何度も普通に話していた。果てには目の前で気絶するという醜態まで晒す始末だ。改めて考えると、割と洒落にならない状況だ。

 

「……あ、あの。今まで、本当にすみませんでした!」

「……なんで謝るんだ?」

 

 突然勢いよく頭を下げられ、俺は思わず眉をひそめる。

 

「だ、だってわたし、夏夜さんだって知らないで……! 普通にハルさんなんて呼んじゃってたし、朝早くから何度も練習に付き合わせちゃってましたし、それに……!」

「ちょっと待て」

 

 また暴走し始めそうだったので、一旦止める。

 

「まず最初に。名前を偽ってたのは俺の方だ。だから、それについてみのりちゃんが謝ることは何もない」

 

 俺がそう言うと、みのりちゃんは一応口を閉じた。

 しかし、表情は晴れない。膝の上でぎゅっと握られた両手を見れば、まだ何かを気にしているのは一目瞭然だった。

 

「……まだ何かあるのか?」

「……その」

 

 少しの逡巡。やがてみのりちゃんは、恐る恐る俺を見上げた。

 

「どうして……わたしなんかに、ここまでしてくれたんですか? 夏夜く──じゃなくて、夏夜さんって、すごく忙しいですよね。それなのに朝早くから何度も練習を見てくれて、振り付けまで教えてくれて……」

 

 その言葉に、俺は黙る。言葉を重ねるにつれ、みのりちゃんの声が段々と小さくなっていく。

 

「それって……わたしが夏夜さんのファンだったから、ですか?」

 

 ──なるほど。

 ようやく、みのりちゃんが何を気にしているのか理解できた。正体を知ったことで、今まで何の疑問もなく受け取っていたものまで特別な意味を持って見えるようになってしまったらしい。トップアイドルからのマンツーマン指導。言葉にすれば、確かに随分と大層な話に聞こえる。

 

 ……しかし。

 

「それは、違うよ」

「……え?」

 

 その答えを迷う理由なんてなかった。むしろ、そこだけは勘違いされたままにしておきたくない。だから俺は、みのりちゃんの目を見てはっきりと言い切った。

 

「最初にみのりちゃんに『練習を見てあげる』って言った時、俺はまだみのりちゃんがファンだなんて確信してなかった」

「あ……」

 

 みのりちゃんが目を瞬かせる。

 実際「握手会で見たことがあるような気がする」とは思っていたが、それだけだ。確信を持ったのは、家に帰ってファンレターと握手会の映像を調べてからだった。

 

「ファンだから教え始めたわけじゃない。今まで続けてきたのも同じだよ」

「じゃ、じゃあ……どうして……?」

「どうして、か」

 

 その問いに、今度は少しだけ考える。だが答えそのものは、最初から決まっていた。

 

「みのりちゃん。今のきみは、まだアイドルとしては全然だ」

「ううっ……」

 

 分かりやすく肩が落ちる。

 

「ダンスもまだ粗い。体幹も足りない。表情だって振り付けに意識を取られたらすぐ崩れる。歌だって、少なくとも今すぐプロでやっていけるほどじゃない」

「お兄ちゃん。少し言い方」

「でも、事実だろ?」

「そうだけど……」

 

 遥が呆れたような目を向けてくる。だが、ここを曖昧にする気はない。俺はみのりちゃんの夢を応援している。だからこそ、現実まで誤魔化すつもりはなかった。

 

「でも。きみは四十何回もオーディションに落ちて、それでも『アイドルになりたい』って言ってる。──みのりちゃんじゃなかったら、とっくに諦めてるよ。普通の人なら十回も落ちれば、その時点で『自分には向いてない』って見切りを付けてる。それでもきみはやめなかった。それどころか、あれから二回増えてるんだろ?」

「あ……はい。今は四十六回です」

「よ、四十六回……?」

 

 遥が呆れとも驚愕ともつかない声を出していた。あまりにも予想通りの反応に、思わず苦笑する。だが、これこそが俺がみのりちゃんを見ている最大の理由だった。

 

「才能がある人なら、今まで何人も見てきた。歌が上手い奴も、初心者とは思えないくらい踊れる奴も。けど──」

 

 一度言葉を切る。

 

「──ここまで打ちのめされても、それでも前だけを見てる人はまずいない」

「……!」

「あの日、きみが公園で踊ってるのを見て、俺はそれが気になった。話してみたら、もっと気になった」

 

 初めて会った日のことを思い返す。技術は拙かった。身体の軸もぶれていた。今にも転びそうなくらい危なっかしいダンスだった。なのに、何故か目を離せなかった。あの時に感じたものは、今でも変わっていない。

 

「俺は、みのりちゃんがどこまで行くのか見てみたい。もっと簡単に言えば──」

 

 俺はみのりちゃんの目をまっすぐ見据える。

 

「み(・)の(・)り(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)の(・)夢(・)を(・)、応(・)援(・)し(・)た(・)い(・)と(・)思(・)っ(・)た(・)ん(・)だ(・)。だから教えてる。それだけだ」

「……っ」

 

 みのりちゃんの目が大きく見開かれる。何か言おうと唇を動かしたものの、息が漏れているだけで言葉になっていない。

 もっとも俺にとっては、別に大層な告白をしたつもりはない。あの日からずっと思っていたことを、そのまま口にしただけだ。

 

「俺がトップアイドルだからとか、みのりちゃんが俺のファンだからとか、そんなのはどうでもいい」

 

 俺が誰なのか。そんなものは、みのりちゃんがアイドルになれるかどうかには何の関係もない。

 

「でも、ひとつだけ聞かせてくれ。俺の正体を知ったら、きみはアイドルになるのをやめるのか?」

「──やめません!」

 

 返事は一瞬だった。迷う素振りすらなかった。

 

「わたし、アイドルになりたいです!」

 

 さっきまでの不安げな表情はどこへやら。その瞳には、初めて会った時とまったく同じ光が宿っていた。

 

「遥ちゃんにも、夏夜くんにも、たくさんの人にもらった希望を……今度はわたしが、誰かに届けられるようなアイドルになりたいです!」

「……そっか」

 

 ──やっぱり。この子は変わらない。

 何度落ちても。どれだけ自分より上の人間を目の当たりにしても。自分が進みたいと決めた方向だけは、決して見失わない。ならば、俺ができることは最初から決まっている。

 

「だったら何も変わらない。俺が誰なのかなんて関係ない。俺がきみを教えたい。それでこの話は終わりだ。さ、今まで通り練習するぞ」

 

 しばしの沈黙。それから──。

 

「……はいっ!」

 

 みのりちゃんは、満面の笑みを浮かべた。その顔を見て、俺もどこか肩の力が抜ける。

 

「……なるほどね」

 

 その時、不意に遥が小さく呟いた。その声に、さっきまであった棘はもうなかった。

 ちらりと横顔を窺う。いつの間にか、遥のみのりちゃんを見る目が変わっていた。俺が朝練を隠していたことへの不満も、自分以外の誰かにここまで肩入れしていたことへの嫉妬も、少なくとも今は鳴りを潜めているらしい。

 

「どうした?」

「ううん、なんでもない」

 

 そう言って、遥はみのりちゃんを見る。さっきまで俺に向けていたような不機嫌さは、もうどこにも残っていなかった。

 

「花里さん」

「は、はいっ!」

 

 遥に名前を呼ばれた瞬間、みのりちゃんの背筋が再びぴんと伸びる。遥が改めてみのりちゃんへ向き直った。

 

「お兄ちゃんは、誰にでもここまでするわけじゃないよ。でも……私も少し分かった気がする。どうしてお兄ちゃんが花里さんを応援したくなったのか」

「え……?」

「だって、今の答えを聞いてたらね。──私も、応援したくなったから」

 

 遥の表情が柔らかくなる。どうやら、みのりちゃんに対して抱いていた嫉妬のようなものは消えたらしい。

 

「私も応援するよ。花里さんがアイドルになれるように」

「…………っ」

 

 みのりちゃんが固まった。指先ひとつ微動だにしていない。

 

「……おい。遥、それ以上は──」

「わ、わたし……遥ちゃんに……応援……」

 

 顔がみるみる赤くなっていく。ゆでダコもかくや、といった様相だ。ついでに目線も定まらなくなり始めている。

 

「遥ちゃんが……わたしを……」

「花里さん?」

「──ほわ~……」

「っておい、さすがに2回目はダメだ。戻ってこい」

 

 慌てて両肩を掴んで、意識を持っていかれないように揺さぶる。どうにか今回は気絶する寸前で帰ってきたようだった。

 

「はっ……!? だ、大丈夫です!」

「今のどこを見て大丈夫と思えばいいんだ……?」

「ご、ごめんなさい!」

 

 どうやら遥という存在は、今のみのりちゃんには刺激が強過ぎるらしい。少なくとも、今日これ以上遥から何かを言わせるのはやめた方がいいだろう。

 

「それと」

「あの、ハルさん……じゃなくて、夏夜さん!」

「ん?」

 

 呼び直したみのりちゃんは、そのまま少しだけ言いづらそうに視線を彷徨わせた。

 

「……ひとつ、お願いしてもいいですか?」

「どうした?」

「その……。これからも、『ハルさん』って呼んでもいいですか?」

 

 まさかの呼び方についての提案。少しだけ意外だった。

 

「もちろん、人前で夏夜さんって呼んだら大変なのもありますけど……それだけじゃなくて。わたしにとって夏夜さんは、ずっと憧れてたアイドルです。でも『ハルさん』は……わたしの夢を応援してくれた、大切な先生だから」

 

 そう言ってみのりちゃんは、照れくさそうに笑う。どうやら同じ人間でも、彼女の中では意味が違うらしい。

 例えるとすれば──“桐谷夏夜”は、ステージの向こう側にいた憧れ。“ハルさん”は、公園で偶然出会って、夢を追う手伝いをしてきた青年。そう考えると、不思議と悪い気はしなかった。

 

「ダメ……ですか?」

「いや。好きにすればいいよ」

 

 別に、断る理由なんてない。そもそも内心「ハルさん」という呼ばれ方を気に入っていたというのもある。

 

「ほんとですか!?」

「ああ。それに今更『桐谷さん』とか『夏夜さん』なんて呼ばれても、こっちが調子狂う」

「えへへ……。じゃあ──」

 

 みのりちゃんは、今まで何度も見てきた笑顔を浮かべる。

 

「これからもよろしくお願いします、ハルさんっ!」

「ああ。よろしくな、みのりちゃん」

 

 秘密はなくなった。それでも、俺たちの関係そのものは何も変わらない。

 

 ──いや。もしかすると、少しだけ変わったのかもしれない。正体も立場も全部知った上で、それでも今までと同じ関係を選んだのだから。

 

「それじゃ、休憩も終わったことだし──練習再開するか」

「はいっ!」

「私もちょっと参加していい?」

「……まだいるのか?」

「あれ、ダメだった?」

「いや別に帰れとは言ってないけどさ……」

 

 遥はどうやら、このまま最後まで朝練に付き合うつもりらしい。まあ、今更追い返す理由もない。

 

「じゃあ、さっきのところからもう一回。今度は軸を意識して──」

「は、はい!」

 

 みのりちゃんが所定の位置につく。俺が曲を再生する。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー……!」

 

 しかし、数秒後。

 

「はいストップ。さっきより動きが固くなりすぎてる」

「ご、ごめんなさい!」

「足も全然動いてないし、表情もガチガチだね……」

「だ、だってぇ……!」

 

 俺と遥の容赦のない指摘に、みのりちゃんが泣きそうな顔でこちらを見てくる。

 

「推し2人が見てるのに、集中できるわけないですよぉ!!」

 

 みのりちゃんの魂の叫び。俺と遥は、揃って顔を見合わせた。

 

「……今日、練習にならないんじゃない?」

「奇遇だな。俺も今そう思った」

「そ、そんなぁ~!」

 

 早朝の公園に、みのりちゃんの悲鳴が響き渡るのだった。

 

 





時系列的には「希望を歌う偶像」より後で、遥がASRUNを辞める少し前の話です。

【桐谷夏夜】
別名、「ハルさん」。
実はみのりとの師弟関係を結構楽しんでいた。遥に言っていなかったのは「言う必要がないと思っていたから」なのだが、遥にとっては重大な問題だということには気付いていなかった。

【桐谷遥】
今までみのりの朝練に付き合っていたことを黙っていた兄への仕返しとして、みのりに自らもろとも兄の正体を明かして満足気なASRUNのセンター。
実は夏夜にマンツーマン指導を受けたことが一度もない。みのりへの嫉妬の理由の大多数はこれだったりする。ちなみに「ハルさん」の名前の由来が自分の名前の捩りであることにはなんとなく気付いている模様。この後、みのりと連絡先を交換した。
そして数か月後、真依とのいざこざで原作通りにASRUN脱退となるのだが……もしかすると、ここで得た繋がりのおかげで少し変化が生じるのかもしれない。

【花里みのり】
最推しである桐谷兄妹が目の前に現れてしまった結果、お約束として気絶したアイドル志望の少女。
あれからオーディションに2回落ちたが、やはりめげる気配はなし。原作だろうとそうでなかろうと、みのりの鋼メンタルはここでも健在。ただし桐谷兄妹に関わることになると別の意味で正気ではなくなる。この後遥とも連絡先を交換したのだが、自分のスマホに桐谷兄妹の連絡先が揃ったことでまた魂が旅立ちかけている。
ちなみにみのりの動きが目に見えてカクカクになったり、夏夜が目を離した隙に何度か意識を飛ばしかけたりしたため、この日の練習はおよそ十数分後に強制終了となった。

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